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LIVE REPORT

MINAMI NiNE

2019.07.01 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 山口 智男

6月12日にメジャー・レーベルからの2作目となるEP『IMAGINE』をリリースしたMINAMI NiNEが7月1日、リリース・イベントを開催した。メジャーからの第1弾となった『LINKS』リリース以降、ファン層の広がりを、全国各地を回ったライヴを通して肌で感じながら、去来する様々な思いを注ぎ込んで作り上げた作品だ。リリース・イベントも特別なものにしたかったに違いない。抽選で当たった観客を無料招待するだけでは満足できなかったのか、この日、MINAMI NiNEの3人は、トークとライヴの2本立てで2時間たっぷりと楽しませたのだった。

"曲には自分たちが思っていることやメッセージを込めてはいるけれど、聴いた人それぞれに日々の生活とリンクさせてほしいから、想像を膨らませながら聴いてほしい"。MINAMI NiNEとは旧知の仲だというお笑いコンビのヤマダイラーがMCを務めたトーク・コーナーでは、ヒロキ(Vo/Ba)が"IMAGINE"というタイトルの意味を真面目に語る一方で、レコーディングのこぼれ話なども披露。観客を笑わせた。そして、スケロク(Dr/Cho)が、ヤマダイラーから伝授された一発ギャグでトーク・コーナーを見事(?)締めると、ライヴは激ロックのインタビュー(※2019年6月号掲載)で予告した通り、「群青」からスタートした。スケロクが叩く軽やかなビートとワラビノ(Gt/Cho)がザクザクと刻むギターとともに、どこかノスタルジックで切ないメロディを歌うヒロキの優しい歌声がぐっと胸に染みる。そして、この曲を1曲目に持ってきたバンドの思いを受け取った観客がサビで拳を振り上げ、シンガロング! 一気に上がったフロアの温度は、バンドが間髪入れずに繋げた「南九節」でさらに上昇していった――。

この日、バンドが演奏したのは、『IMAGINE』の6曲に大切に歌い続けてきた曲を織り交ぜた全10曲。メロコアあり、青春パンクあり、スカ/レゲエあり、アンセムあり、エモい歌モノありという幅広い曲の数々に対する観客の反応もモッシュ、ダイヴ、スカンキンなダンス、シンガロングと実に様々だったが、この日のハイライトはなんと言っても、"この歌だけは、どうしても届けたいふたりがいる"とヒロキが語ってから演奏した「Imagine」だろう。

10年間寝たきりだった伯父と、伯父を看病し続けた伯母に「Imagine」を書いたことを、ステージで語るつもりはなかったというヒロキは、その伯父が6日前に亡くなったことで気持ちが変わったそうだ。"CDと同じようにやりたい"と「Imagine」のレコーディングに参加したホタルライトヒルズバンドの藤田リュウジを迎え、彼が奏でるピアノの音色とともに、"天国にいる伯父さんに届くように心を込めて歌うので、心で聴いてください"と熱唱。MINAMI NiNEのもうひとつの持ち味であるバラードが、真心から生まれたものだからこそ聴く者の胸に響くことを印象づけた。

そして、40秒足らずのメロコア・ナンバー「Killer song」を2回演奏してダメ押しで盛り上げ、アンコールを締めくくったあと、ヤマダイラーからこの日の感想を聞かれ、"MINAMI NiNEのライヴは喜怒哀楽の感情が忙しい"とワラビノは答えたが、本当にそうだと思う。モッシュしたり、ダンスしたり、シンガロングしたり、フィジカルに楽しみながら、しっかりと胸に残るものがあるから、その場限りのもので終わらずに思い出や思い入れに繋がる良さが彼らのライヴにはある。それが、メンバーたちが言う"人間味"なのだと思うが、まだ彼らのライヴを体験したことがないという人がいたら、ぜひ足を運んでみてほしい。MINAMI NiNEの3人はいつだって、僕らに真正面から向かい合ってくれるはずだ。

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