MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

COLUMN

ESKIMO CALLBOYのいきなり!チャラアゲ伝説。 vol.15

ESKIMO CALLBOYのいきなり!チャラアゲ伝説。 vol.15

ESKIMO CALLBOYのある1日 ロンドン公演編(前半)

というわけで、前回の夏フェスに出演してからしばらく経っていた。そういうときの気分っていつも、夏休み明けの最初の日にやっと(学校で)友達と再会するような感じがちょっとするんだ。胸の鼓動もいつもよりちょっとだけ強くてね。俺たちをそういう気分にさせるのは、バスに乗っていらない服を全部脱ぎ捨てて、爆音の音楽と山ほどの酒でそういう感動の再会を祝福することなんだ。

今のところ調子は上々。楽しい夜を過ごしているよ。
だけど、ツアー・マネージャーの金切り声で俺たちは夢から引き裂かれ、数分後には脂ぎった男たちが待っているカレー港(訳注:フランス)の国境検問所だ。メンバーの顔を見ると、一瞬のうちにあのシワシワの中国の犬(訳注:シャー・ペイ犬)を思い出す。......もっとも、犬の方がずっといい匂いがするのはたしかだけどね。

今朝は時間の感覚がなくなりかけている。早い時間に違いない。でも、時間を確認するのに腕を挙げるのすら面倒なんだ。そういう日もあるよね。リモコンが手の届かないところにあるというだけの理由で、つまらない映画をテレビで見続けるような。

今回は俺たちにとって初めてのUKツアー。もちろんワクワクしているよ。イギリスでは単発のショーはすでに何度かやったけど、2日以上ツアーをしたことがなかったんだ。緊張でソワソワするよ。この先は新しいことばかりなんだから! 初めて会う人々、初めて行く街......でもバンドマンとしてはいつもクールに振る舞って平常心を装うんだ。心の中では"アナと雪の女王"のエルサに会ったばかりのお姫様みたいに叫び声を上げているんだけどね。そんなこんなで、Clint Eastwoodがビビってチビるくらいの表情でデカいフェリーに乗った俺たちは、そのあとすぐに女の子みたいにセルフィー(自撮り)を何枚か撮った。よくありがちだね。

フェリーの旅は良かったよ。イギリスの日の出はきれいだったし、ドーバーの崖から吹いてくる新鮮な風が俺たちを軌道に戻してくれた。実際シワも消えたけど、今度はビバリーヒルズの酔っ払ったおばあちゃんみたいになってしまった。でもようやくカムデン・マーケット近くでバスを降りると、もうルックスなんて問題にもならないってことがすぐに理解できた。どんな服で着飾ったって、バスの傍を通りすぎるイギリス人たちみたいにファッショナブルには絶対ならないんだから。
このカムデン・マーケットに繋がる通りは長さ1マイルのランウェイみたいな感じに見えた。そこをテニス用の靴下にサンダルというモッサリした出で立ちの俺たちドイツ人が歩いているんだ。

イギリスよ、おまえはどうしてそんなにきらびやかなんだ?

ステレオタイプといえば......ラッシュアワーの最中に大喧嘩をしているふたりの男を見て、到着して5分でイギリスの土を踏んでいることを実感したよ。やつらは素手で殴り合っていたんだ。道路の真ん中で。

まぁ、いいじゃないかと思った。
脅威すら感じないんだ。まったく。若くて身なりもいい男たちが顔を殴り合っているのを見ていると、美学すら感じた。間に割って入る必要はまったくない。この素晴らしいパフォーマンスの様相を一瞬たりとも逃さず目撃できるような、リアル・ライフをスローモーションで見られるような機能があればいいのにと思ってしまうようなひとときだった。ストリート・ファイトにはぴったりだ。あと、巨乳の女の子たちのジョギングを眺めるのにもね。
イギリス文化の印象的なプレゼンテーションのあと、俺たちはその界隈を歩き続け、今夜のメイン会場の入り口を目指す。何もかも本当にワクワクさせてくれる。例えば、入り口の上にかかっている、俺たちの名前を表示した広告板。何てクールなんだろう! こんなものは今までなかったよ!

写真ターーーーイム!

Justin Bieberのコンサートに行った16歳の女の子よりもたくさんセルフィーを撮ったよ。
幸運なことに、俺たちには華やかなセルフ・ポートレイトのクオリティを上げるカメラマンがついていた。だからたった1回のショーをやる前から、俺たちが外国人だってことはバレバレだった。何しろ、リアルなロンドンの様子を携帯のカメラを通して見ていたからね。とにかく何もかも写真に撮る価値があるように感じられたんだ。
ほら、見ろよ! イギリス・オリジナルのファラフェル(訳注:中東発祥のひよこ豆のコロッケ)の屋台だぞ。
ほら、見ろよ! イギリス・オリジナルのタクシーだ。
ほら、見ろよ! ハゲ頭のデカい鬼がいる!

いや、待てよ。あれは俺たちのツアー・マネージャーじゃないか。彼は俺たちのやるべきことを全部思い出させてくれる。俺たちは彼をツアー・ダディとして採用したようなものだ。そして俺たちはみんなのご想像通り最悪のクソガキだ。どうりで彼もハゲ上がってしまったわけだ。

  • 1