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LIVE REPORT

LIGHT BRINGER

2014.11.21 @渋谷WWW

Writer 米沢 彰

10月におよそ1年半ぶりのニュー・アルバムのリリースを発表。そしてそのニュー・アルバムのリリースをわずか4日後に控えた11月1日に突如、年内をもっての無期限活動休止を発表したLIGHT BRINGER。ニュー・アルバムのタイトルが『monument』ということで、このリリースがバンドにとってまさに"記念碑"となってしまうことは本人たち以外には誰も予想すらしていなかっただろう。むしろ、今作をひとつの到達点としながらさらなる飛躍を見せていくことを思い描いていたはずだ。

そして、活動休止の発表ならびにニュー・アルバムをリリースしたのと同じ11月、ツアー・ファイナルとなる公演が渋谷WWWにて行われた。会場前ではファンの有志が"サイリウム"を配りながらサプライズ企画への協力を呼びかけており、バンドがファンにいかに愛されているか、活動休止を前にしたこの公演がいかにファンにとって、バンドにとって重要なのかが始まる前からひしひしと伝わってくる。肝心のライヴは少し遅れてスタートしたが、Fukiの声量溢れるヴォーカルはもちろん、JaY (Gt)、Hibiki (Ba)、Mao (Key)、Yumi (Dr)の楽器陣は超絶的なテクニックとグルーヴで、集まったオーディエンスを一気に引き込んでいく。この溢れるプログレ感は、ムサくない、むしろ爽やかな見た目のDREAM THEATERみたいだなぁとか、アホなことを考えてしまったのはきっと彼女たちのサウンドがそれほどまでの完成度を聴かせていたせいだろう。Fukiの透明感と力強さが同居した圧倒的なヴォーカル、フルピッキングで弾ききるハイ・スピードなフレーズから、スイープやタッピングを駆使して聴かせる、JaYのどハデなギターに、Jordan Rudess(DREAM THEATER)を彷彿とさせる、見せ場を持ったMaoのキーボード・ワーク、ベース・ソロをも織り交ぜ、タッピングやスラッピングをも取り込みながらサウンドを下から攻めるHibikiのベース・プレイ、そして、ツーバスを多用し、スピード感溢れるビートを生み出すYumiのドラミング、と国内でも屈指の面々が揃い、異様なほどのコンセントレーションでひとつひとつの音を紡いでいくその姿には鳥肌すら立ってしまう。特にバンド全体で一体となって複雑なフレーズをユニゾンで鳴らすパートはヤバい。個々の力量が重なり、バンドとしてまとまる瞬間。そこに発生するエネルギーに圧倒される。

が、一方、独特のユルさもあるのがLIGHT BRINGER。"渋谷にお集まりのみなさん! 今日は楽しんでいきましょう!"とMCで声を掛けるFukiは歌っているときとは別人のようなとっつきやすさを見せ、"私たちがLIGHT BRINGER! 略して~!?"とおきまりのコールでオーディエンスに"らぶりー!"と叫ばせたときの笑顔はまるで童心に返ったかのようでもある。この2面性にも近いレベルのギャップをメンバー全員が持っていて、ストイックになりきらないところが彼女たちのライヴを面白くしているようにも思える。一旦FukiがハケてからはYumi、JaY、Hibiki、Maoがそれぞれ超絶ソロで会場を沸かせる。各々がとんでもないレベルで演奏を魅せる中で、Hibikiは彼らしいチョイスでRACER-Xのベース・パートを完コピして聴かせる。そのくせ、MCでは"最近ヒップホップにハマっています"とか言いながら、謎のB-BOY(風)のノリでハチャメチャなコール&レスポンスをオーディエンスに強要する。戸惑いながらも楽しんで乗せられていくオーディエンスの姿も面白く、個性の強さが際立つパートになった。

そして、いよいよライヴもクライマックスというところで、Fukiが今日ここまでほとんど触れてこなかった活動休止について語りかける。

"実は来年の春が10周年でした。ここまでのツアーは楽しいものにしたいと思ってやってきました。みんなには感謝しかないです。"

出てくる言葉はストレートながらも、その姿からは複雑な感情が見え隠れするように感じられた。決定に至るまでも、そして決定してからも、きっと外からは想像もできないような様々な感情や思いがメンバーやその周囲を交錯したに違いない。そんな重みを感じさせながら、 "長い旅を締め括る、この曲を聴いてください"と語り、ニュー・アルバムのタイトル・トラック「monument」をスタート。同時に、オーディエンスたちはファンの有志が配った"サイリウム"を点け、会場を青い光で埋めつくした。圧巻の光景と、サプライズ企画自体に驚くFuki。もっと湿っぽく感傷的になったり、殺伐としてもおかしくない、活動休止前最後のツアー・ファイナルがこうしてファンによって温かい光景に包まれるというのはバンドにとってもオーディエンスにとっても救いになったことだろう。

アンコールでは、公式コメントで自らの発言が休止のきっかけとなったことを公表しているHibikiがストレートに休止に至った自分の気持ちを語りつつも"気持ちとしては力を蓄えてまた戻ってきたい""人間的に成長したところで戻ってきたいと思います"と前向きなメッセージを残し「Upstream Children」で最後を締め括った。

たしかな人気を獲得し、日本のメタル・シーンで大きな存在感を示していた彼女たちがその活動を休止してしまうのは非常に残念でならない。いよいよ活動休止前最後の公演となる緊急追加公演が12月21日に表参道GROUNDで行われることが当日発表されたが、わずか10分でソールド・アウトとなってしまったことは、その人気を裏付けていると言っていいだろう。今回そして、次回のオーディエンスのリアクションが彼女たちの決断を良い意味で影響することを願って止まない。

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