INTERVIEW
DEVILOOF
2024.01.24UPDATE
Member:桂佑(Vo) Ray(7strings/Vo) 愛朔(7strings) 太輝(Ba) 幹太(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
より解像度の高い音を届けられてるんじゃないかな、と思います
-Rayさんがこの曲のギター・パートを構成されていく際、心掛けられたのはどのようなことでしたか。
Ray:「Song For The Weak.」に関してはイントロでオクターバーというエフェクターを使っていて、これをDEVILOOFのリフで使うのは初めてでしたね。弾きながら、自分でもほんとに"新しいことをやっているなぁ"という実感がすごくありました。さっきの太輝の話と一緒で、僕もそういうルーツは音楽的に持ってなかったんですよ。だから新鮮だったし、やってみたら楽しかったです。あとはめっちゃ細かい話をすると、ギター録りは前までパソコンでプラグインを立ち上げてやってたんですが、今回は去年録った「Everything is all lies」以外はすべてアンプ・シュミレーターを通して録る、っていうことに挑戦してます。より解像度の高い音を届けられてるんじゃないかな、と思います。
-Rayさんのギターの音は歪んでいてヘヴィな音になっているのは間違いない一方で、決してグシャッと潰れた音にはなっていないところが素晴らしいですね。
Ray:自分で言うのもなんですけど(笑)、最近よくギタリストの先輩とか、仲良くしてる人から"お前の弾くフレーズ、めっちゃ芯のある音やな"って言われるんですよ。いろいろ試してきた成果がいい形で音に出てきてるんかな、とは思ったりしてます。
愛朔:イントロのあの飛び道具を使ってるところはたしかにちょっと難しいし、 シンプルに聴こえながらも実は細かいところまで音が詰まってるのが「Song For The Weak.」という曲だと思うんですけど、基本的には聴く側だけじゃなくて弾く側とってもかなりわかりやすい曲になってると思いますね。
-さて。ここからは"Song For The Weak."という曲タイトルに込めた想いについてもうかがいたいのですが......これは直訳すれば"弱者のための歌"となるかと思います。なおかつ、この詞の中では桂佑さんにとってのロック・ヴォーカリストとしてのアイデンティティや、なぜこうして歌っているのか? という根源までが表現されていますよね。
桂佑:さっき"ロックンロール本来の意味"っていう言葉が出てましたけど、自分からすると音楽的にロックンロールをやりたいわけではないんですよ。追求したいのはロック・スピリッツの部分であって、それを「Song For The Weak.」で曲や詞という形で表現してみた結果、ひとつわかったことがありました。それは、これまでの自分は伝えたいことをちゃんと自覚できてなかったですね。伝えたいことはあるんだけど、それがなんなのか自分で把握できてなかったというか。
太輝:たぶん、これまでの桂佑君は詞の中身よりも音や曲構成のほうを重視してたところがあったのかもしれないですね。
桂佑:あぁ、それもあるかな。もちろん、作品ごとにテーマはちゃんとあったし、聴いてくれる人に何を届けたいかっていうのもあったんです。ただ、今回は伝えたいことの核が自分の中で明確になりました。今までそんなに意識してなかったんですけど、俺の中には"音楽で成功して、俺を見下してきたやつらをギャフンと言わせるんや!"っていう野望とか"音楽で世界を平和にしたいんや"っていう気持ちが、実はロックンロール・スピリッツとして存在してることに初めて気づいたんですよね。
-それは大きな変化ですね。
桂佑:自分の中でずっと何かがくすぶってるというか、何かに火がつきそうな感覚は前からあったんですけど、ようやく火がつきました。自分は好きだから音楽をやってるんやって思ってましたけど、それだけじゃなかったんですよ。"なんで音楽をやってるんや?"って改めて自問自答したら、自分の中には"のし上がってやる!"っていう野望があったし、弱者救済というわけじゃないんですけど、いろんなことでつらい思いをしてる人たちに対して"負けんといこうぜ!"って音楽で伝えたい、という気持ちを持ってることに気づいたんです。
-「Song For The Weak.」とは、そのような意味だったのですね。
桂佑:自分の家庭環境の話とかをしちゃうと、別にそんな裕福でもなかったし、どっちかっていうと貧困なほうだったんで、子供の頃から雑草精神みたいなのを持ってたところもあるから、どんなときでも"負けねぇぞ!"っていう気持ちはずっと自分の中にあるんですよ。それを自分個人のこととしてじゃなくて、似たような境遇の人たちもたぶんめちゃくちゃいると思うんで、ここから一緒に戦っていこうぜ! っていう気持ちを「Song For The Weak.」では伝えたかったんです。
-そうなってくると、歌そのものに対する向き合い方も自然と変わってきませんか。
桂佑:変わりました。レコーディングに関して言うと、「Song For The Weak.」は英詞なんで発音矯正はめちゃくちゃ頑張りましたね。あと、ライヴでは最近"ちゃんとお客さんたちを楽しませなあかんな"っていうプロ意識が前よりもさらに強まりました。
-ところで、今作では2曲目に既発曲「Everything is all lies」が位置していて、そのあとにはサントラ的なインタールード「Living Hell」を挟みつつ「Execution」へと繋がっていきます。こちらはRayさん作曲で、太輝さんが詞を手掛けられておりますね。
Ray:桂佑さんから今回のEPのコンセプトについて聞いたときに、縦ノリ重視のニューメタルコアな曲を作ってほしいっていう感じやって、でも僕はそのニューメタルコアっていうものがそのときはよくわかってなくて。何回かやりとりをして"これは違う、これも違う"ってなりながら、最終的にできたのが「Execution」です。
-この曲はベースが相当ゴリゴリでかっこいいです。
太輝:ゴリゴリですね(笑)。ベース始まりでベース・ソロもあります。かなりベース重視で、まるでベーシストが作ったみたいな曲になってるなと思いました。
幹太:この曲は縦ノリになってるスネアの位置のせいか、そこまで速くは聴こえないかもしれないですけど、実はBPMで言うと210あるんですよ。だから、聴いた感じよりきっとドラムの難易度は高いですね。レッテル自体は少ないんですけど、レッテル内の展開は多くて細かいです。
-「Execution」はRayさんのギター・ソロも聴きどころのひとつですよね。
Ray:マジでこれは曲そのものが自分としては初めて作った感じの曲調だったんで、ソロも自分なりの解釈をしながら、これに似合うのはどんな感じのソロかな? と想像しながら当てはめていって、結果的にこういうふうにできあがりました。ベース・ソロとリレーっぽくなってるところがあるのは、ハードコアの要素も欲しかったからですね。
幹太:このギター・ソロ、俺めっちゃ好きやねん。なんかお洒落。
愛朔: あと、ギターもいいんですけど、この曲はやっぱRay君の出してるクリーンがいい声してるなぁ! とつくづく思いましたね。
-なお、「Execution」も英詞となりますが、この中には訳すると"国民皆保険"という単語が出てくることに個人的に衝撃を受けました。DEVILOOFがここまで現実的に社会を描写した歌詞を歌うバンドだとは、あまり思っていなかったのですよね。
太輝:今回のテーマは"弱者"やったんで、この曲でも詞は弱者の視点から社会の強者に対しての反骨精神を、いわゆる詩的なものとしてではなく、具体的な事例を挙げながら理路整然と書いてく、っていうことをしてみました。怒りに任せて社会のせいや! 大人が悪いんや! っていうふうな詞にはしたくなかったし、その意味では無知なのにただ吠えてるやつに対するアンチテーゼもここには入ってます。
-いやはや、DEVILOOFは実に"ちゃんと"しているバンドですね。今作はラストを飾るRayさん作曲のインスト「Labyrinth」も含めて、トータリティとコンセプト性のあるミニ・アルバム的作品として見事に仕上がりました。そして、ここからは2月11日のワンマン"SONG FOR THE WEAK"を経て、5月から6月にかけては南米ツアーも始まっていくことになりますので、最後にそちらに向けた抱負もぜひお聞かせください。
Ray:初めて行く場所なので、個人的にはご飯とか楽しみだったりしますけど、南米は治安があんまり良くないとも聞くので、無事に行って帰って来られるようにしたいです。でもライヴ的には、韓国("Jeonju Ultimate Music Festival 2023")と台湾("萬聖重音祭 HELL ALWAYS WIN PARTY")で音楽ってまったく言語は関係ないんやな! っていうことを学習してたんで、南米のみんなの反応も今からめちゃくちゃ楽しみですね。
愛朔:俺もすごい楽しみっすね。旅行に行ける! 的な感じでわくわくしてるところもあるんでけすけど、とにかく向こうでやりまくってきます!
桂佑:アジア圏内でさえ上手くコミュニケーション取れなかったり、フロントに立つ人間としてはいろいろ歯がゆい思いをしたんですが、今回もできる限りの準備はしつつ、ベストを尽くしたいと思います。まぁ、不安もありますけど、今はそれでも楽しみのほうが大きいですかね。特に南米はメタル人気が高くて"熱い"って聞いてるんで。
幹太:僕も心配なのは言語だけです。演奏はいつも通りに全力で自分にやれることをやれるだけですから。演奏するまでのセッティングとか、そのへんでのやりとりが台湾のときは思ってた以上に大変やったんで、そこだけなんとかできれば大丈夫やと思います。
桂佑:ほんまに? 俺、あんきも(Unlucky Morpheus)のメンバーに"海外はウォシュレットないからボラギ○ール持ってけ!"って言われたけど。持ってかなくても大丈夫かな(笑)。
Ray:ウォシュレットだったら旅行用の売ってるよ。
幹太:ちょっと、激ロックでなんの話してるん(笑)。
-あはは(笑)。では、最後は太輝さんに締めくくっていただきましょうか。
太輝:本来であれば、コロナがなければ南米は一昨年に行く予定やったんですよ。今回はそのリベンジをしてきたいですね。とりあえず、諸先輩方のアドバイスも参考にしたうえで、海外でのライヴは現場で何が起こるかわからんし、何ひとつ予定通りいかない可能性がある、っていうくらいの心構えも持ったうえで臨みたいと思います!