INTERVIEW
唯丸®(BLACKSHEEP SYNDROME.)× 田中 聖
2021.05.11UPDATE
2021年05月号掲載
BLACKSHEEP SYNDROME.:唯丸®
田中 聖
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by 新倉映見
取材場所:WONDER BOWL
バンド・メンバーにいつも言うのは、失敗してもいいし、ケツは全部俺が拭くから、とりあえず楽しんでくれって(田中)
-そういう表面的な見方をされて、反骨心が芽生えるのは、田中さん自身も経験していますか。
田中:そうですね。アイドルのくせにって言われるのはすごく嫌いだった。
唯丸®︎:それ、すごくわかります。
田中:アイドルの何を知ってるんだっていうね。これはずっと言っていたんですけど、アイドルって白鳥みたいなもので。水面から見えているところはきれいで優雅だけど、水面下では足を思い切り掻いてる人でなきゃいけないと思うんですね。失敗も、なかなかできないし。バラエティ番組に出ればお笑い芸人さんと同じレベルを求められるし、テレビドラマに出れば俳優さんと同じレベルを求められるし、音楽番組に出ればミュージシャンと同じレベルを求められる、すごく大変なところにいる人たちだと思うから。俺はそれがキツかったから、唯丸®︎君がそこに飛び込んで戦っているのは、リスペクトだなって。
唯丸®︎:ありがとうございます。やりたくないことだらけなんですけどね(笑)。でも、嫌々やっているわけではないので。
田中:楽しいんだもんね? だったらそれでいいと思う。別にある程度名前が売れてきたら、ライヴでギターを弾いたっていいわけだし。
唯丸®︎:そうですよね。これまではずっとバンドでギターを弾いてきて、それこそバンドもやりたいって今でも思ってますけど。僕は何よりずっと歌いたかったんですよ。
田中:ヴォーカルで。
唯丸®︎:はい。それがバンドではなく、アイドルで歌うとなりましたけど。今とても楽しいですし。あとはやりたかった声の仕事もやれていたりもして。昔はバンドで売れたい思いがあったんですけど。今は、好きなことをやって、あとは猫を愛でながら暮らしたいなっていう。
田中:それでいいと思う。俺も、あまり大きな贅沢をしたいと思っていなくて、俺と俺に関わる人がある程度幸せだったらそれでいいかなって考えてるかな。
唯丸®︎:僕は今もヴィジュアル系バンド時代に知り合った方々と一緒に仕事をしているんです。マネージャーをしている彼とはバンド時代からもう10年くらいの仲で。
田中:腐れ縁だ。
唯丸®︎:彼は先にバンド活動をやめていて、いろんな人のマネジメントの仕事もしていたんですけど、今はうちのマネージャーをやってくれているんですよね。ヘアメイクさんもバンド時代からの知り合いだし。そういう昔からお付き合いのある方と一緒に今もやれているのは、幸せな環境だなっていうか。
田中:人の縁は、一番の財産だと思う。俺もいろんなことあったし、いろんなことやらかしてきたけど、助けてくれたのはやっぱり人だから。自分だけではどうしようもなかったし。唯丸®︎君にそうやって人が周りに集まってこれるのは、自分の力だと思うからね。
唯丸®︎:僕、嫌いな人や先輩っていうのがいなかったんですよ。
田中:すごい!
唯丸®︎:何をされても嫌いになるというよりは、ネタにできると思ってたし。
田中:それは人として大きいわ(笑)。俺は"こいつ、ここじゃなかったら殺してるからな"ってずっと思っている人間だから。
唯丸®︎:もちろんそういう感情があった時期もありましたけど、今振り返ればおもろいなって思えるんですよね。
田中:俺はいじめてきたやつの顔も名前も、やってきたことも全然忘れないけどね。ただ俺も思うのは、俺昔いじめられていたんだけど。中2くらいのとき──これは、いじめられっ子がキレるっていう一番危ないパターンなんだけど、気づいたら椅子を持って立ってて、いじめてたやつが床に転がってるっていう状態だったことがあって。20代後半になって、俺をいじめてたやつと偶然会ったんだよね。そいつは俺にしたこと全部は覚えていなかったけど、"謝りたかった"って言われて土下座されて。いや、そういうのいらないっていうか。"逆に、してくれてありがとう"って俺は言ったんだよね。それがあったから今、楽しいも嬉しいも、幸せも感じられてると思うから。それがなかったらきっと、今も楽しい嬉しい幸せっていうプラスの感情はないままだと思っていて。今の自分を作ってくれた人だと俺は思ってるから。そういう意味では、考え方は似てるかもしれない。
唯丸®︎:そうだったんですね......。聖さんは音楽をしているとき、特にライヴをしているときっていうのは、どういう感情がありますか。僕は、ライヴをしてるときは、超楽しいという感覚しかないんですけど。
田中:それはもう、超楽しいだし。あとは今年36歳なんだけど、12歳から今日まで、人への気持ちの伝え方は音楽しか知らない、エンターテイメントしか知らなかったから。その前はいじめられていて、内にこもっていたしね。だからムカつくも寂しいも、音楽でしか伝えられないんだよね。ライヴの根本は楽しいしかない。けど、結構歌としては"マスコミこの野郎"みたいな歌も歌ってるし(笑)。"パパラッチ死ね"みたいな歌を歌ってる。作っているときは死ねこの野郎って思ってるとか、曲によって感情は違うけど、根っこはたぶん楽しいでしかないのかな。もうほんと、どんなセックスよりも気持ちいいしと思うしね。
唯丸®︎:僕も同じような感覚ですかね。楽しませようとかよりも、自分が楽しくなって、お前たちも楽しいじゃんっていう感覚が強いです。
田中:それが一番だと思う。バンド・メンバーにもいつも言うのは、失敗してもいいし、ケツは全部俺が拭くから、とりあえず楽しんでくれって。俺らが楽しんでないと、お客さんも見ててわかるからっていう。失敗してもいいから、楽しもうと。それは言ってる。
唯丸®︎:そう! それはずっと僕がメンバーにも言い続けていることなんですけどね(笑)。聖さんからも言ってほしい。今の話聞かせたいな。
田中:やっぱり、ちょっと嫌だなとか、昨日女とケンカしちゃったんだよなとかっていうのって、ライヴに出るしね。だから、ライヴの日は女とケンカしてこないでくれって言ってる(笑)。せめて前日に仲直りしてから来てくれって思ってる。
唯丸®︎:(笑)今後、こういうことをやりたいという願望ってありますか。
田中:ずっとあるのは、地元に自分用のスタジオを作りたいことくらいかな。あとは遠い先にある、大きな話だけど、地元の一番お世話になっているライヴハウスを俺が買い取ろうと思っていて。それは、そのライヴハウスの店長にも、もう伝えてる。
唯丸®︎:いいですね、それ。やっぱり音楽なんですね。
田中:忌野清志郎が、音楽で飯を食いたいとか、こういうビッグな音楽家になりたいっていうより、バンドマンでありたいっていうのが夢だったって言っていて。俺もそうだなって思うんです。だから、これをやりたいっていうのはあまりないんですよね。すごく小さいことでは、バイク欲しいとか車欲しいとか、サバゲー行きたいとかはあるけど(笑)。
唯丸®︎:僕は1個だけあるんです。武道館でライヴをやりたいっていうのが、夢で。それは絶対に叶えたいんです。
田中:武道館は音楽家にとって聖地だからね。俺もアイドル活動を含めて武道館ではやったことがなくて。
唯丸®︎:意外。
田中:だから、夢ではあるし、見てみたい景色ではあるかな。武道館でライヴをやったっていうのは自分の人生の、1個の大きなお土産になるもんね。
唯丸®︎:お土産っていいですね。じゃあ、やります!
田中:そこに行くための逆算のルートを考える──こうやって人を集めてとか、考えていくのも楽しいと思う。
-そういう人を集めるということで、何か積極的にやっていることはありますか。
田中:これはYouTubeでも言ってるんですけど、俺YouTubeは売名でやってるので。昨年から始めたんですけど、YouTube観てファンになったとか、ライヴに来るようになったという人もいるので。それをやって、たとえ5人でも10人でも来てくれるのであれば、俺としてはプロモーションとして成功でもあるんです。そういうことはやっていこうかなっていうか。今は、才能が埋もれづらい時代だし、YouTubeだったりツイキャスだったり、発信する場があるので。パッと思いついたことはとりあえずやってみよう、無理だったらやめようっていうくらいの感じですね。
唯丸®︎:僕らはグループみんなでこれをやろうというよりは、各々で、何かをやり続けようという感じなんですよね。そのほうが、個人個人の色も出るしいいのかなっていう。
田中:向き不向きがあるからね。
唯丸®︎:僕の場合は、ゲームの実況配信ですね。自分のラジオ番組を持ったのもありますけど、声の仕事は今後もやっていきたいなっていうのがあります。
田中:もしかして、ゲーム実況配信は顔出しせずにやってるの?
唯丸®︎:そうですね。
田中:すごいな。アイドルって顔出してなんぼだからね(笑)。
唯丸®︎:実はこのグループの最初のアー写も、顔出ししてなかったんですよ。
田中:そういうのもいいと思う。アイドルの世界にいて、アイドルっぽくないことで天下取れたら、最強だと思うしね。いいね、いろいろなものをぶっ壊そうとしてるし、戦ってる感じで。
唯丸®︎:僕らはメンズ地下アイドルというシーンにいるんですけど、そこでシーンのファン層に合わせてしまうと、ありきたりなアイドルになるなって思うので。違ったことをしたいなって考えてます。そういえば前に、聖さんのYouTubeで"Dead by Daylight"の実況配信をしてたじゃないですか。
田中:昨年やり始めたんだけど、シンプルだけど奥が深いゲームだよね。
唯丸®︎:僕も"Dead by Daylight"やってるので、誘ってもいいですか。
田中:やりたい! いつでも言って。
唯丸®︎:やった。じゃあ、後ほどIDをぜひ交換しましょう!
BLACKSHEEP SYNDROME.
LIVE INFORMATION
"東京『黒』FES vol.2"
7月3日(土)USEN STUDIO COAST
"ワンマンライヴ"
12月9日(木)中野サンプラザ
田中 聖 INFORMATION
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