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INTERVIEW

FABLED NUMBER × 田中 聖

2021.09.21UPDATE

FABLED NUMBER × 田中 聖

11月21日、下北沢のライヴハウス12会場を使ったイベント"FABLED NUMBER presents『DIE ON ROCK FES 2021』~東京の陣~supported by SNAZZY TUNES"が、そして、10月3日には千葉柏のライヴハウス6会場にて"田中聖×SNAZZY TUNES presents『無礼男-Bremen-』"が開催される。激ロックではこのたび、それぞれのイベントを主催するFABLED NUMBERと田中 聖による座談会を実施! ライヴハウスを主軸に活動する両者が、今あえてサーキット・フェスを自ら行うにあたっての、熱い想いと覚悟をぶつけてもらった。

FABLED NUMBER:N'Eita(Vo/Gt) N'Taichi(Ba/Cho)
田中 聖
インタビュアー:吉羽 さおり


地元を盛り上げたい。ライヴハウスだけじゃなく、今は全業界が大変だけど、 自分が手を伸ばしてどうにかなるところは、全力でなんとかできれば(田中)


-"DIE ON ROCK FES"は東京では初開催ですね。FABLED NUMBERとしてはこのイベントはいつ頃、どんな感じで立ち上げたものですか。

N'Taichi:もともとは大阪限定で5年くらい前にスタートしたイベントで。特に定期的にというわけでなく、いい感じに仲間と繋がってきて、これを呼んで、あれを呼んでとやったらいい感じになるんじゃないかと思ったときに、やろうぜって感じだったんです。今年初めて大阪を出て、4月に名古屋の2会場で開催して、11月に下北沢で、12会場でやるという、年2回開催は初めての試みで。しかも"DIE ON ROCK FES"史上一番規模が大きいものをというのは、今の時期ならではの発想でした。逆境をチャンスにしようと。それはマネージャーの(鈴木)慎哉さんが、"ちょっと狂ったことを言うかもしれないけど──"ってLINEを送ってきたのが始まりだったんですけど。

N'Eita:総勢100組で、昔からゆかりあるバンドと最近交流があるバンドから、今回初めて出会うアーティスト、アイドルまで含めているんですけど。バンド主催のサーキットはなかなか少ないと思うんですけど、僕らが先頭となって、どのバンドもただ参加するだけじゃなくて、しっかり一体となって、みんながいい1日を過ごしてほしいなって思いますね。今は参加してくれることがすごくありがたいので。

-このタイミングでイベントをやろうというのは、コロナ禍であまりライヴなどができなかったからこそというのが大きいですかね。

N'Taichi:僕らはまだライヴをやれていたほうじゃないかと思いますね。ライヴをしなくても、普段からメディアにガンガン露出をしている人は、ライヴはお休みして安全を第一にという流れができると思うんですけど。僕らはそうじゃないのはわかっているし。ライヴをすることでの発信が、今のところは大きな流れを作れる動きのひとつやと思うので。そう考えていくとライヴを打つことが重要っていうのは、コロナ期間でよくわかりましたね。だからこそ、ライヴは前のめりにやろうという姿勢で進んできた感じです。

-それでも下北沢12会場でというのは、バンドの企画としてはかなり大きなスケールとなりますね。

N'Taichi:会場の数だけ聞いたらすごいなって、自分でも思うんですけど。この時期に感染対策を徹底して、多会場でやるということで、ライヴ・イベントは危険なものじゃないんやでって発信できる、ひとつの指標になったらいいなと思うところも個人的にはありますね。そこで感染者が出なかったとか、今のライヴのあり方、マナーやルールを守りながらその1日を通したという結果、既成事実を作ることも今やからこその大事な一歩で。それを行動で示していくというのはありますね。

-田中さんは10月に地元柏でサーキット・フェス"無礼男-Bremen-"を開催します。こうしたイベントを主催するのは初ですか?

田中:サーキット・イベント的な大きなもの、自分のツアーではないものは初かも知れないですね。漠然と地元を盛り上げたい、大きいことをしたいっていうのがひとつで。柏には大先輩のバンドでヌンチャクさんがいるんですけど、ヌンチャク以降地元のロックがあまり盛り上がってねぇぞってなって(笑)。なんかしようっていうところがスタートでした。

-以前は、柏と言えばハードコアのメッカというイメージがありましたね。

田中:そうですね。柏って結構恵まれていて、駅前のデッキもストリート・ライヴをするのが認められている場所があって。

N'Taichi:へぇ~。

田中:今回のイベントではそこは使わないんですけど。そうやって音楽をやるうえで恵まれている環境なんだけど、イマイチ盛り上がってないなと思ったので。神輿を担ぐ人が必要なんだろうなと。

-ライヴハウスをというより、街全体として盛り上げるみたいな。

田中:自分が言うのはおこがましいですけど、柏を盛り上げたいと思ってます。

N'Taichi:柏の観光大使になりたいって思ってんねんな。

田中:駅前に銅像立てさせてやろうっていう(笑)。

N'Taichi:はははは(笑)。

田中:あとは単純に、ライヴハウスもいっぱいあるのに、もったいないなって。ずっと地元を盛り上げたいというのは、漠然と思ってはいたんですけど。動こうと思ったのはコロナ禍に入ってからで、何がきっかけだったかというと、同じく柏出身で"SNAZZY TUNES"を主催する鈴木さんと話していたときに、"僕もイベントをやりたいです"みたいなことを言ってくださったので。じゃあ一緒にやりましょうよっていう感じでした。鈴木さんが言ってくれなかったら、もしかしたら漠然と思っただけで終わっていたかもしれないです。そういう意味ではすごく助かったというか、背中を押してもらった気がしましたね。

-地元も大変な感じになってるなというのは、暮らしていても肌で感じているところですか?

田中:ライヴハウスもそうですけど、知り合いの飲食店からも、助けてくれっていう声が聞こえていたりもするので。ライヴハウスだけじゃなく、今は全業界が大変だけど。自分が手を伸ばしてどうにかなるところは、全力でなんとかできればっていうのも大きいかもしれないですね。

-両者共にライヴハウスの現状、そこの危機感というのは、ライヴハウス基盤でやってきたからこそ肌でわかるところもありますね。

N'Taichi:実際世話になってきた大阪のアメ村界隈のハコの人らと直で連絡を取っていると、ライヴ自体が減っているので。あえて今ライヴハウスはちゃんとやれているということも外に発信していかないと、今後、廃れていったものとしての扱いになっていくんじゃないかという話も出ているんです。力になれるところはもちろんなりたいし。ただ、僕らもライヴ本数が限られているなかでの活動にもなってきているから、歯がゆいところでもあったりするんですよね。出たいけど、以前よりフットワークは少し重くなってしまっているので。でも、結局なんや言うてもしゃあないから、やっていくしかないなっていうことにいつも話は行き着くので、ほんまに力になれたらいいなと思いますね。街全体といったら大げさかもしれないですけど、せめて自分たちが世話になったハコの界隈はやっていかなだめだなと。

N'Eita:今はライヴハウスの日程がなかなか埋まりにくい状況で。こうしてイベントで1日全会場を使うのは、ライヴハウスもありがたいと思うし、僕らも使わせてもらってありがたいし。出演するバンドも今はイベント数が少なくなってきているなかで、自分たちが成長できるような場所がひとつ、僕らからだけでも作れたらなっていうのは発想としてありましたね。

-この先にどう繋げていくか、音楽、ライヴ・シーンをどう継続していくか、今すごく大事なところでもありますね。

N'Eita:聖君みたいに地元を盛り上げようっていう気持ちと、それを支えてくれる人がいて。僕らも今回の"DIE ON ROCK FES"は、マネージャーの鈴木慎哉含め"SNAZZY TUNES"が一緒に手伝ってくれるとなって、僕らは自分たちのキャリアもあってやれる環境に置かれていたと思うんですね。聖君は"田中 聖"として動ける力があって、僕らはメンバー脱退はありましたけど、新メンバーが加入して、やろうぜって前向きな気持ちやモチベーションを作れている、周囲を巻き込んでやれる環境があるのはすごくありがたいし。やらなあかんやろうっていう気持ちも強いですかね。

-たしかに、理想を描くだけでなく、実際に動き始める、具体化していくって大事ですね。

N'Taichi:イベント1日で何が復活すんねんって話ですけど、1日を終えたときに、まだ俺らも頑張ってかなあかんなっていうのを、かつての仲間や、もうダメかなと思っていた仲間が少しでも思ってくれて、状況が良くなってくるときまで、しっかり繋いでおいてほしい気持ちはありますね。救ってあげるとかそんな大げさなことじゃないけど、楽しかったときの気持ちをもう一度取り戻す。そんな瞬間がイベント中にあったらなっていう。その瞬間が多かったら嬉しいなっていう感じですかね。

-田中さんはこれまで先輩のバンドと一緒にやることも多かったと思いますが、自分が旗振りになる番が来たなという思いも?

田中:でも、みんなバカだからバンドマンやってるわけで(笑)。なのに、一丁前に悩んでるのでね。

N'Taichi:まぁな(笑)。

田中:楽しくやろうよっていうのが一番で。そんなに考え込まないでも、俺らがパワーを貰っていたあの音楽のパワーって、ウイルスくらいではたぶん死なないので、その音楽のパワーをもう1回感じてほしいというのが、デカいかもしれないですね。

-フェスやイベントなど、たくさんバンドが出るようなライヴの良さ、面白さはどういうものですか?

田中:俺の中では、いつも助けてくれるファンももちろんいるけど、やっぱりアウェイでもあると思うので。勝負に出ていくというか。楽しいですね、単純に血が沸くというか、たぎります。

N'Taichi:ラウド中心とか、ギター・ロック中心とか、イベントの内容にもよると思うんですけど、自分たちの土俵以外のところ、その界隈の人らが多いところにいくと戦いに行くっていう気持ちがより強くなって──まぁ、それで空回りしたりもするんですけど。

田中:めっちゃわかる。

N'Taichi:転換中に、これ人が来ないんじゃないかっていう多会場、多バンドのイベントの独特の緊張感みたいなのがあるんです。あれが嫌いでもあるけど、ちょっと好きかもしれんっていう(笑)。アーティスト目線ですけど、独特なんですよね。お客さんからすると、普段自分が聴かないバンドやジャンルに一歩足を踏み入れる機会になるっていうのは、あるとは思いますけど。

-コロナ禍でイベントがあまりできなかったこの1年半は特に、これからという若いバンドたちがかわいそうだなと思うんですね。イベント出演が名をあげるチャンスになるし、いろんな人に観てもらえる。その場がなくなっていた時間だなというのがありますね。

田中:みんな、いろんな理由での心の折れ方をした時期だったとも思いますね。やっぱり辞めてっちゃった仲間も多かったので。

N'Taichi:うん、多かった。

田中:それを引き止められないし、何もしてあげられないことも歯がゆくて。残っているほうも、心的にはきつかったですよね、ここ1年は。

-ライヴができる場を生むということは大事ですね。

N'Taichi:今までやってきたことが形になって表れるというか、バンドの強さというか、それが真に問われているんじゃないかなって思うようにしてます。辞めたいと思う気持ちも十分わかるし。今までやったら、せっかくいい感じなのになんで辞やめんねんって思っていたけど、少なからず、自分自身もこの状況下でさあどうやっていけるかという不安も正直あって。そのなかで今やからこそ、今までやってた気合みたいなんを、一番出さなあかんときなんじゃないかなって思ってるんです。

田中:うん。

N'Taichi:それで今踏ん張って歯を食いしばってやってる仲間を集めて、ひとつ、下北沢でデカいことやるっていうのがコンセプトというかね。新しい繋がりももちろんですけど、コロナ禍になるもっと前から戦ってきた仲間はできるだけ呼んで、もう1回俺たちの世代というか、聖君含め、これを乗り切った先にあるものを一緒に見ようかなって思います。

田中:助けてあげるっていうようなおこがましい気持ちではないですけど、それこそ若い子たちのチャンスになれればなとも思うし。仲間に、心折れないでくれよっていう俺なりの伝え方でもあるので。ほんと、コロナ禍になる数ヶ月前にステージでバッチバチにケンカしていたやつが辞めるとかしていたので、俺ができるやり方で、伝えるというか。

-大きなイベントということでバンドとして腹をくくってやるのももちろんですし、ちゃんと成功させよう、次に繋げていこうと、いつも以上に意味が加わっている気がします。

田中:それはありますね。これでもしクラスターを起こしてしまったら、逆効果になってしまうので。できる対策をきちんとやって、あとはそれまでに俺がコロナにかかってしまっては意味がないので、普通にサーキットをやるよりは緊張感、責任感が違うと思いますね。