INTERVIEW
Mary's Blood
2020.09.04UPDATE
2020年09月号掲載
Member:EYE(Vo) SAKI(Gt) RIO(Ba) MARI(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
原曲のアーティストの方々にリスペクトの気持ちを持ちながら向き合っていった
-それから、今作の1曲目についても改めてお話をうかがいたいと思います。先ほども以前ライヴではカバーしたことがあるというエピソードが出てきていた「ペガサス幻想」には、なんと今回オリジナル曲を演奏されていたMAKE-UPのヴォーカリスト NoBさんがゲスト参加をされております。これはどのような経緯で実現することに?
EYE:実はもう10年近く前のことではあるんですけど、私はNoBさんにボイトレをお願いしていたことがありまして。その後、NoBさんが参加している"うるさくてゴメンねBAND"のライヴに出させていただくことになるんですが、もともとそのバンドはNoBさんとカルメン・マキさんがツイン・ヴォーカルだったのに、マキさんの後継ぎが決まらないとのことで、オーディションを受けたら採用していただけて。気づけばその女声パートを私が歌うことになっていったりしたんです。
-いやはや、カルメン・マキさんに次いでの2代目ヴォーカリストとはすごい!
EYE:それ以来、何かとNoBさんとはご一緒する機会が増えていったんですよ。そして、最近もNoBさんが現在やられているDAIDA LAIDAのライヴにゲストで呼んでいただく機会があったんですが、それがNoBさんのバースデーのライヴだったんですね。そのときに"今度は私のバースデー・ライヴにも出ていただけますか?"とお願いしたところ、今年の1月に実際に来ていただけまして、そこでまさに「ペガサス幻想」を一緒に歌わせていただいたんです。私が歌おうとしたところで、NoBさんが登場! という流れで歌っていただいたんですよ(笑)。
-なんとも素敵な胸アツ展開ですね。
EYE:しかも、その頃はちょうど『Re>Animator』の話も出ていたころだったので"アルバムにも参加していただけたら嬉しいです"とお話をしたんですね。そうしたら、幸いにもOKをいただけたんですよ。私としては、ここでひとつ夢が叶いました。
-師弟対決をしてみてのご感想をお願いします。
EYE:いやいや、そんな、対決だなんて(苦笑)。私はNoBさんの弟子なので、今回はツイン・ヴォーカル形式で精一杯歌わせていただいただけです。遜色なく歌えていたらいいな、という気持ちですよ。
-MAKE-UPの「ペガサス幻想」は、34年も前にアニメ・ソングとヘヴィ・メタルの要素を見事に融合させていた楽曲ですから、それを今回Mary's BloodがNoBさんご本人と共演することでかたちにできたというのは......とても意義深く、感慨深いことだと感じます。
MARI:このメタル・アレンジは叩いていてすごく楽しかったですね。バック・ビートが倍にしてあって、ツーバスもたくさん踏んでいて、キメも多く入れているので、それがすべていいフックになっていると思います。
SAKI:ちなみに、これは原曲よりも1音上げなんですよ。それなのに、最初からこのキーだったんじゃないか? というくらいのすごい歌をNoBさんが聴かせてくださっていることに驚きます。すごいですよね。ご一緒させていただけて感激しました。
RIO:ちょうどレコーディングのときは緊急事態宣言の出ていた前後で、最少人数での作業をしなくちゃいけなかったために残念ながら現場には立ちあえなかったんですけど、私としてもこれはとにかくできた音を早く聴きたくてしょうがなかったです。
EYE:私が歌を録っていたのが緊急事態宣言中で、NoBさんには明けてからすぐ録っていただく流れだったんですよ。もちろん、いずれも政府のガイドラインに沿いながらの録りだったんですが、そんななかでも力を貸していただけて本当にありがたかったです。
-そうした極めてメタメタしい楽曲が聴ける反面、今作でのMary's BloodはX JAPANの「Forever Love」(アニメ映画"X"主題歌)で壮大なバラードにも挑戦されています。こちらの楽曲をレコーディングしていくのにあたり、意識されたのはどんなことでしたか。
SAKI:どの曲にも言えることなんですけど、カバーをさせていただくうえでは原曲を作っていらっしゃるアーティストの方々に対してのリスペクトの気持ちを持ちながら向き合っていったので、「Forever Love」についても私たちのその思いが伝わるようなものにしたいな、ということを何よりも意識していましたね。特に、この曲に関してはほぼ原曲に対して忠実なアレンジになってます。バラードだけに繊細さも必要だったというのもあり、ギター・ソロもすごい真面目に弾きました。こんなに真面目に弾いたことがあっただろうか、というくらいに(笑)。
EYE:私も、この曲を歌うのはちょっと緊張しましたね。原曲キーでそのまま歌ったんですが、今回改めて気づかされたのはToshlさんのすごさです。女の私が歌っても、このキーはなかなかキツいですから(苦笑)。バラードですけど本気で歌うとすごく消耗もしますし、ニュアンスの出し方も難しくて、これはToshlさんのために綿密に計算されて作られた曲なんだろうなということが歌ってみてよくわかりました。だから、この曲を歌う前にはToshlさんの発声を自分なりに研究しましたし、そこで得たことと自分の歌い方をバランスよく同居させていくように録っていったんですよ。聴いてくれるX JAPANのファンのみなさんに"こんなカバーじゃダメでしょ"とは思われたくなかった気持ちもありますし、名曲中の名曲だけにとにかく頑張りました。
-リズムの面でも、「Forever Love」はくっきりとしたビートではなく絶妙な間合いを生かしていく必要があったはずです。きっと、他の楽曲とはまったく違う取り組み方が要求されたのではありませんか。
MARI:Mary's Bloodのレコーディングでは、この曲で初めてブラシを使うことになりました。原曲では使われていないんですけどね。でも、この曲のバラードならではの質感をさらに引き立てるためにはブラシが適しているんじゃないかと思ったんです。スティックで叩いたものと比べてみてもブラシのほうが良かったですし、あえてハイハット類も間引くことで「Forever Love」の世界を表現しました。私にとっては、音楽やドラムを始めたきっかけがX JAPANの存在で、ずっとファンでしたから、自分の大好きなバンドの曲を今こうしてカバーできたのはとても幸せです。
RIO:すべてにおいて重みを感じながら、コピー・バンドにならないようにカバーをしていくことが大事でしたね。この曲は。
-ある意味での意外性が強かったという点では、TK(from 凛として時雨)さんの原曲が持つ緊迫感に満ちた雰囲気を押さえつつも、Mary's Bloodならではのダイナミックなバンド・サウンドを体現している「unravel」がとても面白かったです。
EYE:これはRIOちゃんが選んだっていう話をさっきしましたけど、この曲はアレンジが完璧すぎるというかあまりにも隙がなさすぎて、メンバーみんなで"どうしよう!?"ってすごく悩みました。どこからどう手をつけていいか最初はほんとにわかんなかったです。
-そこから道筋を見つけていくうえでは何が大切になっていきました?
RIO:アレンジの数をいっぱい作る(苦笑)。
EYE:"これだ!"ってひらめくまで、作り続けるしかなかったよね。
MARI:これはリズムの時点で何パターンも作りました。最後にやっとハマったものができたときは嬉しかったです(笑)。
EYE:歌い方もねー。TKさんはファルセットを多く使っていらっしゃるんですけど、私はファルセットを使ってこなかったタイプなんですよ。しかも、原キーで、地声で歌うこと自体はできたとしても、この曲に漂っている独特な雰囲気を出すにはそれだけでは絶対に足りなかったので、ファルセットとシャウトも混ぜながら試行錯誤を繰り返して歌っていくことになりました。
SAKI:原曲の持っているあのラウド感は、基本的にMary's Bloodではやらない音像ですからね。でも、そこを意識しながらやってみたら意外と自分にはこんなこともできるんだなという発見がありました。