DISC REVIEW
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造化の三神が織りなす、新たな天地開闢。始動より20年を経たメトロノームは、今作でバンドとしての集大成を見せつけるのではなく、その先へと続く世界を我々に対して提示して見せている。ピコピコな音で彩られたテクノやニュー・ウェーヴの概念、ヴィジュアル系ならではの大胆さを二本柱としながら、絶妙な旋律を擁する楽曲たちが次々と繰り出されていく様は実に痛快だ。力強さも感じさせながら、わびさびがちらりと顔を覗かせる「血空」。ミュージカル音楽的な手法を背景に、ネガティヴ・ワードたちがコミカルに踊る「不安の殿堂」。叙情性と真摯なメッセージ性が交錯したなかで綴られる「おやすみ世界」などなど......。シャラク、フクスケ、リウの3人だからこそ構築し得る新たな宇宙、ここにあり。 杉江 由紀