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INTERVIEW

メトロノーム

2019.11.20UPDATE

2019年12月号掲載

メトロノーム

Member:シャラク(Vo) フクスケ(Gt) リウ(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

希代のはみ出し者バンド。それがメトロノームなのではなかろうか。つまるところ、どのシーンに放り込んだとしても彼らはきっと浮き立つのであろうし、間違いなく際立った存在感を放ってみせるのだ。昨年にはめでたく結成20周年の節目を迎えたなかで、21年目に入ったメトロノームがこのたび世に呈示するのは、"確率論≠paradox"と題された充実のアルバムである。頼もしいロック・バンドとしての基盤を持っていながらにして、テクノから時にはフォークまでをもモチーフにしながら、自在に音を描いてみせる彼らの手腕は、今作においても見事に発揮されていると言っていい。メトロノーム加減が遺憾なく限界突破した1枚がここに完成した!


バンドの音だけでもシンプルにカッコいいものに対して、さらに打ち込みの音を重ねた


-2019年のメトロノームはシングル『Catch me if you can?』を経て、今ここにアルバム『確率論≠paradox』を発表することとなったわけですが、今作に向けての曲作りを始められた段階では、アルバムの作風がこのようなものになりそうであるという予感や予兆を、メンバーのみなさんが感じることはあったのでしょうか。

フクスケ:曲をそれぞれが持ち寄っただけの段階では、まだどんなアルバムになりそうなのかということまでは見えてなかったですね。ただそこから、今回の衣装やヴィジュアル面のイメージについても考えていこうとなったところで、ちょっとスタイリッシュでお洒落なイメージというものが出てきまして。

-たしかに、シングル『Catch me if you can?』のときはバンド史上初の和をイメージした衣装と、特にカップリング曲「さくらん」での和な旋律がシンクロしていて、とても印象的でしたけれど、今回はまたまったく違う方向にシフトされた印象です。

フクスケ:そうなんですよ。アルバムではガラッとそこは変えたいなという気持ちだったので、結果的に今回は音の面でも3人それぞれにとってのスタイリッシュさ、お洒落な感じというのが反映されていったところがあったと思います。

-なるほど。では、少し話は前後しますが、そもそもの楽曲制作の段階で、メンバー個々がどのようなことを意識されていたのかということもぜひうかがいたいです。まずはリウさん、お願いいたします。

リウ:僕は当初6曲を出したんですけど、いずれもサビが抜ける曲といいますか、フックが利いている曲を作ろうという気持ちが強かったですね。これまでの自分は、例えば、最初からずっとテンションが高いままで展開していくような曲を、好んで作ってきたところがあったんですけど、今回はその良さも生かしつつ、よりサビが生きるようにということを意識してました。

-では、シャラクさんはどのようなスタンスで曲作りをされていったのでしょうか。

シャラク:前のシングル『Catch me if you can?』を作っていた段階で、オイラは気持ちの面ですごく吹っ切れたところがあったんですよ。もう別にヴィジュアル系がどうとか、そういうのはどうでもいいやって。

-そいうえば、シャラクさんは前回のインタビュー(※2019年4月号掲載)において"よくそれでヴィジュアル系と名乗ったな。喩えて言うなら、君たちはラーメン横丁みたいなところに我が物顔で店を出しているうどん屋だぞ"と、ある飲み会で人から言われたことがきっかけとなり"あぁそうか。やっぱりこれはヴィジュアル系ではなかったんだ。だったらもう、あれこれ考えずに好き放題やろう"と吹っ切れたとおっしゃられていましたものね。

シャラク:はい(笑)。今回のアルバムの中だと、「テンションゲーム」がちょうどそのことがあったあとに書いた曲で、オイラとしては音だけ聴いたらフェスとかに行く人たちも楽しめるような曲だったり、とにかく純粋にバンドとして自分がやりたいことだったりを、自分の好きなように作っちゃおう! っていうモードで曲作りをしていきました。そういう意味では、今回は特に何も考えずに作った曲ばっかりだとも言えます。普段の自分が好きで聴いている音楽の要素とかも、自然と入ってしまったのかもしれないですね。

-ちなみに、シャラクさんは最近どのような音楽をよくお聴きになっているのですか?

シャラク:KEYTALKさんとか、ドレスコーズさんとか。ライヴがうまそうなバンドさんが好きです。うちもライヴは得意なバンドなので、よりダイナミックなニュアンスを今回のアルバムには入れたかったんですよ。

-ベースについても、「テンションゲーム」ではスラップが炸裂しておりますね。

リウ:うちのバンドの場合ドラムは打ち込みなので、ベースが躍動感を担っていく必要がありますからね。スラップに限らず、すべての面でダイナミックさは大事にしました。

-と同時に、「テンションゲーム」にはメトロノームには比較的珍しいギター・ソロも入っていて、これまたロックなエモみが満載です。

フクスケ:あぁー、そうですね(笑)。あのソロはすごくロックです。というか僕、ソロになるとロックな弾き方しかできないんですよ。

-なお、今作『確率論≠paradox』でのシャラクさんはこの「テンションゲーム」の他にも、「まだ見ぬ世界」と「そうだ手紙を書こう」を作曲されておりますが、ご自身でおっしゃる通りの吹っ切れ感が反映されているからなのでしょうか。どの曲からも、ダイナミックさやある種の"はっちゃけ感"が音に表れているように感じます。

シャラク:そうなんでしょうねぇ。以前は"メトロノームらしいってなんなのか?"とか、"自分たちのいるシーンとは?"とか、結構いろいろと悩みながら曲を作ることが多かったんですが、今回そういうものからすべて解放されてたのが良かったのかもしれません。

-フクスケさんは、曲作りの段階で個人的に何か思い描いていらしたことはありましたか?

フクスケ:さっきも言いましたけど、自分の中ではちょっとしたお洒落な感じとか、スタイリッシュなテクノ感を出せたらいいなという気持ちはありました。とはいえ、自分の書く曲の中でその雰囲気を醸し出していくのは意外となかなか難しくて(笑)。だけど、最後の最後になって「脳内消去」っていう曲ができたときにやっと"これです、これ!"っていう手応えを感じましたね。

-「脳内消去」は有機的なバンド・サウンドと無機的なテクノのテイストが、まさにメトロノームならではの絶妙な手法で、見事にフュージョンされている楽曲であると感じます。この独特なサウンドメイクを実現する秘訣は、いったいどこにあるのでしょう?

フクスケ:この曲に関しては、そもそもバンドだけで音を出したとしてもシンプルにカッコいいものに対して、さらに打ち込みの音を重ねた曲を作りたかったんです。その合わさり方が、これは特にうまくいったんだと思います。

リウ:アレンジやレコーディングをした時点では、自分の引き出しの中から、この曲に最も合いそうなフレーズを自然な流れでつけたつもりだったんですけどね。でも、録り終わって少し時間が経ってから聴き直してみたら、自分が思っていた以上に凝ったベース・ラインになっていて、そこが曲にぴったりハマったなと感じたんですよ。フクスケ君が意識していたというお洒落さみたいなものも、わりと出せたような気がしてます。

シャラク:この「脳内消去」ではお洒落さという意味で歌い方を寄せたとかではないんですけど、気持ち的な面で、岡村ちゃん(岡村靖幸)みたいなニュアンスをオイラはちょっと意識してましたね(笑)。シティ・ポップ、アーバンな雰囲気というやつです。岡崎京子とか読んでる人が好きそうな曲になったらいいなとイメージしながら、レコーディングしました。

フクスケ:作っていたときは具体的な言葉としては浮かんでいなかったものの、まさにこの曲で形にしたかったのは、僕としてもシティ・ポップだったんだって今のシャラクの話で改めて認識しました(笑)。

-なお、このアルバムではインスト曲「ニイチ点時空論」が冒頭を飾っておりますが、こちらはフクスケさんの書かれたものとなります。それこそ、ここではスタイリッシュなテクノ感が具現化されているのではないでしょうか。

フクスケ:これは、今年の9月にやった21周年ライヴ"ニイチ点時空論-解放-"で使ったオープニングSEを、改めて1曲として構成を変えて作り変えたものですね。普段だったらこういうものは音源にしないまま終わってしまうことも多いんですが、今回はアルバムに入れることでちゃんとみなさんのお手元まで届けたかったんですよ。これが入っていることによって、のちのち聴き直したときにも、"これはメトロノームが21周年のときに出たアルバムなんだな"ということを、わかってもらえるんじゃないでしょうか。

-それから、今作には「Hello Stranger」という非常にライヴ映えしそうな楽曲も収録されています。こちらはリウさんの作曲によりますが、この曲が生まれることになった背景についても教えていただけますか?

リウ:これはまさにライヴのことを想定しながら作った曲ですね。いつもやっているライヴの中で感じる一体感の気持ち良さを、さらに増してくれそうな曲といいますか、ライヴに来てくれているファンの方々の期待に応えたいという気持ちもありつつ、以前に作った「PSYCHO-ENEMY」(2007年リリースのミニ・アルバム『サイクルリサイクル』収録曲/現在は配信でリリース中)という曲が、僕が作ったものにしては明るいメジャー・コードで、みなさんから"あの曲が好きです"とか、"あの曲で救われました"みたいなことをよく言っていただくので、それを少し彷彿とさせるような曲として「Hello Stranger」を作りました。

-他にもライヴ映えしそうな曲としては、アグレッシヴさに満ちている「忘れん坊」も特筆すべきものかと思います。おそらく、激ロック読者層にはかなり好まれる音像に仕上がっているのではないでしょうか。

フクスケ:ほんとですか? リズム的には速かったり途中で急にゆっくりになったりと展開がある曲なんですが、ギターに関してはパンクっぽくかき鳴らしていたりもします。簡単に言えば、疾走感のある元気な人がノリやすい曲なんじゃないでしょうか。だけどBメロの、重くゆっくりになるところも僕としては大きなポイントです。

リウ:これのベースは5弦で弾いてます。曲の頭で鳴らしてる、あのデュルルゥヴォンッ!っていう音には特にこだわりましたね。今まであんまりやったことがなかった感じのフレーズだったので、何回もトライしました。

-歪んだ弦楽器隊の音が強調される曲の場合、そこと対峙するヴォーカリスト、シャラクさんとしてはどのようなことに留意されているのでしょうか。

シャラク:基本的にどの曲も作曲者の作ってきたデモの仮歌に近づけるようにしています。曲調にかかわらず、メトロノームの曲を歌うときのオイラは常にそういう感じですね。

フクスケ:すんごい歪んでる曲の中でも、シャラクの声って絶対ちゃんと"出てくる"んですよ。だから、そのへんは何も考えなくて大丈夫。むしろ、ポップな曲のほうがそこに気を使うパターンが多いんです。

-シャラクさんの声は、いい意味でクセが強いのかもしれません。

シャラク:その自覚はありますよ。ちょっと特殊な声なんだろうと思います。