INTERVIEW
メトロノーム
2019.04.18UPDATE
2019年04月号掲載
Member:シャラク(Vo) フクスケ(Gt) リウ(Ba)
Interviewer:杉江 由紀
肩書きとしては"ヴィジュアル系エレクトロ・ポップ・ロック・バンド"の名を持つ彼らだが、その実態はと言えば、ただひたすらに"メトロノーム以外の何者でもない"のではなかろうか。2016年に再起動を果たして以来の精力的な活動ぶりは実に目覚ましく、昨年にはめでたく結成20周年の節目を迎えた。そして21年目の第1弾作品として発表される今回のシングル『Catch me if you can?』は、"好き放題にただただ今の自分がやりたいことを詰め込んだ"というメトロノームならではの貪欲なものへと仕上がったわけだが、この音から感じられる確かな勢いは、そのまま5月に開始される全国ツアー"寂滅ヰラクyAtrA"へと繋がっていくに違いない。
ラーメン横丁の中でうどん屋をやりながらよくぞ20年やってきたもんだと(笑)
-このたび、メトロノームにとっては今年初の音源となるシングル『Catch me if you can?』が発表されることになりましたけれども、振り返ると昨年は結成20周年という大きな節目でもありました。それを経ての2019年第1弾作品という意味で、"これがまた新たな一歩になっていくであろう"的な意識はみなさんの中にあったのでしょうか?
シャラク:あったんじゃ......ないですかね(笑)。
リウ:特別な打ち合せをしたり、何か話し合ったりというのはなかったんですよ。まずは単純にシングルを出すのであれば、"それぞれで自信のある曲たちを持ち寄ろう"ということで、今回の制作が始まっていきました。
-メトロノームの場合、シングルではメンバー3人が作られた楽曲を1曲ずつ収録することが恒例となっておりますものね。
リウ:実際の選曲会段階では収録されている数の倍以上の曲が集まりまして、今回はその中からこの3曲を選んだ感じです。
-だとすると、その中で「Catch me if you can?」が今回の表題曲として選ばれた具体的な理由はなんだったのでしょうか。
シャラク:最終的には多数決みたいな感じでしたね。
-ちなみに、「Catch me if you can?」はシャラクさんの作詞作曲によるものとなります。このタイトルを見て真っ先に思い出したのは2002年に公開されたレオナルド・ディカプリオ主演の映画("Catch Me If You Can")のことだったのですが、そもそもこの楽曲を想起するに至った"種"がシャラクさんにとってどのようなものだったかを知りたいです。
シャラク:メトロノームとしての活動を再開(※2016年9月)して以来、オイラは常々どこかで"ヴィジュアル系とは?"みたいなことを考えていたところがありまして。それは歌詞云々とかではなくて、あくまでも音楽的な部分についてなんですけど。
-基本的に"ヴィジュアル系"とはスタイルを表すことが多い言葉だけに、音楽ジャンルとしてのヴィジュアル系に関する定義はそこそこ多様であるのが実情かもしれません。
シャラク:そうなんですよね。だから、オイラはここまで自分なりに"ヴィジュアル系の音楽ってこういうものなのではないか"と、よくわからないながらに意識しながら"寄せて"きたところがあったんです。
-なるほど、そういうことでしたか。
シャラク:実は、以前そういう"ヴィジュアル系とはなんなのか"ということが飲みの場で話題になったことがあったんですよね。そうしたら、ある人から"いや、それは違うよシャラク君。よくそれでヴィジュアル系と名乗ったな!"と言われてしまったことがあったんです。
-お酒の入った場だとはいえ、なかなかにインパクトのある発言ですね。
シャラク:そのとき、"喩えて言うなら、ラーメン横丁みたいなところに我が物顔で店を出しているうどん屋だぞ"とも言われましたね(笑)。オイラはそうやって言われるまで、自分が"うどん屋"という自覚を持ってはいなかったんですよ。感覚としては、汁と麺さえあれば、ほかは好きに作っても、それはそれでラーメンとして成立するもんだと勝手に思っていたというか。
-ラーメンの世界もまた複雑で、トラディショナルなものから創作要素の多いものもありますから、そこの定義づけもまた難しそうですけれど。
シャラク:オイラとしては、ヴィジュアル系の汁と麺ってメイクとか衣装のことだと捉えていたんですよね。それがある以上は、どんな音を作っていても周りから"ヴィジュアル系"って言われちゃうのもひとつの事実だし。
-たしかにそのような側面もありますね。とはいえ、Keith Richards(THE ROLLING STONES/Gt)は長年アイラインを引き続けていますが、アレは果たしてヴィジュアル系なんですか? という疑問も一方では出てきます。
シャラク:そうですね。でも、気づいたら見た目の部分だけじゃなくて、音楽的にもある程度の傾向というのがヴィジュアル系の中にも生まれてきているみたいで。メトロノームとしてはそことはなるべく被らないようにずらしてやってきたところもあるし、音的には自分のやりたいことをやりつつ、見せ方としてそれっぽくやってきたりしていたので、はっきりと"それはヴィジュアル系ではない"と言われたことは、ある意味いいきっかけになったと思います。その瞬間に、"あぁそうか。やっぱりこれはヴィジュアル系ではなかったんだ。だったらもう、あれこれ考えずに好き放題やろう"と吹っ切れましたから。むしろ、ラーメン横丁の中でうどん屋をやりながらよくぞ20年やってきたもんだとも思いましたしね。もしかすると、うちの店に来てくれるお客さんたちからは"あそこのラーメン横丁になぜかうどん屋があるんだけど、結構美味しいんだよね"みたいにずっと言われてきてたのかもしれない(笑)。
-あはは(笑)。ラーメンだろうと、うどんだろうと、食べる側としては美味しければ納得してファンになってしまうものなのではないでしょうか。
シャラク:まぁ、とりあえずオイラとしてはここまで20年やってきて、やっと自分がうどん屋だったんだということに気づきましたよ(笑)。というわけで、「Catch me if you can?」は好き放題にただただ今の自分がやりたいことを詰め込んだ曲になってます。
フクスケ:これはとてもシャラクらしい曲で......安心しました(笑)。ファンキーな中に遊びも入っていて、いい曲だなと思いますね。
-音的な要素として、作曲者であるシャラクさんが「Catch me if you can?」の中に特に盛り込みたかったのは、どのようなものだったのでしょう。
シャラク:サウンドとしては、絶対スラップが前面に出るような曲にしたかったです。今までもリウさんに"弾きまくってください"とお願いしたようなスラップの曲はいくつかありましたけど、今回はそれをさらにワンランク上に持っていきたかったんです。今だったらここまでできる、というところをかたちにしたかったんですよ。
-スラップを前面に出したいというオーダーが出てきた際、ベーシストとしてのリウさんはその声にいかにして応えられたのでしょうか。
リウ:この曲に関しては、シャラク君からもフクスケ君からも同じ意見を貰っていたので、自分がやるべきことはすぐ理解できました。弾き方の面で言うと、これまでの曲でやってきたスラップはプルが多めのハードコアっぽいフレーズを入れることが多くて、それが自分にとってはひとつの個性だとも思っていたんですけど、今回はそれとは違ってもっと曲に寄り添うかたちの、ちょっとお洒落なベース・ラインをつけていくように意識しましたね。その案はシャラク君から貰った原曲のデモを聴いた時点で、すぐに浮かんできました。
-フレーズの重なり方のせいか、部分的にはふたりで弾いているかのようなバトル感が醸し出されているくだりがある点もかなり面白いと感じます。
リウ:あぁ、スラップと指弾きが重なっているところですよね。あとで自分でミックスするときに楽なのもあって、それぞれ別録りしたんです。その結果として掛け合いみたいになったんですが、そこがいいなと自分でも感じてます。
シャラク:これもさっきの話と繋がるんですけど、こういうスタイルでベースの音を出している人って、ヴィジュアル系の中にはあんまりいないと思うんですよ。それをメトロノームとしてやっちゃえるところが、ウケるなと思って。実際、オイラはそれが面白くてニヤニヤしながら"すげーカッケー!"って自画自賛してこの曲を作ってました(笑)。