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INTERVIEW

メトロノーム

2019.04.18UPDATE

2019年04月号掲載

メトロノーム

Member:シャラク(Vo) フクスケ(Gt) リウ(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

-では、「Catch me if you can?」のアレンジ段階において、フクスケさんがギタリストとして留意した点についても教えてください。

フクスケ:クリーン・トーンのフレーズにグルーヴを効かせるのにこだわりましたね。あとは楽しい音色になるようにしました。

-みなさんが楽しんでいる感覚がこの音の中にはよく表れていると、聴いている側としても感じます。一方で、「Catch me if you can?」の歌詞を書いていくうえでシャラクさんがテーマとしたのはどんなことですか。個人的には"ニッチも察しも動機もパンクロック"という一節から、この詞の根底にあるスピリッツを感じたのですけれども。

シャラク:そうですねぇ。パンク論っていうのも、語り出すとまた面倒くさくなりますよ(笑)。オイラとしては常にメトロノームはパンク・スピリッツだけでやってきてますから。今って、いかにもパンク・ロック然とした音楽をやらないとパンクとは見なされないところがありますけど、それとはまた別の話で、自分は精神の部分でずっとパンクをやっているという意識があります。

-素晴らしい。マジョリティに対してのアンチテーゼが基本なのですね。

シャラク:少なくとも、自分がいるシーンの中ではメトロノームって他にはないタイプのバンドだと思うんですよ。その"何これ? ウケる!"っていう面白いことを常にやっていたいんです。「Catch me if you can?」は詞も自分の中では振り切れたな、という感覚がありますね。この曲のタイトルも、"メトロノームのシャラクとしての正解はこれ"っていうものを2コーラス目の最初の歌詞でしっかりと書くことができたので、自分自身に対して"ほら、これが正解だって。早くやれよ!"っていう気持ちで付たものでした。

-"Catch me if you can?"はある種の自問自答だったのですね。

シャラク:オイラのパンク・スピリッツのあり方というか、怒りの方向は基本的に自分自身に向いているものなんです。ゲームの"マリオカート"で言うと、タイムを計るモードでプレイすると常にベストラップのときの自分が半透明で目の前に居続けるんですけど、イメージとしてはあれです。ベストな自分と戦うということは本当に難しくて、ここでもひたすらオイラは内に向かってます(笑)。

-とはいえ、この歌をここで歌い切ったことにより、何かしらのかたちで決着をつけられたところもあったのではないですか?

シャラク:もともと、サビのあたりの歌詞は"受け入れて歩くしかない"みたいな表現になっていたんですけどね。それを途中で、全然意味のない"ニーチェもサンジェもどうにもブルドック"っていう歌詞に変えたことで、いきなりはっちゃけた瞬間があったんですよ。そこで気持ちが切り替わったのは事実だと思います。時間もなかったのに、メンバーに"すみません、ここだけ弾き直してください"ってお願いして完成させました。自分の中で決意が固まったからこそ、ふざけ切れたんでしょう。

-20周年を経ての21年目に入り、決意を固めたことによって生まれた「Catch me if you can?」が世に出ることはメトロノームにとって実に意義深いことですね。

シャラク:はい。

リウ:今年最初のシングルとして、すごくいいものができて良かったです。

-それから、今回のシングルではカップリングの「さくらん」をリウさんが作詞作曲されています。こちらの楽曲は春の季節感を漂わせたものになっておりますが、和のテイストが音に滲んでいるあたりも特徴的ですね。

リウ:曲を作ったあとの話ではあったんですけど、選曲会の段階でフクスケ君から"今回は衣装のコンセプトを和にしたい"というアイディアが出てきたこともあり、そこからアレンジ的に和に寄せていった感じでした。

-メトロノームが"和"なイメージをヴィジュアル面で打ち出すのはこれが初のことだと思うのですが、なぜそうしたのかについても解説をいただけますと幸いです。

フクスケ:去年20周年という大きな節目を迎えたなかで、21年目に入って大御所感剥き出しで落ち着いて大人の魅力を出していくよりは、もっとガツガツと攻めていきたかったので、これまでやったことのないことに臆することなくただチャレンジしているだけです。これからもきっと、いろいろとやっていくと思います。

リウ:みんなが予想しないであろうことをやってみたかった、ということですね。

-では、音の面で和の要素を取り入れていくのにあたり、リウさんが注力されたのはどのようなところだったのでしょうか。

リウ:メロディとかシンセはあとから入れたんですが、その段階で音階的に和な要素を入れていきました。それと、最近は使っていなかった三味線の音もピアノにちょっと混ぜたりしてます。聴いている人にとってはわかりにくいかもしれないですけど、単純に和楽器の音を入れているわけじゃないというのが個人的なこだわりと工夫です(笑)。いろんな音が洪水のようになって流れていく感じが、"さくらん"っていうタイトルどおりに錯乱しているイメージと重なったらいいなと思っていましたね。

-それでいて、「さくらん」の歌詞については桜を思わせる描写が出てきたりもします。これまた夢うつつな異世界を感じられる雰囲気がとても素敵ですし、なんでも桜の花は極めて微量ながら覚醒成分を発散しているとの説もありますから、またとないタイトルの曲になっているのではないでしょうか。

リウ:この詞は、最初に"「嘆く少年、少年、心が在れば きっと大丈夫」"という部分だけがまず出てきて、そこから広げていきました。何かを選択しなきゃいけないときとか、考えごとをして自問自答をしたときに、今の自分がひとつの基準としているのは"いろいろな憧れを持っていた昔の自分が今の自分を見たとして、カッコいいと思えるかどうか"ということだったりするんですよ。あるいは、仙人みたいな人がいたとしたら今の自分を見てどう言うのかなということもたまに思うんですけど(笑)。おそらく"誠意をもってやりなさい"みたいなことを言われる気がするんですよ。この詞は、そういうことを言葉にしたものです。

-こちらもどこか、表題曲とも通ずる内省的な姿勢を持ったものだと考えられそうです。対して、フクスケさんが作詞作曲されている「楽観ばっか」はそのテイストがまたひと癖あって面白いですね。

フクスケ:世間は楽観しているバカばっかりだなと楽観しているバカな自分がいたので、ここではそれを歌詞にしました。

-フクスケさんご自身は、それこそ楽観的なパーソナリティなのでしょうか?

フクスケ:ものすごくバカな楽観人間です(笑)。

-なるほど(笑)。「楽観ばっか」の曲や音の面について、テーマやモチーフとして考えていたことがなんだったのかも教えてください。

フクスケ:基本的には自分の好きなフレーズやバッキングをふんだんに盛り込みましたが、少しでも新しいことを取り入れようと、この曲ではソロをテルミンで演奏してます。

リウ:打ち込みの入れ方とかメロディのキャッチーさが、すごくフクスケ君らしいなと僕は感じましたね。完全にシングルのタイトル曲を狙いに来たんだろうな、という曲になってます(笑)。

シャラク:しかも、あからさまにサビ始まりですからね。僕もこれは完全に狙いに来てるな、と思いました(笑)。

-それだけ狙いに来たこの曲でさえカップリングに甘んじることになってしまうあたりが、今のメトロノームの熾烈な内戦ぶりを窺わせます(笑)。

リウ:たしかに、レギュラー争いが非常に激しいですね(笑)。

-すなわち、今回のシングルはいずれも完成度の高い3曲を集結させたものに仕上がったということでしょう。そして、今作が出たあとの5月2日からは次なる全国ツアー"メトロノーム ワンマンツアー2019 寂滅ヰラクyAtrA"が始まります。最後に、現段階でみなさんが描いているライヴのヴィジョンについてもお聞かせください。また、このツアー・タイトルの読み方についても解説をお願いいたします。

フクスケ:読み方は、"ジャクメツイラクヤートーラー"です。

シャラク:"寂滅"は仏教語の涅槃と同じ意味で、"ヰラク"は楽しみをなすという意味らしいです。そして、"yAtrA"はサンスクリット語で旅という意味なので、すべて合わせると悟りの境地に真の安楽があるという意味になるみたいです。要は、"みんなで楽しく悟りの地を目指していこうぜ!"っていうことですかね(笑)。

リウ:今回は見た目の部分でも今までと結構違うので、新曲とは別に過去の曲をやっても、以前とはまた見え方や聴こえ方が変わってくると思うんですよ。そこが、自分自身でもすごく楽しみなツアーですね。

フクスケ:きっとたどり着くことのない安楽の地への旅なんですが、そこまでの道中のひとつひとつを楽しんでいけるツアーにしたいですし、安心と不安をいいバランスで伝えていきたいと思います。キャリアとしては21年目ですが、気分は1年目です!