COLUMN
AS I LAY DYING Tim先生のガチムチ!メタルコア道場 vol.2
ツアーをしながら家族との生活を大事にするのは、なかなか大変なことだ。この2つは対立関係にあるように思える。だけど、俺はこの2つをなんとか両立させるために最大限の努力をしているんだ。一番の問題になってくるのは“時間”だ。誰しも持っている時間は同じで限られていて、それを仕事、家族、個人の時間に振り分けないといけない。
俺の両親は共働きだったから子供の頃の生活は、朝に学校で車を降ろされて、学校が終わったらデイケアに行って、夕飯頃に両親が迎えに来て帰る、というものだった。家に帰ってから床に就くまでの時間は2時間。そのたった2時間が、平日に家族と過ごす時間だった。俺には今、子供が3人いて、少なくともこれよりはマシな状況を作ってあげたいと思っている。俺の場合は1年の半分は家にいないわけだから、残りの半年はできるだけ長い時間を家族のために使いたいと思っているし、それが凄く重要なことだと思っている。俺の生活のビジネス面でずっと過ごしているツアーから離れて家に戻る時が、俺にとっての自由時間となる。俺のAS I LAY DYINGとしての活動で時間を一番使うのはツアーで、それがほとんどだ。AUSTRIAN DEATH MACHINEの曲もほとんどAS I LAY DYINGのツアー中に書くので、大体このツアーの期間が俺の仕事期間になる。
ここで俺が考えるのが長いツアーをいくつかに分ける作業だ。アメリカやヨーロッパのツアーが6週間から8週間の長さに設定されることは珍しいことではない。こういったツアーの際に俺がやっていることがいくつかある。まず、アメリカ国内でオフの日ができた場合は、メジャーな空港が近い場所なら家に飛行機で戻ることにしている。あまりツアー中にオフの日ができることはないが、月曜日や火曜日の夜にライヴをやってもあまり喜ばれないこともあって、オフになる場合もあるんだ。それから家族全員をツアーに同行させてしまうという手もある。例えば6週間のツアーの内、真ん中の1週間家族を同行させる。そうすれば家族と離れている期間が2週間半に短縮されるからね。この場合どうやって全員寝るかに頭を使うことになるが、ウチの子供たちは現在不便な状況も“アドベンチャー”として楽しめる年齢だから、ありがたい。俺の娘は4年間、児童養護施設に住んでいて、そこでベッドをシェアする生活をしていたから、バスの寝台をシェアすることは気にならないんだ。俺の奥さんと息子はラウンジをベッドエリアにすることで一時的に一緒に寝られるスペースを作ることができる。
それでももちろん家にいるみたいに快適に過ごすことはできない。そういう意味ではレコーディング期間は良い。サンディエゴにある自分のスタジオでレコーディングするから家にも近い。旅行を伴わないでバンド活動ができるのは素晴らしい。そういうことを別にしても、俺はクオリティが高い作品を作ることがツアーよりも良い、一番のバンドのプロモーションになると考えているんだ。今年、AS I LAY DYINGは2年連続で新譜を発売することになっているし、近々AUSTRIAN DEATH MACHINEの新譜の制作も計画している。
ミュージシャンでありながら家族との生活も成り立たせることは、もちろん経済的な負担も出て来る。主な理由は家族を呼び寄せたり、自分がツアー中に家に戻ったりするのに余計な飛行機代が必要になるからだ。ただ、この出費は自分がミュージシャンとして長くやっていくための投資だと思ってる。家族との時間を大切にしたいからという理由でバンドを辞める人の話をよく聞く。確かに普通にツアーをやっていたら家族と会う時間もなくなり、大変だ。俺は少し出費をして、多少面倒なこともやって、何とか家族との時間を作ることで、俺は11年間ミュージシャンとしての活動をしてきた。そのお蔭で燃え尽きることもなく、バランスを保ちながらやって来れている。ただこれも、家族やバンドメンバーの理解と協力があってこそ。それに昔ながらのハードワークと充分な準備があって初めて実行できるものなんだ。
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