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LIVE REPORT

THE OFFSPRING

2025.04.26 @東京ガーデンシアター

Writer : 菅谷 透 Photographer:Kazumichi Kokei

THE OFFSPRINGが、最新アルバム『Supercharged』を携えた来日ツアーをスタートさせた。日本でのパフォーマンスは"SUMMER SONIC 2022"以来となる彼等だが、ヘッドライン・ツアーとしては約6年ぶり。さらに今回はスペシャル・ゲストとしてSIMPLE PLANを迎えたメロコア・ファン垂涎の布陣が実現し、開催発表時から話題を呼んでいた。満を持して迎えた東京ガーデンシアター初日公演は、数々のヒット曲が惜しみなく放たれる怒濤のセットリストで、オーディエンスを青春時代へとタイムスリップさせた。なお、このレポートでは演奏曲に関する言及が含まれるため、愛知、兵庫公演に参加される方はご注意を。

先陣を切ったSIMPLE PLANは、2023年の"PUNKSPRING"以来となる来日。「I'd Do Anything」や「Welcome To My Life」、「I'm Just A Kid」等の代表曲を連発し、早くもモッシュ・ピットやダイブが巻き起こる熱狂を見せていた。一糸乱れぬモダンでタイトなアンサンブルで魅了しつつ、曲間に日本語を巧みに用いたチャーミングなMCを放つギャップはなんとも秀逸で、ショーマンシップに溢れている。"ありがとうございます"だけでなく、"すみませ~ん"という言葉がさらりと出てくる海外アーティストは、きっと彼等くらいだろう。

会場には、THE OFFSPRINGとSIMPLE PLANの両方をチェックしてきた熱心なメロコア・ファンから、ヒット曲だけは知ってる......という層まで、様々なリスナーが集結していたことだろう。しかし60分の濃厚なセットが終わる頃には、全ての観客が現在進行形の彼等の魅力を再発見していたはずだ。

セット・チェンジの時間になると、ステージ中央のモニターではユニークな仕掛けが。THE OFFSPRINGのステージ開始へ向けたカウントダウンがスタートすると共に、バンドに関する豆知識クイズや、A-HA「Take On Me」のカラオケタイム等、観客を飽きさせない趣向を凝らしたVTRが流れ、ショーへの期待を徐々に高めていく。そんな"Intermission(幕間)"を経て、お馴染みのAC/DC「Thunderstruck」でカウントは0に到達。歓声が沸き上がるなかついにメンバーが登場すると、1曲目に披露されたのは「All I Want」だ。Dexter Holland(Vo/Gt)のシャウトに呼応するように爆発的なシンガロングが響きわたる。

背景には同曲がBGMに採用されたゲーム"クレイジータクシー"の映像も映し出され、オープニングからまさにアクセル全開だ。畳み掛けるように「Come Out And Play」も投下され、オフスプ(THE OFFSPRING)の代名詞であり、会場に集まったファンの多くが彼等を知るきっかけになったであろう楽曲の連発に、会場は一気にカオスに導かれていた。

この日のセットリストは、彼等の転機となった3rdアルバム『Smash』から、最新アルバム『Supercharged』までの作品をほぼ網羅。ベスト・アルバムや入門用プレイリストを作れてしまうような曲目が、休憩もそこそこに次から次へとストイックにプレイされるものだから、アリーナもスタンドも天井知らずの熱狂に包まれていく。中核を担ったのはやはり『Smash』、5thアルバム『Americana』、6thアルバム『Conspiracy Of One』のメガ・ヒット作で、近年では日本でのみ演奏されている「One Fine Day」では、あまりの盛り上がりにDexterとNoodles(Gt)が驚きの声を漏らす程だ。また、BLACK SABBATH「Iron Man」や、RAMONES「Blitzkrieg Bop」といったクラシック・ナンバーも、メドレー形式でプレイされ、彼等の広範なバックグラウンドを垣間見ることもできた。

Noodlesは最新アルバム『Supercharged』に関するインタビュー(※2024年10月号掲載)で、"俺たちはやる気に満ちているし、ライヴもこれまでで最高のものをどんどんやれているよ"と語っていたが、彼の言葉通り、今回のショーはライヴならではの生々しい躍動感と、スタジオ音源の再現性が絶妙に融合した見事なパフォーマンスだった。この完成度の高さにはBrandon Pertzborn(Dr)とJonah Nimoy(Gt/Key/Perc)という2人のメンバーの貢献が非常に大きかったように思う。Brandonは歴代ドラマーの持ち味を尊重しつつ、ダイナミックでパワフルなサウンドで観客を圧倒。

Jonahはギター隊に厚みを与えるだけでなく、キーボードやパーカッションを巧みに操り、多様なサウンドに彩りを加えていた。特に「Want You Bad」では甘酸っぱいラヴ・ソングに、オルガンの温かい音色が加わることでさらに感情豊かな解釈に仕上がっていた。そして、シャープでクリアな魅力を持ったDexterのヴォーカルは未だ健在。NoodlesとJonah、Todd Morse(Ba)によるコーラス・ワークが絶妙に絡み合い、高揚感と熱量を生み出していくのが、まさにオフスプサウンドの魅力だろう。そして負けじと観客もシンガロングを起こしていき、ますます熱気を帯びていった。

終盤ではTikTok世代からも支持を集める「You're Gonna Go Far, Kid」や、言わずと知れた代表曲「Pretty Fly (For A White Guy) 」が炸裂した。アンコールでは『Smash』からのキラーチューン「Self Esteem」、社会的なメッセージが今なお共鳴を生む「The Kids Aren't Alright」と、40年以上に及ぶキャリアを横断した名曲で畳み掛けたステージは、まさにメロコアの歴史と言えるような極上の一時。TVやラジオ、SNSやFlash等、様々な媒体から彼等の音楽と出会ってきた幅広い世代のファンが1つになれる瞬間は、オフスプの普遍的な魅力を体現する、新たな青春の1ぺージだった。

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