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LIVE REPORT

Crystal Lake

2024.08.24 @八王子RIPS

Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:Seijiro Nishimi

Crystal Lakeが5月30日にリリースしたシングル「Blüdgod」を引っ提げて回ってきた"BlüdGod Release Japan Tour 2024"。全国6ヶ所での熱演を経て辿り着いたツアー・ファイナルが、8月24日に八王子RIPSにて開催された。

SiMの全米ツアーへの帯同、"Download Festival"、"Resurrection Fest"、"Hellfest"といった巨大フェスへの出演を含む25公演のヨーロッパ・ツアーによって、さらにタフにビルドアップされ、日本に帰ってきたCrystal Lake。結成20年を超えなおも進化を続ける彼等の現在地と、それでも変わらぬ核心を生々しく確認させてくれた一夜だった。

開演時刻を過ぎると、ゲスト・バンドであるAzamiがステージに。お互いのツアーに出演する等、長い交友関係にある2組だが、石井純平(Vo)の加入後はこれが初めての共演だ。"「The Fire Inside」を聴いたときからずっとCrystal Lakeに憧れていた"と語り、凄絶なシャウトを響かせる彼の熱量はフロアに確かに伝播。オーディエンスはダイヴやシンガロングで応える。セットリストはメロウでエモーショナルな未音源化曲「遥か」やモッシュ必至のキラーチューン「ヘイトスピーチ」を含む全7曲。日本語詞で心の奥底に直接殴り書きするようなメッセージ性と、前のめりに駆け抜けるスピード感たっぷりのアンサンブルを両立させたステージで、この日の主役へとバトンを繋いだ。

さて、いよいよCrystal Lakeの登場だ。緊張感みなぎるSEをバックにメンバーが現れると、ライヴは本ツアーの目玉である最新楽曲「Blüdgod」からスタート。これぞCrystal Lakeとも言うべき、ミステリアスで近未来的なデジタル・サウンドと容赦ないブルータルなリフの応酬で、ドス黒いうねりを作り出していく。

圧倒的な存在感で鎮座するJohn(Vo)があっという間に場を掌握すると、そのまま鉄壁のアンセム「Apollo」へ。大合唱を浴びたJohnは日本語で"ありがとう! 最高!"と漏らすと、アウトロでフロアに飛び込む。続く叙情ハードコア・チューン「Open Water」ではダイバーが続出。"静と動"だけでは説明しきれない、"静と柔と動と剛、そして混沌"なハイブリッド・エクストリーム・ミュージックっぷりを凝縮した3曲で、早くも会場を彼等ならではの色に染め上げた。

この日のライヴで何よりも印象的だったのは、このキャパシティだからこそ肌で感じられるバンドとファンの親密な信頼関係だ。「Twisted Fate」、「Six Feet Under」、「Mephisto」と肉体的な楽曲を連打しバイオレントなモッシュピットを発生させながら、TJ(Gt)はリフ・ワークの狭間に思わず笑顔を浮かべ、YD(Gt)は舞台袖のクルーともコミュニケーションを取りつつ、双方向のリスペクトが溢れる空間を作り上げていく。その凶暴な音と裏腹な温もりは、バンドのルーツでもあるローカルなハードコア・ショーの手触りを感じさせるものだった。YDによる"怪我だけはないように、でも狂っていこう"というMCは、この日の彼等が目指すヴィジョンを端的に示していたように思う。

折り返しとなる「New Romancer」以降のセクションでは、バンドの進化の歴史を辿るように、よりメタリックな質感へとシフト。「Prometheus」では、Gakuの人間離れした凄まじいブラストビートと荘厳なシーケンスが絡み合う様に恍惚としてしまった。必然性を持って混ざり合う汗臭さと神聖さ。これこそがCrystal Lakeのシグネチャーな魅力なのだと実感させられる。また、これらの楽曲ではJohnによるシャウト混じりの雄々しいクリーン・ヴォーカルが冴え渡っており、未だ底知れぬポテンシャルを感じさせていたことも記しておきたい。

あまりの熱気に"ちょっとマジでヤバいね!"と一息ついたYDは、自身が八王子で生まれ育ったことや、ここ八王子RIPSにて17歳で初めてコピバンでのライヴを披露し、ヌンチャクの楽曲等を演奏したことを明かし、改めてオーディエンスへの感謝を口にする。Johnと初めて作った曲だという紹介からプレイされたのは、未リリース楽曲「Sinner」。ヒロイックなギター・フレーズとキャッチーなサビが耳に残るメロディアスなナンバーだ。John加入後の楽曲では重心の低さとアトモスフェリックな音使いが目立っていた彼等にとって、現体制に新たな血を注ぎ込むような本楽曲が担う役割は大きいのではないだろうか。正式リリースが実に待ち遠しい。

YDが"17歳から、ハードコアやパンク、メタルを1秒だって疑ったことはない。全てをリスペクトして、バカやって、最高に人生を楽しむ。このマインドでこれからもやっていくから、よろしくお願いします!"と高らかに宣言すると、そのまっすぐな言葉への共鳴を示すように誰もが頷き、拍手を送る。その思いは「WATCH ME BURN」で特大のシンガロングに変換され、この日一番の一体感が会場をさらなる灼熱の渦に巻き込んでいく。

ライヴを締めくくったのは、ちょうどこの8月にリリース10周年を迎えたEP『Cubes』の収録曲「Beloved」。ここに来て一番の伸びを見せているのではないかと驚かされるJohnのシャウト、タイトでキレのある楽器隊の演奏は、ハードなツアー・ワークで成長を繰り返してきた彼等の底力といったところか。カオスの極みを顕現させ、盛り上がりはピークのままツアーの幕が降ろされたのだった。

メタル・シーンをリードする国際的な名門レーベル"Century Media Records"との契約も果たし、よりいっそうのスケールアップが期待されるCrystal Lake。バンドの根源を曝け出し、ほとばしるパッションをほぼゼロ距離で確かめ合った本ツアーから、世界への再進撃を後押しする大きなエネルギーを得たことだろう。

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