LIVE REPORT
ALI PROJECT
2024.07.07 @豊洲PIT
Writer : 杉江 由紀 Photographer:小野寺廣信
若さとは1つの貴重な価値であり、同時に至らなさそのものでもあるが、若いからこそ軽々と成し遂げることができる何かもあれば、逆に歳を重ねて経験値を詰んだからこそ成し得ることもあるはずなのだ。もっとも、無駄に歳だけを食ってしまった場合は残念ながらそれにあたらないのもまた事実となろう。
"こんばんは。「お見かけ通りの若輩者」ALI PROJECTです。美しき七夕の夜、アリプロ(ALI PROJECT)は(メジャー・デビュー)32年目を迎えました。これもひとえに皆様のおかげでございます。今日はアルバム『若輩者』からの曲を中心にお送りしますが、他の曲は何を選ぼうかと考えたところ、やはりALI PROJECTが今よりもさらに「若気ノ至リ」だった頃の曲を多めに選んでみました。普通に皆さんが聴きたい人気の曲たちは「A級ヒットパレード」という別のライヴ・シリーズのほうでやるので、今日はやりません"(宝野アリカ/Vo)
まさに"今宵宴の幕が開く"という歌詞から始まる、『若輩者』収録曲「BLACK ROSE」を皮切りにして、今宵のALI PROJECTは「若気ノ至リ」やアルバム表題曲の「若輩者」といった楽曲たちを、ある意味では音源以上に迫力ある音とパフォーマンスで我々に届けてくれたのだった。生ヴァイオリン×2とドラァグ・クイーン(ダンサー)×2を交えた編成も、アリプロならではの美しい世界観を構築してくれており、鬼才 片倉三起也(Key)の紡ぎ出す緻密にして荘厳なサウンドと、アリカ様の麗しくも凛とした歌声が場内へと響き渡っていく様には、随所にて"うっとり"させられることしきり。
かと思うと、本編前半にて演奏された「少女貴族」では、アリカ様がアルバム『若輩者』のジャケ写と同じゴシックなドレスを纏った上で、これまたジャケ写にて手にされていた凶悪打撃武器、釘バットを用いながら高らかに歌唱されるという、インパクトと刺激の強い場面も拝むことができた。ALI PROJECTの生み出す耽美と暴虐が交錯する異空間では、何しろえも言われぬ悦楽をたっぷりと堪能できるのである。
さらに、軽やかでリリカルな「誰ソ彼パピヨン回廊」や、2015年のアルバム『快楽のススメ』収録の「狩猟令嬢ジビエ日誌」をリメイクした、「幸福の王子」などを聴くことができた本編後半では、アリカ様は真っ赤なミニスカ・ドレスで観客たちを魅了してくださった上、本編ラストでは巫女スタイルに扮したドラァグ・クイーンたちと共に、アリプロ名物の"大和ソング"である「日本弥栄」で場内の空気をいっそう席捲することに。
そればかりか、アンコールではヴァイオリン奏者たちが黒の変形学ラン、ドラァグ・クイーンたちはロンスカセーラー服という、令和の時代にあるまじき出で立ちで登場しただけでなく、アリカ様も完全に"昭和のスケバン"を彷彿とさせる過激なお姿へとトランスフォーム。あげく、なんと片倉三起也までが純白の変形学ラン姿で降臨されたことにより、オーディエンスが大いにどよめき出したのは言うまでもない。
ちなみに、このときステージ上にひるがえったのは"愛痢風露慈琥斗"(ALI PROJECT)のロゴが入った垂れ幕で、この後アリカ様は竹刀を肩に掛けながら「青嵐血風録」を熱唱されたのだった。しかも、次いでの「爆烈勇侠外伝」では再び釘バットも出現しつつ、ラストを飾ったのは「勇侠青春謳」。現在進行形な"若気ノ至リ"感が炸裂したステージングは天晴れの一言!
「若輩者」の中にある"どんな時代だろうと/わが道を貫こう"の歌詞よろしく、"愛痢風露慈琥斗"の爆走と邁進は、これからもより激化していくものと固く確信してやまない。
[Setlist]
1. BLACK ROSE
2. Halation
3. 反國陰謀ディストピア
4. マダム・ノワール ~Madame Noir
5. CYBER DEVILS
6. 若気ノ至リ
7. 少女貴族
8. 若輩者
9. 美しき獣たちの為の
10. 含羞草ねむりぐさ[instrumental]
11. Schism
12. 誰ソ彼パピヨン回廊
13. 血の断章
14. 白堊病棟
15. 幸福の王子
16. 聖少年遊戯
17. 芸術変態論
18. 神風
19. 日本弥栄
En1. 青嵐血風録
En2. 昭和B級下手喰い道
En3. 爆烈勇侠外伝
En4. 勇侠青春謳
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