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INTERVIEW

ALI PROJECT

2021.10.20UPDATE

2021年10月号掲載

ALI PROJECT

メンバー:宝野 アリカ(Vo)

インタビュアー:杉江 由紀

耽美にして過激でもあり、精緻にして大胆でもある完璧なる音楽世界。気高きヴォーカリスト 宝野アリカと天才的クリエイター 片倉三起也によるALI PROJECTは、長年にわたり日本のサブカル・シーンにて活躍してきた偉大なるアーティストだ。来年にはいよいよ30周年を迎えることにもなっているという今、10月より始まるTVアニメ"月とライカと吸血姫"のOP主題歌として起用されている「緋ノ月」が、このたびはシングル化されることに。異国情緒と憂いが同時に漂うカップリング曲「ノスフェラトゥ」も含めて、いい意味でこの世のものとは思えないような異世界が音により創りあげられている様は、実に素晴らしいのひと言だ。


まず"やっと吸血鬼がテーマのやつが来たじゃん! やったー!!"って(笑)


−ALI PROJECTはこれまでもその時々で様々な異世界を音楽にて生み出し続けてきていることになりますが、今回のシングル『緋ノ月』の表題曲もまた曲が始まった瞬間から不可思議な空間へと誘われるような仕上がりになっておりますね。こちらは10月より始まるTVアニメ"月とライカと吸血姫"のOP主題歌に起用されていますが、やはり曲作りや歌詞作りはそのイメージありきで進めていかれたことになるのでしょうか。

私が今回のタイアップのお話をいただいたとき、この"月とライカと吸血姫"というアニメのタイトルを見てまず思ったのが"あぁ、やっと吸血鬼がテーマのやつが来たじゃん! やったー!!"っていうことだったんですよ(笑)。昔から、ヴァンパネラつまり"ポーの一族"(萩尾望都の漫画)が好きだったので。

−なるほど、待望だったテーマとここで巡り合われたわけですか。

過去に、ALI PROJECTで怪物が作品のモチーフになっていたアニメの曲を作ったことはあったんですけど、吸血鬼はこれが初めてでしたからね。"よし、じゃあMVや写真を撮るときに使う牙も買わなきゃ!"って意気込んでいたんです。でも、実はこの"月とライカと吸血姫"は脚本を読んでみると、いわゆるトラディショナルな吸血鬼のお話とはちょっと違う内容で、世の中から虐げられている種族が出てくるストーリーではあるんだけれど、あんまり血を吸うとかそういった描写は出てこないんですよ。それで、まずはいったんその吸血鬼っていう部分は少し頭の片隅のほうに置いておくことにして、そこから作り出していったのがこの「緋ノ月」でした。そして、曲調の面で言うと、あらかじめアニメ監督の方や番組制作の方たちから"だいたいこんな雰囲気でお願いします"といったようなお話や、サンプル呈示のようなものが今回もあったんですけど、ALI PROJECTがアニメのオープニング曲を依頼される場合って、過去に作ってきた「聖少女領域」(2005年リリースのシングル表題曲)とか「亡國覚醒カタルシス」(2006年リリースのシングル表題曲)みたいな、"いかにもアリプロ(ALI PROJECT)!"というタイプのものを求められることが多いんですね。テンポも速くて、歌も早口でみたいな。

−「聖少女領域」はTVアニメ"ローゼンメイデントロイメント"、「亡國覚醒カタルシス」は".hack//Roots"とのタイアップ楽曲でしたが、たしかにどちらもアップテンポで畳み掛けるような雰囲気が特徴ではありましたね。

そうそう、だから今回も必要なのは"そういうもの"なのかなと最初は考えていたんですよ。ただ、打ち合せをしていくうちに物語として情緒的な部分もあるということがわかってきたので、そこからさらに"じゃあ、どういう方向性にしていきましょうか"ということを片倉(三起也)さんと相談しつつ、実際に曲を作っていくことになりました。まぁ、とは言っても、アリプロの場合は何をテーマにどんな曲を作ろうとも最終的にはすべてどれもALI PROJECTの作品として成立するので(笑)、特に今回のテーマの中でアリプロらしさをどう出していくか? みたいなことは意識してなかったです。

−先ほど、アリカさんからテンポ感についての言及があったとおり、この「緋ノ月」はリズムこそ性急なトーンではありませんが、メロディの質感や曲展開などの面では実にドラマチックな仕上がりになっていると感じられます。歌われたアリカさんからすると、この曲ならではのアプローチとして何か大切にされたことはありましたか。

歌に関しては、特にこの曲ならでは的なことは考えなかったですね。それよりも、歌う前に詞を書くことのほうが作業としては大変なので。歌は作業工程で言うと最後に録るんですけど、曲ができてから主人公である女の子のイリナの視点で書くのか、それともレフ君の視点で書くのかでも変わってくることになるだろうなと思いつつ、やっぱりここではイリナの視点で書いていくことにしました。彼女は吸血鬼という種族に生まれついてしまったがゆえに虐げられていて、気持ちの面で"人間に負けないで頑張る!"っていうところも持っているし、自分の中に"月や宇宙に向かいたい"っていう夢も持っているんですね。それでいて、話の中にはレフ君との恋愛模様みたいなものも出てきますから、そのあたりを踏まえながら書いていった感じかな。とにかく、曲の出だしはゆっくりな感じなのに途中からは結構ガッと盛り上がってもきますしね。そういった曲調ともシンクロしながら、どんなふうに言葉をあてはめていくか、どんな感情を描いていくかというところは特に丁寧にやっていきました。だけど、いざ歌うときはわりと普通にっていうか(笑)。私としては、いつもと変わらない姿勢でしたね。

−とはいえ、「緋ノ月」のメロディ・ラインの難易度はかなり高いように感じられます。

そういえば、今日はこの取材用に片倉さんから曲に対するレポートを預かってきているので、ここで読み上げてみますね。"アリプロの作るアニメの主題歌については、これまでインパクトを重視したサビをまず求められることが多いのですが、「緋ノ月」では静かにメランコリックな感じで始まって、サビから後半では激しく変化していくことになります。その流れの中で、主人公の「いつか月を捉えるというカタルシス」を表現しました"ということだそうです。

−ありがとうございます、承知いたしました。

イリナは吸血鬼なんだけど、月や宇宙を求めていく少女ですからね。そのストーリーに私たちも没頭しながら、この曲を作っていきました。私なんかは脚本を読んだだけで何回も泣いたし、"最後どうなるんだう?"って思っていたら、まだその段階では最終話の脚本が手元に届いていなくて(苦笑)。だから、私まだこのお話が最後どうなるか知らないんですよね。そこはこれから原作を読んで、放送開始になるアニメも観たいなと思っているんですけど、ほんとすごく面白いストーリーになってます。とても良くできている物語です。

−それだけ、この「緋ノ月」の歌詞はアニメの世界を凝縮したものになっているわけですが、その一方でこれまでのALI PROJECTの作品と比較すると、言葉の並びや漢字の使われ方などが少しわかりやすいものになっているのかな、という印象を受ける点もあるように感じます。

そうなんですよ。言葉の並びがいつもより地味でしょ?

−いえいえ、地味とは思いません。でも、難しい漢字はあまり出てこないなと。

だって、わりと普通の言葉で書いてますもん。例えば"翼"とかね。これなんかは、J-POPで一番使われてる単語だって言われてますし(笑)。この詞の中には普通のJ-POPの人たちが書くような言葉がいろいろ入ってはいるんだけど、組み立て方次第でいくらでも奥深くなるわけですね。これは意図してそうなったというわけではなく、書き終わってから自分で気づいた点でした。アリプロの場合はいろいろと言葉をこねくりまわしたような歌詞も多かったりはするんですが、中にはそうではないものもあるので、この「緋ノ月」はなんとなくそれに近いような路線の曲になっているんだと思います。それにこれ、曲タイトル自体も地味ですしね。そこは当然アニメの主題歌ですから動く絵があって、そこで流れたときにみなさんが何を感じてくださるのかなぁ、というトータルのバランスが大事だと思うんですよ。まぁ、CDしか聴かないという人もいるかもしれないですけど、アリプロとしてはアニメがあってこの歌詞でこの曲でこのタイトルで、っていう大きな枠で捉えながら作っていっているところが大きいですね。

−だとすると、アリカさんがこの"緋ノ月"という曲タイトルに込められたのはどのような想いでいらっしゃいますか。

これは、いかにもアリプロなタイトルを最初は考えましたが、何しろこの中に詰まっているものが非常にシンプルなので、イリナの目指している月のイメージから"緋ノ月"と付けました。要は緋色=赤い月ということなんですが、これはイリナの心の色を表したものなんです。

−なお、そんな「緋ノ月」においてALI PROJECTが呈示するヴィジュアル・イメージは、緋色ではなく灰色が主体になっておりますよね。このようなかたちをとられた理由についても、よろしければ教えていただけますでしょうか?

たしかに、普通は"緋ノ月"ときたら普通は赤い服だろうとみなさん思われるでしょうね。でも、赤い服って今までもう結構たくさん着ちゃってるから"今回はもういいや"となったところがこうなった最初の切っ掛けでした(笑)。鏡の間のようなところで写真を撮ることによって宇宙の無限を表現しているんですけど、赤は印象的に使いたいなと思っていたのでジャケットでは文字の中に赤を入れたり、MVでも部分的に赤は差し色として使ってます。赤を全面的に使わなくても、緋の印象を伝えていくようにしたわけですね。

−ところで、いよいよ10月になるとアニメ"月とライカと吸血姫"のオンエアが始まりますが(※取材は9月上旬)、すでにアリカさんはオープニング部分も含めて第1話と第2話をご覧になったそうですね。せっかくですので、そのご感想をうかがえますか?

すごく素敵でした。ストーリーもとっても面白いですし、絵が素晴らしくきれいなんですよ! 丁寧に作られていることがわかりますし、TVアニメというよりも映画のアニメを観ているような感じがします。お話がちゃんとしてるし、非常におすすめです。