MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

ALI PROJECT

2021.12.21UPDATE

2021年12月号掲載

ALI PROJECT

メンバー:宝野 アリカ(Vo) 片倉 三起也(Key)

インタビュアー:杉江 由紀

気高きエスプリに彩られ、美しき時代を具現化した音が溢れ出していくさま。そのめくるめくような絢爛豪華さを存分に堪能するがいい。希有なる存在感を持ったヴォーカリスト、宝野アリカと天才的クリエイター、片倉三起也によるALI PROJECTが、2022年にいよいよメジャー・デビュー30周年を迎えることを記念して完成させたアルバム『Belle Époque』は、耽美にして過激でもあり、精緻にして大胆でもある、完璧なる音楽世界がより洗練されたかたちで繰り広げられる圧巻の仕上がりなのだ。ここは年明けに大阪と東京で開催される"ALI PROJECT 30th ANNIVERSARY TOUR 2022「Belle Époque」"を楽しむうえでも今作を必聴されたし!

-ALI PROJECTとしてのメジャー・デビュー30周年記念アルバムとなる『Belle Époque』がここに完成いたしましたが、今作の制作にあたっておふたりがそもそもどのようなヴィジョンをお持ちでいらしたのか、ということをまずは教えてください。

片倉:30周年ですか......いわゆる"ジャネーの法則"って知ってます? 例えば知らない土地へ行ったとしますよね。現在地であるA地点からB地点までの往路はだいたいなんだか遠い感じがすると思うんですけど、それが帰路になると辿ってきた道筋を知っているから感覚的には早く感じるでしょ。それと同じで時間の感覚っていうのはある意味でわりと人それぞれだったり、状況によっても変わってきたりするもので、若い人たちだったら年間というとそれなりの長さに感じるんだろうけど、僕らなんかは30周年って言われてもここ数年の間の出来事なんじゃかな? くらいに感じてしまうところが結構あるんですよ。

宝野:わかる。それはほんとにそう! 人が思うほどそんなに"30年もやってきたんだな"という感じはしてないんです(笑)。

片倉:とはいえ、この30周年を記念するアルバムというのはひとつの節目ではありますからね。僕としてはひとつの楔を打ち込むようなつもりで作っていこう、という気持ちを心の中に持っていたところはありました。もっと言うと、この30周年を機にALI PROJECTを終わらせようと考えてもいたんです。個人的にではありますけど。

-驚きです。唐突なる爆弾発言ではありますが、一応そこが過去形である点には安心いたしました。

片倉:まぁ、当初はほぼほぼそんな気分ではありましたよということなんですけどね。だから、今回のアルバム・タイトルも僕としては"国宝"にしようかな? って当初は考えてたんです。要は、30周年のこのタイミングで自分にとっての国宝のような曲を作りあげて、それをもってALI PROJECTを締めくくろうと思っていたわけですよ。だから、最初のうちは結構思い詰めてました。

宝野:でも、そうやって考え込んでいたのは片倉さんだけですからね。私は全然そんなふうには思ってませんでしたから。ただ、ほんとに"国宝"なんていうタイトルを付けるんだとしたら、まずは上野の博物館に行って、ひと通りちゃんと国宝を鑑賞してから詞を書いたほうがいいのかなぁなんて、内心では思いつつもしばらくシカトしてたら、ある時点で片倉さんとしても"国宝"っていう路線は違うってなったみたい(笑)。

片倉:結局、自分にとっての国宝みたいな曲を作ろう! って覚悟を決めてから曲を作り出したはいいものの、国宝と言えるものはできなかったんだよね(苦笑)。ここでそれを作れなかったっていうことは、つまり、"俺はここからもALI PROJECTを続けていく必要があるんだな"と自ら悟ったわけです。

宝野:なんだか皮肉な話よねー(笑)。

-我々としては少しばかり不謹慎ながら"国宝ができてくれなくて良かった......"と思ってしまうのですが(笑)、同時にその段階からアルバム制作の方向性を変えていく際には、どのように考え方をシフトされていったのですか?

片倉:そこは、彼女が"Belle Époque"というこのアルバム・タイトルを持ってきてくれたことが大きかったです。

-秋口あたりにシングル『緋ノ月』(2021年10月リリース)についてのお話(※2021年10月号掲載)をうかがった段階で、アリカ様はすでに、"次に出す30周年のアルバムでテーマにしているのは、「美しい時代」です"とおっしゃっていました。あれは"Belle Époque"を和訳した言葉だったのですね。

片倉:やっぱり、タイトルがないと曲を作っていくにも何を指針にしていけばいいかわからなくなってしまいますし、この"美しい時代=Belle Époque"という言葉は自分にとってもすごくしっくり来たんですよ。このタイトルだったら何も悩まずにALI PROJECTとしての作品を作っていけるな、という感覚をすぐに得られました。何しろ、ALI PROJECTは今までずっとどんなにドス黒い曲でも、それを美しく表現するということをやり続けてきたわけですからね。すべての曲の中で様々なかたちをとりながら美しさを描き続けてきたALI PROJECTの姿勢を、このアルバムの中でも貫いていくようにしたんです。

-それにしても......ALI PROJECTの作品中に漂う、この美意識の高さの根源というのはいったいどこに根ざしたものなのでしょうね。クラシカルな要素も多分にあるとはいえクラッシックではないですし、かといってロックやポップスともまた違うものであって、ALI PROJECTの生み出すサウンドというのは実に美しく不可思議で唯一無二です。

片倉:それはきっと、内面にある鬱屈としたものとか屈折したものじゃないですか。美しいものを表現しているとは言いながらも、根底の部分ではむしろそっちの影響のほうが大きいような気もします。

宝野:そうなのかな? 前に、片倉さんは幼少の頃お家に世界の古城の写真集か何かがあって、それをしょっちゅう見ていたっていう話を聞いたことがあるんですよ。その時期に培われた美意識みたいなものが、きっと音楽に繋がっていったんじゃないかなぁと私は勝手に思ってるんですけど。

-原体験としては関係あるかもしれませんね。写真からイマジネーションを広げていくという、芸術的な脳内回路がそこで鍛えられた可能性はありそうです。

片倉:城だけじゃなく、仏像とかそれこそ国宝みたいな美術品の写真とかも家にあったから、よく見てたんだよなぁ。そして、たしかにそれを眺めながらいろんな空想もよくしてました。小学校のときも、しょっちゅう空想ばかりしてボーッとしてたから、授業中はよく先生に頭をはたかれて怒られてましたもん(笑)。

宝野:やっぱり、そういう下地がちゃんとあったんだ。

片倉:だけど、下地っていったらあなただってそうじゃない?

宝野:うちは両親が画家だから、絵に囲まれて育ちましたっていうのはたしかにありますね。しかも、前衛派ではなくて、印象派だから絵は美しくなければいけないみたいな。そういうなかで培われたものはきっとあると思います。あとは、今や死語の文学少女でもあったので、澁澤龍彦とかよく読んでましたね。

-そんなおふたりが今ここに生み出した『Belle Époque』は、まさに美しき世界として仕上がっていて、その奥深さには聴きながら思わず感嘆してしまいました。ということで、ここからか各曲についてうかがってまいりたいと思います。まずは1曲目の「アタシ狂乱ノ時代ヲ歌ウ」についてですが、記念すべきアルバムの冒頭にこの曲を配置された理由をまずは教えてください。

片倉:ALI PROJECTの場合、30年前の始動当初から、曲調としてはゴシックな雰囲気というのをどこかで意識していたところがあるので、この曲は今改めてそのことを踏まえながら作ったものだったんですよ。メロディの雰囲気にしても、今まで脈々とやってきたところが反映されている曲でもありますし、30周年アルバムの1曲目としてはこれが最も相応しいだろうということで、この位置に入れることになりました。

宝野:アルバムの1曲目はいつも勢いがある曲を入れることが多いので、これはその流れに沿った選曲でもありますね。歌詞の内容に関しては、もともとBelle Époqueって、19世紀中頃のフランスにおける文化の雰囲気を総じて表す言葉なんですけど、歴史的に言うとそのあとには第1次世界大戦が起きて、狂乱の時代を迎えることになるわけなんですね。ここではその狭間のあたりのことを今の時代に置き換えて詞を書いていった、みたいな感じでした。あの歌のニュアンスなんかも含めてこれはいかにもアリプロ(ALI PROJECT)っぽいな、という曲に仕上がったと思います。

-2曲目の「転生離宮へ」はイントロのピアノ・フレーズが素敵な1曲ですが、こちらはどのようなイメージを持ちながら作られたものだったのでしょう。

宝野:とってもきれいな曲ですよね、これ。

片倉:本当だったら生のフルオケで作りたかったんですよ。でも、そこは予算の関係もあって今回は自分ですべてを作っていくかたちになりました(笑)。これは、アリプロとしてのゴシック・ロマンな世界を具現化したものですね。

宝野:音的に壮大なところがあるからなのか、歌詞の内容はちょっと宇宙のほうへと飛んで行ってしまいました(笑)。感覚的には、前回のシングル『緋ノ月』の延長線上にあるものとして書いたところもありましたね。私は生まれ変わりとか普通に信じているほうなので、これは宇宙の彼方にある離宮まで魂が飛んでいってそこで輪廻転生をするみたいな、ストーリーとして描いているんですよ。初めて行くのにそんな気がしない場所があるとか、初めて会う人のはずなのに見覚えがあるとか、そういうことは誰にでも経験があるんじゃないかとも思いますし。そういう経験をすると、私はついそれを詞として書きたくなってしまうんですよね。

-ちなみに、アリカ様は次に生まれ変わるとしたら何に生まれ変わりたいのでしょう。

宝野:なんだろう? 前世は忠誠の騎士とか、中国の仙人みたいなボロをまとった男の人とか言われたことがあるけど(笑)、次は舞妓さんかバレリーナ! あとは、自分とは真逆のハスキーな声をしたアメリカのカントリー歌手にもなってみたい。

片倉:いいね。きっと、メンフィスあたりで歌うことになるんだろうな(笑)。

-さて。3曲目の「転生離宮へ」 はタイトルからしてかわいらしさの漂うものとなっておりますが、曲調にはオリエンタルな香りも含まれている印象ですね。

片倉:ネタバレしちゃうと、これはアリプロとして前に作った「戦争と平和」(2002年リリースのアルバム『EROTIC&HERETIC』収録曲)と関連性のあるような曲になりました。そのつもりで作ったいうよりは、結果としてそうなってしまったというか(笑)。30周年記念のアルバムだけに、昔取った杵柄じゃないですけど、自然とセルフ・オマージュみたいな曲になってしまったんでしょうね。

宝野:詞は昔NHKの朝ドラでやってた"あぐり"って知ってます? 最近それを再放送していたのを観て、ちょうどそれが大正時代の美容師さんのお話で。ここではそれを少しモチーフにさせてもらいました。あの時代のモガとかモボの写真って、今見てもカッコいいじゃないですか。そこに対する憧れもここにはこもってます。

-一方、4曲目の「Café d'ALIで逢いましょう」は、曲題にALI PROJECTの名前が冠せられたものになっておりますが、イントロでは、多くの人にとって耳馴染みのあるクラシックの名曲フレーズが使われているところも、大きな特徴ですね。

片倉:これは超絶技巧のヴァイオリニスト、パガニーニの曲「カプリース第24番」を使った曲になってます。当時、パガニーニというのは彼の演奏を聴いた女の子たちが失神してしまう、みたいな存在だったらしいんですよ。

宝野:THE BEATLESとか昔のロック・バンドみたい(笑)。

片倉:実際、パガニーニは、ロック・スター並みに不道徳で背徳的で狂気的な人でもあったそうですからね。実は、さっき話をした国宝をテーマにした曲を作ろうと思ったときには、彼をモチーフとしたものにしようということで、「カプリース第24番」を引用するつもりだったんですけど、途中でアルバムのコンセプト自体が変わってしまったので、冒頭の「カプリース第24番」を残しつつ"美しい曲を作ろう"ということで生まれたのが、この「Café d'ALIで逢いましょう」だったんです。

宝野:最初に狙っていたものとは違っちゃったかもしれないけど(笑)、これはこれですごくいいものにまとまってます! 歌詞に関しては、このタイトルの通りALI PROJECTのことを知る人が集う憩いの場みたいな設定で書いていきまして、聴く人が聴けばわかる料理店とかバーとか秘密倶楽部とか、これまでの作ってきたアルバムたちを彷彿とさせるフレーズをいっぱい入れてあります。そして、生まれる前にもきっと出会ってたけど、またここで会いましたね、次もいつかまたここで会いましょう、みたいなすごく優しい気持ちを込めた歌になっているんです。

-中でも、エンディングでの"誰もが戻ってくるわ 宝の在りかみたいな場所"という1節が最高ですよ。

宝野:ありがとうございます(笑)。毎回アルバムを楽しみにして聴いてくださっている方々ほど、この曲は楽しんでいただけるものになっていると思います。