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INTERVIEW

ALI PROJECT

2021.12.21UPDATE

2021年12月号掲載

ALI PROJECT

メンバー:宝野 アリカ(Vo) 片倉 三起也(Key)

インタビュアー:杉江 由紀

何よりも、僕は宝野アリカの歌と声が好きなんですよ


-それから、5曲目の「恋闇路」は冒頭ではテクノ的なイントロが鳴り響くものの、全体的には異国情緒も漂いつつ、サビでは和な味わいが広がる面白いつくりですが、これはどのようなことを目論んだうえで作られたものでしたか。

片倉:これはアレンジを変えると歌謡曲にもなっちゃうタイプの曲なんですよ(笑)。和なところはたしかに狙っていたところがあって、それ以外にロシアのバラライカの音なんかも使っていたりするし、サビの展開は、今までのアリプロではあんまりやったことなかったアプローチもとっている曲ですね。

宝野:私もこの曲では詞を和にしました。舞台は江戸時代。片倉さんからは"河鍋暁斎の日本画みたいな雰囲気の詞がいいんじゃないか"っていう意見も出ていたので、私としても個人的にとても好きな男女の心中の道行きをロマンチックに表した、とある日本画があるので、それをモチーフにしながら書いていったんですよ。だから、気持ち的にはかなりときめきながら書いた詞でした。

-かと思うと、6曲目の「ドリアンヌ嬢の肖像」は、オスカー・ワイルドの小説"ドリアン・グレイの肖像"を思わせるようなタイトルになっておりますね。

宝野:そうなんですよ。これは"ドリアン・グレイの肖像"の物語の主人公を、女性に置き換えた詞として書いてはいるんですが、話の結末は原作とは違うんですよ。

-そこがどうなっているかは、ぜひみなさんに聴いて確かめていただきたいところです。対して、こちらの曲についてはどんなことを重視されていきました?

片倉:軸にしたのはチェロだけの重厚な五重奏なんですが、アリプロとしては相当シンプルなつくりになりましたね。普段はやりすぎてナンボなところがあるせいか、ちょっと物足りなさも感じてます。30周年ともなると、ここまで大人になっちゃうのかな? って自分でそこがちょっと納得いってないというか。もちろん、歌と五重奏を最大限に生かすと考えたらこれがたぶん正解なんですけどね(笑)。

-アーティストとしての葛藤があるのかもしれませんが、聴く側としてはアルバム中盤に少し風通しの良さを感じられたところがありましたね。また、7曲目の「君影草」からはえもいわれぬノスタルジーを感じることができたのですが、この曲はどのような生い立ちを持った曲なのでしょうか?

片倉:実はこれ、僕は今回のアルバムの中で個人的に最も好きな曲なんですよ。さっきの「ドリアンヌ嬢の肖像」に対しては物足りなさも感じると言いましたけど、どうせ削ぐならここまで思い切り削いでしまったほうがいいなと感じたのが、この曲だったんですよ。彼女が歌う美しいバラードを作りたい、ということだけを念頭に置いた結果でしょうね。今までこれだけたくさんの曲を作ってきて、転調も散々やってきて、でもこの曲での転調の仕方みたいなのはこれがまったくの初めてで、自分でもそこは発見でした。30周年の節目で久しぶりに新しい発見ができたのがすごく嬉しかったです。

-それはとても素敵な逸話ですね。そして、そんな「君影草」の歌詞でテーマになっているのはスズランの花なのだとか。

宝野:スズランのことを君影草と呼ぶというのはわりと最近になって知ったことだったので、次にバラードで詞を書くことがあったら使いたいなと前から思っていたんですよ。ただ、スズランというと根っこに毒があるからどうしてもそこを書きがちなんだけど、曲が曲だけに今回はそこにはあえて触れないようにしました。スズランの毒のことは、また別の機会に書こうと思います(笑)。

-ところで。8曲目の「令和燦々賛歌」は今の元号が入った曲となっておりますが、こちらを作られることになったきっかけはなんだったのでしょう。

片倉:これはアリプロの中にあるいくつかの要素の中でいうとジャズ領域の曲を作ろう、ということでかたちにしていったものになります。以前には「昭和恋々幻燈館」(2005年リリースのアルバム『Dilettante』収録)という曲もスウィング・ジャズ的な感じで作ったことがあるんですけど、令和というのはコロナもそうですし、自然災害も多くて何かと大変な時代じゃないですか。そんな令和という時代を、ジャズの調べに乗せて描いてみようということで、これはアレンジをいつもこういうタイプの曲のときにお願いしてる斎藤 聡氏に頼みました。

宝野:最終的にアレンジがとってもゴージャスになったので、これはそれに合わせて歌詞を書き直したんですよ。暗い時代ではあるけれども、希望を持って生きていきましょうよ! というふうに。それで正解だったと思います。

片倉:これは令和という時代における応援歌ですね。アリプロなりの。

-はたまた、9曲目の「日出づる万國博覧会」では、ファンタジックな異世界が生み出されていくことになっておりますが、ここにはALI PROJECTの真髄とも言うべきものが目いっぱいに詰まっておりますね。

宝野:ね、素敵でしょ? 私もこの曲大好きなんです(笑)。

片倉:でもね、これを作り出すのはつらかったですよ(苦笑)。もう最後のほうであと1曲っていう段階だったから、ものすごく追い込まれてましたもん。だけど途中で"あぁ、そうか。『Belle Époque』なんだから、万博の歌があるといいな"と思ってそこからはまとまっていくのも早かったです。

宝野:1900年にパリで行われた万博は、まさにBelle Époqueの時代の頂点ととして語られている出来事なくらいですからね。それをテーマにするのはすごくいいな、と私も思いました。

片倉:解釈としては、アリプロの作ってきたいろんな音楽は、万博のようでもあるというふうにも捉えることができるしね。

宝野:たしかに。あらゆる美しいものを共有しよう、分け合おうという精神は大事じゃない? この曲では万博というモチーフを通じて、そんな世界の雰囲気をかわいく華々しく伝えたかったんです。今はこんな時代だからこそ、前向きに行かないと!

-なお、初回限定盤については、このあと「Art de Vivre (instrumental)」でアルバムが完結するのですが、通常盤には「森の祭典」がさらに追加されておりますね。

宝野:アリプロのアルバムはいつもインストで終わっていくので、30周年記念の今作でもそこは踏襲することになりました。

片倉:インストはのちのちコンサートをやるとき、衣装替えをするのに必要なんです。でも、今回のは曲が短めだからね。ちょっと急ぎめでお願いします(笑)。

宝野:えー、困る(笑)。そういえば、もともとはこのインストを"Belle Époque"ってタイトルの曲として作るっていう話がなかった?

片倉:あったんだけど、それをやるなら生オケで壮大に作りたいなと思ったから、ここでは少し解釈を変えて別に曲を作りました。直訳すると、"Art de Vivre"は暮らしの芸術という意味の言葉なんだけど、ALI PROJECTの音楽を聴いて美しい生活をしていきましょうね、というのがこの曲にこもっているメッセージなんです。

宝野:通常盤の最後に入れた「森の祭典」は、もともと1988年くらいに作った曲をこのアルバムのために新録したものです。

片倉:デモ・テープとして35年くらい前に作った曲を、今回このレコーディングのために引っ張り出してきて自分で耳コピして、それで初めて音源化したんです。元音源がカセットテープしか残ってなかったから、劣化してケロケロになってて音をちゃんと聴き取るのがまずは大変でしたよ(苦笑)。

宝野:歌詞もこれは当時のテープからそのまま書き起こしをしました。

-30周年作品においてレアな過去曲が新録で蔵出しされた、というのはこれまた感慨深いことですね。

片倉:昔の曲なのに、"当時はこんなことやってたんだな"というより、わりと曲の作り方そのものは"今に通じてるところがあるな"って感じたんで、それって"あんまり成長してないっていうこと!?"とも思ったんですけどね。時間が経っても本質的なところっていうのは変わってないみたいです(笑)。

宝野:温故知新ってことなのかな(笑)。

-いずれにしても、『Belle Époque』は大変素晴らしい作品に仕上がりましたね。

片倉:すごくいいものにはなったと思うんですよ。ただ、自分的にはまだやり残したことがあるなーって感じてるのも正直なところです。結局、30周年でやめるくらいの気持ちではいたんだけど、まだこれだと"やめられないなぁ"って感じちゃうというか。

宝野:そうそう、まだ全然やり残してますよ! そこは私も同じ気持ちです。『Belle Époque』は『Belle Époque』でもちろんいい仕上がりになってるんですけど、私はアリプロでまだ妖怪シリーズをやってないし。もっと人ではないいろんなものになって歌いたい!!

片倉:じゃあ、またそういうのは今後やっていきましょう(笑)。

-期待しております(笑)。と同時に、年明けからは、大阪と東京での"ALI PROJECT 30th ANNIVERSARY TOUR 2022「Belle Époque」"も始まるそうですね。

宝野:今度のライヴでは、今回のアルバム『Belle Époque』の世界を、ライヴで実際に感じていただけるような空間を作っていきたいですね。

片倉:僕としては、ライヴのあとに打ち上げができるかどうかが気になってます(笑)。

-最後に。ALI PROJECTが30年間続いてきた最大の理由はなんだとお考えですか?

片倉:何よりも、僕は宝野アリカの歌と声が好きなんですよ。そこが長く続いてきた根底にあるんじゃないかと思います。あとは、よくケンカしたのもたぶん良かったんだよね。お互いに1歩も引かないし、決着なんていつもつかないんだけど(笑)、彼女の天然で純粋なところは歌詞や歌にも反映されているわけでね。そこはALI PROJECTにとって大切なものなんだなと僕は昔も今も感じてます。あとは、圧倒的な大ヒットがなかったのも大きいかな。

宝野:それは絶対ありますよ。ある時期、周囲から"暗めのドリカム(DREAMS COME TRUE)"みたいな感じで売り出そうっていう提案をされたことがあって、曲も"もうちょっと明るめのものを作ったら"って、アドバイスをされたことがあったんですけど(笑)、そこでもし媚びて変に売れてたら、その売れた曲ばっかり歌うみたいなことになってたかもしれないし。たぶん、ふたりとも勘違いして天狗になって終わってたかも。

-媚びとは無縁のこの気高さ。それこそALI PROJECTらしさだと思います。

片倉:そうなんですよ。別にすごい大ヒットとかなくても、今アリプロやってて自由で楽しいし。だから、僕たちはこれでいいんです(笑)。