INTERVIEW
ALI PROJECT
2021.10.20UPDATE
2021年10月号掲載
Member:宝野 アリカ(Vo)
Interviewer:杉江 由紀
−それから、今回のシングル『緋ノ月』にはもう1曲カップリングとして「ノスフェラトゥ」という楽曲も収録されております。こちらは特にタイアップのあるものではないはずですが、"ノスフェラトゥ"というのも吸血鬼を表す言葉ですよね。しっかりと連動性を持たせた楽曲が入っているところにも、またALI PROJECTらしさを感じました。
そう、シングルでタイアップものを出すときはいつもこうなんですよ。あと、そもそもこの"ノスフェラトゥ"というタイトルやモチーフに関しては、20年くらい前からずっと"いつかこれを使って曲を作りたいな"と思い続けてきたものでもあるんです。
−構想20年ですか......当時、このテーマに着目された理由はなんだったのですか?
誰かに聞いたんですよ。"吸血鬼のことをノスフェラトゥって言うんだよ"って。そのときにとてもきれいな言葉だなと思って、これまでずっと自分の中で大事にしていた感じですね。たしか、古いモノクロのサイレント映画で"吸血鬼ノスフェラトゥ"っていうのがあるじゃないですか。私はまだ観たことないんですけど、それの話題が出たときに初めて耳にした言葉でした。吸血鬼のお話って、基本的に悲しくて切ないものが多い気がするな。
−もっとも、この「ノスフェラトゥ」については切なくも美しい旋律が漂うなかで、途中には中東方面を彷彿とさせるエキゾチックな調べが織り込まれていたりもします。この大胆な曲構成には、聴いていていい意味での意外性を感じました。
では、この曲についても片倉さんから書面をもらっているので読みますね。"当初はイリナのことを描いたバラードを、と思いましたが。ここは吸血鬼そのものをイメージしながら、神秘的で少しエスニックな雰囲気の漂う愛の歌にしていきました"とのことです。この曲に関しては、私が"ノスフェラトゥ"というタイトルで作りたいと先に言っていたんですよ。それでこういう曲にしてくれたんだと思います。
−吸血鬼と言えば、ステレオタイプなところでは東欧のイメージなのですけれどね。そこにエキゾチックな風を吹かせて成立させてしまう手腕は実にお見事です。
吸血鬼の本場はルーマニアなんだけどね、本当は(笑)。なかなかサウンドとしては不思議な曲に仕上がりましたが、アリプロ的にはエスニックなものや異国情緒ものも結構あるので通常営業といえば通常営業です。
−では、そんな「ノスフェラトゥ」のヴォーカリゼイションについてアリカさんがこだわられたことがあったとすると、それとはどのようなことでしたか。
この曲は......難しいんですよ、とにかく(苦笑)。
−えっ! これまでさんざん高難易度な楽曲たちを鮮やかに歌いきってこられたアリカさんでも、そんなふうに"難しい"と感じられることがあるのですか??
この曲は、音がすごい飛び方しますからね(笑)。でも、何回か歌っていくうちにだんだんとそれも普通のことになっていくので、テンション的には儚げなところも醸し出しつつ歌っていくようにしました。
−もはやシングルというよりも、プチ・アルバムと呼んだほうが良さそうな今回の2曲は、それぞれにまた新たなる異次元世界をみなさまに感じていただけるような作品に仕上がっておりますね。
片倉さんが曲を作って、私が歌えばすべてはアリプロになるというところをまた今回の作品ではよくわかっていただけると思いますし、ここでまた新しいものを作れたという手応えもあるので、ぜひこの2曲とも深く聴き込んでいただけると嬉しいです。
−さて。2021年10月に今回のシングル『緋ノ月』が出ましたあと、じきにやってくるのは2022年です。なんと、来年ALI PROJECTはデビュー30周年という大きな節目を迎えられることになるそうですね!
はい、おかげさまで(笑)。まずは30周年記念アルバムを出そうと思ってまして、それは今年の年末には出す予定でいます。今ちょうど作っている最中ですね。
−現段階では、いかなるカラーの作品に仕上がっていきそうですか?
テーマにしているのは"美しい時代"ですかね。フィクションとか架空の世界でもあるけど、アリプロはいつも音楽を通して美しい時代を作ってきました、みたいなことを詰め込んだものにしていきたいなと思ってます。
−今このタイミングで"美しい時代"をテーマにされるというのは、現実との皮肉なパラドクスを感じるところでもありますね。
そうそう、そういうところもあるんですよ。何も今に限ったことではないけど、現実の世界っていうのは何かと醜いし、いろいろと美しくないものがあふれている世の中ですからね。だとしたら、そんななかでただ漫然とは生きていたくないじゃない?
−極論を言ってしまえば、ALI PROJECTのような美しき異世界を呈示してくださるアーティストの作品を聴くことで、非現実的な幻想的世界へと現実逃避したいですね。
いいことだと思いますよ、むしろそれが正しいです。私も、歌うときはできるだけ人ではないものになって歌いたいですもん。30年を経て今さら普通にジーパンで歌うとかにはならないので(笑)、というかそれは絶対にイヤだしやりませんので、これからも安心してこの世界を楽しんでください。
−そして、現在はアルバムを制作されているとのことですが。今後に向けてライヴのご予定がありましたら、そちらもお知らせいたたけますと幸いです。
年末にアルバムを出したら、もちろん来年はそれにともなったコンサートをやりたいと思ってます。毎年アルバムを作るごとに必ずコンサートはやってきているんですが、来年のやるものに関してはライヴでも30周年を記念した内容のものをやりたいと思っていまして、これまでに作ってきた中でも特にみなさんが知っているような人気の高い曲たちを集めた構成にしていこう、と今ちょうどいろいろ考えているところなんです。
−実に楽しみです。実現することを心より願っております!
たぶん大丈夫だと思いますよ。というのもアリプロのお客さんは、前からなんですけどすごくおとなしいんですね。誰も騒がないし、誰も立たないし、私もフェスとか以外の自分たちのワンマン・ライヴで煽ったりするのはイヤなのでやらないから(笑)、静かに聴いてくださる方々ばかりなんです。だから、ちょうどこのコロナ禍にも相応しい状態でやれると思ってます。
−おそらく、みなさん集中して聴いていらっしゃるのでしょうね。心の中はさぞかしエキサイティングな状態になっているのだと思いますよ。あるいは、音と歌の迫力に気圧されてしまっているというケースもありそうです。
どうやらそういうことではあるみたいなんですけど、でもほんとに昔からライヴ中でも場内は常にシーンとしてて(笑)。昔は"私のせい?"って思ったこともあったけど、今はもう慣れちゃったのでそれが普通だし、こういうご時世になってからは特に会場を貸してくださる方たちも"アリプロさんだったらぜひ!"って言ってくださる感じなので、今度のライヴもガイドラインに沿いながら楽しくさせていただきたいと思っております。みなさん、どうぞ安心していらしてください。
−最後に。いわゆる激ロック読者のコア層にあたる、ヘヴィ・ロック好きな方たちに向けてALI PROJECTの魅力をアピールしていただけますと嬉しいです。
聴いてもらえるとわかると思うんですけど、アリプロも根底にあるものは間違いなくロックなんですよ。普段、私は海外のシンフォニック・メタルをよく聴いておりますしね。それに、一番わかりやすい言い方をするならアリプロの音楽って実はプログレなんじゃないかなぁ。わたし、昔からNOVELAが好きだし。プログレ最高だと思うので、プログレ好きという方はALI PROJECTもぜひ聴いてみていただきたいですね。