LIVE REPORT
MINAMI NiNE / STUNNER / SABOTEN / Northrop(O.A.)
2021.09.03 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 菅谷 透 Photo by 小山田祐介
9月3日の"LIVEHOLIC 6th Anniversary series"は、"~唄夏(うたげ)~"と題した公演が開催。パンク・ロックを基調にした4組が名を連ね、厳しい残暑を乗り切るにはうってつけのライヴとなるところだったが、この日はあいにくの雨で季節外れの肌寒さに。しかしながら、それぞれの熱のこもったライヴは、寒気もコロナ禍の鬱屈とした空気も吹き飛ばすには十分だった。
オープニング・アクトとしてステージに立った熊谷発の3ピース・バンド Northropは、ド頭から2ビートの突進力溢れるショート・チューンを連続で披露。溌溂としたプレイで徐々にフロアの心を掴む。"こんな大先輩ばっかりのヤバいイベントに呼んでもらったってことは、LIVEHOLICからの「お前らカマしてこい」ってことだと思うんで"と三井颯介(Gt/Vo)がMCで語っていたが、MC以外の曲間をギチギチに詰め、汗だくになりながらもエネルギッシュな演奏を届ける姿からは、今日にかけた意気込みが伝わってくる。ラストの「Calling」まで一気に駆け抜け、物怖じすることのないステージングで、先輩たちへとバトンを繋いだ。
続くSABOTENは、所信表明の如く奏でられた「オウンゴール」、陽気ながら哀愁も帯びたサウンドで観客を躍らせた「アバンチュール」と、親しみやすさのあるパフォーマンスでスルスルと懐へと入り込んでいく。大規模イベントに批判が集まっていた時期だったが、"最終的には「この場所最高やからみんなもっと遊びに来いよ」って言えるような、そんな時代、そんな場所を一緒に作ろう"とキヨシ(Vo/Gt)が呼び掛け、フロアからも賛同の拍手が巻き起こる。叙情的なコーラスとメッセージが刺さる「アサインブレイカー」を鳴らすと、「ホノイカヅチノコビト」ではヤッソーのグルーヴィなベース・リフで荒々しさも見せる。後半ではキヨシが、"問題が起きてしまうこともあるけど少しでもライヴの現場をより良いものにしていこう"と語り、"きれいごとをいっぱい言っていくけど、それを責任持って形にしていくからな"と宣言。呼応するかのように「シナリオ」をプレイすると、"ラストはとことん笑おうぜ"のひと言で「サークルコースター」へ。笑顔と回転するタオルでフロアが満たされ、ポジティヴな余韻が残っていた。
メンバー全員が向かい合ってのジャムから始まったSTUNNER。フロアのひとりひとりへ面と向かって届けるような髙木正典(Vo/Gt)のアカペラから「OVER」を披露すると、「Oath」ではコロナ禍を反映しながらも、それでもあがいていこうとする意志を刻み込む。鈴木悠巧(Dr/Cho)の衝動的なビートに突き動かされるような「each」や、温もりと切なさが去来する「time goes on」と畳み掛け、観客を確実に引き込んでいった。コロナ禍で制限だらけのライヴに"また未来をみんなで作れるように、やむを得ずルールを守ってやってます"と髙木がこぼす場面もあったが、裏を返せばそれでも生で直接伝えたい歌があるということでもあるのだろう。直後に披露された、背中を思い切り押すような「Will you ?」に、観客も拳を掲げ応えていた。ラストは「Rock'n'Roll Dude」をパワフルにかき鳴らし、"俺たちがお前のヒーロー、STUNNERでした!"とステージをあとにした。
トリを務めるMINAMI NiNEは、スケロク(Dr/Cho)の軽快なビートと郷愁を感じさせるメロディの「南九節」でスタート。ヒロキ(Vo/Ba)の"下北、いこうぜ!"の掛け声に手が挙がると、「Step」ではワラビノ(Gt/Cho)がエモーショナルにソロを決める。MCでは宮崎訛りの軽妙な語り口で観客の笑いを誘いつつ、"人間の力は絶対強いはずです"と「F」を披露し、間髪入れず「エゴ」へと繋げていった。後半のMCでは、ヒロキがNorthropと同年代のころ、このビルにかつて存在したライヴハウス"下北沢屋根裏"でうまくいかない日々を過ごしていたという話に。初めてライヴを観に行ったバンドがSABOTENで、数年後にできたかけがえのない友達がSTUNNERで――という、様々な偶然が重なった"奇跡的な夜"だと語ると、そんな日に集まった全員と想いを通わせ合うかのように「心」、「Orange」を披露する。最後は観客に手のひらを掲げるよう求め、その手で"温もりを感じるために、絶対なんとしても頑張ろうや"と「花」を届けた。自然と湧き上がったアンコールの拍手には「Don't worry」で応え、この日のライヴを締めくくった。
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