LIVE REPORT
Aldious
2021.08.15 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 菅谷 透 Photo by Shogo Mizuno(Jasmine)
コロナ禍により延期となっていた2020年のライヴ・ツアーを[Aldious Tour 2020-2021 "Unlash"]として約1年越しに回り始めた矢先の6月、ヴォーカル R!Nの脱退という危機に直面したAldious。不測の事態に見舞われた彼女たちだが、ソロ・シンガーの大山まきをゲスト・ヴォーカルに招いてツアーを継続することを決断。各地を転戦し、山場である恵比寿LIQUIDROOM公演の日を迎えた。
SEが流れ、Marina(Dr)、トキ(Gt)、サワ(Ba)、Yoshi(Gt)の順で楽器陣が登場すると、3バスのセットに鎮座したMarinaのカウントから「Luft」でライヴがスタート。ツイン・リードが奏でられるなか、黒いドレスを身に纏った大山がステージに姿を現し、力強いヴォーカルを響かせて、集まった観客たちにその実力を見せる。"こんばんはAldiousです、盛り上がっていこうぜ!"と煽ると、続く「梅華」では薄紅色の照明の中、繊細な歌唱で妖艶な一面も覗かせる。オリジナルの楽曲を尊重しつつ、彼女ならではのテイストもしっかりと打ち出した大山の歌唱は、サポート以上の存在感だ。楽器陣もそんな大山に呼応するかのように、Marinaとサワがアグレッシヴなビートを刻み、トキとYoshiが流麗なギター・ワークを奏で、熱気あふれるステージを作り上げていく。この体制となってからたった1ヶ月半とは思えないほどの息の合ったパフォーマンスに、ファンも大きな拍手を返していた。
"今日はいろいろなことを乗り越えて来てくれてありがとう"とYoshiが感謝を述べると、Aldious結成前から存在する楽曲で、Yoshiはじめメンバーにとっても思い入れが深いという「夜蝶」を約8年ぶりにプレイ。大山が"もっと来れるでしょう、東京!"と焚きつけ、「Go away」、「Absolute」へと繋げていく。大山が歌詞に合わせて、隣へ寄ってきていたサワに目配せしたり、手を差し伸べたりと遊び心あふれる場面も見られたが、これもいかに楽曲を自らのものとして咀嚼しているかの現れだろう。そして、トキの奏でるアコギの音色から始まった「Reincarnation」では、重厚で無機的なアンサンブルと感情豊かな歌声が溶け合い壮大なカタルシスを生み出していた。
MCになるとサワが"Aldiousは何度でも蘇り、羽ばたいていきます"と力強く宣言し、フロアからは温かい拍手が巻き起こる。トキも、会場のファンも含めて"みんなでひとつのバンドです"と語り、声を上げることのできないファンのために考案したという、頭上で手を合わせ"A"の形を作る"A(Aldious)ポーズ"をレクチャー。会場に一体感をもたらすと、"明日死んでもいいってくらい、伝説の日にしていこう!"と叫び後半戦へ突入する。一糸乱れぬヘドバンを見せた「Bind」で勢いをつけると、「We Are」ではファンが待ってましたとばかりにサビで"Aポーズ"をかざし始める。制約の多いライヴにもどかしさを感じていた人も多かったのだろう、最後方に至るまで高々と"We Are Aldious"を掲げる光景は壮観で、メンバーも笑顔でその"コール"を受け止めていた。続くハードな「Re:fire」でさらに加速すると、本編最後に披露された「STEP」では、"この曲はみんなで歌うよ!"(大山)とメンバーひとりひとりがヴォーカルをとる粋な演出が。色とりどりのライトが照らし出すピースフルな雰囲気に包まれるなか、ラスサビで大山が歌い上げた"2 step乗り越えてから/1 step共に歩こうよ"というフレーズからは、ファンへの想いが窺えた。
アンコールに応えメンバーが姿を現すと、こちらも約2年ぶりの披露だというMarina作曲の「マリーゴールド」をじっくりと聴かせていく。清涼感あるしなやかなビートがアクセントになった「BLOWS」が続き、本編とはまた異なる表情を見せていった。MCに入り、トキが客席へ"どうですか、「マキディアス」は?"と問い掛けると、ここまでの文句なしのパフォーマンスに万雷の拍手が沸き起こる。なおアンコールでは大山が純白のウェディング・ドレスにお色直しして登場しており、そのことに触れられると"ロック/メタルと結婚します!"とメロイック・サインを掲げるひと幕もあった。しっとりとした楽曲が続いていたところだったが、"ここからはオモクソ激しいゾーンです!"(トキ)と言い放つと、強力ナンバー「Spirit Black」をドロップ。大山の鋭いヴォーカルが冴え渡り、まさに絶唱といった趣で、ウェディング・ドレスとのギャップもシビれる。「IN THIS WORLD」ではトキとサワがユニゾンのタッピング・ソロをバシッと決め、ラスサビの"魂の声で歌って!"という呼び掛けでは無数の手が掲げられていた。
鳴りやまない拍手を受け、メンバーが再度ステージに登場。電車ごっこのようにみんな一列になり、肩に手を置いて出てきた姿がなんとも微笑ましい。1ヶ月半の間に芽生えたチームワークに(大山は普段人見知りだとか)、メンバーがそれぞれ"これは運命だったのかもしれない"と口にしていたのも印象的だった。"もっともっと愛し合おうぜ東京!"と「Dominator」、そして「夜桜」のキラーチューン2連発で締めくくる。最後は今ツアー恒例になっているという、"Aポーズ"を用いた"ウィーアー三唱"で大団円となり、2時間に及ぶ濃厚なライヴは幕を閉じた。
キャリアを総括し、初期の楽曲や(ウェディング)ドレスといったバンドの根幹にも触れながら、立ち止まらず突き進む姿勢と、現在進行系のスペシャルなパフォーマンスを披露した"マキディアス"。この日の模様は映像化が決定しているとのことで、様々な事情で会場に足を運べなかった人も今回の熱演をたどることができるのは嬉しい限りだ。12月には東名阪でのツアー・ファイナルも決定しており、彼女たちの"今"ならではのステージを目に焼きつける貴重な機会となることだろう。
[Setlist]
1. Luft
2. 梅華
3. Moment
4. Ground Angel
5. 夜蝶
6. Go away
7. Absolute
8. Reincarnation
9. Bind10. We Are
11. Re:fire
12. STEP
En1. マリーゴールド
En2. BLOWS
En3. Spirit Black
En4. IN THIS WORLD
W En1. Dominator
W En2. 夜桜
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