INTERVIEW
Aldious
2020.03.13UPDATE
2020年03月号掲載
Member:R!N(Vo) Yoshi(Gt) サワ(Ba) Marina(Dr)
Interviewer:米沢 彰
3代目ヴォーカルとしてR!Nが加入し、新体制となったガールズ・メタルの最高峰、Aldious。産休のために活動を休止していたトキも復帰し、今年はフル・パワーとなった彼女たちの活躍が安心して見られるだろう。R!N加入の経緯から、新ヴォーカルでのリレコーディング曲が中心となった今作への思い、R!Nの作詞作曲による唯一の新曲など、様々に訊いた。
ライヴでしか聴けなかった新体制のAldiousの音楽が、日常の中で聴いてもらえることになるので、発売が待ち遠しいですね
-3年ぶりのフル・アルバム『Evoke 2010-2020』がリリースとなりますね。
Yoshi:そうですね。フル・アルバムと言っても、ほとんどがセルフ・カバーなので、新曲は1曲のみなんです。ただ、セルフ・カバーを出す理由があって。3代目ヴォーカルのR!Nが加入したので、リスナーの立場からするとAldiousを好きになって"ライヴ行きたい! 予習しよ!"ってなったときに"この曲はヴォーカルが違う、こっちはまた違うヴォーカルだ......"って戸惑ってしまうと思うんですよね。なので、ライヴでよくやる曲を中心にセレクトして、R!Nのヴォーカルで録り直したっていう感じです。
-なるほど。そういう経緯もあって今回のリリースには、通常のリリースとはまた異なる思いもあったんじゃないかとは思うのですが、今の率直な感想や思いなどをうかがえますでしょうか?
Yoshi:本当に"昔の曲が蘇った!"っていう気持ちが大きいですね。アルバム・タイトルの"Evoke"にも"過去を呼び起こす"とか、そういう意味があるので。昔の曲を今のメンバーで世に出せることがすごく嬉しいです。
R!N:今回のアルバムの選曲は、去年のツアー([Aldious Tour 2019 "Evoke"])のセットリストに組まれていた曲を中心に収録されているんです。ヴォーカルが私で3代目ということで、新体制のAldiousとして駆け出していくにあたって、新しいイメージを形作っていくために、これまでの楽曲プラス新曲で、"これから新しいスタートを切ります"っていうのをファンの方々に聴いてもらいたいという意味で、セルフ・カバー・アルバムを出すっていうのはすごくいい案だなと思いました。その中の最後に、私が作詞作曲を担当した新曲を入れていただくっていうことが決まって、これを機に、今までのファンの方々も含め多くのファンに、新しいAldiousを届けることができたらいいなって。
Marina:今作はセルフ・カバー・アルバムということで、もともとあった曲がメインでプラス1曲の新曲っていう形なんですけど、R!Nちゃんが加入してこの5人体制になってから、R!Nちゃんの声を聴ける機会ってライヴに来てもらう以外になかったので、これまでの曲をリレコーディングして、ライヴ以外でもR!Nちゃんが入ったAldiousっていうものを聴いてもらえるっていうのが嬉しいなと思っています。去年回ったツアーでしか聴けなかった新体制のAldiousの音楽が、みなさんの日常の中で聴いてもらえることになるので、発売が待ち遠しいですね。
サワ:Aldiousも活動歴が長くなって、アルバムもたくさん出してきましたし、曲数もかなり多いので、新しく知ったお客さんが"どれから聴けばいいんだろう"とか、"どれをライヴでやってくれるんだろう"とかいうことがわからないと思うんです。今回セルフ・カバーで出すアルバムは、今ライヴでやっていてとても盛り上がる曲を中心に入れているので、初心者の方が"まずはこれを聴いてみよう"っていうのに、ちょうどいいんじゃないかと。昔のアルバムとメンバーも違っていて、今のメンバーでやっているのを聴いてもらえるという意味でも、わかりやすいアルバムになってるので、おすすめしたいですね。
-メンバーのみなさんの感想を聞いていると、今作はリアルタイム・ベストというか、そういう位置づけなんじゃないかと感じました。
Yoshi:そうですね。収録曲は、1stアルバム(2010年リリースの『Deep Exceed』)収録のものから最新曲まで比較的まんべんなく入れているんですけど、メタル・バンドとしての"これがAldiousのメタルだ!"っていう曲を中心に切ない曲やポップな曲、いろいろな曲調のものが入るようにと思って選びました。なので、この1枚を聴けばAldiousの音楽性をわかってもらえるんじゃないかと思います。
-R!Nさんはツアーの準備のタイミングから歌い込んできていると思いますが、実際に歌ってみて楽曲の印象が変わったところなどはありましたか?
R!N:今回の収録曲は、ツアーが始まる前からセットリストに含まれていた曲が多かったんですけど、「Ground Angel」っていう曲だけ、レコーディングの時点ではまだライヴで披露していなかった曲だったんですよ。なので、どういうふうに雰囲気を作るかとか、リーダー(Yoshi)からアドバイスを貰ったり、あと、他の楽曲も「胡蝶ノ夢」だったらサワさんにディレクションしていただいたり、そういう試行錯誤をしながら歌っているんです。でも、ライヴで歌ったものとレコーディングで形にしてみるのとでは、モチベーションやアドレナリンの差もやっぱりあるので、すごく苦戦した部分も多かったですね。
-特にこの曲が大変だったなっていうのはありますか?
R!N:「Eversince」が一番大変でした。ライヴだとアドレナリンや空気感で結構ポン! といいものが出ることもあるんですけど、レコーディングって何度も録り直しができるぶん絶対に妥協ができなくって。何度も録り直したんですけど、Aldiousの中でも一番音程が高いと言われている曲で、いかんせんハイトーンすぎるので、すごく苦労しました。
-聴いてても、"この音出るんだ!?"と思いました(笑)。すごいなって。
一同:(笑)
-音源で聴いていると、そんな苦労を感じさせないくらいすんなり出てる印象だったんですけど、やっぱり大変なんですね。
Yoshi:ファンの方々からも"R!Nさんのライヴ初めて観たけど、サラッとハイトーン出しててすごいですね!"って言われるんですけど、本人はそうじゃないんですよね(笑)。なんか、必死に歌ってるというよりは、余裕があるように聴こえるみたいです。ただ、彼女自身、本当に頑張って歌いこなしてくれているんですよね。
-その感覚はちょっとわかりますね。ハイトーンって絞り出している人と届いちゃう人がいるじゃないですか。R!Nさんの場合は届いちゃう人に聴こえるんですよ。
R!N:めちゃくちゃ必死です!
一同:(笑)
-そして、実際に音源を聴いてみてR!Nさんがあまりにぴったりハマっているのには驚きました。メンバーのみなさんは実際に音源になって聴いてみていかがでしたか?
Marina:今作はほんとにいい意味で"化けたな"っていう感じがしていて。それってやっぱりR!Nちゃんの声が曲とマッチして、いろいろな化学変化が起きているからかなと。もちろんミックスのおかげもありますけど、楽曲が新しいものになったように聴こえる部分がありまして。さっきR!Nちゃんが言っていた通り妥協せずに、納得いくものを録ってくれているので、自分たちにとっても新鮮なものになっているし、手に取ってくれるリスナーの方にとっても、新しく感じられる作品になっているんじゃないかなと思います。
サワ:ミックスもそうだし、まったく同じことをしているわけではなく、追加されている要素もあるので、それを含め今までやってこなかった新しいことをして、同じ曲でもパワーアップした新しいバージョンになったなと思っています。
Yoshi:私自身が弾いていて特に好きなのが「Utopia」なんですけど、もともとこの曲が大好きで。Re:NO(2代目ヴォーカリスト)から曲を貰ったときに、歌詞もめちゃくちゃいいし、キャッチーだと思っていたんですけど、この曲は特に、R!Nのヴォーカルがハマっている曲でもあるんですよ。いちリスナーとしてファンになるくらい聴いていて気持ちいい曲ですね。それに「Utopia」の明るいトーンだけじゃなく、「Bind」だったり「Eversince」だったり、メタルの歌い方もできるし"同じ人なのかな?"って思うくらいバリエーション豊かな歌唱になっているので、そういうところも注目して聴いてもらいたいなと思います。
-歌い方にすごく表情があって、これまでの歌い方を踏襲しているところもあれば更新している部分もあって、ライヴで観るのが楽しみです。今回R!Nさんの加入が決まるまでは、Re:NOさんの脱退があまりにも急で、これはAldiousもさすがに今後厳しいんじゃないかと正直頭をかすめたのですが......。
Yoshi:たしかに、3代目ヴォーカルを入れてまでやるバンドってなかなかないですよね。
-特に、ガールズ・バンドっていうことで選択肢が限られてしまうし。しかも、メタル・シンガーってそんなにいないじゃないですか。本当によくR!Nさんを見つけられたなって思いました(笑)。
Yoshi:私自身メンバー集めをするときにネットを使うことが多くて。Aldious結成のときもmixiを使ったんですけど......。
-mixi!? 時代ですね(笑)。
一同:(笑)
Yoshi:Rami(初代ヴォーカリスト)と知り合ったのも、たまたま共通の知り合いがいて彼女のことは知っていたんですけど、初めて連絡を取るときにmixiを使って連絡先を聞いてっていう(笑)。今回はYouTubeで何百人も女性ヴォーカルを調べていたんですけど、メタルのシンガーでフリーっていうのはやはりいなくて。そこでメタル以外で探してみたんですけど、そうするとメタルの歌唱ができるのかどうかがわからないんですよね。動画で観ているだけだとハイトーンが出るのかわからないし、出る人でもメタルが好きかもわからないですし。それで行き詰まったときにたまたまMarinaと会う機会があったので、その流れでMarinaの知り合いで顔の広いプロデューサーの方に紹介していただいて、R!Nと知り合えたんです。その方が元WANDSのキーボーディストの大島こうすけさんなんですけど。
-すごいとこに繋がりますね(笑)。
Yoshi:そうなんですよ(笑)。その方が"この前仮歌の仕事で会った子がここ数年類を見ないくらい上手い子で、リズム感も良くて、性格もざっくばらんとしててすごくいい子なんで、今電話して聞いてみるよ"って言って。その場ですぐに聞いてくれたんですよ。
-すごい展開ですね!
Yoshi:そしたら電話にすぐ出てくれて。大島さんが"ハード・ロックとか激しい系のガールズ・バンドなんだけど、興味ある?"って聞いたら"すごくあります!"って言ってくれたんです。そこから2~3週間後には一緒にスタジオに入って、仮歌録りでAldiousの曲を歌ってもらったら、がっちりハマったんですよね。そして、お互いにいきなり正式加入っていうのは不安だったので、"じゃあ今年のツアーを1回お試しでやってみてから"っていう話になって。
R!N:もともとはメタルを歌うシンガーではなかったんですけどね(笑)。
Yoshi:なので、もしYouTubeでR!Nの動画を観てても、声を掛けなかったと思うんですよ。ストリートでピアノの弾き語りとかをしているシンガー・ソングライターだったので、それを観ても、"この子いいな!"とはならなかったんじゃないかと。
Marina:だからこそ、大島さんっていう信頼できる方が"この子すごいよ!"って言ってくれたおかげで、会ってみることができたんですよね。可能性を感じたし、上手いとか以上に人間的な部分も重要だと思っていたので。
Yoshi:ちなみに、その大島さんには最後に入っている新曲のプロデュースをしていただきました。