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LIVE REPORT

CROSS VEIN

2018.04.01 @下北沢GARDEN

Writer 土屋 京輔

アーティストの活動においても、なんらかのキッカケが転換点を導くケースは往々にしてある。CROSS VEINに関して言えば、シングル『The Revival』でも、バンドは確かな手応えを掴んだはずである。しかし、それが序章に過ぎなかったのは、去る2018年3月にリリースされた新編成での第1弾アルバム『Gate of Fantasia』に耳を傾ければわかる。理想とするドラマチックなヘヴィ・メタル。これまでの持ち味を生かしたまま進化を刻み込んだ彼らは、新たな次元へと踏み込んだ。
 
同作を引っ提げた東名阪ツアーの初日となった東京下北沢GARDEN公演も、その姿勢が伝わってくるものだった。"もっと前にいらしてもよろしくてよ。それでは開演いたします"というJULIA(Vo)のアナウンスから、場内には新作のオープニングと同様にイントロダクション「Tales of Departure」が流れ、そのまま「Graceful Gate」がスタート。伸びやかに響く声と力強い演奏。ステージに立つ6人は笑顔でファンと対峙している。
 
ここからしばらく既発曲を並べて、従来と変わらぬ、それでいて勢いを増したパフォーマンスを繰り広げていく。特にShoyo(Ba)は序盤からアクティヴにオーディエンスを煽る。お馴染みのマテリアルゆえに盛り上がりは予想できるとはいえ、フロアとの一体感が一気に高まったように感じたのが「The Revival」だったのも象徴的かもしれない。
 
中盤は『Gate of Fantasia』収録曲に焦点を絞ったセットへ。"喜び、踊り、歓喜せよ!"(JULIA)と始まった、モーツァルトの有名曲をモチーフにした「Masquerade~交響曲第25番~」の凝ったリズム・アレンジは、個々に高い実力を持つプレイヤー揃いのバンドならでは。ダーク且つ耽美な「Immortal Beauty」の世界観に続き、インストゥルメンタルの小曲「Led Moon」の寂寥感を巧みに描いた、Yoshi(Gt)とMASUMI(Gt)のエモーショナルなフレージングも彼らの個性を際立たせる。この流れをKeiTaro(Key)のピアノも印象的なバラード「fate」へと繋ぐ。気づけばアルバムと同じ曲順だが、これは逆説的に、『Gate of Fantasia』がライヴの場をより意識した作品であることを物語っていた。
 
ShinKiのドラミングに導かれた「Wonderous Nightmare」は特に注目すべき曲だった。シアトリカルとも言える奇妙なポップさを感じさせるメロディと、自然に観客を揺らすリズム。今後、ライヴを繰り返していくことで、音源以上に面白い化け方をしそうな予感だ。「隠されしエデン」における好反応も、以前も披露されていたことだけが理由ではないだろう。
 
「Last Melody」、「Eternal Dream」、「Maid of Lorraine」という人気曲の連発で本編を締めくくったあと、アンコールでは新作から「最果てのオリゾン」が演奏された。"拳を掲げて大合唱する、あの曲を持ってきました"(Yoshi)の言葉どおり、コール&レスポンスを交えた魅せ方も奏功し、イントロからキャッチーなコーラス・メロディの大合唱が起こる。この日最後の曲となった「Brightest Hope」のように、これからの公演で定番となっていくのは間違いなさそうだ。
 
『Gate of Fantasia』を完成させたことで生まれた新たな自信は、現在のCROSS VEINを強力に後押しする要素になっている。東名阪ツアーは残すところ5月12日の大阪アメリカ村CLAPPER公演、13日の名古屋今池GROW公演で幕を閉じるが、そのあとも様々なライヴがスケジューリングされている。中でも気になるのが、9月15日、16日に東京渋谷Star loungeにおいて2日間連続で行われる"Theater of CROSS VEIN"だろう。詳細はこれから明らかになる模様だが、冠されたタイトルからしても、彼ら流の"劇場"感が多彩に形作られるのは容易に想像できる。『Gate of Fantasia』は、CROSS VEINが向かうべき様々な世界への重要な扉になりつつある。

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