LIVE REPORT
30 SECONDS TO MARS
2013.08.21 @恵比寿LIQUIDROOM
Writer 山口 智男
2年ぶりの来日。しかも、ライヴは東京公演の1回のみ。当然、ソールド・アウト。観客の反応も尋常ではない。
不穏な空気を孕みながらもファンファーレのように鳴り響くイントロとも言える「Birth」からなだれこむように始めた「Night Of The Hunter」では早くもスタンディングの客席から大合唱が沸きおこり、Jared Leto(Vo/Gt)の"ジャンプ!ジャンプ!"の掛け声にフロア全体が上下に揺れる。そして、「Search And Destroy」では観客全員がバンドの演奏に手拍子で応えた。その様子から、ここには30 SECONDS TO MARS(以下30STM)の熱烈なファンしかいないことと彼らが30STMの来日をどれだけ待ち焦がれていたかが伝わってきた。
それにしても、序盤にしてこの盛り上がりは何だ?!もし10分ほど遅れて会場に入った人がいたら、きっと終盤のクライマックスと勘違いして、"え、もうおしまい?!"と大いに慌てたことだろう。
ファンの熱烈な歓迎にJaredも感激していたようだ。
"日本の文化が好き。建築物が好き。日本人の男性が好き。女性が好き。うどんヌードルが好き。そばヌードルが好き。グリーン・ティーが好き"
饒舌に日本への想いを語ると、ライヴの途中、何度もファンをステージに上げ、言葉が通じないことに苦笑いしながら会話を楽しんだ。そして、歓喜の大合唱が会場全体を包んだ30STMの新しいアンセム「Do Or Die」では大きな日の丸の旗を振り回しながら感謝の気持ちを全身で表現した。
前日のインタビューで、Jaredは"新作の『Love Lust Faith + Dreams』から6曲ないし8曲はやるつもりだ"と言っていたが、結局、この日、彼らが演奏した新曲は「Birth」も含め計5曲。しかし、新作のハイライトとも言える曲を軸に代表曲の数々をほぼ網羅したと言えるセットリストが物足りないという人はいなかったはず(そりゃ、あれが聴きたかった、これが聴きたかったと言い出したらキリはないけれど)。
よっぽど気持ちが乗っていたのだろう。終盤のアコースティック・コーナーではJared自ら"何が聴きたい?"と客席にリクエストを求め、「The Kill」の他、予定になかった「Hurricane」「Alibi」もメドレーで披露。深いエモーションを湛えた歌声でファンを酔わせたのだった。
およそ4年ぶりとなる新作のリリースを記念するショーケースの意味合いもあったと思しき今回の来日公演。敢えて小さめの会場を選び、ステージと客席の距離が近いからこそ生まれる親密さをバンド、ファンともに楽しみながら、パフォーマンスという意味では現在の30STMが持っているアリーナ、いや、スタジアム級と言ってもいいスケール感を印象づけた。新作同様、エレクトロニックな音色を打ち出したアンサンブルも違和感はなかった。光と影、幾筋もの光の帯を巧みに使ったライティングも素晴らしかった。
この規模の会場で30STMのライヴを見られる贅沢を味わいながら、このライヴ、やはりもっと大きな会場で見てみたいと思った。
"日本における新しい始まりだ"と宣言したJaredは近いうちに戻ってくることと、これまで以上に頻繁に来日することを約束した。"もう来るなと言われても来日しつづける"とも言った(笑)。
ラストはダンサブルなリズムが新境地を印象づける「Up In The Air」。30人ほどのファンをステージに上げるという心憎いサプライズで大団円を飾ると、"アリガトウ!コンニチハ!サヨナラ!"という言葉に万感の想いを込め、狂騒状態が途切れることなく続いた1時間半の熱演を締めくくった。
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