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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

DIR EN GREY UROBOROS -with the proof in the name of living...-

2010.01.10 @日本武道館

Writer KAORU

激ロックでは三回目となるDIR EN GREYのライヴレポートであるが、一年強に渡って世界各地で開催されてきた『UROBOROS』ツアーの締め括りとなる日本武道館公演ということで、特別感は非常に大きい。そして、ツアー毎に趣向を凝らした演出で我々を唸らせてくれたDIR EN GREYのことなので、ファイナルである今回のライヴでは、更に凄い演出で驚かせてくれることは必至だろうという期待で胸が膨らんでいた。

白紗幕ごしに「我、闇とて...」の演奏が始まった。ステージ後方から光が焚かれているので、メンバーの影だけが映し出されている状態だ。そして「Deity」と共に幕が振り落とされると、ステージ背景にヨーロッパの廃墟の街のような絵が写し出されている。更に、ステージ後方上部に大きなLEDヴィジョンが現れ、そこに仏像のシュールな映像が流れ始める。「OBSCURE」では、廃墟の前に裸体が浮かびあがってくる。そして、薫が上手に移動し、Dieがギターを持ち上げて、ヘッドバンキングの嵐となっている観客と一体となっていく。「STUCK MAN」の曲間でも、京が「クソッタレ!聴こえてんのかよ!もっと感じさせてくれ!!!」と煽り、日本武道館という大きな会場のボルテージがどんどん上昇していくことが手に取るにようにわかった。
シングル「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」のカップリングに一発録りヴァージョンが収録されている「蝕紅」は、ズンズンと重たいベースとドラム、歪んだギターの音、全身を使って歌う京と、演奏の一体感がより一層映えた場面だ。そしてサビの歌詩を大合唱するファン。彼らは、楽しさだけでなく、人間の心の奥底に潜む闇の感情を、音楽を通じて共有しているのだろうなと感じた。バンドとファンの絆、信頼関係の強さが躊躇に現れた瞬間ではなかっただろか。
曲の最後では京一人に照明が照らされ、まるで大きな湖の底の中にいるかのよう錯覚に陥った。
「蜷局」では、メンバーそれぞれの姿が大きくライトアップされた。そして、「GLASS SKIN」「THE PLEDGE」が終ると、会場から自然と大きな拍手が沸き起こる。そして、ハイライトである「DOZING GREEN」へ。前上方のモニターには巨大なムカデの映像が映し出され、泣き叫ぶように歌う京の姿が鮮烈な印象を残していく。「dead tree」「BUGABOO」と続き、「冷血なりせば」では鎖が解き放たれたように激しく身体を動かし、メンバーの凄まじい演奏に応戦するファン。そして本編ラストの「凱歌、沈黙が眠る頃」ではステージから放射線状のライトが照らされ、スクリーンには人の手が映り、だんだんとその手を狭めていくという演出がなされた。その光景は、悲しみと慈しみを同時に感じる旋律と、展開の激しい曲調と、見事に調和していた。

そして一回目のアンコール。「HYDRA -666-」では、大きな特効が焚かれ、ボンッという火の勢いが一階席のこちらにまで伝わってきた。そして、破壊力抜群の演奏に度肝を抜かれた「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」では、メンバーの顔に本編では見られなかったのびのびとした表情も浮かんでいたように感じた。「朔-saku-」ではそんなメンバーの姿がモニターに大きく映し出され、歓声が起きる。畳み掛けるように「残」へと続き、最新曲「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」では、またも客席から大合唱の嵐が。この曲は筆者の2009年度ベスト・ソングだったこともあり、ライヴで聞けたことに感動と興奮を覚えずにはいられなかった。

そして二回目のアンコール。「THE FINAL」「INCONVENIENT IDEAL」、そして、「VINUSHKA」。「UROBOROS」のロゴが大きく映し出されていくなか、「VINUSHKA」の演奏が終わると、エンドロールとして、ツアータイトルと、ライヴが行われた各地の会場名が流れた。嗚呼、遂に『UROBOROS』ツアーが終わってしまったのだな...という寂しさが入り混じった感慨に耽っていると、突然「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」のMUSIC CLIPフル・ヴァージョンが流れ始めたのには驚いた。メンバーの身体の一部が侵食される場面が印象的なこのMUSIC CLIPも、今までと同様、非常に芸術性の高い作品となっていた。

いやぁ、本当に凄かった。

こう言うしかなくて申し訳ないのだが、本当に凄いの一言。

こんなライヴ、今まで見たことがない。

今回のライヴを完璧なものへと導いた要素はたくさんある。まず、筆者は今まで日本武道館において、沢山のアーティストのライヴを見てきたが、その中でも今回のDIR EN GREYのライヴの音質の良さは一番だったんじゃないかと思う。高音、中音、低音が、きちんといい具合に出ていて気持ちよく、何よりも音の分離が良かった。これによって、メンバー一人一人の演奏が、一音ずつ綺麗に聴こえてきたのだ。そして、まだまだ書ききれていないのだが、素晴らしい映像効果、演出。物凄いお金がかかっているのだろうなと思うし、ひとつひとつの演出が、一生忘れられないくらいの強い印象を残してくれた。しかしそれらは、曲の世界観を増幅させていたことには違いないけれど、何よりも凄かったのは、やはりその演奏だ。容易く寄り添ってくれるのではなく、あくまで孤高であり、崇高とも言える芸術性の高い楽曲を生み出し、それをライヴという"生"の現場において、不特定多数の人間に、バンドの共通意思として体感させる、素晴らしい表現力。これは、海外での大きなフェス公演に幾度も出演してきたことによって、より遠くにいる人へ曲を届けなければいけないという状況下において、工夫を重ねてきた経験によって培われた賜物ではないだろうか。ライヴ毎に自己記録を更新していく現場を目の当たりにしてきた筆者を含むファン達は、今後のDIR EN GREYに対しての信頼を、より一層強めずにはいられないだろうと確信した、素晴らしい一夜であった。

そしてあの衝撃から4ヶ月...遂に日本武道館2夜公演の全貌を収録したLIVE DVD『UROBOROS -with the proof in the name of living...- AT NIPPON BUDOKAN』がリリースされる。この武道館公演で味わった興奮に再び触れることが出来るのが、とても楽しみだ。

DIR EN GREYライヴDVD 【初回生産限定盤】SFBD-0022~25
4枚組 (DVD3枚+CD1枚)
¥10,500 (tax in)
DIR EN GREYライヴDVD 【通常盤】SFBD-0026~27
DVD2枚組
¥7,140 (tax in)


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