INTERVIEW
XMAS EILEEN
2023.01.30UPDATE
2023年01月号掲載
Member:KOJI(Vocal-R)
Interviewer:吉羽 さおり
2022年12月25日、結成日であるクリスマスに、バンドにとって記念碑的なライヴ"ONLY HOLY NIGHT 2022"を開催したXMAS EILEEN。2014年の結成以来、仮面にトレンチ・コートというアイコニックなスタイルで、且つメンバー全員"NO NAME"で素性を明かさずに活動をしてきたバンドは、このライヴで仮面を外し、素性を明かしてXMAS EILEEN第2章をスタートした。長く時間を共にしたベーシスト、RYOTAの卒業もあったが、コロナ禍を経て、バンドとしてもう1段階深化と進化を遂げた。それを告げるのが1月に配信リリースとなるシングル「DON'T JUST EXIST」であり、より重厚にポップにエクストリームに存在意義を打ち出した曲になっている。振り切れたパワーのある曲だ。コロナ禍から現在地に向かうバンドの過程を訊くと共に、初の長編映画"虹が落ちる前に"を監督し国内外で高い評価を得たKOJIに、映画についての話も訊いた。
-最後にインタビューをしたのがコロナ禍前でしたので、いろんなことが様変わりしている状況ではありますが、XMAS EILEENとしては、このコロナ禍でライヴ活動などができなくなってから、バンドとしてのアクションをどのように考えていましたか。
コロナ禍で、いろんなアーティストさんたちの"それでもできることをやろう"みたいな風潮はありましたけど、できることないしなっていう思いがありました。曲を作るのはできたとしてもライヴありき、ツアーありきで音楽を作ってきたので、ライヴができないなら音源を出す理由ってなんなんだろうとか、そういう葛藤はめちゃくちゃありましたね。初めの1年は、曲は作っていたんですけど、リリースしなかったですし。まず2020年に予定していたツアー("PROTOTYPE TOUR 2020")が延期になってしまって、2回目("PROTOTYPE TOUR 2020 -FAKES-")を組んだんですけど、それも延期になったんです。
-そうでしたね。
どうしていこうかなとすごく悩みましたね。
-コロナ禍では配信ライヴという選択肢もできましたが、それに対してXMAS EILEENは抵抗していましたね。
そうですね。公開ライヴではなく、配信リハーサルみたいな形で、みんなで演奏をしている映像を流したりはしていたんですけど、まぁ苦肉の策というか、その間はいろいろやりましたけど。
-その当時って、他のバンドといろいろ話をすることはあったんですか。
逆に、どのバンドと喋っても答えがあまりにも違うのかなと思って。これを機にバンドをやめるという人たちもいたし、すごく慎重に動こうとする人たちもいれば、いやいやそんなの関係ないでしょ、やればいいでしょみたいな感じで動く人たちもいたし。このコロナ禍ではそれぞれみんな考え方があまりにも違いすぎたので、自分たちの中での参考にはならないのかなという感じにはなりましたね。
-何かに倣うのでなく、自分たちなりの動きをしていこうと。
正直世の中がこういう風潮になったときに、いち個人、個々のバンドなんてたとえ声を上げたとしてもなんの力にもならないというか。それでも上げなきゃいけなかったし、いつかちゃんと動くときのための準備はしないといけないなというのはあったので、途中配信シングルを出したりしましたね。
-2022年3月に「TRAINING DAY」がリリースとなりました。
そうですね。ちょうど昨日、僕ら大阪でワンマン・ライヴ("ONLY HOLY NIGHT 2022")をしていたんですけど(※取材は2022年12月26日)、声出しがOKとか、コロナ禍での最近のライヴというものを初めてやったんです。前後にフロアを分けて、前方ははちゃめちゃなエリアというか、マスクをしていたら今まで通りにやってもいいよってエリアにして、後方は距離をとって大人しく観てくださいってエリアに分けてやって。昨日そういうライヴができて、すごくいい雰囲気だったので、やっとできるようになったのかなって気がしていますね。
-希望が見えた感じですね。一方では、昨日のライヴ"ONLY HOLY NIGHT 2022"で、ベースのRYOTAさんがラスト・ライヴとなりました。そういうことでは、XMAS EILEENとしてはこれからまた新たな形になっていくのかなって、ポイントのライヴでもありましたね。
そうですね。ベースがやめるという話は、実はもう2年くらい前にふたりで話していたことだったんです。このコロナ禍で経済的にとかもそうですけど、正直しんどいし、家族もいるし、どうなんだろうって話をしていて。そのときに、バンドを卒業するなら1回でも昔のような、あのまともなライヴをやってから出たほうがいいよっていう話をしていたんですね。当時はライヴの本数もあまりなかったですし、曲を作っている人間以外は、音楽活動をすることがそこまで本人の重荷になるほどのスケジュール感でもなかったので、時が来るまでは頑張ろうやみたいな話はしていました。で、昨日ライヴをやって......お客さんが800人くらいいたんですが、前列だけですけど今までのようなライヴができたので、やっとそこでベースもひと区切りがついて、お疲れ様でしたという感じにはできましたね。
-以前のようなライヴを体験することで、心残りじゃないですが、やっぱりバンドっていいなという気持ちにもなっちゃいそうですけどね(笑)。
そうですね(笑)。本人もいろいろ考えたでしょうけど、コロナ禍の僕らの中での一番大きな準備は、動き出したらベースの子がやめるんだということを想定したうえでの動きだった気がします。
-2年間、複雑な感情でもありましたね。動き出せる喜びがあり、でもそこで終わりも見えているという。
やめることがわかりながらというか、まともに動けるようになったらもう一緒にはやっていかないんだろうなって、すごく不思議な2年間でしたね。
-バンドの始まりとしては、友達と遊んでいる延長でスタートしていたと思うんです。でもこんな経験があるとまたその感覚も変化するというか、こんなところに楽しさや喜び、意味を見いだしていたんだなと痛感したり、みんなの中で"バンド"がすごく大事なものになっていることが、改めて突きつけられる時間だったりしたのかなと感じます。そんな体感をしていくなかでの曲作りとは、どういうものでしたか。
曲作りはずっとしていたんですけど、コロナ禍でこういう時代になったときに、自分はどんなものを作っていきたいのかをめちゃくちゃ考えました。1周回って──今までの曲がやりたくなかったわけではないですけど、コロナ禍となってエンタメってこんな扱いされるんだというのを思い知ったときに、音楽で一攫千金を狙うとかよりも、本当に自分たちのやりたいこと、やれることを最大限にできる曲を作って、その上に自分たちを乗せてやっていって、それがどんな評価を受けていくのかは世の中に任せようとなりました。それがより多くの人に受け入れられることを望みはしますけど、曲作りに関してはコロナ前より気持ちがだいぶ荒々しくなったかもしれないですね(笑)。攻撃的になったというか。好きにやったるねんって。でもそれは自分の中では良かったと思っていて。曲を作るのもすごく簡単になってきたというか、1月にリリースする「DON'T JUST EXIST」もそうなんですけど、"あぁ、俺らってやっぱりこんな曲作れるんやな"と。そんな感じにはなりました。
-はい、まさに2022年3月にリリースされたシングル「TRAINING DAY」を聴いたときに、それを思いましたね。こんなハードコアな曲やってたっけ? っていう。感情的にもサウンド的にも、やりたいことをやっていくんだっていう気持ちのいいヘヴィさがあって。曲作りの楽しさが変わっていそうですね。
レコーディングもすぐ終わるようになってしまって(笑)。「DON'T JUST EXIST」もレコーディングが本当にすぐ終わりましたね。
-でも曲自体はすごくドラマチックというか、複雑な構成をした曲ですよね。
めちゃくちゃ複雑なんですけどね。そこはうちらっぽいんです。すごく不思議なんですけど、コロナ禍になっていろんなことの考え方が本当に自由になりました。もうこれでいいやんみたいな。それは開き直りとか割り切りではないんですけど、変わりましたね。
-頭で余計なことを考えずにできるようになっているということなんですかね。「DON'T JUST EXIST」は具体的にはどんな感じでスタートした曲ですか。
前作の「TRAINING DAY」が唯一、まだ何かのアルバムとかミニ・アルバムなどには入っていなくて、シングルという形だけで出ていて。ここからは「TRAINING DAY」を基軸に動いていこうと思っていたので、より攻撃的な曲にしたいなというのがまずありました。ただ、これまで僕らがやってきたポップ性や聴きやすさを消してしまうと、それは意味がないと思ったので、そのバランスですね。これまでもラウドさとポップな部分を上手くやろうかなと思ってやってきたんですけど、今回曲のレンジは広くしたんですが、その融合性を守ることだけはキープしていこうというのはありました。
-歌詞についてはどうでしょう、このタイトルになっている言葉、ただ存在するなというというのは、まさに今の思いだなと痛感します。
ベースがやめることをちょっと頭の中に思い浮かべながら、もうひとりのヴォーカルのTAICHIと歌詞を書いていったんですけど。これから自分たちが6人になってやっていくなかで、音楽を続けることってたぶん簡単だと思うんです。簡単という言い方は良くないですけど。
-続けていくことならばできますね。
例えば、3ヶ月に1回ライヴをして、リハーサルも2~3ヶ月に1回とかみんなで集まって入るとかなら、やっていくことはたぶん可能だし、そうやっている人たちを否定する気も一切ないんですけど。僕たちが目指した音楽のやり方は、タラタラとやっちゃダメだよなっていうのが芯にあると思うんです。XMAS EILEENがどこまで継続するかはわからないですけど、一度存在してしまったからには、あとはぬるっと存在させているというのは絶対にダメだなと。昨日ワンマン・ライヴに800人くらいの人が来てくれて、このタイミングだからこそ、なおさらそれを思いました。それは失礼だなって。特にこの2~3年はろくなライヴ活動もできていなかったのに、ワンマンをやると言ったらまだこれだけの人がクリスマスにもかかわらず集まってくれて。ましてや大阪では、"FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022"という大きなイベントもあったんです。MCでも言いましたけどね、"こっちに来てくれてありがとう"、"俺はあっちに出たかったけど"って(笑)。でも、みんなが物販に並んでいる姿とかを写真で見させてもらったときに、きっとこの人たちは僕たちが存在すればある程度追いかけてはくれるんでしょうけど、自分たちがそのモチベーションでやるのは絶対に違う。常に何か新しいことや新しい思いを発信していくべきだなと。そうなったときに正体を明かす、仮面を取ることにも繋がりましたね。もちろん、賛否両論はあるんでしょうけど。XMAS EILEENだよね、仮面だよね、トレンチ・コートだよね、あぁ知ってる知ってるというバンドではなくなって。ファンの人にも、変に安心させたくないというか(笑)。
-そこはひねくれているところもありますね(笑)。
あるかもしれないですね。やっぱりドキドキしてほしいなっていうのはあるので、安易ですけど、自分たちからドキドキさせていくことって、今のタイミングでは正体を明かすくらいまでやったほうが、みんな"うぉー"ってなってくれるかなと。いろんなアーティストからも連絡がめちゃくちゃ来てますし、実際にそうなっていると思います。でもみんな、面白いしいいんじゃないとか言ってくれるので、良かったなと感じますね。なので、新曲のテーマは今のリアルな自分たちの立ち位置、考え方というのをブッ込めたらいいなというのがありました。
-その正体を明かすということに関しては、バンド内で意見が割れることはなかったんですか。
不思議なもので、うちのバンドは意見が割れないんですよね。"いいじゃないですか"みたいな感じで。そもそもがたぶん"KOJI君が言うんだったらいいっすよ。それでやりましょうよ"っていう感じの子たちなんです。子供の頃からの付き合いというのもあるので。昨日のライヴでも仮面をどのタイミングで取るか? くらいの意見しか分かれなかったです。
-ちなみにどのタイミングだったんですか。
イントロで出てきてすぐ取りました。
-潔いというか、もったいぶらなかったんですね。2014年に結成してからずっとメンバー全員"NO NAME"で活動を通してきて、今ここで素性を明かすというのも思い切ったことですし、逆に今は世の中的には顔出しや素性を明かさず活動する人が増えているじゃないですか。そこを逆行していくというのは面白いですね。
その話にもなりました。今は正体を隠して活動をしている人が多いし、向こうは隠す理由があるんだろうけど、冷静になれよと。俺ら隠す理由ないやんっていう(笑)。じゃあ、もういいやんって。理由のないものにそこまでこだわる必要もないし、あとは僕自身が映画を撮り始めて、バンドと映画監督とがwin-winじゃないなって状況になってきちゃったんですよね。映画監督は映画監督で、ひとり歩きをしだして──これ自慢話みたいになって気持ち悪いですけど、映画("虹が落ちる前に")が国内外の映画祭でたくさん賞をいただいたんです。その映画祭の授賞式で"監督は音楽とかされてるんですか?"って言われたりもしたんですよね。映画祭を観に行っていたバンドのファンがそこで爆笑していましたけど、そうだよなと。まったく違う世界だし、僕の経験値を評価されての賞では一切ないので、向こう(映画)の人たちは僕が何者なのか何もわからずに話をしてきているときに、これ全然リンクしてないわって思って。
-それはもったいないですよね。
もう違うのかなっていうのは正直ありました。それはメンバーにも相談させてもらいましたね。