INTERVIEW
XMAS EILEEN
2023.01.30UPDATE
2023年01月号掲載
Member:KOJI(Vocal-R)
Interviewer:吉羽 さおり
映画監督兼ヴォーカリストという自分自身の打ち出し方としても、面白くできるのかなと今ワクワクしています
-クリエイティヴとしてもアウトプットの違いがあるだけで、作っている人物は同じですし、音楽と映画、相互に作用するものもありますしね。映画を撮るというのはおそらく構想としてはずっとあったと思うんですが、具体化したのは何か大きな出来事があったんですか。
映画が本当に好きで、10代の頃から冗談でというか、"俺は映画監督になるからな"とずっと言ってたんです。それが、40を過ぎてまったくそこに着手してない自分にハッと気づいたときに、これはダサいかもしれんなっていう気持ちになってきて。それまではバンドをメインとしてやってはいたんですけど、これたぶんいいものが作れるはずだからトライしてみようっていう気持ちが、ある日いきなりぐっと湧いてきて、そこからは早かったですね。
-心を決めたら動きが早い感じですかね。で、実際に映画を作ってまたその面白さがわかってしまったと。
本当に楽しかったし、本来なら出会わなかったであろう人たちにもたくさん出会えたし、すごく良かったんですよね。作品を作ったことも、そして作品が海外の映画祭とかでも賞を貰って、こういう評価をくれるんだなと感じられたのも嬉しかったし、この映画を作ったことで人への理解度みたいなものが変わったのもあるので。余談ですけど、金子ノブアキ(RIZE/RED ORCA/Dr)が映画を観て、コメントもくれて、個人的にもすごく情熱的に映画について話をしてくれたんです。彼とは付き合いは長いですけど、そんな喋ることも今までなく、会ったら"よぉ"みたいに挨拶する感じで。僕は、クールなイケメンの兄ちゃんってイメージで、彼がどんな人かをあまり知らないまま、たぶん20年以上の時間が経っていたんですけど、映画を観て熱く語ってくれているのを見たときに、君ってそういう人なのねと(笑)。
-個人的にも伝えてくれるのは、よほどの思いがあってのことですしね。
熱いやつなんだなって思って、そこから密に連絡を取るようになって、音楽の話もするようになったんです。映画を観てくれたみんなも、"俺KOJI君のこと勘違いしてた"とか、"ただの暴れん坊やと思ってた"みたいに言ってくれて。たぶん、Vシネみたいなもの作ってくると思ってたんでしょうね。
-たしかにそういうイメージもあります(笑)。
PTP(Pay money To my Pain)/The BONEZのT$UYO$HI(Ba)君も、"俺の中ではイメージが完全に変わってしまった"って言ってて。そうやって映画を通じて僕自身のことも知ってもらえたんだろうし、映画を観てくれた人の意見でも、そういうふうに受け取ってくれるんだと認識が変わったので、そのへんもすごく面白かったんですよね。
-ご自身では音楽と映画とで心の在り方なのか、物事へのスタンスなのか、それぞれどういうものを表現していると思っていますか。
よくアーティストの人が、"君たちが主役だよ"ってMCとかで言うのを聞くじゃないですか。僕は音楽やっているときって、特に自分はヴォーカルをやっているので、俺が主役やんけ! と思っているんです(笑)。でも映画のほうには、僕自身は一切出ないので。音楽では一番先頭、目立つ場所にいるのに映画では一切自分という人間を出さないから、音楽では人の先頭で走る感覚で、映画では人の最後尾にいて全体を見る感覚と使い分けてやっている気がします。
-だからこそ友人たちもギャップを感じたのかもしれないですね。
そうかもしれないですね。
-では改めて、ここからは映画監督として映画の話もうかがいたいのですが、映画"虹が落ちる前に"はバンド、バンドマンが主人公ですけど、単にミュージシャンが夢を掴んでいく美しい青春劇でなく登場する人それぞれの人生、環境、背負っているものなどがとても繊細に、丁寧に描かれた人間的なドラマとなっていました。物語の着想はどういったところから得たものでしょう。パーソナルな体験も反映されているでしょうか。
自分が生きてきたなかで見てきたもの、感じたものは間違いなく反映されているし、愛も暴力もすべて知っている世界しか今回は表現していないと思います。ただ自分が映画監督になるときはどんな話を書くだろうとずっと考えていたから、自然に浮かんできた気はしますね。
-この長編作の前に撮った短編"#000(読み:シャープスリーオー)"内にも、"虹が落ちる前に"の劇中バンド名の"Light in the Bathroom"と冠したストーリーがあります。短編を制作している時点で、今回の映画について構想していたのでしょうか。また、監督のこだわりや遊び心として、各作品に関連性や"匂わせ"のようなものを仕込みたいという思いもあるのでしょうか。
この長編映画を撮るためのプロトタイプとして"#000"を制作しました。そこでは映画作りの勉強を、実際に作りながらしていた感じでしたね。だから"#000"に出演している役者全員が"虹が落ちる前に"にも出演してくれています。みんなで試作品から劇場公開まで走り抜けました。
-ちなみに"Light in the Bathroom"も、作品のタイトルにある"虹が落ちる"という言葉も印象的ですが、言葉が生まれたきっかけや、発想のもととなったことはありますか。
常に頭の中で言葉を作ってますね。"Light in the Bathroom"はトイレの電気って意味ですが、なんとなくトイレに入ってたときに、あの小さな光がきれいだなと思ったことがきっかけでした。"虹が落ちる前に"は、主人公に圧倒的才能があることをラスト前に観客にわかってもらうために、普通とは違う発想をしていることをたったひと言で表現するにはどうしたら? と考え、"虹が消える"ではなく"落ちる"という表現が浮かびました。すごく気に入ってます。
-脚本家としても音楽家としても、人に伝える言葉の大事さや、その言葉ひとつからどう相手に想像してもらうかの余白や、一面的なものになりすぎないかを意識していると思います。今作ではセリフ量としてはかなり端的な印象がありますが、それぞれの人物の言い回しや伝え方として重視したことはありますか。
ここがすごく難しいのですが、僕の頭の中で人物同士を対面させたら勝手に話をしだすので、それを書記している感じなんです。説明臭くならないようにってことを常に意識はしてるのですが、その意識の中で登場人物たちが勝手に話をしてくれています。不思議な話ですよね。
-役者の方はみなさんスクリーンの中で自然な佇まいや存在感を放っていますが、演出のつけ方、またそれぞれの役者の方とは細かに演技のプランを話していたのでしょうか。
プランはとにかくオーバーアクトにならないこと。日本の最近の映画はオーバーアクトが多すぎる印象があります。個人的にあまり好きではないので役者のみなさんとそれは話し合いました。素晴らしい役者ばかりなんでみんなすぐに理解してくれていましたね。
-作品にはアウトサイダー的な人物も登場しますが、立場の違いはあれど、簡単に善悪の線引きで描いていないのは、どういう思いからでしょうか。
自分は少し特殊な青春だったのでたくさんのアウトサイダーを知っていますが、優しいやつもいたり、頭のいいやつもいたりします。その反面、電車の中で優先座席を老人に譲らない普通の仮面を被っている人たちを見ることもある。人をたくさん観察していると、普通に人を線引きすることがいかに自分にとって無駄になるかを理解しているので、そうなるのかな? と思います。
-主人公の公平は、自信のなさや何者でもないという引け目から否定的な"いや"という言葉が口癖にもなってしまっています。主人公とKOJIさん自身では、重なるところはありますか。また作品を撮っていくなかで、愛着の湧いた登場人物はいますか。
ELLEGARDENの細美(武士)さんが、主人公とその親友は僕自身をふたつに割っている存在だと言ってました。さすが細美武士だとしか言いようがなかったです。本当にそうだと思います。ただいろいろな意味で一番思い入れがあるのは主人公の彼女、ヒロインですね。彼女が最後まで何を考えているのかわからないようにするためにカット、アングル、すべてに気をつけました。少し印象的な人物です。
-映像的には、ブルーがかったトーンを基調に光やピアノによる音楽が、ささやかでエモーショナルな表現となっています。物語、撮り方、配役やロケーション、音楽に至るまで初の長編にして画面の中に美しいドラマが織り成された作品となりました。すでに次作にも着手しているそうですが、次の作品がどういうものか、ヒントとなるキーワードなどあれば教えてください。
僕はとにかく美しいものが好きなんです。それを突き詰めていくとあの映像になるんだと思います。そのこだわりが強いので、すべてを自分で指揮していますね。ここからの映画は、"虹が落ちる前に"を基盤にそれをさらに高めていくことだと思っています。次作の主人公はアウトサイダーなので、"虹落ち(虹が落ちる前に)"とは少し印象が変わるのでは? と思われがちですが、美しい作品にしたいという部分は変わらないので作品性は変わらないと考えていますね。本当に楽しみです。必ず歴史に残る作品にしてみせます。
-こうした大きな作品を撮ったことは、次作の映画はもちろんですけど、これからのXMAS EILEENのMVにもいい影響がありそうですね。
今回の曲「DON'T JUST EXIST」も、年明けにはMVの撮影に入ろうと思っているんですけど、そこでも今までとはちょっと違う──映画を作ったことで、かなり頭の中が変わってるんですよ(笑)。今だったらこういうのが作れるなというのがめちゃくちゃありますね。映画ではカメラ・ワークも自分で作っていたので、これが自分の中では財産になっています。
-音楽、曲があってライヴがあって自分自身で映像でも見せられるということでは、バンドのあり方をいろんな形で提示できるようになりますね。
そうですね。映画監督兼ヴォーカリストという自分自身の打ち出し方としても面白くできるのかなと今ワクワクしています。
-映画の制作も進んでいてとなると、これまで以上の忙しさになりそうですが、2023年はXMAS EILEENとしてどういう計画をしていますか。
デジタルでのシングルを1月と春前くらいに出して、春に東名阪でツアーをしたいですね。そこからアルバムやツアーも考えていて、様子は見ながらですけど、今まで足枷があったぶんを全部外してバンバンやっていこうかなとは思っています。
XMAS EILEEN
RELEASE INFORMATION
DIGITAL NEW SINGLE
「DON'T JUST EXIST」
2023.01.31 ON SALE!!
配信はこちら