MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

BUCKCHERRY

2021.06.22UPDATE

2021年06月号掲載

BUCKCHERRY

Member:Josh Todd(Vo)

Interviewer:菅谷 透

BUCKCHERRYは楽しい時間を過ごすためのバンドなんだ。鬱々したダークでネガティヴなことのためにあるんじゃなくてね


-今作はBUCKCHERRYらしい疾走感溢れるロックンロール・ナンバーを中心に、ミッドテンポの楽曲やバラードと、非常にバランスのいい構成に仕上がっています。

俺が昔のロック・アルバムで気に入っているのがまさにそういうところなんだ。バランスがいいからね。そういうところがすごく好きなんだ。というのも俺にとって、曲というのは感情そのものだからね。パーティー的なヴァイブの感情もあれば、「The Way」みたいにもっとセンチメンタル寄りの感情もあって......ロック・アルバムのあらゆる感情を網羅したいんだ。LED ZEPPELINはそういうのにすごく長けていた。AEROSMITHもとても長けている。俺もそういうものをやりたいと思っているし、BUCKCHERRYのアルバムでも毎回実践してきたんだ。ただ、正しいバランスを手に入れるのは時としてものすごく大変なことだけど、今回は本当にうまくいったと思う。

-前作では"今風のサウンドにすること"という目標が掲げられていたようですが、今回はどのようなサウンドを目指したのでしょうか?

うーん......"今風のサウンド"であろうとなんであろうと、常に大切なのは最高に素晴らしい曲を作ることなんだ。まず素晴らしい曲ありきだね。1曲目を聴いた瞬間に"おっ、いいね"と思えるものじゃないと。Martiや俺たちのマネージャーのLarry Mazerに聴いてもらったときにも同じことを思ってもらえることが大事だね。彼らにそう思ってもらえなかったら、一般の人たちに思ってもらえるわけがないから。だからたくさん曲を書かないといけないんだ。パッといい曲が浮かぶこともあるし、いい曲の一部しか浮かばないときもあるからね。そういう場合はいい曲になるまで何度も書き直したり手を入れたりするんだ。「Sorry」はそんなふうにできた曲だった。俺は「Sorry」をアコースティック・ギターで書いたんだ。3コードで全部。ブリッジがなくて、メロディとコーラスは『15』に収録されたやつと違っていた。そこにMartiが加わったときに"こういう曲があるんだけど、もっといいものにできる気がする"と相談したんだ。それで彼はコーラスのメロディを少し手直しした。そうしたら、"Boom!"という感じで、コーラス部分がグッと良くなった。ほんの少し手を入れただけだったけどね。俺はそれに合わせて歌詞を書き直して、彼はブリッジのコードをいくつか作ってくれて、そのコードを使って俺がブリッジを書いた。それで決まりだったね。「Sorry」がヒット曲に大変貌を遂げた瞬間だったよ。そういう小さな変化が、突然大爆発を起こすことがあるんだ。

-アルバム名"Hellbound"(※"地獄行き"の意)の由来について教えていただけますか?

"Hellbound"というのは俺が生まれて初めてプレイしたショーのことなんだ。カリフォルニア州オレンジ郡で行われたハウス・パーティーで、俺は15歳だった。あの瞬間俺は"ロックンロールに魂を売った"んだ!

-クールなフレーズですね。ちなみに、どうして"Hell"なんでしょうか?

(笑)それは、"Hellbound"がロックンロールだからだよ。当時俺たちはAC/DCを聴いていたんだ。『Highway To Hell』とか。ロックンロールの歌詞には"Hell"という言葉が出てくるのがすごく多いんだ。実は、"Hellbound"を思いついたのはMartiだったんだ。"この曲は「Hellbound」とかそんな名前にすべきだよ"なんて言っていた。俺は"「Hellbound」だって?"と思ったけど......彼が何気なく投げ掛けた言葉だったんだ。その晩は帰ってからも頭の中で"Hellbound"という言葉が繰り返しフラッシュバックしていたから、どうすれば"Hellbound"を曲にすることができるだろう? と考えた。テネシーの娘に会いに行った帰り道、車を走らせながら、(「Hellbound」の)曲全体とメロディを携帯に吹き込んだんだ。おもむろにメロディをスキャットし始めてね。ホテルの部屋に帰るとすぐに曲を書き始めた。そのときも"Hellbound"というタイトルをキープしていた。そして、俺の人生を変えたあの夜についての曲を書いたんだ。

-では、"Hellbound"はアルバムのタイトルではなく曲のほうから先にできたということでしょうか。

「Hellbound」の曲からできたんだ。歌詞もメロディもなく、ただ曲だけ。歌詞やメロディはあとからつけ足したんだ。StevieとMartiが先に曲のベーシックな部分を作ってくれたんだ。ちなみにこの曲は一緒に書いた最後の曲だった。ふたりがいろんな曲を俺に持ってきてくれたけど、俺はずっと"AC/DCっぽいロック・ソングが欲しい"と言い張っていた。"わかった"と言って書いてくれたのが「Hellbound」だった。それを送ってもらって、車を走らせながら聴いていたんだけど、さて、これはどんなものになるだろう? と考えているうちに曲作りのモードになって、やがてこんな感じに――(※歌い出す)I can't believe this, it's getting' wild in the city/There's a feeling~♪。それからリフができて、ホテルの部屋に帰ってから一気に書き始めたんだ。

-そのときもMartiが言っていたタイトルが頭の中にあったということでしょうか。

彼が投げ掛けた"Hellbound"という言葉が頭の中にこびりついていたんだ。気に入ったからね。と同時に、陳腐で古臭いロックみたいな響きだなと思っていた(笑)。でもあの曲ができたとき、そっちの視点から書くことにしたんだ。

-そこでようやく全部繋がったんですね。アルバム全体での歌詞の方向性などはあったのでしょうか?

コンセプトみたいなもの? ノーだね。コンセプトがあったわけじゃなくて、自分の感情からストレートに出たものを書いていたんだ。世の中で起こっていること、そして緊張感......「5-4-3-2-1」や「Here I Come」みたいな曲は世界の緊張感やカオスが反映されている。それから、自分はどうしてこの生業をやっているのかを洞察したことも反映されているんだ。そのへんを深く掘り下げずにはいられなかった。コロナ禍で自分の生業を奪われたような気がしていたからね。ロックンロールは大きな打撃を受けた。ロック・ミュージックはそれまでもすでにいろんな逆境に見舞われていたし、俺にとってはフラストレーションが溜まる状況だった。だから原点に戻る必要があったんだ。どうして自分は人生をこれに捧げているのか、とね。それで最初のショーに立ち戻ったんだ。そうしたら「Hellbound」が生まれた。そのあとStevieの父親が亡くなってしまって、とても感情が高ぶった。家に留まることのつらさ、それから人生にまつわるいろんな大変なことが相まって「The Way」が生まれた。「No More Lies」や「Wasting No More Time」なんかもね。そういうふうにアルバムを組み立てていったんだ。

-自然発生的に生まれたアルバムという感じですね。"さあ、曲を書こう"というよりは。人生や音楽のことを考えているうちに......。

そして自分の周りの命についてもね。ソングライターでストーリーテラーでもある身としては――俺はBUCKCHERRYのすべての曲の歌詞を手掛けてきた。ストーリーテラーとしては身の周りに思いを馳せないといけないし、世界中から聞こえてくる様々なストーリーを吸い上げないといけない。自分がツアー中に経験したこと、自分の周りの生命から受けたインプット、今まで読んできた本、今まで観てきた映画もすべてね。それらをすべて吸収したうえで、さて、どうすれば素晴らしいショート・ストーリーができるだろうと考えるんだ。そしてなおかつ、人が聴いて"YES! このバンドを観に行くぞ"と思えるものにしないといけない。そういうことをしないといけないんだ。俺はソングライティングやストーリーテリングを学んでいる。本をたくさん読むとライティングに役立つんだ。音楽以外でもいろんなことをやって、ストーリーテラーとして向上できるようにしているよ。

-今作は、例えば「Barricade」もそうですが、シリアスなことを扱っていても必ずポジティヴに終わりますよね。ものごとを前に進めていこうというポジティヴなメッセージを感じました。

そうだね。だから「Barricade」のブリッジが気に入っているんだ。――ほら、今は多くの人々が死の必然性について考えるようになっただろう? どうして自分がこの世にいるのか、すべてが終わったときにどこに行くのか。人生とは何を意味するのか。人生の意味とは、愛とは、スピリチュアリティとは......みんないったいなんなのか。「Barricade」ではそういうことを取り上げたいと考えたんだ。俺は近年スピリチュアルになってきてね。ここ3年くらいは毎日瞑想しているんだ。Stevieも瞑想を始めたよ。

-そうなんですね。

うん。ふたりとも本当に変わったと言わざるを得ないね。もう瞑想なしでは生きられなくなったと思う。瞑想のおかげで、自分の中のあらゆる感情や疑問にコネクトすることができるようになった気がするんだ。「Barricade」はそんな感じの曲だよ。ほら、今の俺たちの状況を見てごらん。俺たちは"キャンセル・カルチャー"(※ものごとのある側面だけをとらえて問題視し、その存在を全否定する文化)の真っただ中にいる。断罪されることがあまりに多いんだ。SNSでも世の中でもね。ひどく有害だよ。いいドキュメンタリーがあってね。Netflixの"The Social Dilemma"(邦題:監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影)というやつなんだけど。本当に大きな問題だよ。とても悲しいことでもあるね。そういうものをみんな打破して、人間同士を結びつけるものに立ち戻るべきだ。それは何かっていうと、"LOVE"なんだ。互いに愛し合うことだね。

-"Barricade"というのは"キャンセル・カルチャー"などのネガティヴなものごとの例えなんですね。

そうだよ。

-アルバムからの先行シングル第1弾となった「So Hott」は、バウンスしたリフが印象的なロックンロール・ナンバーです。主人公の女の子がタイトルのように"ホット"なセルフィーで人気を獲得していくMVも印象的でした。我々が欲しかったエネルギーに溢れている曲ですね。

そう! それからガール・パワーを歌った曲でもあるんだ。あれは......みんな楽しまなくちゃいけない。BUCKCHERRYは楽しい時間を過ごすためのバンドなんだ。鬱々したダークでネガティヴなことのためにあるんじゃなくてね。楽しい時間を過ごすためのバンドだから、俺たちのアルバムには聴いていて気持ち良くなるロックンロールがいつも必要なんだ。「So Hott」はパーフェクトな形で"楽しむことに立ち戻ろう。人生を祝福しよう。セクシュアリティを謳歌しよう。とにかく楽しもう"ということを表現している。

-MVの中でも女の子が徐々に、自分のセクシーさや美しさに自信を持っていきますよね。とても楽しくポジティヴなビデオでしたが、あれは誰のアイディアだったのでしょうか。

あれは俺のアイディアだったんだ。今はSNSで有名になっていく人たちがいるだろう? SNSでやっていることで名が知られていく。ただセクシーであるだけとかさ。カーダシアン姉妹を見てごらんよ。億万長者じゃないか。特にスキルがあるわけでもないのに......。

-(笑)

でも、マーケティングにすごく長けているよね。彼女たちは実はすごく頭が良くて、ほかにもいろんな活動をやっているんだ。あれは小さな町のプレーン・ジェーン(※平凡な女性)的な女の子がSNSを見て、私だってできる、私だってあの子たちみたいにキュートになれるし、セクシーな恰好だってできるわ、なんて思って自分もSNSを始めると、突然Boom!という感じに人気が爆発して、スーパースターになるという内容なんだ。

-最初に見たときは、もしかしたらSNSのセルフィー・カルチャーを揶揄しているのかもしれないと少し思ったんです。

そうじゃないんだ。

-でもビデオ全体を見て、それから歌詞を読んだら、そうではなくこれはガール・パワーへの応援歌なのかも、と思いました。SNSというのはそのパワーを発揮する手段のひとつに過ぎず、曲としては自分のセクシュアリティやありのままの自分で生きやすくなることについてなのではないかと。

ありのままの自分や自分の持ち味に自信を持っているんだ。あのさ、それって本当に美しいことなんだよ! 悪いことなんて何にもない、素晴らしいことなんだ。ロックンロールとしてもかっこいい曲だし、ロックンロールにはそういう素晴らしいことが必要だからね。あのビデオは本当に気に入っているよ。

-「The Way」はピアノも用いたバラードで、ライヴで観客がライターやスマホのライトを掲げる光景が目に浮かぶような楽曲です。

その瞬間が待ちきれないよ! 自分でもそういう光景を思い浮かべてきたんだ。早く実現させたいね! あの曲はライヴでやると最高だよ。今年に入って何度かライヴをやったんだ。みんながあの曲を聴いてからライヴに参戦してくれたら、きっと素晴らしいものになると思う。早くみんなの前でプレイしたいね。あれはBUCKCHERRYのTHE BEATLES的な曲だと思うんだ。「Hey Jude」みたいな感じの。

-たしかに! みんなでシンガロングできそうな感じですよね。

だよね。あれはStevieが曲を全部考えたんだけど、本当に素晴らしい仕事をしてくれたよ。あの曲を受け取ったときは本当に感激したね。俺はメロディだけ思いついていたからあいつに歌って聴かせたんだ。"これはシンプルで、ソウルフルで、クールなものになるぞ"と言ってね。さっきも話したけど、Stevieは父親を亡くしたばかりだった。あいつはピアノの前に座ってこの曲を書きあげて俺に送ってくれたんだ。"こいつは最高だよ......"と言ってやったよ。"これは俺もものすごく素晴らしいものを考えつかないといけないな"と思ったね。こんなに素晴らしい曲に見合うものをプラスしないと、と思ったんだ。だからその時点で俺のプレッシャーはものすごいものがあったよ(笑)。でも俺はプレッシャーが大好きだから、労力のかけ甲斐があったね。

-Stevieのお父様も天国で誇りに思っていることでしょうね。

彼はずっとBUCKCHERRYを本当に熱心に応援してくれていたんだ。本当に素晴らしい男であり人間だった。彼がいなくなってしまって俺もすごく寂しいんだ。

-ある意味、彼の人生に敬意を表した曲でもあるのでしょうね。

間違いないよ。

-この曲を作ることはふたりにとってセラピー的なプロセスでもありましたか。

本当にそうだったよ! ライヴであの曲をやるときに観てくれたら、きっと伝わると思う。

-「The Way」はすでにライヴでやったという話でしたが、アメリカでは徐々にライヴ活動が再開しつつあるそうですね。

そうなんだよ。アメリカのワクチン接種状況は素晴らしいと思う。俺もStevieももう打ったし、Kelly(LeMieux/Ba)も打った。他にもたくさんの人たちがワクチンを打ったんだ。ようやくいろんな場所が開き始めているよ。それにもうすぐ夏だからアウトドア・ショーがたくさんできるようになるし、つまりソーシャル・ディスタンスを保てるようになる。みんなにとっていい状況になってきているよ。

-6月からすでにたくさんのギグがブッキングされているみたいですね。

ああ。104公演くらいかな。

-すごい数ですね! もっとも、BUCKCHERRYにとってはそんなに多すぎない数かもしれないですが(笑)。

うーん......6月から始めるにしては多いかな。でも1年全体だったら多くはないね。

-なるほど。もうリハーサルは始めているのですか。

ああ。バンド全体としてはまだだけど、それぞれ個人で始めているよ。そのうちみんなで集まって仕上げるんだ。今のところ12月まで続くけど、その後も日本やオーストラリアに足を延ばしたいね。イギリスやヨーロッパにも。

-日本にはいつ戻ってきてくれるのか聞こうと思っていました。

そっちが教えてくれよ(笑)! 日本が俺たちを入れてくれないことには始まらないんだから。

-ワクチン接種が諸外国に比べて遅れていますからね。これから状況が好転するはずですが......。

それはびっくりだね。日本人はあんなに賢いし技術もすごく進んでいるのに。日本人はあんなに賢いんだから、世界中のみんなのぶんのワクチンを作ってくれると思っていたよ(笑)。だって日本には素晴らしい科学者がたくさんいるんだろう? というか、アメリカではワクチンが接種されているのに世界はまだのところが多いというのが信じられないんだ。各国でワクチンが生産できればいいのにね。みんな同時に接種できれば素敵なことだと思うんだけど。

-我々一般の人々も夏から秋にかけては接種ができると思いますので、BUCKCHERRYが全米ツアーをやっている間に、日本もアーティストの来日を受け入れられる状況になるかもしれません。

そうなったらパーフェクトだね。俺たちも同じ気持ちだよ。早くまた行きたいね。俺たちは日本のファンが大好きだし、きっと解ってもらっていると思う。今までも何度も行ったし、とても身近に思っている国なんだ。楽しみだよ。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

日本の素晴らしいファンのみんな! 心から愛しているよ。『Hellbound』のアルバムが日本で発売されるんだ。手に取ってもらえるのが待ちきれないよ。絶対気に入ってもらえると思う。入国できるようになったらできるだけ早くそっちに行けるようにするからね。近いうちに会えることを楽しみにしているよ! みんな、無事でいてくれ!