INTERVIEW
Ken Yokoyama
2015.07.08UPDATE
2015年07月号掲載
Member:Ken Yokoyama (Vo/Gt)
Interviewer:西廣 智一
-まさにそのことを曲で伝えたいんだなというのは、歌詞の節々から感じました。今、敷居の話がありましたけど、この曲は前作までの楽曲と比べるともっと若い子たちに向けて歌っているような印象を受けたんです。それがフェスに来てる子たちに向けて放った言葉だったと聞いて、すごく腑に落ちました。
今回は歳を取った自分を認めるってことも、自分の中で裏テーマとしてあって。今まで無理して若い子と同じ目線で歌っていたことを、もうおじさんなんだからおじさん目線でいいじゃないか、それをなるべく押しつけがましくないように、ちょっとユーモアで包みながら歌って、若い子が歌詞を読んだときに"げっ!"って思ってもらえるのが、頑固オヤジというか怖い先生というか、そういう妥当な現状認識をし始めたところかもしれないです(笑)。
-きっと今の年齢でここまでの活動があってこその説得力というのも大きいでしょうし。そこから表題曲の「I Won't Turn Off My Radio」へと続きます。2015年にラジオをテーマにした曲っていうのも、すごく興味深いですね。
そうなんですよね。今日ここまで話してきたことのイメージがラジオに集約されてるというか。自分も小学校のときはAM、中学校に入ったらFMとラジオで育ったんで。エアチェック世代じゃないですか。エアチェックと言ったって今の子はなんだかわからないだろうけど、ありましたよね、FM雑誌。
-ありましたね、番組表が掲載されていて。僕らもそこでいろんな音楽を知ったし、中学生くらいで小遣いなんて限られてたから、"この曲、今日オンエアするんだ"と思ったらカセットに録音して。
そうそう。僕、夜中に目覚ましかけて録ったことありますもん(笑)。それで好きな曲ばかり集めたオリジナルのカセットを作るわけですよね。そういう世代なんで、ラジオに対する愛情は強いです。でも正直、今はあまりラジオは聴かないけど、それでもやっぱり憧れというものがあって。あとは、ツールとしてどんどん価値が低くなってきてるところが、今の自分とすごく重なるというか。歌詞にもありますけど、MTVが現れて、そのあとネットも現れて、ラジオで音楽を発信することが大して重要じゃなくなってきた。ところがラジオって、震災のときは誰もが頼りにしましたよね。テレビを観る環境がない、携帯は繋がらない、だからみんなラジオで被害状況や避難場所を知ることができた。僕自身もあの震災のときに改めてラジオの強さ、頼りがいに気づいて、自分もそうでありたいと思ったんです。
-そしてこの歌詞を王道のパンク・ロックに乗せて歌うのがまた痛快ですよね。
これ、若い子にちゃんと届くんですかね(笑)?"なんでこのおじさん、ラジオの歌を歌ってるの?"で終わっちゃわないですかね?
-たしかに、MTVですらちょっと......。
そうですよね。歌詞の世界が完全におじさんなのかなあ(笑)。まあでもネットも出てきてるんで、大丈夫かな(笑)。まあ、ものの流れってことで聴いてもらえれば。でも、ものの流れってことで言うと、今のYouTubeやストリーミングというものも決して否定はできないんですよ。"そんなのやめてCD買えよ"とはもう言えない。5年ぐらい前なら言ってましたけど(笑)、もはやできない。でも歌詞を書くとこういうことになってくるし、口を開けばなるべく人を誘導するチャンスを作りたいなと思うしね。
-この2曲のあとに聴くからこそ、ミディアム・テンポの「Never Walk Alone」が余計に響くというか。
そうか、1曲目から3曲目までは大人の目線から子供に対して歌ってる感じですもんね。特に「Never Walk Alone」は父親目線がすごく入ってます。早いもので、今年で父親歴10年目を迎えるんで(笑)。今僕が突然いなくなって......仮に死んだとして、子供に言ってあげたいこととかを、優しい気持ちで書きました。