FEATURE
DEAD HEAD TOUR 2014
2014.10.20UPDATE
Writer 吉羽 さおり
9月5日に滋賀B-FLATからスタートしたDEAD HEAD RECORDS所属バンドによるツアー"DEAD HEAD TOUR 2014"。そのツアー中盤戦となるライヴが、池袋KINGSX TOKYOで行なわれた。出演バンドは、THE CHERRY COKE$、SHIMA、そしてレーベル代表、久田トシヒロ(TOCCO)がフロントマンを務めるMARSAS SOUND MACHINEと、ゲストとしてSTANCE PUNKSの計4バンドで、MC&DJを芸人LIONHEADが務めた。これだけのバンドががっぷり四つで音を闘わせ合うイベントだが、全公演チケット価格が1300円(前売り)。しかも常にLIONHEADがDJやMCでフロアを温め、観客たちにテキーラを大盤振る舞いしてと、ますますハイパーに盛り上げていくという採算度外視のおもてなしぶりだ。CDやインターネットで音楽を聴くばかりでなく、実際にライヴハウスに足を運んで、バンドが生みだす生の音と汗と体温とを感じてほしい。ここでしか体験できないことがある最高の遊び場になってほしい。そんなレーベルの心意気を存分に込めたイベントであり、チケットの価格設定だ。まだレーベルとしても若く、このイベント/ツアーとしてもこれからというところでもあり、各バンド、すさまじいボルテージでのライヴとなった。
トップバッターを担ったのは、この日のゲストであるSTANCE PUNKS。キャリア15年を超えますます血気盛んな4人だが、曲間がちょっとでも開こうものならフロアから"休んでんじゃねーぞ!"と声が上がるほど観客もまた熱い。観客の突き上げるコブシやシンガロングを全身で受け止めるように、ヴォーカルTSURUはステージから体を乗り出し、その歌声を放つ。"今日はナントカってレーベルのイベントなんだけど"(TSURU)などと冗談を飛ばしつつ、フロアにいる観客を片っ端からダイブさせんばかりの勢いで、ゲストに招かれたお礼をアグレッシヴに返すあっぱれなステージだ。「東京ブラザーズ」や「アイワナビー」、そして「ザ・ワールド・イズ・マイン」などを中心に、強いメッセージとシンガロングで埋めたライヴに、彼らがステージを去った後もフロアではSTANCE PUNKSコールが続いた。
次の登場は、今年初の全国流通盤となるミニ・アルバム『SHAKE YOUR LIVES』をリリースした、北九州を拠点に活動するメロディック・ハードコア・バンド、SHIMA。この日が初見だったのだが、ゆるーい三の線のキャラクターとビシッとタイトにきめてくれる演奏のコントラストが絶妙で、ぐいぐい引き入れられてしまう。大仰な80'Sメタルやヘア・メタルをパロったようなキャッチーなリフでアドレナリン全開にして、高速ハードコアとスクリームでのアドレナリン・サウンドでモッシュを生みだし、爽快なメロディでガッツポーズさせる。しょーもないネタでMCで笑いをとりつつ"高校生の時にとも台にこれ聴いてみてよって渡されたのが、STANCE PUNKSのCD。最近、こういうバンドたちと一緒にライヴできるようになった。バンドを続けてきてよかった"(EGACCHO/Vo)とも語った。多くのラウド系バンドのツアー・サポートに抜擢され、九州での企画イベントは盛況というのも納得だ。
壮絶と言うにふさわしい盛り上がりとなったのが、MARSAS SOUND MACHINEだ。1曲目から"暴れろ、暴れろ!"というTOCCO(Vo)の声とともに、観客はサークル・モッシュを起こしフロアを駆けまわる。DEAD HEAD RECORDSの全国ツアーを企画したレーベルの代表として、看板を背負うバンドとしての姿勢を見せ、「CALL MY NAME!」ではTOCCOがフロアへと降りて観客とともにシンガロングをしたり、あるいはウォール・オブ・デスを指揮して盛り上げていく。強制参加だと、会場中の観客をしゃがませて一斉にジャンプをきめたりと、ノイジーなサウンドを会場一体となってさらにアグレッシヴに、ゴキゲンにしていく。"まだ若いレーベルですが、いつか、近いうちにZepp ツアーをやりたい――今、笑ったやつ見てろよ! 覚えとけよ!!"(TOCCO)。全バンド中、もっとも泥臭く、音楽で遊ぶ姿を見せた頼もしいライヴだった。
そしてこの日、トリを飾ったのはTHE CHERRY COKE$。今年はメンバー脱退があったが休む間もなく7月に旧知の仲であるベーシストLF(bumbasticks)が加入して、新体制でリスタートした。激動の年だが、そうした出来事もエッセンスにして音楽へと昇華していくのがTHE CHERRY COKE$というバンドだろう。現在、新作の制作中であることもアナウンスされ、会場は歓喜に沸いた。「KISS IN THE GREEN~Drunken lovers nite~」ではじまったライヴもまた、喜怒哀楽のエモーションを歓喜のエネルギーに変え、観客はグッとコブシを握って振るい、歌い、声を上げ、力強いビートに体を揺らしていった。アイリッシュ・ミュージックなどさまざまなフォーク・サウンドを下地にしたパンク・ミュージックが、日々を生き抜いていくための光となり、仲間となり、賑やかに杯を交わすアルコールとなる。このイベントの趣旨や空気を、まっすぐに表現するライヴだった。アンコールは、SHIMAのメンバーを交え陽性ムードたっぷりに大団円を迎えたDEAD HEAD TOUR 2014。チケットの価格設定など挑戦も含め、1か月にわたり全国を回ったツアーは先ごろ終了したが、これを試金石にどんなふうにキッズの遊び場を展開していくのかは、楽しみなところだ。
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