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FEATURE

THE CHERRY COKE$

2014.05.14UPDATE

2014年05月号掲載

ゴージャスな舞台と演出で度肝を抜いた伝説の赤坂BLITZ公演がDVD化!

Writer 荒金 良介

"俺の想いはあの日、赤坂BLITZに置いてきています。みんなの胸にもあの日の光景が少しでも残ってくれたらいい"これはバンドのホームページ内で、3月12日に掲載されたHIROMITSU(Ba/Irish Bouzouki/Vo)のコメントから抜粋したものだ。やはりあの赤坂BLITZ公演はファンにとっても、バンドにとっても忘れられないショウだったに違いない。それは現場で観た筆者も同じ気持ちである。
今回THE CHERRY COKE$の6thアルバム『COLOURS』レコ発ファイナルの模様を収めたライヴDVD『"Hoist The Colours tour 2013 "THE FINAL at akasaka BLITZ』が発売されることになった。冒頭でも軽く触れたが、今年3月にKOYA OGATA(Whistles/Tp)とHIROMITSUの2人が5月11日のライヴを最後に脱退することが告知された。これにはビックリした。正直言うとショックだった。現在進行形のこの7人編成THE CHERRY COKE$こそ最強だと信じて疑わなかったから。ゆえに昨年赤坂BLITZで観たときと、このライヴ映像に向き合う際の心境は同じとは言い難い。複雑な感情が交差している。とはいえ、あの日あの場所で行われたライヴの素晴らしさが薄まるかと問われたら、それは断じてノー!だ。よくぞ映像化してくれたと心から感謝したい。後にも先にもないんじゃないかと思えるほど、特別な舞台と演出が施された貴重な宴が繰り広げられたからだ。今作はオフ・ショットやインタビューが合間に差し込まれる内容ではなく、ぶっ通しでライヴ映像をまるごと完全収録した形だ。もちろんMCもそのままで、当日足を運べなかった人にも臨場感が十二分に伝わってくるだろう。まず会場に入って驚いたのは、バンドのモチーフとも言える"海賊船"を正面から見据えた巨大なセットが組まれていたことだ。観客を音楽の大航海に誘うような視覚効果にガツンとやられた。それだけではない。曲に合わせて複数の男女ダンサーが入り乱れて踊り、バーレスク・ダンサーを2名迎えて大人のムードを演出したり、この日初めてというレア曲をプレイしたり、また、後半には木製の柵の囲いの中で"パブ・タイム"と題して、アコースティック・セットで数曲聴かせるなど、アイリッシュ・パブの雰囲気を再現するゆったりした空気感も実に心地良かった。"マジメに聴くようなバンドじゃねえし、マジメなバンドじゃねえから"とKATSUO(Vo)がMCで言っていたけれど、このセリフにTHE CHERRY COKE$の音楽的魅力が詰まっている気がしてならない。
彼らはインディーズ・シーンで様々なジャンルのバンドと対バンを繰り広げ、2012年に5thアルバム『BLACK REVENGE』でメジャー・デビューを果たした。もともとスカコア・バンドとしてスタートを切ったが、メンバーそれぞれ音楽の好みがバラバラなことを逆手に取り、雑多なジャンルを取り込むようになった。バンドの転機は民族楽器を積極的に導入したことだろう。さらに日本語詞に挑戦することでシンガロング要素が強まり、キャッチーなメロディ・センスも彼らをアンダーグラウンドからメジャーへ押し上げた要因だ。最新アルバム『COLOURS』は多彩なリズムとポップ性に磨きをかけ、歌って踊れて騒げるカラフルな曲調が揃っていた。
今作の中身に話を戻すが、ライヴ中すぐ演奏に移らなければ"早くやれよ、コノヤロー!"とガラの悪い客から罵声が飛び、"うるせぇんだよ、黙ってろ!"と返す信頼関係で結ばれたやり取りもカットされずに収録されている。腕を組んで眺める音楽じゃなく、ドンチャン騒ぎして、お酒がグイグイ進むサウンドという意味で彼らの右に出る者はいない。約2時間半に渡る濃厚なパーティーは途中でダレることなく、一気に観てしまった。最後になるが、いい意味でラフに処理されたライヴ感満載のパンキッシュな音像も今作の聴きどころである。

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