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LIVE REPORT

GREEN DAY

2025.02.26 @Kアリーナ横浜

Writer : 山本 真由 Photographer:Teppei Kishida、Kazumichi Kokei

ついに、ついに! 15年ぶりとなるGREEN DAYのジャパン・ツアーが実現した。コロナ禍で2度も来日が流れてしまったという経緯もあり、ファンとしては本当に、本当に待望のジャパン・ツアーである。 しかも、今回はニュー・アルバムである『Saviors』(2024年)のリリースもあり、最新ヒット曲が生で聴けるという絶好のタイミングでの日本公演だ。また、今回のジャパン・ツアーは、新作のリリースに伴う大規模なワールド・ツアー"The Saviors Tour"でヨーロッパ、北米、中東、アジアを巡りかなり仕上がってきた状態でのライヴ・パフォーマンスにも、期待ができる日程。そして、なんと言っても今回のツアーはそのコンセプチュアルなセットリストも話題となっている。昨年2024年は、90年代にパンク・ロックをメイン・ストリームに押し上げた、アイコニックなアルバム『Dookie』(1994年)のリリースから30年、GREEN DAYの存在をスタジアム・ロック級に進化させた、モンスター・アルバム『American Idiot』(2004年)から20年という節目にあたり、この"The Saviors Tour"でもその2作を中心としたパートが目玉となっている。こんなの始まる前からテンション上がるに決まってる!

今回のジャパン・ツアーは大阪、愛知、神奈川2公演というスケジュールで筆者はその千秋楽となる2月26日の神奈川公演2日目を観覧させてもらった。 当日は、事前のアナウンス通り、開演時間前にサポート・アクトのおとぼけビ~バ~が登場。カラフル且つフォトジェニックな4人組ガールズ・バンドだが、のっけからハイテンションで畳み掛ける容赦ないサウンドで、まだまだ"GREEN DAY待ち"な空気感のあった会場を一気にピリッとさせ、"本番来ましたよー"という雰囲気を作り上げた。ものすごい勢いで女の本音をぶちまけるハードコア・パンク・スタイルは唯一無二。GREEN DAYにリスペクトを示しつつも、しっかりと爪跡を残していった。

ところで、これまでのGREEN DAY来日サポートを務めた日本のバンドと言えば、Hi-STANDARDやGOING STEADY、MONGOL800、SNAIL RAMP等、そしてコロナ禍で実現しなかった来日公演には04 Limited SazabysやBLUE ENCOUNT、EASTBAYが予定されており、そういったメロコア、メロディック・パンク勢の印象が強いだろう。なので今回は少し意外な選出だったかもしれない。しかしながら、おとぼけビ~バ~と言えば、海外でも積極的に活動し、Dave Grohl(FOO FIGHTERS/ex-NIRVANA)やTom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE etc.)といったビッグ・アーティストからも一目置かれる等、海外での評価が非常に高いバンドだ。今勢いのある日本の音楽シーンを、GREEN DAYメンバーや洋楽ロック・ファンに印象付ける意味でも、なかなか粋な抜擢だったと思う。

そして、すっかり温まった会場で待ちきれないファンを湧かせたオープニングSEは、QUEENの名曲「Bohemian Rhapsody」。『American Idiot』でパンク・ロック・オペラという新しいスタイルに挑戦したGREEN DAYならば、絶対に意識しているだろうこの楽曲に、会場中が期待と歓喜の入り混じった歓声を上げる。続いてRAMONESの「Blitzkrieg Bop」が流れ、着ぐるみウサギのステージ・パフォーマンスでさらに盛り上がる場内。そんなテンションMAXの状態で、ついに! 本日の主役、GREEN DAYが登場! 1曲目は新譜『Saviors』から「The American Dream Is Killing Me」、映像演出と幕開けの炎も加わり、一気に動き出すアリーナ。Billie Joe Armstrong(Vo/Gt)も花道の先端まで歩き、オーディエンスを盛り上げた。『21st Century Breakdown』(2009年)以降、ちょっと挑戦した3部作等、これまでの功績を考えると比較的地味目なリリースの続いていたGREEN DAYにとって、『Saviors』はまさにタイトル通りの救世主的な作品となったんじゃないかと思う。『Revolution Radio』(2016年)なんかは、ライヴ映えのするヒット曲もあって地味とは言えないかもしれないが、『Saviors』にはしっかりと新時代のライヴ・アンセムとも言うべき楽曲があって、それがこの1曲目で改めて確認できた。

そして、2曲目からは怒濤の"『Dookie』パート"! 「Welcome To Paradise」に「Longview」、Mike Dirntのベースラインが光る初期の名曲だ。そこから、皆さんお待ちかねの「Basket Case」! 洋楽としては貴重な、誰でも雰囲気で口ずさめるシンガロング・アンセムだ。パンク・ライヴにしてはわりとお行儀の良かった会場内も、この曲にはもちろんダイバー続出の盛り上がりだ。続く「She」もライヴ定番曲、というかアルバム『Dookie』自体が、全曲個性的且つキャッチーな捨て曲なしの奇跡のアルバムだったことを、改めて実感させられた。

ここで一旦新曲の「Strange Days Are Here To Stay」を挟むが、こういうときに"知らない曲だ......"と、トーンダウンしてしまうなんてこともありがち。だがしかしこの日のKアリーナ横浜はアツい! みんなしっかりと新譜を予習してきているのか、はたまた流れが良すぎて落ち着くどころではないのか、その両方か、トーンダウンすることなく上手く新曲へと繋がる。この「Strange Days Are Here To Stay」が、わりと初期のノリに合うサウンドだったということもあり、続く「When I Come Around」への持っていき方もすごく自然で、"このセットリスト......めちゃくちゃ上手く考えられている!"と感心させられたのだった。

ここで、序盤のハイライト"『Dookie』パート"は終了。『21st Century Breakdown』のシングル曲「Know Your Enemy」では、会場を練り歩く着ぐるみアニマルズが連れて来たドデカい風船の飛行船から、子供が生まれるように小さい風船がたくさん出てくるという面白い演出もあり、飽きさせない。また、サビでは前方にいた女の子をステージに上げ歌ってもらうというパフォーマンスも。GREEN DAYのライヴでは、昔からファンをステージに上げるのが恒例だが、2万人規模の会場でもこういった温かいファンとの交流を大切にするGREEN DAYは、さすがだ。

また、アルバム『Revolution Radio』からは、イントロの印象的な表題曲「Revolution Radio」を演奏。このあたりで、Mikeが上着を脱いでいつものノースリーブ・スタイルに。そして再び新作から「Dilemma」。『American Idiot』以降の普遍的な王道ロック路線で、ミドル・テンポ且つキャッチーなノリやすい楽曲だ。続く「Coma City」も新譜から。会場には手拍子も起こるシンプルなリズムを基本としつつ、ドラムのTré Coolのテクニックが際立つ楽曲。

そこからまた『21st Century Breakdown』に戻り、「21 Guns」へ。スローな曲調にクール・ダウンしつつ、しっとりとした楽曲を一音一音味わうように聴き入る。しかし、そんなゆったりしたノリは長くは続かない。続く「Minority」では、アリーナ全体が波打つようにみんなでジャンプし、かなりテンポの速いライヴ・バージョンに、会場のボルテージは再度ハイライトを迎える。また、ここで間奏を長く取り、バンド・メンバーの紹介も入る。90年代からGREEN DAYのサポートを務め、ツアーだけでなく、MVへ出演したこともあるギタリストのJason Whiteに関しては、もはや4人目のメンバーと言ってもいいだろう。そのJason Whiteも含め、もう1人のギタリストとキーボーディストが今回のツアーに参加している。ポップ・パンクのジャンルでギターが3本というのは非常に贅沢な感じがするが、進化するGREEN DAYサウンドのダイナミズムには、この構成が欠かせないのだ。 そして、日本のファンにとって嬉しいサプライズ。THE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」を冒頭でカバーし、そのまま「Brain Stew」へ。『Insomniac』(1995年)は『Dookie』と比べてしまうと控え目なイメージもあるけれど、初期衝動と成長の過程が交じり合う繊細な思春期のような危うい魅力がある作品だと思う。

ここでステージに『American Idiot』のジャケット・アートワークを模した巨大モニュメントが登場。ここからは休む間もない"『American Idiot』パート"だ。キャッチーなイントロの「American Idiot」では、またまた会場中の盛り上がりが絶好調に。畳み掛けるように続く「Holiday」では、歌詞の一部を"Tokyo"に変更するサービス精神旺盛なパフォーマンスも。感動的なロック・バラード「Boulevard Of Broken Dreams」ではスマホのライトがペンライト替わりに掲げられ、星空のように輝く会場が印象的だった。「Are We the Waiting」では、花道で歌うBillieがオーディエンスの掲げていた日の丸の旗を受け取り、持ったまま歌う一場面も。そんなゆったりした流れをガラリと変えた「St. Jimmy」では、一気にテンションを戻して激しいノリに。絶叫とも言えるような激しいBillieのヴォーカルと、テンポ・アップして走りまくるリズム隊。これぞ、ライヴ版! という醍醐味を味わった。そして、「Give Me Novacaine」ではBillieが"It's a wonderful night, Tokyo!"と語り掛け、曲の最後も"Tokyo, Japan"に変更するといったこれまたサービス精神の旺盛っぷり。

そして"音楽は魔法だ。今この瞬間を楽しもう"と語り掛け、「Letterbomb」、「Wake Me Up When September Ends」というアルバム終盤の感動的な流れに。そこから壮大なパンク・ロック・オペラ「Jesus Of Suburbia」という完璧なセットリストだ。『American Idiot』は、世界情勢が不穏な今だからこそ心に響くものもあり、時代を越えて繰り返される人間の過ちと、愛すべき人の営みというものに思いを馳せる。

壮大な"『American Idiot』パート"が終わって、そしてここからは一応アンコールという扱いになるのだろうか。パフォーマンスに間を空けることなく、サクッと続けちゃうのがパンク・バンドらしくていい。『Saviors』から「Bobby Sox」。シンプルで分かりやすい歌詞、絶対に盛り上がる掛け声、これ新たなGREEN DAYのライヴ定番曲確定でしょ。数多くの名盤、名曲を出し尽くしてきたベテランがこんな曲作れるってもう、本当にGREEN DAYってすごいバンドだ。

最後は、この日の公演だけのとんでもない奇跡が。Billieが客席に向かって何やらギター・プレイヤーを求めている様子。いや、以前は当たり前のようにあった一幕"ギターヒケルヤツー?"があるってこと......!? ざわつく周囲、そしてステージに上がる男の子。このツアーのラストは決まって「Good Riddance (Time Of Your Life)」になるはず。ということは、もちろん「Knowledge(OPERATION IVYのカバーでGREEN DAYのライヴでファンをステージに上げてギターを弾かせる定番曲)」ではないのだけれど......完璧に弾いちゃいました、少年。これにはBillieも思わずニッコニコ。

Billieと肩を並べて弾き語り、曲の終盤にはMikeとTréも集まってきて、メンバー3人が男の子を囲むようにして座り、最後のコードは男の子からピックを受け取ったTréが弾く......ってなんだろう、このハッピーな空間は! カラフルな紙吹雪も舞って、感動的なラストだった。最高潮に会場全体の気持ちが1つになった瞬間。こういうのがあるから、ライヴって最高なんだ。 配信サイトで気軽にライヴが観られる時代。VRが発達すれば、どんどん臨場感も増すだろう。でも、この現場の空気感だけは、その場にいるバンドとオーディエンスしか味わえない特別なもの。

今回のツアーは、30年以上にわたってGREEN DAYが積み上げてきたキャリアの集大成であり、また彼等の情熱が今も現在進行形でパワーアップしていることを再確認できる、素晴らしいショーだった。今度は、15年も待つことはないかな? Billieも"Japan、イチバーン!"って言っていたし、"The Saviors Tour"が終わってしばらく休んだら、また2~3年で日本に帰ってきてほしい!

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