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LIVE REPORT

MÅNESKIN

2023.12.02 @有明アリーナ

Writer : 菅谷 透 Photographer:Fabio Germinario

豊洲PITでの初来日公演、そして"SUMMER SONIC"での衝撃的なライヴ・パフォーマンスから約1年半を経て、MÅNESKINが再び日本に帰ってきた! 最新アルバム『Rush!』のワールド・ツアーとして決定した今回の来日は、そもそも洋楽の新人アーティストにとって異例と言えた前回の豊洲PITから、東京&神戸でのアリーナ4公演へと各段にスケールアップ。それでも早々にソールド・アウトしてしまったのだから、日本のファンがいかに彼らのライヴに飢えていたのかが窺える。日本到着後にSNSで飛び交う出没情報や、これまた洋楽ロック・アーティストとしては異例と言えるゴールデン・タイムの音楽番組出演を経て迎えたツアー初日の有明アリーナは、さながらお祭りのような高揚感に満ちていた。

開演時間をやや過ぎたタイミングで会場が暗転し、この日を待ち望んでいた客席から即座に歓喜の声が上がった。雷鳴のようなギター・サウンドが鳴り響くと、ステージに張られた真っ赤な幕へメンバーのシルエットが浮かび上がる。ドラム、ベースも合流し演奏が熱を帯びだしたところで、Damiano David(Vo)の"Don't wanna sleep at all!"という咆哮と共に、ロック・ショーの幕が文字通り切って落とされた。天井から吊るされた骸骨マイクを片手にセクシーに歌い上げるDamianoを筆頭に、ギター・ヒーローっぷりがグッと増したThomas Raggi(Gt)、長いスカーフをエレガントに漂わせながらいぶし銀の重低音を奏でるVictoria De Angelis(Ba)、長髪を振り乱しながら硬軟併せ持ったフレーズをビシバシとキメるEthan Torchio(Dr)の4人は、アリーナ・クラスのステージでも破格の存在感だ。

ゴージャスな出で立ちと、菱形に組まれた宇宙船のような照明も相まって、別世界から来たスターという感想すら覚えてしまう。しかしながら演奏はどこまでもフィジカルで、4人の放つサウンドが生々しい。大舞台でもいい意味でやることは変わらないという、バンドの矜持が伝わってくるようだ。Damianoがマイク・スタンドに持ち替えたあとは「Gossip」、「Zitti E Buoni」のラウド・ナンバー2連発で、トップ・ギアのスタートを切った。

最初のMCでDamianoは、"コンバンハ、世界でもお気に入りの場所に戻ってこれて嬉しいよ"と挨拶。"実は会場に椅子があったから心配だったけど、みんな立って見てくれてて素晴らしいよ。君たちは世界最高の観客だ"とファンに喜びを伝えると、「Honey(Are U Coming?)」をパフォーマンスした。2023年9月にリリースされたばかりの楽曲だが、早くもフロアでは大合唱が巻き起こっていて、新たな彼らの代表曲のひとつになりそうだ。その後もポップ・センスが光る「Supermodel」や、いなたくウェットな世界観に引き込まれる「Coraline」と、幅広いバックボーンが窺える楽曲を披露したあと、大人気カバー曲「Beggin'」ではイントロのDamianoのアカペラから大歓声。曲中ではVictoriaが客席を駆け回り、観客とゼロ距離で対峙してさらなる狂乱状態を作り上げていった。

続くセクションではアルバム『Rush!』の最新エディション『Rush! (Are U Coming?)』に追加された新曲の「The Driver」や「Valentine」、2ndアルバム『Teatro d'ira - Vol. I』収録の「For Your Love」を披露。Thomasのお気に入りだという「For Your Love」では情熱的なソロが唸りを上げていて、Damianoの操作によって会場全体をスポットライトがくまなく照らし出す演出もドラマチックだった。こうして高まった熱量を荒れ狂うインスト・ナンバーに変換したあと披露されたのは、ウクライナ侵攻を受け発表された「Gasoline」。曳光弾のようなレーザーが飛び交うなかで叩きつけられるシリアスな音像は、この社会が直面している出来事を考えさせた。

会場が暗転し、しばらくするとアリーナ後方のサブステージにてアコースティック・セクションがスタート。「Trastevere」ではMVと同様にDamianoとThomas、そして"新たなギター・プレイヤー"のEthanが美しいアンサンブルを奏でていく。"この国とイタリアでどれくらいの時差があるかはわからないけど、すごくピッタリな曲だよね"という説明から披露された「Timezone」は、時に優しく、時に情熱的に語り掛けるようなDamianoの歌声に、繊細なThomasのギターが絡み合い、会場をセンチメンタルな雰囲気で包み込んだ。

再びメイン・ステージに明かりが灯ると、EthanとVictoriaによるアグレッシヴなセッションから人気曲「I Wanna Be Your Slave」が投下され、改めてフロアの温度が増していく。"みんなが知っているイタリア語の言葉があるんだ。日本には感謝しているよ、なぜならそれはこの国の生んだキャラクターがいつも言っている言葉だからね"というMCから、Damianoが"スーパーマリオ"の声真似でタイトル・コールしたのは「Mammamia」。日本のファンもお返しとばかりに、"'cause I'm Italiano"のシンガロングで熱量を高めると、ファンキーでポップな「Off My Face」、Thomasのテクニカルなプレイをギター搭載のカメラでフィーチャーした「In Nome Del Padre」でさらに加速していく。本編ラストの「Kool Kids」ではオーディエンスをステージに招き入れ演奏、老若男女がキッズとなって今を楽しむ光景は、ロックの持つ力を具現化したようだった。

アンコールではThomasの扇情的且つテクニカルなギター・ソロから、名バラード「The Loneliest」が奏でられる。アウトロでは観客のスマートフォンのライトが幻想的に会場を照らすなか、Damianoがアリーナの隅々に投げキッスし、深々と頭を下げ感謝の意を伝えていて、まさに感動的なフィナーレ......と、これだけで終わらないのがMÅNESKINだ。最後はこの日2回目の「I Wanna Be Your Slave」を演奏。初来日から約1年半の間にバンドとファンの双方で蓄積した熱量をぶつけ合うようなステージは、笑顔と熱狂の爆発で華々しく幕を閉じた。


■セットリスト・プレイリスト
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■最新アルバム『Rush! (Are U Coming?)』
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