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FEATURE

MÅNESKIN

2023.01.18UPDATE

2023年01月号掲載

2023年もMÅNESKIN旋風は止まらない! ジャンルレスでタイムレスな待望のニュー・アルバムが完成!

Writer 菅谷 透

2022年の音楽シーンを振り返るうえで外せないトピックが、"MÅNESKINの初来日"だろう。2015年に結成されたイタリアの若き4人組ロック・バンド MÅNESKINは、2021年の"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"優勝を機に、イタリアのみならずヨーロッパ各国やアメリカと、まさに世界中の音楽シーンを席巻。ここ日本でも当時の最新アルバム『Teatro D'Ira Vol. I』が日本盤として2021年10月にリリースされ、新世代のロック・バンドとして注目を集めることとなった。その後もTHE ROLLING STONESのオープニング・アクトや、"MTV Europe Music Awards"でのパフォーマンス、"ユーロヴィジョン"への凱旋、世界各国のフェス出演と話題に事欠かないなか、2022年8月には"SUMMER SONIC"出演と単独公演のため待望の初来日を果たした。単独公演は洋楽の新人アーティストとしては異例の規模と言える豊洲PITで行われたが、チケットは即日ソールド・アウト。筆者もライヴ・レポートのため会場へと足を運んだが、彼らのダイナミックなステージと、満員のオーディエンスの爆発的な熱狂は今でも鮮明に覚えている。日本での初パフォーマンスを目撃したファンも同じ想いだったのだろう、公演終了後にはSNSにライヴを絶賛する投稿が溢れ大きな話題に。勢いそのままに臨んだ"サマソニ(SUMMER SONIC)"でも過激で強烈なパフォーマンスを大観衆に見せつけ、ベスト・アクトのひとつとして称賛を浴びたのだった。また来日中にはTV番組の出演など、様々なメディアにも登場。彼らの自由と平等を尊ぶマインドも話題を呼んだ。


熱狂、幸福から失望まで、激動の2年間に抱いた感情をすべて表現した渾身作


かくして2022年は、まさにMÅNESKINの年と言うべき1年となったのだが、彼らの巻き起こすセンセーションは今年2023年になっても続くことになりそうだ。その発火点となるのが、1月20日に全世界同時リリースを迎える3rdアルバム『Rush!』である。前作(『Teatro D'Ira Vol. I』)から約2年ぶりにして、"ユーロヴィジョン"で世界的ブレイクを果たしてから初となるアルバムは、バンドの魅力をブラッシュアップしつつ、より色濃く打ち出した作品に仕上がっている。

本アルバムの制作にあたり、バンドはなんと約50曲という膨大な楽曲を録音したとのことで、アルバム本編にはその中から選び抜かれた17曲が収録された。メンバーはインタビューで"俺たちがこの2年間に抱いた様々な感情をすべて表現していると思う。だからもちろん、超ポジティヴな感情や熱狂、幸福もある。一方で、失望を感じるような悪い瞬間もいくつかあった"、"このアルバムには、レッテルを貼ることができないんだ。ロックとかポップとか、そういう枠にはめるのは不可能だよ。音楽のジャンルがなくなり、良い音楽と悪い音楽について話すだけの時代になった気がして、そういう方向に進んだんだ"と語っており、荒々しいパンクから軽快なダンス・チューン、往年のロックをオマージュしたバラードまで、ジャンルを横断した多彩な楽曲が並んでいる。また、いくつかのトラックにはBACKSTREET BOYSやBritney Spears、THE WEEKNDなどを手掛けた著名プロデューサー Max Martinの名前も共同制作者としてクレジットされているのも本作の特徴。ポピュラー・ミュージックに精通した名手の采配や、イタリア語に比べるとあっさりとした発音の英語詞を主体としたことも手伝ってか、楽曲からは一段とスケール感を増し、アップデートを遂げた印象も受けるが、それでいて持ち味のひと癖もふた癖もある雰囲気はしっかりと保たれているので安心してほしい。

そんな本作では、しっかりと腰が据わったフィジカルなサウンドが印象に残る。Ethan Torchioの緩急剛柔なドラミング、Victoria De Angelisの無骨なベース、Thomas Raggiの流れるようなギター、そしてさらに表現の幅を広げたDamiano Davidのヴォーカルと、それぞれの個性が紡ぎ出すアンサンブルは過剰に演出されることなく、真骨頂であるライヴと地続きの、自由奔放でいてタイトな連帯感も備わった"バンド"のパフォーマンスを存分に堪能できる。そうしたアート性はきっと、床に仰向けになった4人をミニ・スカートの少女が飛び越える、なんとも破天荒なジャケット写真にも反映されているのだろう。ちなみにバンドのSNSで公開されたトラックリストの背景には、ジャケ写のMÅNESKIN側の視点――つまりスカートの中(!?)が映し出されているのだが、アルバムを聴いたあとに改めて見てみると、セクシーで刺激的な収録曲を表すにはむしろぴったりなのかもしれない......なんて思えてくるから不思議だ。

オープニングを飾る「Own My Mind」は、うねるリフに乗った"俺を君の虜にしてみて"というフレーズが官能的なナンバー。あのRAGE AGAINST THE MACHINEのギタリスト Tom Morelloをフィーチャーした「Gossip」は、ファルセットを交えたDamianoのヴォーカルとTom Morelloのワーミー・サウンドが好相性を見せるアップテンポな楽曲だ。Track.3「Timezone」は打って変わって、メロウな雰囲気のラヴ・ソング。"俺たちを今引き離しているのは時差だけさ"という歌詞は、ここ2年忙しく各国を飛び回っていた彼らならではの発想だろう。言葉遊びを交えながら自分をフッた相手への手痛い仕返しを歌う「Bla Bla Bla」は、四つ打ちビートに合わせ、ループに変化を加えながら徐々に熱を帯びていく様がダンス・ミュージック的。フェスを狂乱状態に陥れそうで今からワクワクしてしまうような曲だ。「Baby Said」ではポップ・センスが遺憾なく発揮され、歌メロに追随するThomasのギター・フレーズが心地いい。Track.6の「Gasoline」はロシアのウクライナ侵攻を受け制作/発表され、ファンからもリリースが望まれていた楽曲。爆発音のように鈍いVictoriaのベースから始まり、Damianoの嘆きにも似た歌唱が胸を打つ、アルバムの中でも異彩を放つナンバーだ。Ethanの妙技が光る「Feel」、「Don't Wanna Sleep」のダンス・ナンバー2連発に続いては、2022年末の北米ツアーで先行披露され話題となっていた「Kool Kids」。やさぐれたパンク・チューンでライヴではシンガロングを誘発しているが、訛りの効いたヴォーカルに乗っかっている声ネタはヒップホップ的でもあって、彼らのジャンルレスな作曲手法が感じられる。ストリングスを従え情感たっぷりに歌い上げるバラードの「If Not For You」も絶品だ。


アルバム後半のTrack.12~14にはイタリア語曲が配されているが、これはDamianoによると"イタリア語の音楽のパートは、俺たち自身や俺たちの文化、バックグラウンドの重要な部分だと感じているから、トラックリストの中のあちこちに出てくるようなことはしたくなかった。すべての土台となるブロックを作りたかったんだ"という狙いだそう。たしかに英語詞に慣れたあとで食らう高速チューンの「Mark Chapman」(John Lennon殺害犯の名前に由来すると思われる)はいい意味で強烈な違和感だが、過去作からのファンは"これこれ!"と膝を打つだろうし、本作でバンドに初めて触れるという人も、このセクションにたどり着くころにはきっとMÅNESKINの世界観にどっぷり浸かっていることだろうから、イタリア語の歌唱も思いのほかスッと耳に馴染むのかもしれない。早口で絶望と再帰を歌う「La Fine」、「Il Dono Della Vita」と母国語で心情を吐露したあとに、ブレイク後にリリースされた英語詞のシングル「Mammamia」、「Supermodel」が並ぶ構成もなんだか示唆に富んでいる。そしてラストの「The Loneliest」では、内面の弱さを見せながら、エモーショナルな歌唱とギター・ソロが心を震わせる。この2年間の壮大な旅路によって生まれた作品を締めくくるに相応しい、タイムレスな名バラードだ。

なお本作の日本盤には、ライヴでの人気楽曲「Touch Me」が両形態に付属。さらに初回生産限定盤には、豊洲PITでの初来日公演の模様を収めたCDがついてくるのも嬉しいポイントだ。「Zitti E Buoni」、「Beggin'」、「I Wanna Be Your Slave」といった代表曲のライヴ・バージョンはもちろん、MCも一部収録されているので、半ば伝説と化している公演を追体験するチャンスだろう。


▼リリース情報
MÅNESKIN
ニュー・アルバム
『Rush!』
maneskin_rush.jpg
2023.01.20 ON SALE!!

【通常盤】(CD)
SICP-6505/¥2,640(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

【初回限定盤】(2CD)
SICP-6503-4/¥4,000(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV
※スペシャル・ブックレット付

[CD1]
1. Own My Mind
2. Gossip Feat. Tom Morello
3. Timezone
4. Bla Bla Bla
5. Baby Said
6. Gasoline
7. Feel
8. Don't Wanna Sleep
9. Kool Kids
10. If Not For You
11. Read Your Diary
12. Mark Chapman
13. La Fine
14. Il Dono Della Vita
15. Mammamia
16. Supermodel
17. The Loneliest
18. Touch Me ※日本盤ボーナス・トラック

[CD2] ※日本盤初回盤のみ
豊洲PIT公演(2022年8月18日)ライヴ盤
1. Zitti E Buoni
2. In Nome Del Padre
3. Mammamia
4. Beggin'
5. Coraline
6. Supermodel
7. For Your Love
8. Touch Me
9. Le Parole Lontane
10. I Wanna Be Your Slave

「La Fine」配信はこちら 「Gossip Feat. Tom Morello」配信はこちら

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