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FEATURE

Thomas Raggi

2025.12.05UPDATE

2025年12月号掲載

豪華ゲストと共にピュアで痛快なロックを奏でる MÅNESKINのギタリスト Thomas Raggiの初ソロ作『Masquerade』

Writer 菅谷 透

豪華ゲストと共にピュアで痛快なロックを奏でる
MÅNESKINのギタリスト Thomas Raggiの初ソロ作『Masquerade』


MÅNESKINのギタリスト、Thomas Raggiが初のソロ・アルバム『Masquerade』を完成させた。イタリアから全世界にセンセーションを巻き起こし、今やロック復権の旗手とでも言うべき存在へと成長したバンドにおいて、サウンドの根幹をなすリフを奏でてきたThomas。彼が発表したソロ作は、なんとRAGE AGAINST THE MACHINEのTom Morello(Gt)がプロデュースを担当。クラシック・ロックからハード・ロック、オルタナ/ミクスチャーに至るまでのジャンルの魅力を、シンプルだが奥深い骨太のバンド・サウンドへと再構築した、会心の作品だ。

2015年の始動以来、MÅNESKINは驚異的なペースで活動を続けてきた。2017年にイタリアのコンテスト番組"X Factor Italia"で母国での知名度を獲得した彼等は、2021年には"Eurovision Song Contest"にイタリア代表として出場し優勝、一躍ワールドワイドな注目を集める存在となった。その後の快進撃は、皆が知るところだろう。ヨーロッパ、米国、そして日本とツアーを展開すると、2023年には3rdアルバム『Rush!』を発表。同年にはアルバムをサポートするワールド・ツアーを実施し、翌2024年には"SUMMER SONIC"等世界各国のフェスでヘッドライナーを担当......と、まさに破竹の勢いで駆け抜けてきた。それだけに、バンドとしての歩みを小休止し、個々の表現を追求するフェーズに入ったのは自然な流れだったのかもしれない。
まずVictoria De Angelis(Ba)が"Victoria"名義でクラブ・ミュージックに軸足を置いたソロDJプロジェクトを始動させると、続いてDamiano David(Vo)がポップな側面も見せるソロ・アルバム『Funny Little Fears』を発表。そして今回満を持してソロ・デビューを果たしたのがThomasというわけだ。

思えばMÅNESKINの4人は多彩な音楽的嗜好を持っており、その化学反応によって生み出されたジャンルレスでタイムレスなサウンドが魅力の1つでもある。DamianoはSSWや2000年代インディー・ロックを好み、Victoriaはパンクからダンス・ミュージックまでを横断、Ethan Torchio(Dr)はジャズやクラシックをルーツに、サウンドトラックや電子音楽にも傾倒している。
そんな中でGUNS N' ROSESやLED ZEPPELINのようなハード・ロックを中心としたバックグラウンドを持ち、John Frusciante(RED HOT CHILI PEPPERS/Gt)を最大の影響源に挙げるThomasは、バンドにおける"ロックらしさ"を担保してきた存在だと言えるのではないだろうか。実際、彼のプレイにもそのあたりはよく表れていて、キャッチー且つ骨太なリフはもちろん、ライヴでのインプロヴィゼーションを交えたソロは実にギター・ヒーロー然とした強烈な存在感を放ってきた。そんな彼だからこそ、本作のプロデューサーを務めることとなったTom Morelloと意気投合したのは必然だったのだろう。

インタビューによればMÅNESKINとTomの出会いは2021年、バンドがライヴでロサンゼルスを訪れたときで、この縁が2023年発表の楽曲「Gossip Feat. Tom Morello」(『Rush!』収録)でのコラボとして結実している。

Måneskin|マネスキン - 「GOSSIP feat. Tom Morello」 (日本語字幕ver)

ThomasにとってTomは若い頃からのアイドル的存在だったそうで、Tomも彼を"こんなに若くてスキルのあるギタリストが音楽にこれほど情熱を持っている姿を見るのは本当に胸躍るものがあったよ"と評しており、お互いへのリスペクトは当初から強固なものだったようだ。
ステージでの共演等を経て親交を深めていくなかで、Thomasにはソロ・プロジェクトというアイディアが芽生え始め、その舵取り役としてTomに白羽の矢が立った。Thomasは本作のために40曲程(!)の候補を用意していたというのだから、その気合の入りようが窺える。入念な打ち合わせを重ねた結果、アルバムには7曲のオリジナル楽曲とカバー1曲の計8曲が収録されている(※日本盤CDにはボーナス・トラックが追加)。

Thomasが頭に描いていた"クールなアーティストたちを集めたプロジェクト"というコンセプトを見事に具現化するように、参加ゲストの顔ぶれも錚々たるものだ。Tomのギターでの参加はもちろん、ドラムではRED HOT CHILI PEPPERSのChad Smith、元GUNS N' ROSESのMatt Sorumと、前述の通りThomasのルーツに直結するレジェンドたちが力を貸している。ベースでは日本からハマ・オカモト(OKAMOTO'S)が参加しており、リリース前から早くも話題を集めている。
楽曲を彩るヴォーカルも実に豪華で、FRANZ FERDINANDのAlex Kapranos(※MÅNESKINは"X Factor Italia"で「Take Me Out」をカバーしている)をはじめ、Serge Pizzorno(KASABIAN)はMÅNESKINが影響を受けた2000年代UKロックの立役者であり、Nic Cester(JET)やLuke Spiller(THE STRUTS)はロックンロール・リヴァイヴァルの系譜に連なる存在と見ることもできる。THE PRODIGYのMaximや、若手SSWのUPSAHLは歌唱だけでなく楽曲制作にも関わっており、アルバムにユニークな質感をもたらしている。
さらに驚くべきは、Thomasもヴォーカルを披露していることだ。歌唱にあたり半年間レッスンを受けたそうで、表現者としての新たな側面を見せている。

ここからは作品を具体的に掘り下げていきたいところだが、まず注目すべきはそのサウンドの生々しさだ。打ち込みや遠隔での制作も当たり前となった昨今において、あえてミュージシャンが一堂に会してレコーディングされた本作には、ロックンロールが持つリアルなエネルギーと、ライヴを連想させる熱量が詰まっている。
オープナーの「Getcha! - With Nic Cester & Chad Smith & Tom Morello」では雷鳴のようなパワフルなバンド・サウンドが鳴り響き、作品への期待感を一気に高めてくれる。ちなみにこの楽曲はBECKも制作に参加しているそうだ。

Thomas Raggi - GETCHA! with Nic Cester, Jet, Chad Smith - prod. Tom Morello

続く「Keep The Pack - With Matt Sorum & Tom Morello」はTomとのソロ・バトルが聴きどころ。「Lucy - With Upsahl & Hama Okamoto & Chad Smith」は、重厚なアンサンブルにダークなUPSAHLの歌唱が独特の緊張感を醸し出している。

Thomas Raggi - KEEP THE PACK with Tom Morello, Matt Sorum - prod. Tom Morello

Thomas Raggi - LUCY with UPSAHL, Chad Smith, Hama Okamoto - prod. Tom Morello

「Cat Got Your Tongue - With Sergio Pizzorno」はラウドなリフとSergeの高速ヴォーカルがミクスチャー的だが、後半に現れるギター主導のメロディが実にThomasらしい。「For Nothing - With Matt Sorum」は叙情的なバラードで、煽情的なギター・プレイを存分に堪能できる。英バンド DEAD OR ALIVEの80sダンス・クラシック「You Spin Me Round (Like A Record)」を荒々しいロックに仕立て上げたTrack.6では、原曲を再解釈したフレーズが印象的。Alexの妖艶なヴォーカルも見事にハマっている。

Thomas Raggi - CAT GOT YOUR TONGUE with Kasabian - prod. Tom Morello

Thomas Raggi - FOR NOTHING with Matt Sorum - prod. Tom Morello

YOU SPIN ME ROUND (LIKE A RECORD) with Alex Kapranos, Franz Ferdinand - prod. Tom Morello

作品の中で最もクラシック・ロックに寄った「The Ritz - With Luke Spiller」から、ビッグ・ビートをロック的視点で捉えた「Fallaway - With Maxim」に続く流れは、ロックの歴史を凝縮した本作を体現するハイライトだ。

Thomas Raggi - THE RITZ with Luke Spiller - prod. Tom Morello
Thomas Raggi - FALLAWAY with Maxim

本作の発表に際し、Thomasは"こんなにたくさんの音楽界のアイコンたち(アルバムの曲を書いている間に会うことのできた面々も含めて)が1つになるのを目の当たりにして、音楽に境界線はないってことに気付いたよ。本能とインスピレーションに従って、押し付けられたルールは無視して、シンプルに感じたことをやるべきだってね"と語っている。
その言葉の通り、本作で確固たる個性と新たなクリエイティヴィティを見せた彼が今後どのような道を歩むのか、そしてこの経験がMÅNESKINにどう還元されるのか、期待は高まるばかりだ。



▼リリース情報
Thomas Raggi
SOLO ALBUM
『Masquerade』
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NOW ON SALE!!

【日本盤CD】
SICP-6764/¥2,860(税込)
日本盤CDのみボーナス・トラック収録/解説/歌詞対訳付

1. Getcha! - With Nic Cester & Chad Smith & Tom Morello ※楽曲制作にBECK参加
2. Keep The Pack - With Matt Sorum & Tom Morello
3. Lucy - With UPSAHL & Hama Okamoto & Chad Smith
4. Cat Got Your Tongue - With Sergio Pizzorno
5. For Nothing - With Matt Sorum
6. You Spin Me Round (Like A Record) - With Alex Kapranos
7. The Ritz - With Luke Spiller
8. Fallaway - With Maxim
9. For Nothing (Alternative Version) ※日本盤CDボーナス・トラック

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