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LIVE REPORT

リリー楽綺団

2022.11.06 @新宿MARZ

Writer : 菅谷 透 Photographer:Yui Tanigawa

止まることなく走り続けた、3年4ヶ月の軌跡――
名古屋のガールズ・ロック・バンド リリー楽綺団の活動休止前ラスト・ライヴ


名古屋を拠点に活動してきたロック・バンド リリー楽綺団が、活動休止前最後のツアーを東名阪で開催。そのファイナルにあたる公演を11月6日に新宿MARZにて行った。

2019年7月にデビューし、"ハイスピードで進化し続けるロックバンド"をコンセプトに意欲的な活動を実施してきたリリ団(リリー楽綺団)。コロナ禍やメンバー・チェンジなど、紆余曲折を経ながらも着実に前へと歩みを続けていき、今年2022年8月には新体制での4thアルバム『Know No.』をリリースしていた。そうした経験を積みながら活動3周年を迎え、バンドの今後を考えていくなかで、メンバーは自分自身についても考えていくようになったのだという。そして、リリ団としての活動に区切りをつけ、それぞれ別々の道を歩んでいくことを決断。3公演を通して楽曲すべてを披露する、集大成となるファイナル・ツアー敢行へと至った。

オープニング・ムービーのあと、スーツ姿のメンバーがステージに姿を現す。"今日は集まってくれて本当にありがとう。全力で暴れる準備できてるか!?"という綺更(Vo)のアジテーションとともに、「ARK」でライヴは幕を開けた。綺更と瑞月(Vo)はステージ中央を動き回り、熱情的な綺更にクールな佇まいの瑞月と、それぞれキャラクターが異なりながらも息の合ったヴォーカル・ワークを見せ、下手側のコトネ(Ba)はモニターに足を掛けたり、身体を揺らしたりとアグレッシヴなパフォーマンスを繰り広げる。そして上手側、ステージ最前面に据えられたドラム・セットではるいしゃむが、時折フロアに視線を送りながらタイトなグルーヴを紡ぎ出していく。冒頭から気迫のこもった演奏に、観客も拳を挙げて応えていた。"名古屋のリリー楽綺団です、どうぞよろしく!"(綺更)と挨拶を交わしたあとは、エモーショナルなショート・チューンの「WANDERING」、ピアノの調べが叙情的な「Q for U」と繋げていく。療養中の奏(Gt)は不在のため上モノは同期音源を用いての演奏となったが、ステージ上の4人のフィジカルなパフォーマンスと融合することで、これまで培ってきたもの、そして現時点で出せる力のすべてを解き放とうという気概が感じとれる。そんな光景を目の当たりにして、"東京! もっともっとみんなの限界突破した声を聞きたいんだけど、聞かせてくれるか!"(綺更)と問われたら、自ずとオーディエンスの声援にも力が入る。双方が熱気をぶつけ合う白熱した展開を生みながら、「メーデー」、「My monster」と駆け抜けていった。

MCを挟んだあとは、重心を落としたビートの「サイレン -siren-」、「END in SIGHT」へ。綺更と瑞月はダンスでも魅了し、先ほどまでとはまた異なる魅力を提示していく。「SusTain'T」では"みんな一緒に歌ってくれますか!"のひと声でシンガロングが巻き起こり、「violet」では打って変わって、マイク・スタンドを用いてじっくりと聴かせる歌唱を披露。バンドの多彩な表現が詰め込まれたセクションとなった。ここでヴォーカル陣の衣装交換のため、楽器陣が場を繋ぐMCタイムが設けられたのだが、気を抜くと決壊してしまいそうな涙腺をこらえながらも、集まったファンへ明るく感謝を述べる姿が胸に残った。

揃いのドレッシーな衣装を纏った綺更と瑞月がステージに戻ってくると、エレクトロ・チューンの「チトニア」をふたりだけで披露。コトネとるいしゃむも合流したあとは、ポップなテイストの「プレジャーワールド」で、華やかに後半戦へと突入。フロアで咲き乱れるタオルに、メンバーも笑顔で応えていく。"次はイカつく暴れていこうぜ!"とバウンシーで情熱的な「Borderline」で勢いをつけると、オルタナティヴなサウンドの「ARROW」でシリアスな表情ものぞかせながら、人気曲の「陽炎-Kagerou-」へと流れていく。ラップも織り交ぜた躍動感溢れるヴォーカル、スラップも飛び出す鮮やかなベース・ライン、しなやかにビートを刻むドラムと、ひとりひとりの個性が溶け合って放たれるパフォーマンスが、会場の熱気をさらに上昇させていった。


明日に鳴り止まぬ鼓動を刻む旅は、まだ続いていく

ライヴもついに終盤戦へと差し掛かるなか、MCでは瑞月が"実は今、みんなのパワーに圧倒されてます"とこぼしつつ、この日まで支えてきてくれたファンへの感謝を語る。そして、"これからもみんなの背中を押せるような曲をたくさん歌ってきたつもりなので、ずっと忘れないで、これからも笑っていてほしいです"と呼び掛けると、「残響フィルム」を披露。こみ上げる想いを音に変え、凛々しく力強い演奏を届けていく。「泡沫flos」、「ALliuM」と胸に迫る切ないナンバーを畳み掛けてからは、ハードでドラマチックな「アニマ」、壮大なサウンドの中でいつか来る"終わり"に想いを馳せる「シオン」で、そのときへと歩みを進めていく。そして、本編のラストに届けたのは「Miss」。"みんなの大きい歌声、ステージにまで、4人にまで届けてください"という綺更のひと言で一体感に包まれたなか、フィナーレを迎えた。

素の表情も見えるトークも交えた写真撮影を挟んで、アンコール前には綺更が、今まで出会ってくれたファンや、メンバー、スタッフへと感謝の言葉を述べ、"これだけいい人たちに出会うなんてなかなかない"と胸を張る。そして、そうしたリリ団にまつわるすべてのきっかけをくれたのが"この女だったわけさ"と、瑞月の肩を叩く。急なフリに初めは驚いた表情だった瑞月も、すぐさま顔をほころばせて、お互いを称え合うような抱擁を見せ、場内からは万雷の拍手が巻き起こった。"いっぱい泣いて、いっぱい笑って帰りましょう!"という綺更の叫びから放たれた「エゴイズム」に続けて、リリ団として最後に奏でられたのは「Re:verse」。ステージもフロアも、後悔なんて残らないくらいすべてを出し切ってフィナーレを迎えた。

3年4ヶ月の活動にいったんの幕を下ろし、それぞれ未来へと歩き出したリリー楽綺団。この日のライヴも含めて、彼女たちが紡いできた音は、これまで関わってきたすべての人々の心の中で鳴り続けることだろう。明日に鳴り止まぬ鼓動を刻む旅は、まだ続いていく。


[Setlist]
1. ARK
2. WANDERING
3. Q for U
4. メーデー
5. My monster
6. サイレン -siren-
7. END in SIGHT
8. SusTain'T
9. violet
10. チトニア
11. プレジャーワールド
12. Borderline
13. ARROW
14. 陽炎-Kagerou-
15. 残響フィルム
16. 泡沫flos
17. ALliuM
18. アニマ
19. シオン
20. Miss
En1. エゴイズム
En2. Re:verse

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