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LIVE REPORT

ATARI TEENAGE RIOT

2014.04.09 @代官山UNIT

Writer 藤崎 実

3月にリリースされたニュー・アルバム『Reset』が洋楽インディーズ・チャートNo.1を獲得し、まだまだその勢いは止まることを知らないAlec Empire率いるATARI TEENAGE RIOTのジャパン・ツアーが、4月9日水曜日に代官山UNITにて開催された。本公演は4月10日に組まれている東京公演がソールド・アウトしたことを受けて急遽決定した追加公演であるが、開演時のフロアは集まったDHRファンでしっかりと埋め尽くされていた。90年代に行われたATARI TEENAGE RIOTの初来日公演は凄まじいの一言だった。半ば暴徒と化したオーディエンスが巻き起こすモッシュによって発生した水蒸気が、天井へと登り水滴となって降り落ちてくる。破壊衝動の塊だった頃の強烈な想い出だ。そんな当時のライヴを経験しているであろう往年のファンの姿も窺えたが、2010年の復活後、SUMMER SONIC 2010やFUJI ROCK FESTIVAL '11でのライヴを体感し虜になったのであろう若者の姿も多く、現在の彼らが広い層のリスナーからの支持を得ているということが目に見えて理解が出来る。

定刻を少し過ぎると場内が暗転。ATARI TEENAGE RIOTのロゴをバックに拝したステージにDHRの皇帝Alec Empireが登場し、ソロ・パフォーマンスで会場を温める。ノイズ・インプロヴィゼーションからイントロに移行し、メンバーが大歓声で迎えられると"全てを解き放て!"というメッセージが込められた「Reset」からライヴがスタート。テクノ色が強くポップなサウンドを内包しているこの楽曲によるスタートは、急激にトップ・ギアへと駆け登るような過去のスタイルとは違う形ではあるが、オーディエンスは体を揺らし踊りながら徐々にテンションを上げていく。続く「Destroy 2000 Years Of Culture」では、Alecが両手でフロアを煽るコール&レスポンスにオーディエンスはしっかりと呼応し"ATARI!!!""SPEED DEMONS!!!"といったメッセージ入りのプラカードや、革命を連想させるフラッグがフロア中に何本も掲げられる。この日のライヴでは公式ビデオの撮影が行われたこともあり、スマホやタブレットの光がDHRサウンドや照明効果とシンクロし、サイバーな世界観を演出することに成功していた(※ファンに携帯電話やデジカメでライヴを撮影してもらい、それら募集しビデオ制作に使用。選ばれた映像の撮影者は公式ビデオに名前がクレジットされる)。"DESTROY!!!"シャウトが炸裂する凶悪ハードコアな「No Remorse」から完全にスイッチが入り、DHRアンセム「Atari Teenage Riot」から「Revolution Action」といった怒濤のDHRサウンドにオーディエンスはモッシュやダイヴで答える。キラー・チューン「Speed」では巨大なモッシュ・ピットが発生し、フロアを更なる狂乱の渦へと叩き込んだ。Alecが"ユニークなエネルギーをもたらしてくれる"と語ったRowdy Superstarは、ステージ上を縦横無尽に踊り狂いフロアを煽動し、イギリス仕込みの攻撃的なラップを炸裂させた。その独特の奇抜なファッション・センスも含め、実に面白い存在である。

復活後の代表曲とも言える「Activate!」にて最高の盛り上がりを見せる中、本編は幕を閉じる。アンコールは復活後の楽曲で構成され、ニュー・アルバム『Reset』で呈示されていた近未来を連想させるデジタルな世界観が、シンセ・サウンドに包まれたNic Endoを媒体に表現される。「Collapse Of History」から「We Are From The Internet」の流れは、夢見心地な美しさすら感じる幻想的な世界観にオーディエンスをリンクさせることに成功していた。

新旧織り交ぜたセットリストはなかなか興味深く、キャッチーなニュー・アルバム『Reset』と過去曲とのコントラストの差がプラスにはたらき、ライヴの流れに緩急が生まれ、1本のストーリーを描くことに成功していた。破壊衝動を超えたポジティヴな未来観を感じることが出来たこの日のライヴを実体感すると、Alec自らが"ATR Ver.3.0"と称している概念にも自然に納得が出来る。初期の彼らはハードコアに特化していた強烈な存在ではあったが、現在のATARI TEENAGE RIOTは多様性とインテリジェンスを感じさせる存在にシフトしており、言葉や音に深みと説得力がしっかりと伴っている。決してクラシックな存在にならず現在進行形でオリジネーターとしての進化を続けている彼らにとっては、この日のライヴも伝説の終焉までの通過点に過ぎないのかもしれない。

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