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LIVE REPORT

KVELERTAK

2013.09.10 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 荒金 良介

胸と腕にビッシリとタトゥーを施し、上半身裸でマッチョな肉体を晒したKVELERTAKのフロントマン、Erlend(Vo)は1曲目「Apenbaring」をバンドのマスコット的存在であるフクロウの剥製マスク(目の部分は赤く光っていた!)を被ったまま堂々と歌い上げる。このオープニングを観ただけで全身が震えた。

ノルウェー発の6人組による2ndアルバム『Mair』が祝・日本盤として8月にリリースされ、絶好のタイミングで初の単独来日公演が決行された。東京、大阪の2公演のみと回数こそ少なかったが、残した爪跡は深かった。初日の東京公演のオープニング・アクトを務めたのはElectric Eel Shockだ。素っ裸で局部にルーズソックス、2本のスティックを片手に持つ(計4本)ドラマー率いる3ピースで、僕も久しぶりに彼らを観たが、BLACK SABBATHを経由した爆走ロックンロールは微塵もブレず、愛嬌たっぷりに観客を"Bastard!(クソ野郎)"と挑発しまくるMCも最高だった。

そして、20時ほぼジャストに再び会場が暗転し、熱心な観客の拍手が響き渡る中、冒頭に書き記した演出の後、2曲目「Spring Fra Livet」からフクロウのマスクを脱いだErlendは長髪を振り乱し、両手でマイクを力強く握り締め、野獣のごとき咆哮を叩きつける。それを煽るように繊細かつ重厚なトリプル・ギターが強烈な音圧で畳みかけてくる。音源通り、いや、それ以上のケダモノ感である。2作品続けてCONVERGEのKurt(Gt)をプロデューサーに付け、FOO FIGHTERSやMASTODONのショウ・サポートに声をかけられるのも頷ける貫禄だ。曲が進むにつれ、演奏も次第に加速し、4曲目「Fossegrim」でErlendは率先してハンド・クラップで場を焚きつけ、自らフロアにダイブまで決める暴れっぷり。観客もそれに触発されたのか、サークル・モッシュも見られるなど会場の沸点も急激に上がっていく。また、ブラック・メタル調のギター・ソロで邪悪に切り込んでくるフレーズもかっこいい。かと思えば、ヘヴィな激高シャウトとノルウェー語によるポップなコーラス・ワークが交互に襲いかかる「Bruane Brenn」などの曲調もとても映えていた。そう、ラウド一辺倒ではなく、衒いなくキャッチーな要素を盛り込む点も彼らが狭い村の中に収まらない理由だろう。
続いて6分越えの長尺曲「Nekrokosmos」は、CRADLE OF FILTHとTHE HELLACOPTERSが正面衝突した暴虐ロックンロールで駆け抜け、後半は映画のサウンドトラックのような物語性を帯びた展開を見せ、改めてこのバンドの自由度と懐の深さに舌を巻いた。後半の「Nekroskop」ではErlendがシャウトや歌メロとは別に"ウーッ!"と合いの手のような掛け声を何度も挟み、筋肉隆々の見た目と相まって武道家に通じる凛々しいオーラさえ感じさせた。この日は事前にセット・リストをもらっていたのだが、最後はアンコールに用意されていた「Kvelertak」、「Utrydd Dei Svake」の2曲も勢い余って爆走し、1時間10分を豪快に駆け抜けた。古き良きクラシック・ロックから、パンク、ハードコア、ロックンロール、メインストリームのロックやポップスを経由して、狂気迸るブラック・メタルを注入した濃厚なサウンドの地層に圧倒されっぱなしだった。早くも再来日を望みたいところだが、フェスなど不特定多数の音楽ファンが集まる場所でも彼らを観てみたい。それだけの個性と力量を持つ素晴らしいバンドだから。

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