INTERVIEW
TRiDENT
2025.11.04UPDATE
2025年11月号掲載
Member:ASAKA(Vo/Gt) SERINA(Ba/Cho) NAGISA(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
誰かの想いや、誰かの希望も乗せながら進んでいるのがTRiDENT
-なお、先程「黎明ノ詩」の歌詞についてASAKAさんは、"TRiDENTがこれまで辿ってきた軌跡を歌詞で表現したいと思っていた"と発言されていましたよね。せっかくですので、この歌詞に託した想いを語っていただくことはできますでしょうか。
ASAKA:私たちにとっての新しい一歩を踏み出す今だからこそ、ここまでのことを歌いたかったんです。なかなか日の目を見ることができなかったインディーズでの活動期間があって、時には"もうダメかもな"って思うことがあったり、自分たちでも何がしたいのかよく分からなくなって迷ったりした時期もあったんですよね。だけど、それでも続けてきたからこそ見えたものがあったし、一歩ずつでも歩いてきたからこの今があるんだなと改めて思ったので、自分たちがメジャーに行くっていう体験をもとに、誰かの背中を押せるような歌をみんなに届けたい気持ちから、「黎明ノ詩」の詞を書きました。
-ここには"狂った羅針盤 無心で漕いでたオール"というフレーズも出てきますが、様々な葛藤や苦悩があったなかでもTRiDENTが折れることなくいられた理由とは、今になって思うとなんでした?
ASAKA:そこはメンバー各々で違うかもしれないですけど、個人的には、応援してくれているファンの方たちがいて、コロナ禍のしんどいなかでもみんなと一緒に乗り越えてきたし、そういう状況で私たちのことを拾ってくれた事務所もあって、このバンドはもはや自分たちだけのものじゃないんだなって気付けたことだと思います。誰かの想いや、誰かの希望も乗せながら進んでいるのがTRiDENTなんだと考えたら、自分もちょっと強くなれた気がしたんですよ。だからもっと頑張ろう、頑張らなきゃってなれました。
NAGISA:バンドって、ほんとに1人じゃできないもんね。メンバーもそうだし、ASAKAが言った通りで応援してくれてる人とか、周りで支えてくれてる人たちがいてできてることなんだよなっていうのは、私もよく思ってました。それと、何か壁に当たって"もうダメかもしれない"ってなったときに強かったのは、"TRiDENTがここで止まっちゃうのはもったいないなぁ!"という気持ちでしたね。"まだまだここでは終われないよ"って(笑)。
-つらいとき程自己肯定感は大事ですよね。
NAGISA:TRiDENTは絶対いいバンドなんだから! っていう自信があったんです。それは主観的にも客観的にも。もし自分がメンバーじゃなくて、何かの形でTRiDENTに関わってたんだとしても、このバンドを手放すことはないよなって思ってましたね。その気持ちはずっと変わってません。
SERINA:悩んだ時期、苦しかった時期は私もいろいろあったんですけど、どんなときでもメンバーが側にいてくれるっていうのは、ほんとに心強かったですね。そして、TRiDENTのことをカッコいいって思ってくれてる人がたくさんいるっていうのも、勇気づけられてきたところで、途中からは"あんまり考えすぎないようにして、気楽にやっていこう"と思うようになったのが良かった気がします。肩の荷が下りたというか、ネガティヴに捉えるよりも楽しみながら頑張っていくほうが、きっといいなと思ったんですよ。これからも悩むことはあるにしても、常に楽しむ心は忘れないでいたいです。
-かくしてTRiDENTの過去、現在、未来を結ぶ歌となる今作のリード・チューンには"黎明ノ詩"というタイトルが冠せられました。とても美しい言葉を選ばれましたね。
ASAKA:"黎明"って"明けきっていない"イメージなので、ようやく太陽が昇ってきたという感じがちょうど今のTRiDENTと重なったんです。Nobさんは"漢字を使ってるのが新鮮でいい"って言ってくださいました。これまでのTRiDENTは、英語タイトルの曲が多かったからでしょうね。
-ちなみに今作には他にも「NEW ERA」、「MIRACRAID」、「恋のマジックポーション」、「カントリー・ロード」(本名陽子カバー)といった楽曲が収録されており、盛りだくさんな内容になっておりますが、EPのタイトルは"BLUE DAWN"です。これもまた"夜明け"を表す言葉として選ばれたことになりますか。
ASAKA:実は、もともと、"黎明ノ詩"よりも"BLUE DAWN"っていう言葉のほうが先に決まってたんです。そこからリード曲や"NEW ERA"と繋がっていったんですよ。
SERINA:ようやく日の目を見ることができるメジャー1発目ということで、心機一転の気持ちを"BLUE DAWN"って言葉で表してます。
NAGISA:ということで、今回は衣装もブルーなんです(笑)。
-承知いたしました。それにしても、今回のEPについてはNobさんの件だけでも話題性が高いというのに、「恋のマジックポーション」と「MIRACRAID」が、TVアニメ"ポーション、わが身を助ける"にて、オープニング&エンディングの両主題歌に抜擢されているそうではないですか。デビューと同時にWタイアップとはやりますね!
ASAKA:ありがとうございます。光栄です(笑)。
-「恋のマジックポーション」は、1991年にROLLYさん率いるすかんちが発表したシングルで、当時は"ダウンタウンのごっつええ感じ"のテーマ曲としてもお馴染みでした。これはつまり、"ポーション"繋がりでのタイアップということなのですね?
NAGISA:そうなんです。ROLLYさんのことは前から私たちも知ってましたけど、世代的にこの曲には今回初めて触れることになりました。これに関しては自分たちの親とか、ド世代のファンの方々がすごく喜んでくださってます(笑)。
-ROLLYさんご本人が演奏、プロデュースでも参加されているとあっては当然そうなるでしょうね(笑)。ROLLYさんとのレコーディングは、どのような雰囲気だったのでしょう。
SERINA:ROLLYさんのことはテレビで観たことあったんですけど、そのイメージ以上にめっちゃスタイルが良くて、足がめちゃくちゃ長くてびっくりしました。しかも、すごいレジェンドな方なのにめちゃくちゃ低姿勢で、優しくて、私たちの緊張を和らげるような言葉を言ってくれるとか、気を遣ってくださってとても素敵な方でした。
-カバーされていく際、皆さんが心掛けられのはどのようなことでしたか。
NAGISA:曲調も歌詞も今までのTRiDENTにはないカラーのものなので、それを私たちがやったらどうなるんだろう? っていう面白さを楽しんでいった感じですね。それと同時に、原曲のファンの方々に失礼のないようにということはしっかりと意識しながら、リスペクトの気持ちを込めながら演奏させていただきました。
SERINA:こういうシンプルなタイプの曲をTRiDENTでやるのは初めてで、今まではそういう勇気もなかなか持てなかったところがあったんですね。そういう意味で、これは私たちにとっていいきっかけになりました。レコーディング方法も普段だったら別々で録るんですけど、これはグルーヴ重視で全員で1発撮りでやったんですよ。それもとてもいい経験で、今回はこの曲でも勉強させてもらった感じです。
ASAKA:歌もこれは普段と全く違うアプローチが必要でしたね。いつもみたいに高音でパーン! と出すような曲ではないですし、男性目線の歌詞をあえて原曲キーで歌ったんですが、たくさんいらっしゃる原曲ファンの方たちに、がっかりされないようなカバーにしたいっていう気持ちで臨みました。ROLLYさん節を大事にしながら、TRiDENTらしさというか、女性バンドだからこそのかわいさも加えていくようにしていったつもりです。
-「MIRACRAID」はNAGISAさん作曲、ASAKAさん作詞による楽曲ですが、こちらはアニメのエンディング曲ですよね。いわゆるアニメ・サイズにすることを考慮しながら作られていったということですか。
NAGISA:90秒に収めるにはどうしたらいいかっていうことは周りにいろいろ相談しました。というか、そもそもTRiDENTで私が曲を作るのはこれが初めてなんですよ。メジャー・デビューが決まったときに、曲をASAKAだけじゃなくてみんなも作ろうということになって、いくつか作ったうちの1つがこれなんです。
-これまた新鮮な風が感じられる曲になっていますものね。
ASAKA:メロディがとってもキャッチーで、初めて作った曲だと思えないくらいめちゃくちゃ素敵な曲になってるなって思います。あと、歌詞に関してはアニメの原作を全て読んで、私なりに主人公、(八雲)楓の目線で書きました。
SERINA:この新しいメロディの感じも、アニメに寄せた歌詞も、面白いしちょっと不思議な感覚でこれまでにない曲になったと思いますね。そこにTRiDENTらしさも入れられたので、できたときはなんだか清々しい気持ちになりました。
-その点、ASAKAさんの作詞作曲による「NEW ERA」は、アレンジにお馴染みの堀江晶太(PENGUIN RESEARCH/Ba)さんも加わっていらっしゃいますので、いい意味での安定感のあるTRiDENTらしさ全開の曲となっています。こちらは曲も詞もライヴを強く意識した内容となっているようですね。
ASAKA:その通りです(笑)。この曲は堀江さんと一緒にまたやらせてもらえることが決まって作ったものなので、これまでに作ってきた数々のリード曲を超えていくことを目標にしながら、なおかつライヴでみんなでブチ上がれる曲にしていきました。詞も、私たちのライヴに来てくれたことがある人は"そのまんまだ!"って感じてくれるだろうし、来たことがない人もきっと疑似的にあの空間の熱さを体感できるはずです。
NAGISA:この曲は、ここからライヴでどれだけ育っていくことになるのかっていうのも、今からすごく楽しみです。みんなで楽しく一緒に遊びましょう。
SERINA:でもこれ、ベースはすごく難しいんですよ(苦笑)。堀江さんが編曲してくれる曲は絶対ベースが難しくて、毎回私に試練を与えてくれるんですね。今までは練習したら弾けてたんですけど、この曲は初めて自分の手の小ささとかで壁を感じてしまったところもあって、レコーディングには今までで一番時間がかかっちゃいました。だけど、気合と根性で堀江さんからの試練をなんとか乗り越えられたので(笑)、私もあとは、ライヴでカッコ良く弾いて楽しもうと思ってます。
-そんなド級のアゲ曲があるかと思うと、今作の最後を締めくくるのは、(スタジオ)ジブリ映画"耳をすませば"の主題歌であった、日本語版「カントリー・ロード」です。今作にこの曲を入れることにしたのはなぜだったのですか。
SERINA:このEPにはもう1曲カバー入れたかったんです。いろんな候補は出たんですけど、これはメンバーみんながちっちゃいときから知ってる曲だし、"耳をすませば"も全員好きで思い出もあるので、結果的に"やるならこれだね!"ってなりました。
-それこそ原曲(John Denver「Take Me Home, Country Roads」)はカントリー調ですし、日本語版も優しいトーンなんですけど、それをTRiDENTがやるとメロコアになったというのが非常に斬新です。
ASAKA:ロックに振り切りました(笑)。世代を問わずいろんな人が知ってるメロディを、例えばフェスとかでやったときにみんなで盛り上がれる雰囲気でやりたかったんです。私たちのことを知らない人たちが観てくれた場合でも、一緒にシンガロングできたらいいなっていうイメージで作っていきました。
NAGISA:私的にはメロコアの2ビートをどれだけちゃんと聴かせられるか、というのが勝負でしたね。今作だと実はこれが一番難しかったです。
SERINA:TRiDENTでメロコアは今までやったことなかったもんね。それだけに、この曲でも新しい私たちを感じてもらえると思います。
-あれこれ詰まった欲張りセットのようなメジャー1st EP『BLUE DAWN』のリリース後からは、待望の"TRiDENT BLUE DAWN TOUR 25-26"も始まります(※取材は10月中旬)。今度のツアーに向けてはいかなるヴィジョンをお持ちですか。
NAGISA:ちょっと未知数なんですけどね、『BLUE DAWN』でいろんなことに挑戦したように、その曲たちをライヴでやったときにも新しいTRiDENTの魅力を皆さんに届けていけたらいいな、と思ってます。今回のツアーは11ヶ所もありますし、各地でどんなフロアになっていくか楽しみです(笑)。
SERINA:ずっと応援してきてくれてるみんな以外にも、今回デビューすることで私たちと新しく出会ってくれる人たちや、アニメから知ってくれた人、「恋のマジックポーション」から知ってくれた人とか、いろいろと窓口が増えた分、いろんな人たちと楽しんでいけるツアーにしていきたいですね。
ASAKA:このEPを完成させられたことで、TRiDENTはよりいろんな表現をできるようになりましたからね。初めてライヴに来るという方もいらっしゃるかと思うんですが、"来てみたら沼だった"って言われるようなツアーにしていきたいんですよ。みんなを必ず沼らせます(笑)。



























