INTERVIEW
TRiDENT
2023.11.14UPDATE
2023年11月号掲載
Member:ASAKA(Vo/Gt) SERINA(Ba/Cho) NAGISA(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
思いつくまま創造することの素晴らしさを、TRiDENTはここで謳歌しているのだろう。自由な想像から生まれる音楽は、やはり伸びやかで力強い。今作『Dream Up』では前作『D-X』(2022年リリースのミニ・アルバム)に引き続いて、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、DAIDAI(Paledusk)、Koji Hirachiといった面々がアレンジャーとして参加しているほか、新たにUVERworldのプロデューサーとして有名な平出 悟も彼女たちをバックアップすることに。つまり、今作でのTRiDENTは前作を踏まえたうえで、よりブラッシュアップした作品を生み出すべく動いたわけだ。リード・チューン「KICKASS」を筆頭に、生き生きと暴れ回る音たちはどれも手がつけられない!
私たちとしては絶対的信頼というか、確信を持っていたんです
-今作『Dream Up』では、前作『D-X』に引き続いて堀江晶太(PENGUIN RESEARCH/Ba)さん、DAIDAI(Paledusk/Gt)さん、Koji Hirachiさんがアレンジャーとして参加されているほか、新たにUVERworldのプロデューサーとして有名な平出 悟さんも加わられることになったようですね。つまり、今作でのTRiDENTは前作を踏まえたうえで、よりブラッシュアップした作品を生み出すべく動かれたことになりますか。
ASAKA:TRiDENTと個性派のアレンジャーさんたちで楽曲を仕上げていく、という方法自体は前作『D-X』のときと同じなんですけどね。でも前回が、みなさんが私たちに寄り添ってくれる感じだったとすると、今回はより各アレンジャーさんの色が強く打ち出された内容にできあがったんじゃないかと思います。そこは、TRiDENTとして新たな挑戦をした部分でもあるんです。
NAGISA:具体的な違いとしては、私の場合だと今までは自分でドラム・フレーズをガンガン変えることも多くて、曲によってはビートからすべて変えていくことも結構あったんですよ。そこが今回はまったく違っていて、例えば堀江さんにアレンジしていただいた「NEO FUTURE」では、ほぼ貰ったアレンジのまま叩いてます。だから、かなり"自分だったら絶対に思いつかないなぁ"っていうフレーズがあって、そこは勉強になりましたね。ドラマーじゃない人だからこそ出てくるアレンジとかフレーズって、やっぱり独特なんですよ。もちろん、それを叩き切るには練習も必要だったし、考え方の面で"こういうアプローチをすると曲ってこんなふうに生きるんだ"っていう発見もありました。
SERINA:前作『D-X』のときも新しいことがいろいろできたんですけど、今回は前からずっと気になっていた平出さんとも「エンドロール」で新たにお仕事をご一緒させていただけることになった、というのが自分としてはすごく良かったなと思ってます。
-ちなみに、各原曲をバンド側が作られる際には、その時点からすでに明確なヴィジョンがあられたのでしょうか。
ASAKA:これまではアルバムのコンセプトをまず決めてから、"1曲目はこんなのが欲しいね、こういう曲も欲しいね"という感じで作っていくことが多かったんですけど、今回はもともと作ってあったストックの中から曲を選んだり、原形だけあったものを曲として仕上げていく、という作り方をしていくケースが多かったです。そして、それぞれの曲を各アレンジャーさんに託した段階で、私たちとしては絶対的信頼というか、確信を持っていたんですよ。たとえコンセプトがなかったとしても、最終的にはそれぞれ明確に色の違う曲たちが集まることで、逆にアルバムとしてのカラーも確立できるだろうというふうに。
-そんな今作『Dream Up』の冒頭を飾るのは、まずタイトルからして攻撃力の高い「KICKASS」ですが、堀江さんとのコラボによって生まれたこの曲の生い立ちとは、どのようなものになるのでしょう。
ASAKA:これは堀江さんのスタジオに行って、一緒に詰めていきながらできた曲だったんですよ。今までだったらデータ上でやりとりをしていたんですが、実際に話し合いをしながら作っていって、それをまた持ち帰って私が1曲として完成させたものを、さらにアレンジしてもらってこうなりました。
SERINA:「KICKASS」は途中に入っているコール&レスポンスが重要な曲で、それはライヴを想定して入れたものでもありますね。今までTRiDENTにこういうタイプの曲って意外となかったので、その点でもこの曲は私たちにとって新しいものになってます。
ASAKA:前作『D-X』のリード曲だった「CRY OUT」とか、TRiDENTってシンガロングする曲は前から多いんですけど、コール&レスポンスっていうのがなぜかなかったもんね。前からずっと欲しかったので、それをようやく作れたので嬉しいです。
NAGISA:あの「CRY OUT」は自分たちにとっても大事な曲だし、お客さんたちからも好評で、TRiDENTにとっての名曲だと思うんですよ。だからこそ、今回もそれに匹敵するかあれを超えるくらいの名曲を作りたかったんですよね。リズム的にはシンプルで、全体としてはかなり削ぎ落とした造りになっているんですけど、2番のサビあとには自分ならではのアプローチで手数を詰めまくったりもしたし、これもまた自分たちの新しい名曲に仕上げることができたと思います。
-「KICKASS」はベースの暴れっぷりも痛快ですよね。
SERINA:そうなんですよ(笑)。「KICKASS」は勢いがある曲なので、その勢いとかハチャメチャ感をベースでも表現していくようにしました。これを弾くには、脳味噌と筋肉の両方をめっちゃ使いますね。こういう変拍子っていうのもTRiDENT初なんです。"変拍子を使ってみたら?"というのは堀江さんからの提案だったんですよね。
ASAKA:サビとかはわかりやすいと思うんですけど、楽器パートに関してはかなり攻めた感じになってます(笑)。ギターも疾走感が大事だったんで、レコーディングのときもディレクションに入ってくれてた堀江さんからは"丁寧に"とか"的確に"っていうよりも、むしろ"感情をぶつけて弾いてみてほしい"っていうことをリクエストされました。
-感情が顕著に出ているという意味では、詞の内容も「KICKASS」はかなりストレートな内容になっている印象です。
ASAKA:この詞は、曲の持っている力強さに引っ張られて生まれたものですね。アレンジの段階でサイレンの音が入ってたりとか、音の中に世界観がしっかりあったので、そこから浮かんでいった言葉たちを並べていくことになりました。順序で言うと「KICKASS」は一番最後に詞を書いた曲で、ほかの4曲よりもここには今の自分たちらしさを詰め込みたいと思っていたんですよ。実際、この詞は自分たちの等身大な姿、今の自分たちをそのまま表わしたようなものになったかなと思います。
-では、そんなこの曲に"KICKASS"とタイトルを付けた理由も教えてください。
ASAKA:これは"自分自身と闘う"みたいな曲にしたかったんですよね。タイトルにインパクトが欲しかったのもあるし、この曲を聴いてて自然と頭の中に浮かび上がったのがこの言葉だったので、わりと直感的に"KICKASS"にしました。
-"KICKASS"という言葉そのものはあまりお行儀の良い言葉ではなかったりもしますが、それをあえて選んだところにも意味があるのでしょうね。
ASAKA:私たちって、こういう取材の場とかも含めて、人前に出ると"よそ行き"なモードになってしまうところがあるんです(笑)。
SERINA:つい猫を被っちゃって、大人しくなりがちだもんね(笑)。
NAGISA:あはは(笑)。
ASAKA:そういう意味で、ほんとの私たちの姿を知っている周りの人たちからは"普段の良さをもっと出してもいいんじゃないか"っていう声もあったりして、自分たち自身も"そこまできれいに見せようとしなくてもいいのかな"っていう気持ちになったのが、まさにこのタイミングだったんですよ。だからこの曲ではちょっとスラングみたいなものを使って"KICKASS"というタイトルを付けることにしました。