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INTERVIEW

零[Hz]

2023.04.13UPDATE

2023年05月号掲載

零[Hz]

Member:ROY(Vo/Lyric) Rio(Gt) Leo(Gt/Prog) TEIKA(Ba) RYOGA(Dr/Mani)

Interviewer:杉江 由紀

-では、ここからは新曲の「SINGULARITY」と「叶えたい夢と、守れない君と」についてもお話をうかがって参りましょう。そもそも、このベストに新曲を2曲"も"入れることになったのはなぜだったのですか。

Leo:今このタイミングで新曲を作るなら、壮大なスケール感を持ったバラードはどうしても入れたいなと思っていたんですよ。それと、もう1曲は今回のベストに入っている「AXIZ」、「DISTURBO」、「VENOM」といった対バンのイベントでやっても盛り上がるような代表曲たちとは別の、また違う路線のライヴで活躍してくれそうな新曲も入れたかったんですよね。

-つまり、前者が「叶えたい夢と、守れない君と」で後者が「SINGULARITY」であるわけですね。

Leo:はい、そういうことです。今までの零[Hz]としての王道的な部分がいろいろ詰まっているベストだからこそ、過去の曲たちだけじゃなくて今とここからの未来に繋がる新曲も2曲それぞれ違うカラーのものを入れたかったんですよ。

-各プレイヤーの見地からすると、「SINGULARITY」をレコーディングしていくうえでのポイントはどのようなところにありましたか。

RYOGA:「SINGULARITY」では、既存曲で使ったことのなかったフレーズを結構取り入れましたね。Bメロは歌のメロディにユニゾンさせるイメージで作りました。

TEIKA:基本はシンプルなフレーズでポイント、ポイントで少し動くフレーズを弾いているんですけど、自分にとっては非常に気持ちいい曲なので、聴いてる人も気持ち良くノれるようなベース・ラインになってたらいいなと思ってます。

Rio:僕はメンバーのみんなと同じ空気感を乱さないようにしながら、みんなと同じ目線で弾いていくことを大事にしました。

-そして、そんな「SINGULARITY」の歌詞はROYさんが"変わらないように変わっていく"ことをテーマに詞を書かれたそうですが、この節目でそのテーマを歌いたいと思われたのは何が切っ掛けだったのですか。

ROY:"SINGULARITY"というタイトルはIT用語で"技術的特異点"という意味で、人工知能の技術がこの先もっと発達して、いずれ人間の知能を上回ることになる瞬間を指す言葉なんですよ。

-なるほど。最近はAIによる作画や論文なども注目を浴びていますし、GPT-4はいよいよ実用性が向上したともっぱらの評判ですものね。

Leo:ビジネスの現場とかでも、今はAIが電話かけたりするシステムとか使われるようになってるらしいですよ。

ROY:文明がどんどん進化して発達していて、ほんとに今はいろんな面で便利ですよね。ただ、情報機器にしても情報システムにしても今の僕らの身の回りにあるものって、もとは軍事技術として開発されたものが多いじゃないですか。

-そういえば、インターネット自体も最初は軍事技術だったそうですね。

ROY:でも、結局そういう高度な技術もやがて一般の僕らみたいな人々が使うようになると、時には事件も起こるわけですよね。つまり、ハードウェアやソフトウェアがいくら進化して最新になっても、それを使う側が踊らされちゃったり、人間として大事にしなきゃいけないことまで忘れちゃうと、場合によっては良くないことが起きるんだなって僕は思ったのでこの詞を書きました。実際、バンドとか音楽もそうですしね。変わりたいとか新しいことに挑戦したいとか、もちろんそういう思いも大事なんですけど、この5人が結成当初から大切にしてきたがむしゃらな気持ちはずっと忘れたくないんですよ。世の中は変わっていったとしても、変わらないものや、変えたくないものはあるし、自分たちにとって守り続けていきたいものってどこにあるんだろうね、っていうことをここでは伝えたかったんです。

-同時に、このしっかりとしたメッセージ性のある歌詞をより力強く聴かせているのは、ROYさんのヴォーカリゼイション技術によるところも大きいように感じます。

ROY:そうなんです、難しいんです。この曲も決して簡単ではなかったですねぇ(笑)。

Leo:まぁ、普通のヴォーカリストじゃなかなか歌いこなせない曲にはなってますね。ほんとにROYは音域が広いんで、曲を作る人間としてはメロディのバリエーションを広げやすいから助かってます(笑)。零[Hz]の曲はどれもROYありき、各メンバーありきで成立してるものばっかりです。

-そうした意味では、もうひとつの新曲「叶えたい夢と、守れない君と」も実に聴き応えのある仕上がりです。

Leo:零[Hz]にとっては歌モノやバラードも重要な武器のひとつだと捉えてるんですが、ここでは壮大で空とか海を感じられるような曲、人生観が感じられるような曲を作りたいと思ってました。それをかたちにできたなという手応えも得られる曲になりました。

TEIKA:こういう曲を弾くとき、自分は結構前のめりになってしまうというか、気持ちが入って力んでしまうのと、やや走り気味になってしまうところがあるので、自分としては気持ちは熱く手元は冷静にいれるように意識しましたね。

Rio:これはLeoからデモが届いたときのイメージそのままに、すんなりと音を作れた曲でした。ROYの歌詞も含めて、ここまで5年この5人でやってきて、お互いのことがちゃんとわかったうえで、今やりたいことや零[Hz]としてみんなに伝えたいことを明確にかたちにできたなという実感を持てる曲になったと思います。

RYOGA:ドラマーとしては、ROYの歌を生かすことを最大限に考えて叩いた曲ですね。細かいフィルインにこだわったり、部分的にはROYの歌をスネアでなぞったり、終盤に向けては壮大に盛り上げたり、ということもしていきました。

-音と共に歌詞の面でも「叶えたい夢と、守れない君と」には、深い説得力がこもっている印象です。この歌詞が生まれていくことになった過程には、どのような背景があったことになりますか。

ROY:Leoから"恋愛とか友情の詞ではなく、ROYの人生観を描いてみてほしい"という話があったんですけど、僕としてはこの曲のメロディがあまりにも良すぎて歌詞をつけるのがちょっとプレッシャーでしたし、結構悩みました(苦笑)。最終的には、自分にとっての永遠の課題を歌詞にした感じですね。こういうことは、今まであんまり歌ったことがなかったです。

-"叶えたい夢"があるからこそ零[Hz]として活動としている、ということはわかるのですけれどね。ここでの"守れない君"という言葉には少し違和感も感じます。

ROY:たぶんそこが一生解決しないところなんですよね......。僕はちっちゃい頃から平和主義者で、今だって極力ケンカはしたくないし、人のこともなるべく嫌いたくないんです。みんな平和でいてほしいし、あらゆる差別もなくなってほしいし、それは身近な友達に対してだけじゃなく、世界中もそうであってほしいと思ってるんですよ。

-しかしながら、世の中はそう収めてはくれないわけですね。

ROY:みんなが幸せでいたくれたらいいなとは思いますけど、それは叶わないっていうこともわかってはいるんです。どうしても、誰かを守れないことも出てきてしまうんですよ。時には人とわかり合えないことも出てくるし、それはどれも自分にとって一生のジレンマだなと思って。でも、わかり合えないからこそわかり合おうとするところに人間の素敵さや希望も感じるし、人生って二律背反なところが何かとあるよなっていうことをここでは歌いました。

Leo:この詞も、ROYの歌も、僕からするとすべて想像以上のものがここでかたちになったなと感じてます。それが純粋に嬉しかったですね。

-そうした完成度の高い新曲たちも含めた今回のベスト・アルバムには、零[Hz]自身のことを示すかのような"ZERO"というタイトルが冠せられました。推測するに、これは迷うことなく付けられたタイトルだったことになりますか。

Leo:これはROYが何パターンか考えてきてくれたうちのひとつで、全員即決で"これだね!"ってなりました。

TEIKA:まさに零[Hz]にぴったりのタイトルだと感じて、すごくしっくりきましたね。

-5年やってきたなかでの"ZERO"には、所信表明も含まれていそうですね。

ROY:5周年を迎えて6年目に入っていくけど、これはゼロ地点とか最初の気持ち、初心も忘れたくないっていう意味での"ZERO"でもあります。

-ベスト・アルバム『ZERO』のリリース直後からは全国ツアー"零[Hz] ONEMAN TOUR「REGION ZERO」"も始まるそうですので、最後に今後のライヴに向けた抱負もぜひお聞かせください。

ROY:この"REGION ZERO"というのは、自分たちの領域を広げていくという意味で付けたツアー・タイトルなので、僕としてはその名の通りの場を作っていきたいと思ってますね。領域を広げていくことで、新境地にも踏み込みたいです。

TEIKA:各地でその日にしか出せない空気感を楽しんでもらいたいです。ライヴが終わったら、前向きな気持ちでまた生きようとみんなに思ってもらえたら嬉しいですね。

RYOGA:今回のベストを作って過去も振り返ることができたと同時に、新曲も作ったことによって零[Hz]はバンドとしてさらに進化できたと思うんですよ。今回のツアーはその成果を見せていく場になると思いますし、チームゼロヘルツの人たちとここからまた一緒に歩いていきたいなと考えてます。

Rio:ここまで零[Hz]を5年間やってきて思うのは、昔の自分が憧れていた"お酒を飲んでギターを弾きまくって"みたいなロッカー像は、バンドをやればやるほど遠いものになっていきますね。むしろ、いいライヴをやるためには健康に気をつけたり、本当に大事なのは見た目とかでもなくマインドなんだなっていう、当たり前のことに今さら気づいたところがあるんですよ。零[Hz]ではメンバーもそうだし、ファンの人と交流していてもすごくポジティヴになれるし、最近はベストを作ったことでROYが「叶えたい夢と、守れない君と」の中で書いてたみたいに、自分の人生とかバンドをやっている意味について考えるようにもなったので、今回のツアーではみんなと一緒にいられる時間を糧にしてもらえるようなライヴを各地でやっていきたいです。

-もはや飲んだくれている暇はなさそうですね(笑)。

Rio:あー、それはないですね(笑)。バンドには寿命があってとか、そういう考えとかも今の自分にはいらなくて。零[Hz]を続けていく僕の姿勢から、みんなに何か感じてもらうことができたら嬉しいです。

Leo:ここまでの5年には、ほんといろんなことがありまして。事務所を退所して独立したり、始動から2年のタイミングで2020年の春にはマイナビBLITZ赤坂("6th Oneman Tour Uncontrollable DISTURBO -Tour FINAL-")を決めてファンのみんながすごい喜んでくれたにもかかわらず、パンデミックで中止になり、そこから8ヶ月はまったくライヴもできなくて、でもそこからまたライヴも再開して、音源も作ってという日々をチームゼロヘルツのみんなと過ごしてきての今なので。この5年間で僕らはすごく強くなったと思うんですよ。そういうなかで去年はZepp DiverCity(TOKYO)でワンマン("零[Hz] ONEMAN TOUR「ZODIACT TALE:ACT2」-FINAL-")を開催できたり、今年の春には最初で最後の中野サンプラザでのワンマンもやれたわけで、みんなと一緒に夢を見られていることがとても嬉しいんですね。いろんなことを乗り越えてきた零[Hz]の、今一番カッコいい姿をツアー"REGION ZERO"では見せていきたいのはもちろん、ファンの人たちが"零[Hz]のライヴがあるから日々を頑張れます"って言ってくれるのと同じように、自分自身も零[Hz]に生かされているところがあるので、お互いに何年経っても"楽しかったね"って思い出に残るようなライヴをやっていきたいと思います。