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INTERVIEW

BURY TOMORROW

2023.03.30UPDATE

2023年04月号掲載

BURY TOMORROW

Member:Daniel “Dani” Winter-Bates(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

現在のUKメタルコア・シーンを代表するバンドのひとつであるBURY TOMORROWが、ニュー・アルバム『The Seventh Sun』を完成させた。2020年の前作『Cannibal』がバンド史上最高の結果を記録するも、パンデミックによりツアーは中止。さらに2021年にはクリーン・パートを担当していたJason Cameronが脱退と、苦境に立たされた彼らだが、2021年にギタリストのEd Hartwell、ヴォーカル/キーボーディストのTom Prendergastを加えた6ピースで再始動を果たした。そんな新体制初のアルバムとなる本作は、アグレッシヴなメタルコアからドリーミーなサウンドまでジャンルが拡張された、まさに新境地の作品に仕上がっている。フロントマンのDaniに、バンドの変化や新作について語ってもらった。


俺たちにとってはあらゆる人たちが安心できるコミュニティを作ることが大切だから、何か正しくないことが起こっているときは音楽を通じて声を上げていきたい


-まず、2020年の前作『Cannibal』リリース後のバンドの状況についてうかがいます。全英トップ10入りを果たし、ドイツでは3位を記録と過去最高の成績を記録しましたが、パンデミックによりツアーなどは満足に行えなかったようですね。ご自身ではこの時期をどのように振り返りますか?

両極端の手応えがあったね。素晴らしい反応は貰ったけど。あのアルバムを取り巻く環境があったから共鳴してもらえたのかもしれない。ただ、不思議ではあったね。アルバムの曲を書いたのはパンデミックよりずっと前だったのに、間接的にパンデミックと相関関係があったような感じだったから。一方メタル・バンドとしては一番やりたいことはツアーで、ツアーするというのは俺たちのDNAに組み込まれているから、それができなかったのは残念だった。特に海外はね......今は当時よりずっと状況が良くなっているけど、それでも海外マーケットに出ていくにはまだまだ制約がある。それは残念だね。でも振り返ってみると、それで良かったと思える面もあるんだ。『Cannibal』と新作両方を一度に初めてライヴで観ることになる人が多いというのは変な感じではあるけど、例えば『Cannibal』の「Choke」は今のところ俺たち史上最高にビッグになった曲のひとつで、それに今回のアルバムからの曲が絡むと、新しめの曲だけでフル・セットみたいになるから、結構いいんじゃないかと思ってね。今振り返ってもあのアルバムのことは誇りに思っているよ。同時に、あのころの自分たちが何を考えていたかも意識している。パンデミックだけじゃなくて、あのころバンド内部で起こっていたことについてもね。すべてあのアルバムがどういう作品だったかに繋がっている気がするんだ。あの時期全体のフィーリングがひとつのパッケージみたいに感じられるよ。今はまったく違う状態にいることも嬉しいね。

-また、2021年にはJason Cameron(Gt/Vo)が脱退しています。円満脱退という感じだったのでしょうか。

ああ、これ以上ないくらい円満だったよ。俺たち全員、うまくいっていないことには前から気づいていたし、そこにパンデミックが起こって浮き彫りになってしまったんだ。パンデミックのポジティヴな面としては、物事から距離を置くことができたというのがある。もちろん苦しんだ人たちが多かったのは認識しているし、俺たち自身もプレイできないというのがすごくつらかったけど、バンド活動から距離を置くことができたことがきっかけで、自分たちが何を望んでいるのかが見えてきたんだ。脱退はあいつひとりで決めたわけじゃなくて、メンバー全員が決めたことだった。このバンドはポジティヴな場であってほしいし、楽しめる場所であってほしい。つまらない作業の場所と思いながらやるよりもね。そうこうしているうちに新しいツアーが始まったら、俺たちはこのままバンドとして続けていくのか、それとも終わりにするかという葛藤を抱えながら長い間回ることになってしまう。それで、このバンドは俺たちひとりひとりが合わさったものよりもずっと大きなものになっているのだから、俺たちの音楽を心から好きでいてくれている人たちのためにも、バンドは続けるべきだという結論に至ったんだ。本当に難しい時期だったよ。だけど決断して良かった。そのあとには喜びとポジティヴな姿勢が残ったわけだからね。

-バンドは2021年にイギリスで行われた"Slam Dunk Festival"で、Ed Hartwell(Gt)とTom Prendergast(Key/Vo)を迎えた新ラインナップをお披露目しました。単なる欠員の補充ではなく、キーボーディストも加えた6ピースになったことに驚きましたが、このようなラインナップにした理由を教えていただけますか?

バンドを続けると決めてすぐ、同じ形では進まないようにしたいと考えたんだ。これを機会に少し変えてみて、新しいものを音楽に取り入れたいと思ってね。いずれ変わるんだったら、逆境の今やってみようという話になったんだ。パーフェクトなタイミングだったからね。俺たちの音楽を聴いたことがない、あるいは以前聴いていたけど定型化――つまりヴァース→コーラス→ヴァース→ヴァース→コーラスみたいな感じになりすぎているような気がして離れてしまった人たちのことを考えても、今回はそうじゃないものを作りたかった。というわけで、新しい楽器も入れてみたんだ。Tomはうちのギタリスト(Kristan "Daws" Dawson)の古い友達でね。というか幼馴染なんだ。Edは昔HEART IN HANDという俺たちもよく知っているバンドにいて、俺は彼らの曲に参加したこともある(2013年のアルバム『Almost There』収録の「Broken Lights」)。というわけでもともとふたりとも知り合いだった。で、今回はいろいろセットアップを変えてみたいと思って彼らを迎えたわけだけど、Tomはプロデューサーでもあって、地球上にある楽器ならなんでもプレイできる人でもあるんだ。

-そうなんですね。キーボードだけではなく。

そうなんだよ。しかも曲も書けるし、このバンドに新しいダイナミクスをもたらしてくれたんだ。素晴らしいことだよ。このラインナップになって、別の意味でも新しいダイナミクスが加わった。新しいギタリストはヴォーカルと兼任じゃないから歌の心配をしなくて済むし、リフはもっとリフらしくなるし、ステージ上でも動きが増えるしね。今はライヴでふたりがバックにいて4人が前にいるという状態で、4人は常に動いているからみんなも見てくれる。4人のエネルギーがちゃんと出ているんだ。ずっとバンドとして望んできた状態だよ。"Slam Dunk Festival"は今までのショーの中で一番緊張したけどね(笑)。2年半ぶりのショーだったし、『Cannibal』の収録曲をやるのも初めてで、ビデオ・スクリーンを使うのも初めてで、キャパ1万5,000人のステージのヘッドライナーだったし、さらには新しいメンバーのお披露目でさ(笑)。でも楽しかったし、素晴らしい時間を過ごしたよ。

-EdとTomそれぞれの音楽的な特徴についてもう少しうかがえますか?

もちろん! ふたり共もともと音楽を通じた知り合いで、Tomはいろんな人に曲を書いてきたんだ。ロック・アーティストに書いたり、広告やTV番組の映像のサウンドスケープを作ったりする仕事をしてきた。素晴らしいプロデューサーでソングライターでもある。あいつはロック畑では軽めならRISE AGAINSTとかが大好きなんだけど、ものすごくヘヴィなやつも好きだからいいよね。Edは地球上で一番クールな男だよ。DEFTONESとかが好きでね。あいつのほうがヘヴィな音楽からの影響が強くて、ソングライティングもプログレッシヴな傾向がある。メロディックなダークさのある曲が得意で、「The Seventh Sun」と「The Carcass King」はあいつが書いた曲だよ。すごくダークで感情に訴えてくる曲があいつのスタイルだね。いろんなコード構造を思いつくのが得意で、ギターも本当に巧い。リード・ギタリストの素質が十分にあるやつだから、あいつとKristanが一緒にステージに立っているなんて夢のようだよ。

-そんな強力なふたりが入ったこともあって、新作の音楽的な幅が広がったんですね。2022年には新体制初の楽曲として、スタンドアロンのシングル「Death (Ever Colder)」、「Life (Paradise Denied)」が発表されました(※ニュー・アルバム日本盤にボーナス・トラックとして収録)。これらの楽曲をリリースして、どのような反応がありましたか?

「Death (Ever Colder)」は俺たち史上有数のビッグな曲になったよ。クレイジーな話だけどね。ライヴでもすごく盛り上がるんだ。あれはとてもアンセミックな曲で、今聴き返してもそう思う。急いで、とまではいかないけど結構短期間で仕上げたんだよね、Tomのヴォーカルがどんな感じになるか早くみんなに聴いてほしかったし。でも曲としてどんなにいいものができたか、俺たちの誰も気づいていなかったと思う。ツアーに出て初めて"これはすごいじゃないか"と実感してきたんだ。コーラス部分はTomが大々的にフィーチャーされていて、新入りのヴォーカリストをいきなり大胆に使ってみた(笑)のは意図的にやったことなんだ。やって良かったよ。「Life (Paradise Denied)」はフェス・スタイルの曲でものすごくヘヴィなんだ。どっちもファンがとても喜んでくれて、そうコメントもしてくれた。役割としては『Cannibal』と『The Seventh Sun』の間のギャップを埋めるような感じだった。短期間で作った曲だけど、"ニュー・アルバムではこんな感じになる"というのをある程度示すことができたんじゃないかな。

-その2曲と前後して新体制でのライヴも活発になりましたね。映像をいくつか拝見しましたが、「Earthbound」(2016年リリースの4thアルバム表題曲)のような既存の楽曲にもシンセ・サウンドを加えたアレンジが施されていて、新鮮な印象を受けました。過去の楽曲を改めて振り返ったことで得られたものはありましたか?

そう、間違いなくあるね。昔の曲も新しい曲も違和感なく聴こえるようにすることが大事だったんだ。バンドによってはメンバー・チェンジ後に昔の曲をやると奇妙に聴こえることがあるからね。一体感を持たせたかったから、Tomが裏方としていろいろとアレンジをしてくれたんだ。曲のコアな部分は残して、この曲だってみんなにわかってもらえるようにして、同じフィーリングを維持した。素晴らしかったよ。オリジナル・メンバーとしても昔の曲が活性化されて、新曲を演奏するのに近い感覚になった。ただ、たくさんの人に"昔の曲もレコーディングし直せば?"と言われたけど、それはしないと思う。もとの状態をリスペクトしたいし、Jasonも曲作りに参加してくれていたから、変わるためだけに変えたくはないんだ。それに新曲のほうが良く書けていると思うしね。でもライヴでは昔の曲と今の曲の切り替わりを悲惨にしたくないからアレンジを変えたんだ。Tomには両方に公平に出番を持たせたいしね。

-こうしたプロセスを経て、いよいよ新体制初のアルバムとして『The Seventh Sun』がリリースされます。7枚目のスタジオ・アルバムとなりますが、タイトルの由来について教えていただけますか?

まず7枚目であること。俺の頭の中では、コンセプト的には、俺たちのバンドはサイクルに則っているというのがある。人間も太陽の周りを回るというサイクルの中で生きているしね。アルバムを出して、ライヴして......というサイクルが今回は7回目なんだ。そしてファン、クルー、みんながそのサイクルの一部になっている。それに7という数字は世界中であらゆる意味を持っているよね。"7つの地獄"とか"7つの大罪"とか。俺たち全員をなんらかの形で分類するようなことがしてみたかったんだ。そういう意味では『Black Flame』(2018年リリースの5thアルバム)のときと少し似ているかな。"children of the seventh sun"(7つ目の太陽の子供たち/※「The Seventh Sun」の歌詞)というのは、ファンもひっくるめてみんなが"7つ目のサイクル"にいて、このバンドの新しい時代に入っていくという気持ちなんだ。そういうコンセプトのようなものがタイトルにはあったよ。

-バンド・メンバーの6人に加えて、ファンなどが7人目のような感覚で。

そうだね。そういう感じ。

-アルバム全体に何かテーマは設けましたか?

今の世の中や今の心の状態を形にしたような感じなんだ。『Cannibal』は明らかに内省的で俺自身のことが大半だったけど、今回は俺の解釈による今の人類の状態という感じだね。内容的にはいろいろあるけど、全体的には今の世の中を見た形になっている。そして俺たちが受けているプレッシャーをダークなところから眺めているんだ。今の世の中はどう見てもいい状態ではないし、それはパンデミックだけが理由じゃない。人々のお互いや他人、他の国に対する扱い方も良くないしね。イギリスでは政府からもたくさんのプレッシャーを受けている。やつらの他人に対する見方もどうにもいいものではないんだ。それが人々の無知や人種差別、偏見に繋がっているけど、俺たちのバンドはそういうものを体現してはいない。俺たちはこの国の人たちにとって安心できるコミュニティ作りに寄与したいんだ。この国だけじゃない、すべての人にとってね。どんな人種でもセクシュアリティでも、民族でも、能力でも。俺たちにとってはあらゆる人たちが安心できるコミュニティを作ることが大切だから、何か正しくないことが起こっているときは音楽を通じて声を上げていきたい。ということで、アルバムは環境の変化だったり、無知だったり、パンデミックや俺自身のメンタル・ヘルスについて取り上げているんだ。そういう意味では『Cannibal』ととても似ているね。いろんなもののミクスチャーでありつつ、今の世の中の状態を考察しているんだ。