INTERVIEW
BURY TOMORROW
2023.03.30UPDATE
2023年04月号掲載
Member:Daniel “Dani” Winter-Bates(Vo)
Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子
-前回のインタビュー(※2020年9月号掲載)では『Cannibal』の中で自分の内側をさらけ出したとおっしゃっていたのを覚えています。前作でそうしたことによって、今回はその考察の作業がやりやすくなったなどはありますか?
そうだね! そう言えるな。間違いないね。ものすごくダークな領域に踏み込んでいくときに、不安を感じずにやるのに一番役立つのは......『Cannibal』はびっくりするくらい深くに踏み込んでいったからね。今回も似た感じで、特定のフレームの中で話をしているんだ。前回のインタビューでも話したかもしれないけど、あれも特定の病気について語っていたんじゃなくて、俺の解釈、俺の感じたことを語っていた。このアルバムも同じで、俺がどう描くかをフレームにしている。"これが、世の中で起こっていることに対する俺の解釈だ"ということでね。"これは政府についての歌だ"、"じゃあこれは......"というわけじゃなくて、俺が全体的に思っていることを歌にしているんだ。
-それもあって、リスナーも自分のことのように身近に考えることができるしれないですね。
そう、そこが最高だよね。聴いた人がその人自身の意味合いを曲に持たせてくれるとすごく嬉しいんだ。音楽はそれがあるからね。俺がその人の感じ方を指図するものじゃないし(笑)。俺も他人の曲に自分の解釈を加えて、その曲に特定の感情を抱くことができたことが何度もあったよ。それはもしかしたら作者の表現しようとしていたことと真逆だったかもしれないけどね。
-アルバムの楽曲は、キーボーディストを入れた強みを生かしつつアグレッシヴなメタルコアからドリーミーなサウンドまでジャンルが拡張された、BURY TOMORROWのすべてが詰め込まれているような作品だと感じました。サウンドを拡張しながらも軸がメタルコアにあるというのが素晴らしいです。作曲面ではどのようなことを意識しましたか?
一番意識したのは、制約を設けないということだったね。しっくりくればいいってことで。実はそういうふうにやったのは初めてだったんだ。今までは"最高のメタルコアを書こう"という感じだったけど、そうした瞬間"箱"ができてしまって、ある程度までしかいけないんだよね。今回は"アルバムに効果的ならやろう"という感じだった。だから今までとは違って聴こえるんだ。今まで俺たちの曲ではやらなかったこともやっているからね。エレクトロニックだったり、メロディだったり、ヘヴィさだったり。最高の曲を書こうと考えたら地平線が広がったんだ。それがとても良かったね。ジャンル的な視点でも、メタルコアにこだわらないようにした。"自分たちがヘヴィなバンドだっていうのはわかっているから、それをどんどん突き詰めていってどうなるか様子を見よう"ということになった。だから意識した青写真のようなものはなかったけど、強いて言えば"ジェネリックな音"にはしないというくらいかな。以前そう言われたことがあったから、そうならないように自分たちをプッシュしたんだ。俺たちのソングライティングは手法がだいたい決まっているから、昔の曲がなんらかの形で複製される要素はあると思うけどね。ヴァース→コーラス→ヴァース→コーラス→ブレイクダウン→コーラスのパターンとか。でも多くの曲でそれをやらなかった。今回はキャッチーではあっても次が予測できないようになっているんだ。"こうきたか、予測できなかった"と感じるショッキングなポイントがあると思うよ。それがすごく大事なことなんだ。
-アルバムの楽曲はすべてアウトロとイントロで繋がっていますが、こうした構造にしたのはなぜなのでしょうか?
あれはDawsのアイディアだったんだ。あいつはアルバム全体をひとつの曲みたいにしたいと考えていたからね。俺たちも全員同意した。以前にそういう手法を取ったとしても効果的にはならなかったと思うけど、今回はトライしてみたいと思ったんだ。曲から曲への移行のところは時間をかけて作っていったよ。前の曲から押し出されて次に行くような感触がないように気を遣った。これはとても意識的に行ったことだったね。1曲ずつ個別に聴いた結果がアルバムになるというより、『The Seventh Sun』を1枚まるごとじっくり聴くことができるようになっているんだ。じっくり聴いたあとで特に感銘を受けた曲があれば、もちろんそっちに戻って聴くこともできるけど、全体でひとつの曲みたいなところがあるね。没入できるんだ。ドライブ中でもいいし、何かをしているときに歌詞をじっくり聴くこともできる。
-ヴォーカル・ワークでは、クリーン主体のパートにスクリームが絡み合う部分だけでなく、スクリーム・パートにクリーンのメロディが乗る展開など、より多彩な表現を提示しています。どのようなことを意識しましたか?
俺のそういう歌い方は『Cannibal』で始めたような気がするけど、どのアルバムも俺のヴォーカルの軌跡が表れていて個人的に興味深いね。2009年にデビューしてから間違いなく今が一番テクニック的にいい状態だと思う。毎回ヴォーカルが変わってるんじゃないかってくらい変わってきたよ。一貫性という意味ではあまり良くないけど(笑)、話題にはなっていると思う。今回はたくさんオフの時間があったからたくさん練習もできたし。今のほうがさらに練習を重ねているから、今同じ曲をレコーディングしたらさらにステップアップしていると思うよ。自分の声をより理解しようとしているしね。それから、時代を認識しておくのも大事だと思う。世の中には素晴らしいヴォーカリストが山ほどいるし、俺自身"古いスタイルのスクリーマー"というカテゴリにはまってしまいたくないんだ。できるだけ今の時代に合った声でいたいから、自分の声を今までに行ったことのなかった領域にプッシュしている。Tomとのブレンドに関して言えば、あいつはスクリームもできるし、普通の歌い方からスクリームへと徐々に変化していくこともできるから、ふたりの声をブレンドさせやすいんだ。そうするとヴォーカルにダイナミックな要素が加わってとてもいい効果になる。"これはシンガーで、こっちがスクリーマーか"みたいに聴くことがないからね。"今のはどっちだったんだ?"と思ってもらえるのがいいよね。
-たしかに、"どっちだ?"という瞬間がありました。
例えば「Boltcutter」はそれが顕著なんだよね。TomがKristanと一緒にコール&レスポンスをやっている。Kristanはライヴでもスクリームすることがあるから、あの曲ではヴォーカルとしても参加しているんだ。それから、俺は常に自分をプッシュするようにしている。毎日練習を欠かさないし。もうすぐホーム・スタジオができるんだ。そうすると常にレコーディングできるからいいよね。今までは家でデモを録音する程度で、ちゃんとしたセットアップは持っていなかったんだ。そうするとスタジオに入るとき......そりゃ初めてじゃないし何百曲もレコーディングしてきたけど、今まではスタジオで歌うというのが奇妙な感じだったんだよね。ライヴはそういう感触がないんだ。何度もやってきたし、ライヴでの歌い方も心得ているし、自分の声がどんなふうに聴こえるかもわかっているし、毎晩だってできる。でもスタジオはちょっと居心地が違うから、ウォームアップに少し時間がかかるんだ。これからはスタジオに入ることに慣れて、完全に居心地よくやることができる。自分が何をすべきかを自宅で学ぶことができるから、そのぶんいろんなことができると思う。それが次のステップだね。いろんな人がMVにコメントしてくれていてクールだよ。今まで必ずしもやってこなかったショッキングな箇所もいくつかあるしね。例えば「Abandon Us」の"How could they do that to us?"と歌う部分は高音と低音の間を行き来するんだ。
-その部分について聞こうと思っていました。パンチが効いていますよね。リズミカルで。
そう、そこがあの曲の一番大きな特徴だったんだ。あれは俺が大好きだったニューメタルの影響があるんだ。LIMP BIZKITとかLINKIN PARKとか、あとPAPA ROACH......みんなああいう風変わりなヴォーカル・テクニックを使っていたよね。
-個人的にはDISTURBEDのDavid Draimanあたりも思い出しました。
うん、わかるよ。歌詞だけじゃなくて、ノイズも相まってキャッチーな雰囲気を作り出すことを目指したんだ。このときも恐怖を払拭することが必要だったけどね。クールだと思ってもらえないんじゃないかとか、ドン引きされるんじゃないかとか思ってしまってさ。でも自分ではクールだと思ったから、なんとか仕上げようとしたんだ。他のメンバー全員にも何百回も"これでいい? いいと思う?"と聞いてから作った箇所だけど(笑)、俺たち史上最高に受け入れられたパートになったから面白いよね。
-オープニング・トラックで表題曲の「The Seventh Sun」は、メロディックでパワフルなBURY TOMORROWらしさもありながら、新たな要素も溶け込んでいて、この先のアルバムの展開に期待を持たせるような楽曲になっていますね。
曲の大半はEdが書いたんだ。あいつが書いたオープニングのリフがこの曲では一番の要になっている。主要部分になっているヴァースもね。今までのアルバムでもオープニングは壮大でヘヴィな曲になっているけど、それは俺たちが子供時代に聴いていたバンドにそういうのが多かったからなんだ。頭のほうにガツンとくるものを持ってきてね。前作だったら(オープニングの)「Choke」もそういうところがあったし、「The Eternal」(『Earthbound』のオープニング)も、『Portraits』(2009年リリースのデビュー・アルバム)だったら「Confessions」がオープニングだった。みんなものすごくパンチが効いた曲だ。ということで、今回もぜひパンチの効いたオープニングにしたいと思っていたんだ。BURY TOMORROWのテッパンみたいな感じだしね。同時に今回はメロディを強調したかったから、これが一番ヘヴィさとメロディックさが並列しているんじゃないかな。恐ろしいくらいヘヴィなパートと、オープンでメロディックなパートがあるからね。それでショックを与えるというのが狙いだったんだ。人によっては気に入ってもらえるだろうし、中には自分の中で噛み砕くのにちょっと時間を要する人もいるだろうな。早くライヴでやりたくてウズウズするよ。セットのオープニング曲にすることも考えて作ったからね。「The Seventh Sun」から始めることが今後多くなるかな。すごく誇りに思っているし、アルバムの導入部としても超ヘヴィな曲になったよ。
-「Begin Again」ではシンセのアレンジが冴えわたるポジティヴなサウンドが展開されていますが、ダークな中にも最終的にトンネルの先に光が見えるような感じが気に入っています。この曲についても詳しくうかがえますか?
「Begin Again」は美しくヘヴィな曲だね。これもまた意図的に違う要素を並立させているんだ。この曲と「The Carcass King」と「Wrath」はダークなカテゴリに入るね。その中でも「Begin Again」はメロディック度が高い曲になるだろうという確信が書いた瞬間からあった。とは言っても、もしクリーン・ヴォーカルだけだったらすごくメロディックになっただろうし、それはそれで問題なかっただろうけど、歌の部分の冒頭にスクリームがレイヤーされているから、そこにヘヴィネスが加わっているんだ。リフも同じだね。リフ自体はメロディックな音が続くけど、ロー・チューンでヘヴィになっているし、バックにハードなビートもある。違和感ギリギリのフィーリングを醸し出しているんだ。"まぁキャッチーだけど......ヘヴィだな"という感じにね。とても気に入っているよ。コーラスもすごくニューメタル風だし、LINKIN PARKやPAPA ROACHを彷彿とさせるものがある。現代的なメタルコアでもあるね。"Taking control"と歌うところ(ヴァースの歌い出し)は極めてメロディックで、このアルバムの中でも指折りだろうな。あの部分もLINKIN PARKっぽいところがあるけど、あのバンドがいたからこそ俺は音楽を始めたようなものだから、できる形でオマージュにしたかったんだ。Tomの声もあの手の曲にすごく良くブレンドしている。とてもスペシャルでメロディックな曲だよ。