INTERVIEW
BURY TOMORROW
2025.05.15UPDATE
Member:Daniel Winter-Bates(Vo)
Interviewer: 菅谷 透 Translator:安江 幸子
前作『The Seventh Sun』で新体制のサウンドを確立し、昨年の来日公演も大盛況で終えたBURY TOMORROW。UKのメタルコア・シーンでも確固たる地位を築きつつある彼等の、約2年ぶりとなるニュー・アルバム『Will You Haunt Me, With That Same Patience』は、前作の音楽性をさらに研ぎ澄ませながら、コントラストをより鮮明に打ち出している。今回もフロントマンのDanielに実施したインタビューでは、創作プロセスや、自身のタトゥーにも刻んだ"妖怪"を題材にした楽曲等様々な話を訊いた。
-2024年には久しぶりの来日公演("Bury Tomorrow (UK) Live in Japan 2024")を開催しましたね。私もライヴに行きましたが、ステージもフロアもエキサイトした熱狂的なステージになっていて、日本のファンが皆さんを待ち望んでいたのが表れていたと思います。ライヴの印象はいかがでしたか?
1つ前のインタビューでも、"地球上で特に好きな場所が日本"なんて話していたところなんだ。今日本からインタビューを受けているからここで言うわけじゃないけど(笑)、日本には5回も行ったし、新婚旅行も日本だったしね。だから公演の機会を貰ったときは飛びついたよ。断るなんて手はなかった。そうしたら"週の中日はやらないで。動員が難しいかもしれないから"って言われたんだ。言われた通りにしたらソールド・アウトになって、すごくハッピーだよ。今振り返ると、日本には31時間くらいいたのかな?
-31時間!? そうだったんですね。
ああ。タッチ&ゴーという感じだったよ(笑)。実質まる1日あるかどうかだったね。なんとか観光もできて、我ながらびっくりするくらい時間を有効に使えたよ。何しろメンバー全員日本が大好きだからね。ショーは最高だった。ものすごいエネルギーで、みんな没入してくれているのがよく分かった。まぁ旋風みたいな感じだったけどね。まだ時差ボケも残っていたし。でも素晴らしかった。これ以上ないくらい良かったね。またできるだけ早くそっちに行きたいと思っているんだ。
-ぜひ戻ってきてください。それにしても、31時間の中で観光も少しできたんですね。いかがでしたか?
1人4万歩くらいは歩いていたよ。できるだけ東京を見たいと思ってとにかく歩き回った。でも以前10日間くらいいたけど、半分も見られなかったからね(笑)。デカい街であることは間違いないよ。まぁ、ごく普通の観光ルートだったね。Ed(Hartwell/Gt)とTom(Prendergast/Key/Vo)は東京が初めてだったから、案内っぽいこともしたんだ。新宿や渋谷に行ってね。普通に観光で行くところだったから、ツーリストがたくさん歩きまわっていたよ。その後解散してそれぞれ別のところに行ったんだ。あと、すごく暑い日だったね(笑)。天気も良かったから、ショーの会場に戻ってきたときにはちょっと日焼けしていたよ。
-ニュー・アルバム『Will You Haunt Me, With That Same Patience』が完成しました。リリースを控えた現在の心境を伺えますか?
もう超誇りに思っているよ。バンドマンは、レコーディングが終わった途端に、"ここをああすれば良かった"みたいな箇所に気付くものなんだ。ミュージシャンであることの呪いみたいなもんだよ(笑)。ミュージシャンというものは、常にもっともっと良くなっていくことを求めてプッシュし続けているものだからね。でもこのアルバムの場合は、そういうことを感じなくて済む状態に、今までで一番近いところまで行けた気がする。完成してから結構経つけど今でも新鮮に感じるし、本当に誇りに思うことができているから、とてもハッピーなんだ。
それにシングルへの反応も今のところ素晴らしいしね。それぞれ内容が違うし「Villain Arc」から「Let Go」、「Waiting」まで聴き手をプッシュして、俺たちの音楽について今までとは違う印象を焚きつけてきたけど、悪い反応も特にないんだ。ごく少数、1桁くらいはネガティヴなコメントもあったと思うけど、それは構わない。ということで俺たち自身、このアルバムがどこまで行けるかとても楽しみなんだ。ヘヴィさもライトさもずっと増しているからね。そのダイナミクスを活かしていきたい。アルバムが出たときにみんなが気に入ってくれることを信じているよ(※取材は3月下旬)。
-"Will You Haunt Me, With That Same Patience"は、収録曲「Silence Isn't Helping Us」に登場するフレーズですが、タイトルの由来や作品のテーマについて教えていただけますか?
アルバム全体はパラドックス(逆説、矛盾)についてかな。そのものずばりの曲(「Paradox」)もあるけど「Silence Isn't Helping Us」もライト&ダークのバランスがあるんだ。永続性と非永続性のバランスだね。Loss(喪失)は非永続的なものだけど、Haunting(心に残ること、付きまとうこと)は永続性がある。それから、Hauntingなもの程持続性のあるものはないと思うから、常に存在するものに対する憧れみたいな意味もあるんだ。それがなんの形であれね。
「Silence Isn't Helping Us」の歌詞はTomが書いたんだけど、そのときはアルバム・タイトルにしようなんて考えていなかっただろうな。でもあのフレーズの存在感がすぐに際立ってきて、俺たちは"これだ"って思ったんだ。それから今回は長いアルバム・タイトルにしたかったから(笑)......という感じだね。アーティスティックな本質のアルバムにもしたかったから、タイトルの長さでもその雰囲気を出したいと思って。うまいところに着地できたよ。ライト&ダーク、コンスタントなものとそうでないもののバランスが取れているんだ。
-たしかにコントラストやバランスは、今作の鍵的な要素になっている気がしますね。それについては後程詳しく聞いてみたいと思います。前作『The Seventh Sun』(2023年リリースの7thアルバム)は、新体制がどのようなものなのかを確立する意図もあったかと思いますが、今回は前作の路線を継続するだけでなく、さらに発展させた作風になっています。制作やレコーディングにはどのようなマインドで臨んだのでしょうか?
まさに君が言ってくれたようなマインドだったね。『The Seventh Sun』は新体制だった。もちろんその前に単独のシングル「Death (Ever Colder)」(2022年3月リリース)と「Life (Paradise Denied)」(2022年6月リリース)があったけど、あれは湯加減を見るような感じで、そこから『The Seventh Sun』へと入っていった。正直言って激動の時期だったね。とてもポジティヴな意味での激動。新しくて、それまでと違って、今でもものすごく誇りに思っている作品なんだ。
今回はそこからそんなには変わっていないと思うけど、あの頃よりずっと自信が付いてきた。でもプロデューサーを替えることになっていたから、どうなるか様子を見ようという考えもあったんだ。意識としては引き続き自分たちの音楽をライトにもダークにも推し進めて、ソングライティングの制限を設けないというのがあったね。つまり、曲が赴く必要のある方向に向かっていったということなんだ。ドラムンベースを入れてみたいと思ったら入れてみるし。あと、例えば「Yōkai」は俺たち史上最高にヘヴィな曲が書けたと思うんだけど、そっちの境地に行きたかったからそうしたんだ(笑)。自然の流れに任せてね。ロック・バンドからデス・メタル・バンドにまで振り幅が広かったよ(笑)!
でも、それでいいと思うんだ。最近の音楽もそんな感じだしね。俺たちが活動し始めた頃と比べて、みんな音楽の多様化を受け入れていると思うし。昔はメタルコアだったらずっとメタルコアでいるべきで、そこから別方向に行くのは許されないみたいな空気があったけど。ということで、このプロセスが始まったときも、振り幅については頭の中にあった気がする。
-ちなみに、前作のインタビュー(※2023年4月号掲載)時点ですでに新作に取り掛かっているとおっしゃっていましたよね?
ああ。俺たちはいつもそうなんだ。アルバムを作り終わった後(リリースまで)少し時間ができるからね。今も次のアルバムのアイディアを温め始めているところだよ。とにかくコンスタントに書いているんだ。いいことだと思うよ、たくさんのネタからいいものを引っ張ってくることができるからね。もう結構長い間そうしているよ。できるだけ早く次の作品を出したいと思っているから。『The Seventh Sun』を出した後も、あまり長い時間を置きたくなかったんだ。みんなそれがアルバムだろうとなんだろうと、新しい音楽を早く聴きたがってくれているからね。そんなこともあって、俺たちもそういう姿勢なんだ。
-ということは『The Seventh Sun』を出してからわりとすぐに曲作りを始めていたんですね。
そうだね。あまり時間を置かなかったよ。
-本作ではSLEEP TOKEN、BULLET FOR MY VALENTINE、WHILE SHE SLEEPSを手掛けたCarl Bownを初めて起用しています。彼を選んだ経緯や、レコーディングでどのようなやりとりがあったのか教えていただけますか?
Carlは素晴らしいよ。前作のプロデューサー、Dan Wellerも素晴らしかったけど、彼とは関係のタイプが違うんだ。Danはほとんどメンバーみたいな感じで、曲作りも一緒にやってくれたし、たくさんの素晴らしい貢献をしてくれた。今回組まなかったのは何よりもタイミングの関係だった気がする。アルバムをいつ出したいと決めてからが早かったから、すぐにスタジオに入らないといけなかったし、その時期に稼働してもらえるプロデューサーを探していたんだ。
Carlのことはずっと前から知っていたよ。イギリスではプロデューサー界のセレブみたいな人だからね。SLEEP TOKENを手掛けるより前に、(WHILE SHE)SLEEPSやBULLET(FOR MY VALENTINE)を手掛けていたから、Carlのプロデュースの巧さも知っていた。だけど彼と仕事をする機会なんて一生得られないだろうと思っていたんだ。何しろすごく有名な人だからね。でも初めて話を持ち掛けたときからすごく乗り気になってくれてさ。"ずっと前から、いつかは一緒にやってみたいと思っていた"なんて言ってくれたんだ。すごく嬉しかったよ! それに俺たちにとってWHILE SHE SLEEPSは兄弟みたいなもので大昔からの付き合いだから、信頼できる人だっていうのも分かっていたしね。
彼は俺たちがスタジオに入ってすぐ心地よく仕事できるようにしてくれた。プッシュしてくれたのは間違いない。彼にとっては不幸なことに俺たちにはツアーがあって、ELECTRIC CALLBOYと一緒に北アメリカに行ったり、いくつかヘッドライン・ショーをやったりしたから、その合間を縫って2週間、こっちで2週間みたいな感じに断続的にレコーディングしたんだ。プロデューサー的にはどう考えても悪夢だよ(苦笑)。1つの作業を長い間引っ張ったり、全然違う時期にセッションをしたりしないといけないからね。彼には神のご加護をという感じだよ(笑)。
でも彼はカオスへの順応力がすごかった。俺たち的には、それまで書いてきたものを全く違う文脈で見直すことができたから良かったけどね。ツアー中に音を聴けたし。でもプロデューサーや、その他の一緒に働いてくれた人たちからしてみれば、最悪の仕打ちをしてしまったんだ(苦笑)。もう二度としませんからと言いたいね(笑)。
-その多忙なスケジュールもでもこうして素晴らしい作品をまとめてくれました。
本当だよ! 彼は素晴らしかった。いつかまた絶対に一緒にやりたいね。