MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

BURY TOMORROW

2025.05.15UPDATE

BURY TOMORROW

Member:Daniel Winter-Bates(Vo)

Interviewer: 菅谷 透 Translator:安江 幸子

俺たちは同時代を生きるバンドたちから抜きん出て、それでも共感できるバンドでいたいんだ


-前作のインタビューでは、メロディックなヴォーカルを試しに録っているという話がありましたが、本作でついに登場しましたね。Tomもクリーンだけでなく歪ませた歌い方も駆使していて、ツイン・ヴォーカルによる表現の幅がさらに広がったように感じましたが、レコーディングではどのようにアレンジしていったのでしょうか? どっちが歌っているんだろうと思う瞬間も多かったです。

Tomとは一緒に曲を書いていたんだ。あいつは主にメロディ担当だけど、君も言ったようにスクリームもできる。時には丸1曲書いてから俺のところに持ってくるから、一緒に作業することもあるよ。そこに俺がいろんなパートをデモから引っ張って来たりしてね。歌のパートを入れることもあるし、自分のスクリーム・ヴォーカルを入れることもあるよ。
もう何年か一緒にやっているから、どれを誰に歌ってもらいたいかはなんとなく分かるんだ。あいつはわりと複雑なものが得意だから、そういうものは自然とあいつの担当になる。あいつのほうがいいシンガーだからね。でもすごくヘヴィなものだったら、あいつも俺がやる必要があるって分かってくれているんだ。俺たちはまずメインの担当があって、それは俺がヘヴィ寄り、あいつがライト寄りってことなんだけど、お互いプッシュし合って......「What If I Burn」は自分が歌ったほうがショッキングになると思った。それで自分が歌のパートをゲットしたら、Tomが"ここでは役割を入れ替えるのはどうだろう"と提案してくれて、スクリームし始めたんだ。これもまたファンにとってはショッキングだから効果的だよね。ちょっとした話題ポイントになったよ(笑)。 それから「Found No Throne」の場合は、前作の「Majesty」みたいにスクリームを組み立てていく形じゃなくて、メロディックにしたかった。と同時にライヴでもプレイできるものにしたかったから......という感じで、意識的な判断は結構多かったね。でも歌は俺よりTomのほうがたくさんやっている。あいつのほうがずっとうまいから、俺が何もかもやることもないし(笑)。それにライトに大きく振れるつもりはなかったし、ヘヴィさを追求したいから、俺もできるだけたくさんスクリームし続けたいんだ。

-また、サウンド面ではギターのチューニングがこれまでより低くなっていますね。メロディックとヘヴィのコントラストがさらに強烈になったように感じましたが、自然な流れからこのセッティングになったのでしょうか?

そう、ドロップG#からドロップFにしている。俺たちは全員、ギターのチューニングをものすごく低くするのが好きなんだ。今はメタル・シーンではみんなそうかもしれないね。何かすごくクールなものがあるんだ。SLEEP TOKENはロー・チューニングがうまいよね。G#はずっと意識的に使ってきた。初めはCだったと思うけどね。その頃メタル・シーンはEがスタンダードだったから、今思えばワイルドだったな(笑)。若い頃は許容範囲が狭かったけど、歳を重ねるにつれて他にも手を広げたくなったんだ。今回もそんな感じで変えたんじゃないかな。
でも役に立ったと思うよ。ロー・チューニングにしておいたほうが、ライトとダークの行き来が比較的楽にできるんだ。すごくヘヴィにやりたかったら音1つでできるし、クールな状態だと思う。それに俺たちはリフ・ベースのバンドだから、理想のチューニングを探すことがすごく大事になってくるんだ。Daws(Kristan Dawson/Gt)はスタンダードのチューニングを一切使わないしね。あいつはチューニングをいろいろいじるんだ。担当ギター・テックにとっては悪夢だよ。何しろいろんなチューニングをワイルドに実験しているからね。あとEdもロー・チューニングが好きでね。あいつの好きなバンドはDEFTONESとか、ロー・チューニングを効果的に使っているバンドが多いんだ。

-モダンなメタルコアのテイストや、エレクトロニクスを用いたパートも前作以上に増えています。アレンジメントではどのようにバランスを考えたのでしょうか?

そう、モダンになる必要があると思ってね。俺たちは自分たち相手に演奏して満足できるタイプじゃないから(笑)。ファン層を拡大し続けて息の長いバンドでいたいという気持ちがあるんだ。昔懐かしいバンドとして見られるのはまっぴらだ。まぁ、俺たちのことを昔懐かしいバンドと見る向きも多いとは思うけど、それは別にいいと思うし、そんなに長い間ついて来てくれていることも嬉しい。でも同時に、俺たちは同時代を生きるバンドたちから抜きん出て、それでも共感できるバンドでいたいんだ。
今の時代、エレクトロニック・ミュージックはメタルの一部だ。日本ではもっとずっと前からそうだよね。日本のサブカルチャーは、サブジャンルをいろいろ融合させながら動いているような気がするよ。すごく流動的だし、世界も追い着くべきだと思う。だから俺たちもそういうものを書くべきだし、そうすることで違いを出せているんじゃないかな。
Tomはシンセもやっているから、あいつが加入してからは特に変わったね。あの楽器の素晴らしさを推進するという必要性も出てきたから。それを始めたのが前作で、今回はそれをさらに前進させることができたと思う。あの手のものを(メインの1つとして)使う余地ができた感じかな。以前だったらシンセだけで20トラックもあるのにほとんど聞こえないことが多かったから、俺たちだけでスタジオで"おぉ、すごいね"なんて言っていたけど、今はギターみたいに独特の持ち味を発揮させることができるようになってきた。それがエレクトロニクスの多用なんだ。これは曲の赴くままに自由にさせた結果だね。俺たちはみんなあらゆるタイプの音楽が好きだから、試さない手はないなと思ってさ。

-オープナーの「To Dream, To Forget」は、エレクトロニクスを用いたセクションも印象的なナンバーです。アルバム全編にも言えることですが、ヘヴィなパートでは無機質に、メロディックなパートでは情熱的にという対比を意識されているように感じたのですが、意図的なものなのでしょうか?

そうだね。それぞれの曲がアルバム全体を表していることも重要だと思うんだ。ダイナミクスが鍵だね。曲を聴くことによって旅に連れ出してもらえているような感覚を、ファンも従来のメタルコアより多く求めていると思うしね。従来のメタルコアは"これが壮大なコーラスです。これがブレイクダウンです"みたいな感じだったと思うけど、今は昔よりショックを受けることが望まれていると思うから、俺たちも聴き手がダイナミクスを出たり入ったりできるようなものを目指しているんだ。
「To Dream, To Forget」はそういう意味で鉄板の曲だと思うね。それにオープナーだから、アルバム全体の内容を打ち出せるようなものにもしたかった。それぞれの曲がその役割を少しずつ担っていて、全体として大きな図が描けるような。と言ってもいろんなジャンルを組み合わせるというよりは、聴き手を1つの大きな旅に連れ出したい意図のほうが強いね。メロディの旅。でもメロディだけじゃなくて、ヘヴィなものもあるのが俺は好きなんだ。ヘヴィな箇所がその曲独特の一部分になるからね。ということで意図的にしているのは間違いないけど、それ以上に自然な流れでこうなってもいるんだ。各曲の細かいところは、調整するよりも自然に任せているからね。

-第1弾シングルの「Villain Arc」は来日公演でも演奏されましたが、中盤の静謐なパートからのブレイクダウンが強力な楽曲です。

曲と歌詞がしっかりリンクして、ライト&ダークを醸し出している曲だね。歌詞は、すごくいい状態がずっと続いている人は偶像化されやすいことについて歌っている。つまり、悪い状態になるわけにはいかなくなるんだ。そうすると、たった1回間違っただけで、初めから全く良くなかった状態とほとんど同じように見られてしまう。だから時には怒ったり苛立ったり、何かに対して意見したり、間違ってしまったりしたっていいじゃないかという内容なんだ。常に天使でなんていられない。明るいときもダークなときも必要なんだ。そんな感じを歌詞では表現している。
曲のダイナミクスとしては、ショッキングな瞬間を入れたいとずっと思っていたんだ。ああいう低い声でのスピーキング・ヴォーカルは、今までのキャリアの中でもたくさんやってきたけど、この曲ではそれがエクストリームな形になっているね(笑)。あれがいつもの俺じゃないよ(笑)! いつもあれだったらかなり怖い人だ。でもこの曲に関しては、ブレイクダウンの手前まで誘導していくような感じで声を使いたかった。ここでもさっきの話になるけど、ショックを与えたかったんだ。もっとも、ブレイクダウンが来るぞ来るぞと思っていた人も多かったとは思うけどね(笑)。

-「Wasteland」はニューメタル的といいますか、インダストリアル・メタルのイントロからメタルコア×ドラムンベースのようなビートへと変化していくのがユニークな楽曲です。

うん。変な話でさ、この曲はもともと2番目のリフから始まっていたんだ。(冒頭の)"This is the wasteland"と言った後のところがイントロだったんだよね。でも"いや、これの前に何か必要だ"と思って、あのインダストリアルな部分を入れてヴォーカルに繋げるようにした。最初のスポークン・ワーズの部分は、この曲を作ろうとするよりもずっと前から俺が作ってあったもので、ああいうものを作りたいと強く思っていたんだ。歌詞が先にあったから、そこにヘヴィでインダストリアルなものを持ってきた。ビートが俺のヴォーカルについていくような感じにできたから、そうして良かったと思うよ。
ドラムンベースの部分は、正直言ってどこから来たか分からないんだ(苦笑)。Tomのアイディアだったのかな? ただ、あの部分がなければ、曲のペース的な何かが失われてしまうような気がしていたんじゃないかな。インダストリアルな部分も含めて、あの曲は終始ペースが速いからね。それで、"どんな感じのドラムを入れたらいいと思う?"なんて話になって、じゃあという感じで入れたんだ。これまたショッキングな瞬間を投入したってことだね(笑)。すごくうまくいったと思うし、とてもハッピーだよ。