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INTERVIEW

"50th New Year Rock Festival 2022-2023"

2022.12.12UPDATE

2022年12月号掲載

"50th New Year Rock Festival 2022-2023"

12月31日、東京ガーデンシアターにて、年越し音楽フェス"50th New Year Rock Festival 2022-2023"が開催される。1973年より毎年末開催され、今年記念すべき50回目を迎える"New Year Rock Festival"。主催者であった内田裕也が2019年にこの世を去り、2020年よりプロデューサーを務めているHIRØ(カイキゲッショク/湾岸の羊~Sheep living on the edge~)に、3年ぶりに有観客で開催される今年の"New Year Rock Festival"や見どころ、イベントに込めた熱い想いを訊く。

Producer:HIRØ(カイキゲッショク/湾岸の羊~Sheep living on the edge~)
Interviewer:フジジュン


何があっても50回目までやりたかった


-12月31日、東京ガーデンシアターにて、"50th New Year Rock Festival 2022-2023"(以下、"NYRF")の開催が決定。このフェスの生みの親である内田裕也さんから、プロデューサーを受け継いだHIRØさん。まずは改めてになりますが、HIRØさんがプロデューサーに就任した経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

私が"NYRF"に参加したのが約30年前、第22回("22nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 1994-1995")からなのですが、もともと私がジョー山中の後輩で、そこから"NYRF"ファミリーに入らせていただいて。30周年の手前あたりから、僕がジョーさんと一緒にブッキングに動く時期もあって、裕也さんが作り上げて、ジョーさんが血を注いできたこのフェスを、僕もお手伝いさせていただくようになりました。新しい血というところで、若いロック・バンドやヒップホップもどんどん入れていったのですが、2011年にジョー山中さんが亡くなって、そのあとも安岡力也さん、桑名正博さんと、"NYRF"に関わってこられた方が立て続けにお亡くなりになって。みなさんがご健在の頃は、"「NYRF」はHIRØが続けていってくれよな!"みたいに言われて、"まだ、みなさんお元気じゃないですか"なんて言ってたんですけど、あっという間にそんな時が来ちゃいました......。僕がプロデューサーをやるのは、裕也さんとジョーさんとの純粋な男の約束と言いますか。

-男の約束。裕也さんに限らず、みなさんの想いを受け継いだんですね。

そうですね。裕也さんが亡くなった2019年は、内田裕也の追悼で第47回の"NYRF"("47th NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL 2019-2020")を開催したのですが、翌年になるとテレビもスポンサーも降りてしまって、挙げ句はコロナのパンデミックが来て。あのときは"本当に続けられるのか?"とも思ったんですけど、"50回も目前なので、なんとしてでも50回まではやりたい"という想いに、シーナ&ロケッツの鮎川(誠/Vo/Gt)さんや亜無亜危異の仲野 茂(Vo)さんといった賛同してくださる先輩もいたので、"だったらHIRØ、やろうぜ!"ってことで、僕がプロデューサーに就任させてもらいました。そこで、これまで"NYRF"を支えてくださった大先輩もたくさんいるなか、僕がやるからには新しい血をたくさん入れていかなきゃいけないと思って、30代くらいのロック・バンドやヒップホッパー、ラッパーにもお声掛けして、2020年は"47+1新生New Year Rock Festival"という形でやらせていただいて。"新生"と付けたタイトルで2年間やらせていただいたんですが、今年は"50周年、みんなで盛り上げましょう!"ってところで、"50th New Year Rock Festival"というタイトルでやらせていただくことになりました。

-2020年、2021年はコロナ禍ということもあって、有観客での開催も叶いませんでしたが、今年、50回目という記念イヤー且つ、有観客というところで、タイトルやラインナップからもHIRØさんの気合や覚悟をすごく感じます。

ありがとうございます。"47+1"をやった年、ものすごく大変で。次の年に本当にできるかどうかもわからなかったんですね。というのも、年末はコロナの新規感染者数が増えると言いますか、冬って本当に見えないんですよ。なので、"47+2"("47+2 新生New Year Rock Festival 2021-2022同時多発オンラインフェス")も有観客にするか、配信にするかすごく悩んで、安全第一で無観客配信を選んだんですけど、同じことをやるのもロックじゃないなと思って、東京、大阪、名古屋と全国6ヶ所から中継をする"同時多発オンラインフェス"という新しい試みにも挑戦しまして。去年終わった時点でも、本当に大変なことがたくさんあったのですが、"何がなんでも、50回まではやるぞ"と決めたので、今年は有観客で開催することを決めました。今年も終えてみないと、来年できるかどうかもわからないですけど、"今年50回をやり切ったとき、裕也さんとジョーさんがなんて言ってくれるか?"を楽しみに頑張ろうと思っています。

-50回目を終えたとき、何か答えが出るかもしれないと。今年の出演アーティストが徐々に発表されていて、そのラインナップのすごさにネットもかなりざわついてますが、今回プロデューサーとして一番考えたことや意識したことはどんなところですか?

これはきっと昔からだと思うのですが、"NYRF"の独特の香りと言いますか。ちょっと危険な感じがする香りだけは守りたいと思って、キャスティングさせてもらいました。

-ちょっぴり危険な不良性の部分ですよね。バッチリだと思います!

ありがとうございます。ジャンルではなく、アーティストや表現者の醸し出す危険な香りだけは守りたいと思いました。

-去年、一昨年の配信での開催という試練を受けて学んだことはありましたか?

もし、"47+1"のときに有観客でやってたら、ちょっと読めなかったところも多々あったと思うんですが、そんな経験からも何か新しいことをしようとするときや何かを変えていくときは、なんらかの歪みが起きるものだということを認識しまして。こんな言い方は良くないですけど、この2年間の無観客ライヴもなるべくしてなったと思えるようになりました。この2年をやったことで新しい血が入ってきたのも確かだし、この2年があったからこそ、満を持しての50回を迎えられたと思っていて。コロナ禍では、長くイベントを続けてきた方にも"中止"という決断を選択する人も多くて。僕も去年は"中止"という言葉が何度も頭をよぎったんですけど。"48年続いてきたイベントを一度でも止めてしまうのは違うんじゃないか?"と開催を決断して。結果、やって良かったと思ってます。

-"ここで中止にしたら、裕也さんはなんて言うだろうか?"って考えると、"ここで逃げたらロックじゃねぇだろ?"って言葉も聞こえてくる気がしますしね。

いや、ホントにそうなんです。50回までやったら、"あと19回、69(ロック)までは絶対やらなきゃいけない"とか、裕也さんが言い出しそうですし(笑)。だから、50回を終えてからなんて言われるか? が、楽しみであり怖いんです。ただ今年、9月2日のジョー山中さんの誕生日に鎌倉のお墓に行って、ジョー山中さんと接してきたんですけど、"お前の好きなようにやれ"って声が聞こえてきたような気がして。11月17日の内田裕也さんの誕生日も同じようにお墓参りに行って、"大丈夫だよ"といつもの感じで背中を押してもらえたので、きっと大丈夫だと思います。


"負けんなよ、頑張れよ!"が裕也のロック――生き抜く力を受け取ってほしいという熱い想い


-HIRØさんがあるインタビューで、"内田裕也の残したロックンロールは、「頑張れよ」、「負けんなよ」って言葉だった"とお話されてましたが、亡くなってなお背中を押してくれる、ロックンロールでいてくれる存在って心強いですね。

ホントですね。僕、家の中で自分の部屋が一番安心する場所なんですけど、そこに入ると裕也さんとジョーさんの写真があって。一番気が休まる場所のはずなのに、最近はそこが一番緊張する場所にもなってて(笑)。見守ってくれていると言うよりは、見張られてる感じもあるんですけど、そこに行くたび、力を貰っています。

-では、そんな裕也さんやジョーさんの意志も継いだ50回目の"NYRF"について、内容やラインナップについてもいろいろ聞かせていただきたいのですが。まず、お話を聞かずにいられないのは、高橋和也(男闘呼組)さんの参戦。今年の"NYRF"の会場と同じ東京ガーデンシアターで、10月に男闘呼組の復活ライヴをやったばかりです。

TBSの"音楽の日"("音楽の日2022")という特番があって、私の妻のAIちゃんが原爆ドームの前で「アルデバラン」を捧げるということでテレビを観ていたら、同じ番組に男闘呼組が出てきまして。年齢を重ねて、すごくカッコ良かったんです。最後に歌った「パズル」という曲もすごく心に刺さって。実は最初、男闘呼組での出演オファーをしたんです。ところが1年間限定の復活で、イレギュラーなライヴは入れられないということで諦めたんですけど、KATAMALIの原田喧太(Gt/Vo)君が"KATAMALIだったら和也と一緒にできるけど、どう?"と提案してくれて、"ぜひお願いします!"ということで、改めてオファーしました。なので、今回はKATAMALIと共にステージをやってくれると思います。

-では、高橋さんの男闘呼組とも違った魅力が見えるかもしれないですね。

喧太は原田芳雄さんの息子さんというのもありますけど、裕也さんだったりジョーさんだったり、宇崎竜童さんだったりという中で10代の頃から揉まれていた、バリバリのギタリストで。そこに満園庄太郎(Ba/Vo)&満園英二(Dr)の満園兄弟がリズム隊ですから。去年も江口洋介さんや大黒摩季さんがKATAMALIと一緒に演ったんですが、すごく良くて。今年は高橋和也さんとどんな化学反応を起こしてくれるのか? すごく楽しみにしています。

-若手というところでは、BAD HOPの参戦も話題になっています。

Zeebra君とは10代の頃からの仲で、カイキゲッショクというバンドも一緒に組んでるんですけど、彼が去年から一緒にキャスティングを手伝ってくれるようになりまして。語弊が出ちゃうかもしれないですけど、今のヒップホップって、昔の危険な香りのロックにすごく近いじゃないですか? その中でも勢いのあるのがBAD HOPだと思っていて、どうしても出てほしいとお願いして、Zeebraにキャスティングしてもらいました。裕也さんが始めた1回目の"NYRF"("1st フラッシュ・コンサート 1973-1974")に、20代後半のキャロルが出演しているのですが、50周年で20代後半のBAD HOPがいるっていうのもすごく良くて。

-美しいです! ここから"NYRF"の新たな歴史を作ってくれるかもしれないですね。ロック勢ではDIR EN GREY、KYONOという豪華ラインナップも名を連ねました。

DIR EN GREYは、フェスも"これぞ"ってところしか出てくれないじゃないですか。それは承知のうえで、"50周年というところで、足跡を残してほしい"とお願いして、ご出演いただけることになりました。KYONOもTHE MAD CAPSULE MARKETSの頃から大好きで、一昨年はアコースティック、去年はバンドで出てもらっていて。今年も楽しみです。