INTERVIEW
Non Stop Rabbit
2020.12.08UPDATE
2020年12月号掲載
Member:矢野 晴人(Vo/Ba) 田口 達也(Gt/Cho) 太我(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
バンドと同時に、総チャンネル登録者数70万人以上のYouTubeチャンネルを持ち、幅広いリスナー層やファンを獲得している3ピース、Non Stop Rabbitがアルバム『爆誕 -BAKUTAN-』でメジャー・デビューを果たす。活動の多彩さだけでなく、キャッチーな歌、多ジャンルを横断して曲ごとに色味が多彩なサウンド、路上ライヴで培ってきたバンドとしての起爆力を糧に、インディーズ時代からZepp公演を成功させてきたノンラビ(Non Stop Rabbit)だが、今回のアルバムはバンドの持つ武器、一個一個を取り出し磨き上げ、さらに新たなエンジンとなるEDMなども搭載して、勢い良く世に放つ作品だ。ここから勢いに乗っていくだろう3人に、ノンラビについて、その音楽や志について話を訊いた。
-アルバムの制作はいつ頃からスタートしていたんですか?
田口:3月ごろには録っていましたけど、途中コロナの影響で一切制作も止めて。曲作りだけしていてレコーディングとかはできない時期はあったので、できたのはつい最近で、駆け足でやっていましたね。
-そのレコーディングができない期間、活動できない期間に考えたことなどは、そのあとにできた曲に反映されましたか?
田口:そうですね。家にいると、メンヘラになるっていうか(笑)。
矢野:病むね。
田口:だから、あまりネガティヴにはならないようにしましたけど、多少はなりました。
-それが曲に出ているものもありますね。「音の祭」などは、3月に予定されていた豊洲PITでのライヴ("LiveTour 2020~武道館を狙うたてがみの生えたウサギ~")を中止にせざるを得なかったことの怒りや葛藤、その背景などをSNSで発信して、いろんな反応があったことへの思いなどもアウトプットされました。ただ、これが怒りだけでは着地しないものになっている。
田口:怒りなんですけど、結果的に怒りで終わらなかったというか。別に何も悪くないしなってなっていたときに、シンプルにもうちょい暴れてもいいというか。できないことがいっぱいあるからこそ、好きなことやればいいし、そうなったら1曲くらい好き勝手やっている曲があっていいなとか。ある意味、楽になったというか。こんなにライヴができないんだったら、好きに作らせてくれよっていう。
-そのぶん曲のアレンジにも力が入ったんですね。
田口:そうですね。この時期に、ジャンルも広げたという感じです。
-当初、このメジャー・デビュー・アルバムのヴィジョンについて、ほかに思い描いていたものはあったんですか?
田口:特に考えずに、とにかく10人にアルバムを聴いてもらったときに、それぞれにいいなって思う曲が1曲あるようにしようとは思っていたので。ロックだからってロックばかりで攻めるというよりは、いろんな要素を入れたいなと思っていましたけど、ただ特に"こういうふうに仕上げる"とかは考えていなかったんです。その都度できた曲を、今回はこっち側で作ってみようとか、舵を取っていった感じですかね。
-曲の幅広さはもちろんですけど、ノンラビの曲の面白さってとにかくフックだらけじゃないですか。メロディもサウンドも、1曲の中でもそうだし、作品全体を通して聴いたときもそうだし。これは何が大きいんですかね。
田口:癖なんですかね(笑)。無意識にやっているんですよ。
太我:癖はやっぱり大事だと思いますね。
田口:意識したの?
太我:僕もやっぱり癖を意識して──
田口:ほんとに!?
太我:癖ドラムを叩いてるつもりで。
-(笑)どこらへんまで自覚的にやってるのかなっていうのはずっと思ってました。
田口:最初にこう歌っていた歌詞が、ここではこう変わってるとかは考えてやっているんですけど、作り方においては基本的に悩むことがないので。サビを作ったらBメロ作って、イントロ作って、Aメロを作ったらあとはそこから後半っていう感じで、俺は悩んで止まることがないから、バーっとやって、気づいたらそうなってるんですよね。歌詞とかに関しては、引っ掛かるようにしていますけど。曲作りは、その曲はこうなるやろうなってノリでいっちゃいますね。
-サビから作って、そこから遡っていくんですね。
田口:そうですね。結局俺の中でBメロが一番大事なので、サビがまずあってBメロを作って、イントロに戻ります。結局、まず1番を聴かせることが俺の中でめちゃくちゃ大事で。ここを聴いてもらわないと後半誰も聴いてないやろうなって思うんです。どれだけ前半で引っ掛けるかで。だから、2Aとかもめっちゃこだわりますね。そこで、1番とは変えてきたなとか。そういうのは、たしかに考えているかもしれないですね。
-その頭からがっちり掴んでいくのが大事だっていうのは、何がそうさせているんですかね。
田口:これはたぶんYouTubeで学んだことですね。YouTubeって最初の20秒しか観てないって言われているんですよ。最初の20秒を観ている人は、最後まで観るんですって。曲も同じだなと思ったんです。最初にいい曲だな、いい音だなって思わなかったら、俺らも聴かないですしね。だから、YouTubeから参考にというのはあります。
-YouTubeを始めてから、曲の形や構造にも変化は起きているんですか?
田口:そうですね。インディーズのやつとかは作りたいように作って、出てきたやつをわーっと作っていく感じだったんですけど、今は考えるようになりましたね。本当にこれがベストなメロディなのかとか。1番を通して聴いたときと、フルで聴いたときとで、どこが残るかなとか。それはこの1枚から結構考えました。
-矢野さんはヴォーカリストとして、自分でメロディや曲にアクセントをつけていこうというのはありますか?
矢野:そうですね。ブロックによって、Bメロにいくときに一気に曲調が変わることとかもめちゃくちゃあるんで。そこは切り替えるというか。いい意味で、流れを断ち切って次に進むというのは意識して歌ったりはしていますね。
-そこは田口さんからの注文も入るんですか?
矢野:気になるところがあれば。僕がレコーディングで思い描くものを歌って、気になれば言ってくれるので、話し合いながら進めていくというのが今までもありましたね。
-メロディなども、この声を意識して作っているのかなというのはあります。
田口:それはそうですね、はる(矢野)にハマる曲しか書いてないというか。この声のことだけ考えてます。このキーがギリやろうなって思ったら、普通にできるので、イラっとするんですけど。じゃあ、次の曲からはもうちょっと高くみたいな。
矢野:そうやって高くなっていく。このままいけば、メジャー5枚目くらいで米良美一さんみたいになっていると思う(笑)。
太我:はははは(笑)。
矢野:でも、ライヴもありますし、それに向けて練習するので。出るようにはなってくるんですけど、しんどい部分はあります。
-ベーシストとしてというところではどうですか? ちょっとしたところでスラップが入っているとか、楽器それぞれにスポットライトがあるような感じもありますね。
矢野:大変っちゃ大変ですけど、やっぱり見栄えが一番大事だと考えているので。3人という形が大事だと思うから、頑張ってます。
-そういう意味では3人であることを生かしながらも、3人以上の音を出すということは今回特に感じるところかもしれないです。では、それぞれの曲についても聞いていこうと思いますが、まず「ALSO」はアルバムの1曲目を意識しながら作ったものですか?
田口:というよりは、曲ができあがったときに「ALSO」が1曲目だなと自然になった感じでしたね。1番手としては作ってないというか。最終的に1番手に満場一致でなったという曲で。
-いい幕開けになってますよね。
田口:スネア始まりというか、バンバン鳴らしながら"ロック・バンド始まりますよ"って感じがあって。
-疾走感もあれば裏打ちの気持ち良さもありで、シンプルで気持ちのいいノリだけど、いろんな要素が入った曲ですね。アルバムを聴くほど、みなさんのルーツや根っこはどこだろうっていうのはどんどんわからなくなってきてます。
田口:どうなんだろうね? でも、根っこはJ-POPなんですよね。YUIとか、ゆずとかコブクロとか。
-ギター持って歌うみたいな?
田口:メロディの良さ重視っていうところがたぶん根底にあって。あとは俺が研究していたときに、毎月日本のランキング1位から10位までの曲を借りるようにしていたんですよ。だから、そういう日本のメロディが根っこにあるというか。売れてる音楽が昔から好きだったので。売れてる音楽になりたいっていう(笑)。
-そういうものを分析して、自分の曲に生かす方法だったんですね。メロディ以外でも、アレンジの勉強もした感じですか?
田口:アレンジってなるとEDMとか、いろんなものを聴きましたね。最近だと久石 譲さんをめっちゃ聴きます。ピアノだけでこんなに歌ってるのヤバいなって思っていて。