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INTERVIEW

Non Stop Rabbit

2021.12.15UPDATE

Non Stop Rabbit

Member:矢野 晴人(Vo/Ba) 田口 達也(Gt/Cho) 太我(Dr)

Interviewer:秦 理絵 Photo by fukumaru

YouTubeをバンドのための売名行為と位置付け、二足のわらじで駆け抜けてきたNon Stop Rabbitの快進撃が始まる。12月22日にリリースされるニュー・アルバム『TRINITY』はバンドの底知れないポテンシャルがいよいよ全開放されるような作品だ。新たに挑戦したジャンル、積み重ねてきたテクニック、メイン・ソングライターである田口達也の研ぎ澄まされたメロディ・センス。すべてが底上げされた今作は、ネット・シーンからライヴハウス、お茶の間まで全方位のリスナーに照準をあてて、その人生を肯定するメッセージが紡がれる。"今ノンラビをやってるときが一番楽しい"。結成から5年を迎え、迷いなくそう語る3人に、充実の最新作『TRINITY』について徹底的に語ってもらった。

-作品を重ねるごとに、自分たちの武器を研ぎ澄ませていきますね。

田口:今回は自分の中で幅を広げたつもりなんですよ。だからやるべきことはやったけど、(反応は)わからなくて。大丈夫かな? っていう不安は強いんです。

-ノンラビ(Non Stop Rabbit)って自信満々に見えるけど、取材のときはちょっと弱気ですよね(笑)。

田口:そう、弱気(笑)。

-今年はアルバムに向けてずっとコンスタントに曲を作り続けてた1年だったんですか?

田口:あぁ、わりとそうなのかな。僕のタイプ的に"曲を作らなきゃいけない"って集中しないと全然作らないんですよ。ぐっと集中して作ってレコーディング、ぐっと集中して作ってレコーディングっていうのを繰り返してたのかもしれないです。

矢野:"3曲ずつぐらい曲を上げて"って(レコード会社から)言われてて。合間合間で休みながら、結果的にトータルで1年間動いてたんですよね。

-コロナの影響でメジャー・デビューしてからライヴがないまま曲作りをするというのはモチベーションとしてはどうだったんですか?

田口:今までライヴをしたくて曲を作ってたので。どうしてこれを直接伝えられないんだろう? っていうのはありましたけど。逆にポジティヴに捉えるようにして。今まではライヴで演奏することばっかり意識して曲を作りすぎてたんです。"ライヴ・バンド"であることに、ある意味すがってた。でもライヴとはちょっと離れて聴いてもらうことを意識して曲を作るようになったことで、曲の幅を広げられたんですよね。

-その切り替えはすぐにできたんですか?

田口:あー......すぐじゃないですね。前作アルバムの『爆誕 -BAKUTAN-』(2020年リリース)には「音の祭」っていう俺の鬱憤がワーッて出た曲も入ってたし。でも、だんだん文句を言ってる場合じゃないな、と。変わらないものは変わらないから、ルールの中で何ができるかっていうのを考えるようになって切り替わっていったんです。

-晴人さん、太我さんはどうですか? この1年間を振り返ってみて。

矢野:ストレスは溜まりますよね。ライヴで発散してたので。

太我:僕もライヴはしたいなと思ってたけど。言うて、僕らがしたいライヴ(※キャパ制限をしない有観客ライヴ)はなかなかできないので。空いてる時間にサッカーをやるようになったんですよ。そしたら次にドラムを叩くと上手くなってるんです。

田口:あ、でもなってるよね。レコーディングのときに思った。今までだったら、めちゃくちゃ苦戦して時間がかかるフレーズがあったんですけど、今作は全然ないんですよ。"ちょっと違うな"って言ったら、"じゃあ、こっちを試してみるね"みたいな。

太我:だからスポーツなんですよ。ドラムは。

-いろんな音楽を聴いて引き出しを増やしたとか、そういうことじゃないんですか?

太我:いや、AdoとYOASOBIしか聴いてないです。

田口:あははは! めちゃくちゃミーハーだな。

-今回のアルバム『TRINITY』を作るうえで、こういうことをしたいなって考えていたことはありましたか?

田口:2枚目なので1枚目よりも挑戦しなきゃいけないっていうのはありました。EDMに思いっきり寄ったり、かたや今までのようなロックもあったりっていう両サイドの幅をしっかり意識してて。バラードもバラードで思いっきりそっち側に振るっていうか。

-そのためにはメンバー全員のスキルの底上げも必要だったでしょうね。

矢野:そうですね。僕は今まで高いところの声っていうのは意識しなくても歌えてたんですけど、低いところが出づらくて。そこを強化したかったんですよ。特に「大丈夫じゃない」の1番とかはそうですね。

-「大丈夫じゃない」は聴いたときにびっくりしました。1番は女性目線、2番は男性目線の歌詞だと思うんですけど、晴人さんの歌い方がちゃんと変わってるんですよね。

矢野:あ、嬉しい。気づいてくれたんだ。そこは低いところが出ないとニュアンスをつけられないから。だいぶ頑張りました。

田口:トーンですよね。"女はそんなふうには喋らないから、その歌い方はやめて"とか。"思い出せ、女と喧嘩をしてるときを。基本盛り上がってるのは男だけだから。怒ってるとき女ってだらだら喋るから"みたいな。そんなんをずーっとやってました。

-太我さん、ドラマーとしてはどうですか? 今回のアルバムの向き合い方としては。

太我:僕の場合、音源とライヴでドラムの考え方自体がまったく違うんですよ。大袈裟に言うと、音源ではマジでサポート・ドラマーぐらいの気持ちでいるんです。

-いつもそう言いますよね。とにかく歌を引き立たせたいって。

太我:そうですね。自分を出すのはライヴのときでいいので。僕にとってライヴは放課後みたいな感じなんです。で、音源は授業中みたいな感じ。レコーディングではずっとスーツを着てドラムを叩くみたいな感じなんです。

田口:そんなかっこ良く言うの? Tシャツだったじゃん(笑)。

-(笑)収録曲の話をすると、まずアルバムに先駆けて「全部ブロック」と「Needle return」「BAKEMONO」が配信されて。かなりインパクトがある3曲でした。

田口:エッジの効いた感じですよね。

-あえてこういう曲を狙って出してたんですか?

田口:「全部ブロック」はできたときに、これを出すのは今だなって満場一致でなったんです。世間のストレスが溜まってるし、ネットでのいろんなことも増えてるし。

-SNSの誹謗中傷に対しての処世術の歌だから。

田口:そうです。ネットでアンチが放つ言葉って、あたかも日本刀とかを持って渾身の一撃を俺らに食らわせてるような顔をしてるんですよ。けど受け取ってる俺らからしたら、いや届いてないよ、マジで興味がないっていう。ブロック1個で終わりじゃんっていうところからあのサビが降りてきたんです。

-アルバムの他の曲がある程度揃ったなかで、この曲を選んだんですか?

田口:そのときは全曲フルで揃ってないんですよ。けど、「全部ブロック」はアルバムに入れるって決めてて。本当は「全部ブロック」を出した7月には、このあと12月に出す「優等生」を先に出すはずだったんです。ライヴのスケジュールを練って、豊洲PITも押さえてもらって、その発表のときに"もう優等生やめます、ライヴします"っていう曲として出そうと思ってたんですけど。直前まで3人で話し合って、"いや、ちょっとでも違うと思ったらまだやろ"ってなってライヴをキャンセルにしたので。だったら「全部ブロック」を出そうっていう流れでもあったんですよね。

-歌詞のインパクトで見落としがちだけど、「全部ブロック」はトラックも尖っててかっこいいんですよね。晴人さんの怒気を含んだヴォーカルも新鮮でしたし。

矢野:ああいう声の出し方をしたことがなかったので挑戦ではありました。

太我:この曲かっこいいですよね。僕はメロディも好きなんですよ。

田口:これはレコーディングのときからドラムが暴れてたよね。太我がノリノリだった。"これ、ちょっとやってみたい"みたいな提案が多くて。それをどんどん使ってます。

-全然スーツを着てない曲じゃないですか。

太我:たしかに。曲によっては自分が出てきちゃってるんです(笑)。

-10月に出た「Needle return」はゲリラ配信というかたちでしたね。

田口:これは大手暴露系配信者に(晴人が)晒されて。炎上したんです。ごちゃごちゃ言ってくるやつらがめちゃくちゃいて。それで作った曲なんですよ。

矢野:僕はなんも言えないですけど......。

田口:こいつ(晴人)の吐き出したいことを吐き出す曲があったほうがいいなと思って。すらすら出てきたんです。俺らが頑張ってここまできたのに、たまたま出会ったお前が俺らのことを潰していいと思ってるの? っていう。だから"返し針"なんですよ。お前ら、1回刺した針は抜けないからなっていう。

-なるほど。

田口:俺らからファンに対して、もう二度と離さないっていう気持ちもありますけどね。

-この曲のラップは誰かゲストを迎えたんですか?

田口:いやいやいや(笑)、僕とハル(晴人)がやってるんですよ。

矢野:最初の頃にもやってたよね。

田口:そう、「Refutation」(2018年リリースの1stフル・アルバム『全A面』収録曲)とか。なんかメジャーに行って小さくまとまってるなと思ったんです。ハルの声で認知してもらったからって、ハルの歌をって思いすぎてたなぁって。ノンラビなんやから何やってもいいやろってふと思い出して、なんなら作ってるときは太我も歌わそうかなって思うぐらい、構想的にはエッジの効いたことをやったろうかなと思ってたんです。

-なんでやめたんですか?

田口:(太我が)照れるかなと思って(笑)。

太我:可能性はありますね。

矢野:さっきの"誰かゲストを迎えたんですか?"ってやつ、おもろいから書いてくださいね。迎えてたら普通タイトルに書くでしょ、フィーチャリングって。

-たしかに。失礼しました(笑)。11月に配信した「BAKEMONO」はミステリアスで疾走感がある曲です。これもバンドの新機軸かなと思いました。

田口:これはレーベルの担当者が出したいって言ってくれたんですよ。俺らとしては新しくジャズチックなことをやってはいるんですけど、今までどおりのつもりではいて。蓋を開けてみたら、こういうのをやってなかったんだなって気づいた曲ですね。

矢野:この曲は次のアルバムを作るってなった一発目のデモにあったんじゃないかな。

田口:そっかそっか。一発目に出したのか。

太我:「BAKEMONO」はジャズテイストだったから、シンバルの音色にこだわってて。キラキラさせようかなっていうのはありましたね。昔ジャズ・ドラマーにドラムを教えてもらったことがあったので、若干そういうのも叩けたんです。

-達也さんはそれを知ってて作ったんですか?

田口:いや全然。(太我が)何ができて何ができないかも知らないので、レコーディングで"これ初めてだ"って聞いて、"あ、そうなんや"って。なんやかんや、やってくれちゃうんですよね。でもこれもまた全然スーツ着てないね(笑)。

太我:着てない。激しいですよね。ライヴが楽しくなりそうだなと思ってます。

-この曲の歌詞は、"化け物"っていう言葉で人間の内面の汚さを表現しているのかなと思いました。どういう想いで書いたんですか?

田口:僕らがメジャー・デビューまでに出してきた曲って、そこに憧れたからこそすごくキラキラしてたと思うんですよ。もっと頑張るぞ、みたいな。でも、どんな職業もそうだと思うけど、そこにきちゃうと、そこでしか見えない汚いものっていっぱいあるじゃないですか。それを見ても"まだ売れたい"って言ってるのは化け物やなと思ったんです。こんなやつに憧れてたんかっていうヤバい先輩もいっぱいいるけど。それを見てもなお"やりたい"と言ってるのは、冷静に考えて化け物だなって。

-音楽シーンにある決してきれいなだけではない部分を知っても、音楽への情熱は帳消しにならなかった、ということ?

田口:そうです。今までは上澄みしか知らなかったけど、どぼんって浸かって、素晴らしい世界だけど最悪って思ったこともある。それでもなおこの中で足掻きたい。まだ何かしたいって思えるのは、ある意味、病に近いというところですね。