INTERVIEW
Non Stop Rabbit
2022.07.19UPDATE
2022年07月号掲載
Member:矢野 晴人(Vo/Ba) 田口 達也(Gt/Cho) 太我(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
シングルとしては、昨年5月のメジャー1stシングル『三大欲求』以来となる、Non Stop Rabbitの2ndシングルは、TVアニメ"転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~"の主題歌「無自覚の天才」。インパクト抜群のタイトルや歌詞の強さ、そこに畳み掛けるようなアグレッシヴなバンド・サウンド、矢野晴人の突破感のあるハイトーンが冴える、まさにノンラビ(Non Stop Rabbit)らしい1曲となった。昨年末リリースしたメジャー2ndアルバム『TRINITY』ではバンドの可能性を広げ、そのサウンドスケープをより深く彩ってきた彼らだが、改めて"THEノンラビ"と言えるストレートなロック・チューンが爽快だ。またこれぞ発想の天才と言えるカップリング曲にも、ぜひ注目したい。
これで、認められた感じというか。本当のメジャー・デビューに近い感覚
-ニュー・シングル「無自覚の天才」は、TVアニメ"転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~"の主題歌として書き下ろされた曲ですが、制作はどのように進んでいきましたか。
田口:そもそも曲自体は昨年に作っているので、なんなら昨年のアルバム『TRINITY』のときに一緒にレコーディングもしていたので、どうだったかというのは忘れましたね。過去の曲みたいな感じで(笑)。
矢野:アルバムとごっちゃになっててね。
田口:アニメと合わさっている映像を観てやっと、"おぉ! 誰の曲?"みたいな感じで見ましたね。1年前に完成していたものなので。
-アニメのスタートは7月からですが、だいぶ早い段階で進んでいくんですね。何かしらテーマとか、どういうふうな曲でというのはありましたか。
田口:資料として漫画を送ってもらって読んだときに、こういうのめっちゃやりたかったという漫画だったんです。強い主人公がいて、しかもバトル・アニメで、現代的な魔法とかを使っていてというので、超やりたいバチバチ系の主題歌きたー! って思ったのはすごく記憶にありますね。で、漫画を読んでみたら単純に面白かったんです。このくらいまでがアニメなのでって言われて送ってもらったんですけど、面白かったので続きを自分で買い足しに行ったくらいで。なので曲だけでいうと、アニメで放送されるよりも奥まで見たうえで書いている感がありますね。
-アニメの制作側からこういう感じでとか、ある程度お題のようなものってあったんですか。
田口:一切なかったんですよね。だから毎回ビビるんです。何もない状態で、まず作ってくださいって言われるので。でも、こうしたタイアップのときは、僕らはしっかり"バンド感"を出したいんです。今までやってきた、メジャー前の曲みたいな感じというか、ロック感を出しつつ、楽器の音をしっかり前に出してというのを意識して作詞作曲をして送ったところ、一発OKだったので、"よっしゃ"って感じでした。
-1曲入魂だったんですね。まずこの曲は、"無自覚の天才"というタイトルのフレーズでがっちり掴まれます。キャッチーでインパクトもあって、いろんなことを想像させるワードで。この言葉っていうのは、どういったところからですか。
田口:そうですね。今回、タイトルが最初から付いていた感じではなくて、サビのメロディと歌詞だけが最初に出てきて、そこから作っていったんですけど。漫画を読んでいたら、無自覚無双みたいな、無自覚にどんどんモンスターを倒していく感じで、主人公を表すワードとして"無自覚"っていうのがあったので、こいつ無自覚だけど天才だなと思って。そこからきているものですね。
-サウンド的なところではどうですか。メロディは"THEノンラビ"というもので、さらにドラムが曲の推進力として突き進んでいくものになっています。
太我:無自覚というか、そういう内容のアニメでもあったので、僕もデモをあまり聴かずに初見で──
田口:天才だな!
矢野:はははは(笑)。これ、お前のことだったの?
太我:シーケンスとかパッと流れてくるじゃないですか。それに対して考え込まないで叩いてみた、みたいな。
田口:天才ぶらないで。
太我:本当は前日の夜から相当詰め込みました。
-このビート感があってこそ、先ほども出たバンド感、ノンラビのグルーヴが冴える曲ですよ。
矢野:この曲はライヴが楽しみだよね。
-こうしたタイアップや主題歌のときに"バンド感"を意識するっていうのは、どんなところからですか。
田口:アニメで初めてNon Stop Rabbitを知る人も多いというのが予測されるじゃないですか。なので、パッと聴いた時点でバンドマンが主題歌をやっているんだなと思ってほしくて。前回のアルバムの感じでいくと、結構バンドから離れたところも僕らは研究して磨きにいけたので、そっちでもいけたんです。でもYouTubeじゃないですけど、サムネを見てなんの動画かわかるみたいな感じで、音を聴いてバンドマンが主題歌やってるのね、アニソン歌手じゃないのねっていうのをしっかり見せたいためだけに、音はドラムから入ろうとかギターから入ろうと決めてますね。
-そういうところも考えながらの曲作りなんですね。
田口:どう聴いてもらえるかとか、アニメのオープニングで流れる1分半の間に自己紹介をしなきゃいけないので。そこはかなり考えて作りましたね。あとは自分でも、サビ部分では映像として想像できるかはめちゃくちゃ意識しています。僕たちがこれまで観てきたアニメもそうですけど、サビ前までしっかり溜めてきたものが、サビでバーンときて登場人物たちがわしゃわしゃーって技を出して、っていうのを想像しながら曲を書いていたので。主題歌ですけど、映像を想像しながら書くというか。それで、アニメの制作側も僕らのこの曲に映像を合わせて、僕らの心情を読んで絵を当ててくれてっていうのが、こうした主題歌の面白いところだったりするので。こんなの欲しいでしょ? みたいなところは、あえてキメを作るとか、サビいきますよっていうのは、映像のためにあえてわかりやすくやっている感はありますね。
-そうなると普段とは作り方、曲の考え方としても変わっている?
田口:だいぶ変わります。というかものすごく自分の中でオーディションの回数が多い。これは本当に相応しいのかとか。ワードひとつ、キメひとつとっても、自分が映像を作るんだったらこれが作りやすいかなというのは、めちゃくちゃ考えますね。
-そういうふうに作り上げていく面白さもありそうですね。
田口:めちゃくちゃ面白いですね。映像と合わさって、答え合わせができますし。曲を出して向こうから返答があるまでハラハラしますけど、結構面白かったりします。
-歌詞については、アニメという題材はありますけど、すごく身近に感じる内容であったり、バンドとしても自身と重なるところだったりも多かったのかなと感じますが、どういうところを描こうと思いましたか。
田口:漫画を読んでいる感じで言うと、本当は才能があったやつが転生したことによって才能に気づくみたいな。でも周りが気づいているだけで、本人は気づいていないという感じなんです。これは日常生活でもありますよね。僕らもこうしてインタビューとかをしてもらえるようになりましたけど、5年前までは路上でライヴをやっていたわけですから。YouTubeだってつい最近始めたもので。でも気づいたら、観てもらえるようになってという。それはすごく重なる部分があって。なので自然と、サビの歌詞"僕ら誰もが秘めたる力を持ったモンスター"が出てきたんです。場所が変われば全員モンスター、バケモノという意味ですよね。それを才能と呼びたいなと思っていたので。
-矢野さんはこの歌詞をどう解釈して表現しようと。
矢野:僕も一応漫画を読んだんです。僕の場合、歌詞を書くわけではなかったので、資料として貰えなかったんですけど(笑)。なので、本屋さんに行って買って読んだんです。すごく面白くて。アニメはいろいろ観るんですけど、その中でもこれはアニメ化したら絶対盛り上がるだろうなと思いました。歌が来たときにも、ハマったので。(田口が)意図としてきているところは、バシッと決めてというのは意識していましたね。僕は他の曲もそうですけど、自分と重ねて気持ちを込めて歌ってきたので、今回の曲も主人公だと勝手に思い込んで歌ったほうが、より伝わるのかなというのは思いました。
-初のアニメ化で、その主題歌がこの「無自覚の天才」で。この曲でアニメの印象が作られるところもあるし、ここで初めてNon Stop Rabbitに触れる人は、Non Stop Rabbitの印象も作られる、そういうことで大事な曲にもなりますね。
田口:そのプレッシャーはありましたね。原作小説と漫画の累計が600万部出ているということで。
矢野:"ONE PIECE"で言うと、「ウィーアー!」(きただにひろし)なわけでしょ?
田口:そうそう。"鬼滅の刃"だったら「紅蓮華」(LiSA)でしょ?
矢野:"NARUTO-ナルト-"で言うと──
田口:もういいよ。
矢野:全部言っていこうと思ったのに(笑)。
-ひとついい切符を手にしていると(笑)。
田口:嬉しいですよね。自慢できることは、初めてかもしれない。メジャー・デビューとかも僕らそんなに、超喜んだりはしてなかったので。デビューしたいからするっていう、目標の過程としてはありましたけど。アニメ主題歌は、えぇー! ってなりました。夢じゃないですか。3人でやろうって言って始めたバンドが、アニメの主題歌をやるって。僕らが見てきたバンドマンとか憧れている人たち、かっこいいなって思う人たちもみんなやっていたので、やっとメジャーという感じがしました。認められた感じというか。ぶっちゃけメジャー・デビューって誰でもできるじゃないですか。そのうえで、選んでもらえるというのがある意味、本当のメジャー・デビューじゃないですけど。そんな感覚に近いかなって。
-カップリング曲についても話を聞きたいのですが、「恋愛卒業証書」と「豆知識」はどの段階で作ったんですか。
田口:これは5月で、つい最近です。1週間で曲を作って、1週間でレコーディングしましたね。僕の場合、時期を決めないとできないタイプというか。リリースがあって、この日までにくださいって言われないとできないんです。今回急に、シングルなので王道のパッケージ感で、"バラードも入れたいしノンラビの面白い曲もいいので、そんな感じでいきますか?"って言われたので、はいっていう(笑)。
-こちらはお題があったんですね(笑)。それでできたバラードが「恋愛卒業証書」ですが、アコースティックな出だしからエモーショナルで、切ない曲になりましたね。
田口:バラードではあるんですけど、身近な人が亡くなる出来事もあって、半分は恋愛の曲ですけど、半分は別れ、本当の別れというので書いている曲ですね。
-だからこそ、心残りというものが強く滲んだ曲になっているんですね。
田口:そうですね。これは珍しく、頭の2行から出てきたんです。サビから降りてきた曲じゃないんですよね。頭から書いていて、感情のままにというか。結局死ぬのになんでふたりになろうとするのかっていう。ひとりで死んでいったほうが誰も悲しませないのにっていうところからきているんです。「無自覚の天才」がロックな、ノリで聴けちゃうような曲なので、そのあとにしっかり"いい声やろ?"っていうのを聴かせたくて。とにかく、ハル(矢野)、歌、っていう。
矢野:バラードは個人的に好きなので、毎回アルバムにも入っているんです。これも「無自覚の天才」もそうですけど、より入り込めるように、感情を出して歌うというのは意識している曲ですね。