INTERVIEW
KEMURI
2015.07.14UPDATE
2015年07月号掲載
Member:伊藤ふみお (Vo) 津田紀昭 (Ba) コバヤシケン (Sax) 平谷庄至 (Dr) 田中'T'幸彦 (Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
-今そんなふうに、何回も歌を直されることってあるんですか?
伊藤:何回もやらされますよ、未だに。だいたい1曲で2時間くらい歌いっぱなし。そこでベスト・テイクを録っていってくれる感じ。
-もう長い付き合いにまりますからBillさんなりに、KEMURIの歌はこうだというものがあるんでしょうね。
伊藤:彼は、DESCENDENTSのドラム&ソングライターでずっとやってるんだけど、1998年に最初にレコーディングで行ったときに、"美しいものが好きだ"って言ってたのね。彼はいろんな音楽好きなんですよ、ジャズとかね。で、"美しいものって何だ"って訊いたら、"美しいものは正確性の中にあるんだ"って。ジャッジの基準がそこなんです。正確じゃないとダメだって。英語で歌うのであれば、発音をちゃんとやろう。発音をちゃんとやったら、ピッチもちゃんとやろう。発音とピッチができてるのに、リズムがズレてたらしょうがないだろうと。そういうのがあるんですよね。でも、普段英語喋ってるわけじゃないし、レコーディングはやっぱり大変で。発音とピッチが良くても、リズムがダメとかね。それでやっていくと、どうしても1曲2時間くらいかかっちゃうんだよね(笑)。未だにばっちり歌う。
-厳しいんですね。
津田:厳しいんですよ。
伊藤:Billの中でも、ふみおにはこれくらい、庄至とかブラッドとかTとか、みんなにはこれくらいという基準があるんだけど、もう僕とかから見てると、"いや、そこまで望まれたら大変だろうな"って思うくらいラインは相当高い。でもたしかに"OK"て言ったテイクはいいんだよね。だからすごいもんだなと思うんですけど。
-ライヴを重ねることももちろんですが、そういったレコーディングでも磨かれていくっていうことなんでしょうね。
伊藤:DESCENDENTSとかBillとか見てると、そういうことも学ぶよね。彼らは我々ほどアルバム作らないけど、いろんな音楽に対する要求、スタンダードが高い。だからずっと長くやっていられるんだろうなっていうのは、今回感じたけどね。これ余談なんですけど、Blasting Roomのあるフォート・コリンズっていう街が標高1,600メートルあって、空気薄いんですよ。ちょっとジョギングしただけで、はあはあ息が切れるようなところで。だから、大変なのよ歌が。
-そうですね。
伊藤:肉体的にもね、管楽器なんか特にそうだと思うんだけど。
コバヤシ:うん、なかなか大変ですよね。
伊藤:高所順応してから行かなくちゃいけないような高度にある街なんだよね(笑)。そこで2時間歌うっていうのが、いろんな意味で肉体的にも精神的にもいいトレーニングになるよね。
平谷:時差ボケが酷いのはそれなのかな、やっぱり(笑)。
津田:そうだよ、絶対。
-マラソン・ランナーのトレーニングみたいな感じですね。
田中:そうそう、まさにそういう人たちがトレーニングに行くような場所なんですよ(笑)。
-こうやってお話しを聞いていてもそうですけど、この間のベスト・アルバム時のインタビューで、"今、新しいバンドをやっている感じがする"と言っていた、まさにそれが詰まったアルバムでもあるし、バンドのムードが出ている作品だと思います。20年分の貫禄はもちろんあるけれど、また新しいことをやってる、新しいことを楽しんでいる、そういうアルバムだなと改めて思います。
伊藤:うん、いろんなことやってるんだよね(笑)。まだ、"KEMURI"っていうイメージが先行する部分が大きいかもしれないですけど、本人たちは、新しい気持ちで新しいことをやってるんですよね。それがすごく面白い。
-曲を作って来るときにも、以前とは違う感覚があるというか、今ならこれをやっても大丈夫だろうなっていうので曲を出してくることもあるんですか。
津田:そうですね。庄至君の曲にしても、さっきふみお君が言ったように、すごくポップで、以前なら"KEMURIでは違う感じがいいんじゃない?"って言ってきたことが、そういうことも言わずに、みんなでやれる状況ではありますよね。バンドの雰囲気もすごくいいっていうのもあるし、恵まれてるじゃないですか。スタッフとか関係者の方にも。そのファミリー的な感じが、僕たちをそういう雰囲気にさせているんじゃないかなと思いますけどね。アメリカのレコーディング・スタッフも家族みたいなものだし。あまり、気張らなくても、自然な感じでできるのが今だと思いますね。
-これから夏フェス出演があって、10月からはアルバム・ツアーが始まりますが、その前に9月には、REEL BIG FISHとLESS THAN JAKE、SKANKIN' PICKLEを呼んでの20周年ツアー"SKA BRAVO"があります。これはどんなライヴになりそうですか。
伊藤:"SKA BRAVO"はお祭りですね。演奏曲はまだ決まってないすけど、1995年にKEMURIという名前がまだないときに、天を仰ぐような気分で観ていたバンドと一緒にやるわけですよ、我々からしてみたらね。そのときの気持ちを思い出すようね。
津田:そうだね。
伊藤:SKANKIN' PICKLE、REEL BIG FISH、LESS THAN JAKEのメンバーに"日本はまだまだ盛り上がってるんだぞ"っていうところを、見てもらえるように。たくさんの人と、スカ・パンク、スカ・バンドを面白がりたいっていうところですかね。そのツアーでもらったものをKEMURIとして、アルバム『F』のツアーでは20年間、自分たちが構築してきたものを楽しい形でいろんな世代の人とシェアできるライヴにしたいと思ってますね。